「離職が加速」現場悲鳴 トリプル報酬改定を批判 (2024/3/22 厚生労働委員会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は22日の参院厚生労働委員会で、2024年度の医療・介護・障害福祉のトリプル報酬改定について「現場では改定後も賃金が上がる見通しが立たない中、離職がさらに加速しかねないと悲鳴が上がっている」と批判し、賃上げできる再改定や公費による財政支援が必要だと迫りました。
倉林氏は、介護報酬改定の訪問介護の基本報酬引き下げに関わって、ホームヘルパー国賠請求原告団の調査ではヘルパーの年収は110万円未満が47%に上ると指摘。「今回の基本報酬引き下げはさらなる賃金引き下げにつながる。このままでは在宅介護は持たない」として再改定を迫りました。
武見敬三厚労相が「他の分野と比べても高い加算の改定率だ」と答弁したのに対し、倉林氏は、最大24・5%の処遇改善加算をとっても全体ではマイナスになる実態があると指摘。14カ所の訪問介護事業所を持つある法人の場合の試算では、基本報酬のマイナス影響額が加算額を上回り、年間4000万円を超える減収になると示し、「こうした現場の実態を見るべきだ」と主張しました。
さらに倉林氏は、医療・介護・障害福祉すべての分野で人材確保が困難な状況がある中で、人材紹介業者の高額な手数料が問題となっていると指摘。公費や保険料によって行われている事業に対する有料職業紹介は禁止し、公的人材紹介を強化するよう求めました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
総理は、政府による公的賃上げを行うということで、全就業者の一四%を占める医療・福祉分野の幅広い現場で働く方々に対し、物価高に負けない賃上げを確実に実現するというのが所信表明だったんですね。果たして、今度のトリプル報酬改定で現場に物価に負けない賃上げというのは届いているかどうかと、これが問われると思うんですね。
診療報酬改定の方から入りますけれども、ベアアップの評価料、ベースアップ評価料というものが付きました。これによりますと、令和六年が二・五パー、令和七年が二パーと。で、物価の上昇率はどうなっているかというと、二〇二三年の物価上昇率というのは、二〇二〇年比で見ても五・六%という上がり方なんですよね。全然追い付いていなかったんだけど、もうこの時点で既に物価高に負けているんじゃないかと。大臣、どうですか。
○国務大臣(武見敬三君) この令和六年度の診療報酬改定において、政府経済見通しでこの令和六年度の全産業平均の一人当たりの雇用者報酬の伸びが二・五%であり、物価上昇率と同水準と見込まれており、こうした見込みと整合的にベースアップを求めるという観点で、物価高に負けない賃上げとしてのこの令和六年度プラス二・五%、令和七年度プラス二・〇%のベースアップを実現するために必要な水準の改定率を決定をいたしました。このベースアップ評価料の新設等をまた同時に実施したところであります。
このような診療報酬について、二年に一度の改定時に、医療費や物価、賃金の動向、そして医療機関等の収支や経営状況、保険料などの国民負担、さらに、保険財政や国の財政に関わる状況を踏まえていることが極めて重要であります。今般の診療報酬改定によっても、この確実な賃上げが実施できるよう取り組むことによって、御懸念の問題にならぬように私どもとしては努力しなければならない、そして、物価の上昇に負けない、そうした賃上げを実現していかなければならないと考えています。
○倉林明子君 入口のところから差があるよということを指摘したかったんでしょうね。
実はこれ、春闘の回答状況がもう出始めておりまして、もう実にシビアなんですよね。医労連が、医労連傘下の組合の回答が始まっておりまして、現在寄せられている回答は百二十五件、一次回答。ここで、ベアの二・五%を超えた回答というのは二か所だけなんですよ。現時点で、昨年を下回っているという回答にとどまっているのが全回答の六割を占めているんですね。
医療現場に賃上げ届いていないんですよ。この実態、どう受け止めますか。
