地方自治 地方に財源が必要 道州制批判(国の統治機構に関する調査会)
今国会から「国と地方の関係」をテーマに1年間調査を行う参院・国の統治機構に関する調査会は11月5日、調査を進めるための意見交換を行いました。倉林明子議員は、「国と地方の関係を考えるうえで、憲法上の位置づけを改めて確認する必要がある。今、果たして地方自治体は憲法で位置づけられた地方自治体の役割を発揮できているのかを検討すべき」と述べました。
倉林議員は、地方分権の名のもとにすすめられた地方交付税・補助金の削減と見直しによって地方自治体財政が破綻寸前に追い込まれたことを指摘。広域合併した自治体では周辺部の人口減少が急激に進み、合併しなかった自治体では交付金削減で住民生活に密着した建設業がストップし、除雪や災害時の対応を担ってきた地域の建設業が廃業に追い込まれている実態を紹介しました。
その上で、基礎自治体が役割を発揮するために必要な財源確保は国の責任で行うべきだと主張しました。
みんな、維新の党の委員は道州制推進を主張。倉林議員は、「道州制の導入は、憲法で定めた地方自治の原則を踏みにじるものだ」と指摘しました。
第187回国会 国の統治機構に関する調査会 第2号 2014年11月5日(水曜日)
国の統治機構等に関する調査(「時代の変化に対応した国の統治機構の在り方」のうち、国と地方の関係)
〇会長(山崎力君) この際、本調査会の二年目の調査について御報告いたします。
本調査会は、昨年十一月に今期の調査テーマを「時代の変化に対応した国の統治機構の在り方」とすることに決定し、調査を進めております。
二年目の調査につきましては、理事懇談会等で協議いたしました結果、引き続き、本調査テーマの下、二年目は、「国と地方の関係」について調査を進めていくことになりました。
何とぞ委員各位の御協力をお願いいたします。
〇会長(山崎力君) 次に、「時代の変化に対応した国の統治機構の在り方」のうち、「国と地方の関係」について委員間の意見交換を行います。
本日は、今後、「国と地方の関係」について調査を進めるに当たり、委員各位の御意見をお述べいただきたいと存じます。
意見のある方は、挙手の上、会長の指名を受けてから御発言いただくようにお願いいたします。
また、多くの委員が発言の機会を得られますよう、発言は五分以内でお願いいたします。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、意見のある方は挙手を願います。
〇会長(山崎力君) 倉林明子君。
〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
国と地方の関係を考えるに当たって、憲法での位置付けを改めて確認する必要があると考えます。
かつて明治憲法の下では地方制度の規定はなく、中央直轄の官製団体でした。日本国憲法では、第八章地方自治を設け、地方自治の本旨に基づいて定めると規定しました。
地方自治の本旨とは、団体自治と住民自治を意味しており、団体自治は、地方公共団体のことは当該地方公共団体が決めるという地方公共団体と国の関係の原則であります。住民自治は、地方公共団体のことは当該公共団体の住民自身が決める原則とされております。これらの原則の下で、地方自治体は住民の福祉の増進という地方自治の目的を果たす役割と権限が定められました。
今、果たして地方自治体は憲法で位置付けられた地方自治の原則を発揮できているのかと、国と地方の関係について問題点を提起したいと思います。
第一は、地方自治体が抱える課題は待ったなしの対策が求められているという問題です。
少子化、高齢化の進展、基幹産業の農林水産業は衰退し、商店の廃業が後を絶ちません。疲弊した地域経済の下で高まる住民のニーズに地方自治体は苦戦を強いられております。こうした背景には、一九八〇年代半ばから進められた経済のグローバル化と構造改革があり、企業の生産の海外進出が進み、国内工場の閉鎖や縮小が地域の雇用を喪失させ、賃金の低下を招いています。海外現地法人の稼ぎ出す利益も、本社の輸出利益も、全て本社のある東京に富の一極集中が加速しました。規制緩和と海外生産は地場産業にも打撃となり、地域の労働者の雇用を喪失し、賃金の一層の低下に拍車が掛かりました。
消費が落ち込む中で、大店法の廃止により大型店の出店攻勢に歯止めが掛からず、中小商店は廃業に追い込まれ、シャッター商店街が全国に広がりました。年金支給額の削減や公務員給与の削減は、地域の購買力を更に落ち込ませております。この悪循環からの脱却が大きな課題であることは間違いありません。
第二は、平成の市町村合併と三位一体改革が地方財政に与えた影響についてです。
地方分権の名の下に進められた地方交付税、補助金の削減と見直しが地方自治体財政を破綻寸前に追い込むことになりました。交付税の優遇措置で合併が急速に進み、広域合併した自治体では周辺部の人口減少が更に加速する事態となっています。合併しなかった自治体でも、交付金の削減で住民生活に密着した建設事業までもがストップし、除雪や災害時の対応を担ってきた地域の建設業が廃業に追い込まれました。
交付金の削減は、大幅な職員削減と行政サービスの引下げや民営化をせざるを得ない状況に自治体を追い込んでいます。基礎自治体がその役割を発揮するために必要な財源確保は、国の責任で行うべきです。
第三は、地方自治を破壊し、変質させる道州制についてです。
国の仕事を外交、軍事、通商、司法などに限定し、憲法で位置付けられた社会保障や教育など国民の基本的人権を守る国の責任を放棄しようというものです。
全国町村会の特別決議では、地方分権に名を借りた新たな集権体制を生み出すものであり、大都市圏への更なる集中を招き、地域間格差は一層拡大する、どの地域においても国民一人一人が安心して暮らすことができる国土の多様な姿に見合った多彩な市町村の存在こそが地方自治体本来の姿であり、この国の活力の源泉であることを忘れてはならないとしており、この指摘を重く受け止めるべきだと考えます。
道州制の導入は憲法が定めた地方自治の原則を踏みにじるものだと厳しく指摘し、意見表明といたします。