○国務大臣(武見敬三君) 委員御指摘のこの回答結果については、現時点ではまだ春闘の途中の段階でありますから、一概にその評価について申し上げるというのは私はまだ難しいだろうと思います。
いずれにしましても、今般の診療報酬改定では、令和六年度にプラス二・五%、令和七年度に二・〇%のベースアップを実現するために必要な水準の改定率を決定したところでありまして、これまでも多くの医療関係団体にお集まりをいただいて、そして総理や私からもこの賃上げに向けた要請を行いました。それから、関係団体と協力をして、医療機関向けのオンラインセミナーなどもこれ複数回開催をいたします。こうした努力を、その現場での賃上げが進むよう、医療機関へのこうした働きかけというのにまさに今力を入れているところであります。
引き続き、この関係者の皆さん方に対する周知などによって確実に賃上げを図るとともに、今回の改定による措置のフォローアップの仕組みについて、賃上げの状況について把握をさせていただきたいと思います。
○倉林明子君 ベースアップの評価料で物価高に負けない数字を出しているということなんだけれども、トータルの報酬改定率〇・八八なので、物価高に全体として追い付かないんですよ。
実際に、急性期病棟の評価の見直しというのがありまして、病院によっては大きな減収が見込まれるというところも少なくないです。さらに、今回のベースアップの評価料というのはあくまで特例ということで、これ次の改定のときに担保があるのかということから踏み切れないという声を伺っております。加えて、診療所は、これベースアップの評価料が一・二パーなんですね。病院と診療所を持つ法人ということになりますと、同じ職種で賃金格差につながっちゃうんですよね。これも賃上げできないという理由になっているんですよ。
全体として、賃金のベースアップの評価料だけではこれ物価に負けない賃上げという回答が出せないという実態をよくつかむべきだと思います。
次に、介護報酬の問題です。
これ、訪問介護の基本報酬の引下げは、在宅介護を支え続けてきたヘルパーに対して屈辱的だと思うわけです。これ、十二年前からの比較を、基本報酬のところを入れていますけれども、このマイナスの幅って非常に大きいんですね。
こういう抗議の声が出ることも予想していたというようなお話ですけれども、こういう評価が下げられ続けてきたということが本当に怒りを買っているわけですね。ホームヘルパーの国賠請求原告団、今訴訟になっていますけれども、この調査報告がありまして、在宅介護を支えるヘルパーの年収というのが百十万円未満、年収ですよ、百十万円未満、これが四七%、およそ半分になっているんですね。
今回の基本報酬の引下げというのは更なる賃金の引下げにつながりかねないと。このままじゃ、私、在宅介護ってもたないと思うんですよ。どういう認識でしょうか。
○国務大臣(武見敬三君) 在宅介護の重要性というものについては、私どもも基本的な考え方は全く変わっておりません。そして、その中で、特にこのいわゆる加算を通じた措置を、もう他の分野と比べてみてもかなり高い加算の改定率を今現在準備をしていて、しかも、その手続を極めて簡略化し、迅速にできるようにして、そして今までこういう加算を取りにくかった小規模事業者の人々、皆さん方もしっかりと加算が取りやすくさせることによって、こうした賃金の財源を加算を通じて確保していただいて、その経営の安定化にもつなげると、こういう考え方で私どもやらせていただいております。
是非、この考え方について誤解なきよう、御理解をいただけるよう、我々は努力しなければいけないだろうと思っています。
○倉林明子君 誤解じゃなくて実態なんですよ。これまでだって、ここの、こういう介護事業者がどういう実態になっているかというと、やっぱり報酬が少ないということから倒産、廃業というのが相次いでいるんですよ。増加傾向ですよ、介護事業所。
こういう介護事業所の倒産や休廃業の状況というのは右肩上がりで経過を取っているんだけれども、中でも訪問介護事業所の割合が増えているんですよ。実際に、二〇二三年、東京商工リサーチの調査結果によりますと、介護事業者の倒産百二十二件、高いです。訪問介護事業者は五割を占めています。休廃業、これ五百十件ありました。この中で訪問介護事業者が占める割合、七割なんですよ。潰れているんですよ、今でも。
こういうところが一体どうなるのかということで、計算上は加算を取ってくれたらプラスになって大丈夫って繰り返し説明するんだけれども、実際に計算してみたらどうなるかという試算を私も現場からお聞きしております。最大二四・五%の処遇改善加算ということで、最大の加算を取っても、結果マイナスという試算が出ているんですよ。十四か所の訪問介護事業所を持っている法人の加算を取った場合の試算、十四か所で何と年間四千万円を超える減収になるというんですよ。
事業継続が困難になるという現場の実態を踏まえた、こうした現場の実態見て、三年後の報酬改定に参考にするというようなことだったら潰れちゃうんですよ。直ちに再改定検討すべきだと私は思います。
○国務大臣(武見敬三君) 私どもとしても、そうしたその事業者の倒産というものがあってはならないと思っております。
したがって、実際にその加算措置の迅速化によるそうしたその収益というものの確保、それによる賃上げ財源の確保というのが実際に私どもの主な課題としてあるわけです。それを実行しつつも、なおかつその経営基盤についても実際に調査を同時並行的に行って、これ六月から施行でありますから、そして、それを九月から十月ぐらいまでにかけてその調査というののその取りまとめを行っていこうという考え方を同時並行的に持っております。もし、そこで御指摘のような課題がもし深刻化するようなことがあったら大変ですから、その場合には迅速な対応がまた必要になってくるんだと思います。
しかし、基本的には、こうした調査を踏まえて、通常であれば三年目に実際には改定するという、その考え方で対応するというのが基本になっていることは、やはりあえて申し上げなければなりません。
○倉林明子君 この三年の影響というのは非常に大きいものがあるからこそ、先ほど来前倒しの調査や対応が必要じゃないかという議論もありましたよ。私は、これ実際に試算してみてこんなに重大な影響が出ているということは、直ちに事業継続困難というような影響が及ぼしかねないから申し上げているんですよ。
地域包括ケアシステムというのは、住み慣れた地域で最後まで暮らせると、これを支えるということですよね。これは、サ高住中心に行っているような訪問介護事業所では果たせない役割なんですよ。地域で小規模で、よく知って支え続けてきた事業所、ここが決定的なダメージを受けるという声なんですから、私は改めて、さきの答弁に戻ることなく、現実、現場を見て、潰されるようなことがないような手当てが必要だと、報酬の再改定、さらには公費での積み上げ等ですね、潰さない、やめない、こういう支援が要るんだということを強く申し上げたいと思います。
障害福祉の基本報酬について伺います。
物価高と危険水域の職員不足にあえぐ現場、衝撃を与えております。特に生活介護、一部上がったというものもありますけれども、生活介護は利用者規模で年間数百万円の減収の見込みということを伺っております。加えて、今回初めて時間払いの導入ということまで入ってきています。小規模な事業所ほど加算を取ろうにも取れない。で、職員募集しても応募自体がないんですよ、今。そういうところに基本報酬の減額じゃなくて増額が要ると、時間払い撤回ということが必要だということを申し上げたい。
続けて聞きます。
この危機的な危険水域にあるその募集、採用できないという実態を障害者団体のきょうされんが調べられました。募集人員に対して採用できた職員は五七%にとどまっていると。更に一層困難な状況になっている中で、もう一つ調査ありまして、社会福祉経営全国会議というのが調査やっていて、これどういう調査か。ハローワークからの応募が全くなくて、職員紹介会社から連日のように電話やファクスが入る現状が浮き彫りになりました。推定年俸の三から四割の手数料を取られると、ところが、採用しても続かない、質の確保もできていない、こんな声が寄せられているんですね。適正な有料職業紹介事業者に認定を受けている事業者でも同様のことが起こっております。厚労省の職業紹介事業報告でも、常勤職員の手数料平均は介護職で何と四十七・五万円に達しているということになっております。年間数百万円もの負担になる事業所さえ出てきております。
そもそもですね、大臣、よろしいか。報酬は利用者、そして職員の処遇に充てられるものだと思うんですよ。こんなふうに紹介料に公費が支出されると、こうした事態拡大している、適正と言えるんでしょうか。
○国務大臣(武見敬三君) まず、最初の時間給、時間単位払いの導入を撤回せよという御意見がありました。
今回の報酬改定、生活介護についてサービス提供の実態に応じた評価を行うために、この利用者ごとのサービス提供時間に応じてきめ細かく基本報酬を設定させていただいております。そして、サービスの質を評価する観点から、医療的ケアが必要な方などの支援体制を整えている場合の加算の拡充などとこれ併せてこうした仕組みを講じているところでございます。
それと同時に、この事業所における支援の実態に応じた一定の配慮を講ずることとして、具体的には、利用者の心身の状況などにより当日の支援時間が短くなった場合、それから、障害特性などにより利用時間が短時間にならざるを得ない場合など等に配慮することも検討しているわけでございます。
そういった、よりサービスの質を勘案した報酬体系にしたいという考え方があることは御理解をいただきたいというふうに思います。
それから、ハローワークではなくて、この有料職業……(発言する者あり)あっ、御指摘のこの診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等の報酬は、医療機関や介護福祉事業者が提供するサービスの対価を定めるものであると。医療機関等が必要な医療等の提供を行うためにその提供体制を確保することが重要であり、そのために診療報酬等の収入を元に人材確保を含めどのように支出するかということについては、これはやはり個々の医療機関などにより判断されるものであるというふうに考えます。したがって、お答えはこれでございます。
○倉林明子君 いや、物すごい負担になっているんですよ。ただでさえ賃金上げたいんですよ、現場は。だけど、人は来ないし、派遣会社、紹介会社から頼んだら人件費分食っちゃって、今頑張っている人たちの賃上げに回せないという現実ですよ。適正みたいなこと言われたら本当に困るんです。
福祉にとどまらず、医療や介護の現場でも同様の事態が起こっているわけです。私ね、公費や保険料によって行われている事業に対する有料職業紹介というのはやめた方がいい、禁止すべきだと思う。ハローワークや都道府県等を介した公的人材紹介、これを徹底して強化すべきだと申し上げたい。
もう一点、医療、介護、福祉の現場では、改定後も賃金が上がる見通しが立たないんです。離職が更に加速しかねない。現場では本当に悲鳴のような声が上がっております。賃上げできる再改定、公費による思い切った財政支援、強く求めたい、いかがですか。
○国務大臣(武見敬三君) まず、有料職業紹介所に関わる課題、この不適切な紹介料の取り方とか、あるいは実際にその紹介した後のフォローアップが全くなされないというような問題が起きることはもう実際に避けなければなりません。
したがって、厚生労働省では、特に医療・介護分野においては、こうした紹介事業について法令を遵守し、丁寧なマッチングを行う事業者を認定する適正事業者認定制度というのをつくっております。それから、手数料額に関する情報開示を推進するとともに、法令等の遵守を徹底させるために、現在、全都道府県労働局で、医療・介護・保育分野の集中的指導監督というのをこれ精力的に行っているところであります。
○委員長(比嘉奈津美君) 時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。
○国務大臣(武見敬三君) したがいまして、主要なハローワークに求職者だけではなく求人者にもきめ細かく支援を行う人材確保対策コーナーを設置するとともに、都道府県ナースセンターなどの関係機関との連携強化をも含めて、公定価格分野の事業者の人材確保にしっかりと取り組んでいるところでございまして、官民の職業紹介機能を共に強化していくことが適切と考えます。
○委員長(比嘉奈津美君) おまとめください。
○倉林明子君 あのね、総理は言ったんですよ。賃上げ、公的なところについての賃上げを実現するって言ったんですよ、物価に負けない賃上げを。その責任果たしていただきたい。
終わります。