補足給付改悪やめよ 介護施設入所者補助(2021/6/1 厚生労働委員会)
日本共産党の倉林明子議員は1日、参院厚生労働委員会で、低所得の介護施設入所者の食費・居住費を補助する「補足給付」の改悪の凍結を求めました。
政府は8月から、介護施設などへの入所者の所得区分の第3段階を二つに区分し、上位(年金収入120万円超)に該当する入所者の利用料は月額2万2000円の増加、ショートステイ利用者には3倍の負担増を強行しようとしています。
補足給付は、2015年に、利用者に一定額の預貯金がある場合か、施設入所の際に世帯分離した配偶者が課税されている場合は対象外とされました。
倉林氏は、15年の変更で、民間の介護事業所が利用者に「たんす預金」の申告や、貯金通帳のコピー提出を求めなければならなくなり「現場は大混乱した」と指摘。「在宅の配偶者の暮らしを圧迫し、入所継続のため離婚せざるを得ないケースも出た」と明らかにしました。その上でコロナ禍のもと、「収入減で支える家族の援助も限界」「本人の年金だけでは(利用料を)払えず退所に追い込まれる人が出る」と批判。負担増は、高齢者が健全で安らかな生活を保障されることなどを定めた老人福祉法の目的と理念にも逆行すると迫りました。
田村憲久厚労相は「制度維持のために必要な負担はお願いする」と答弁しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林です。
後期高齢者の二割負担と、これに先行して行われるのが今年八月からの介護保険の補足給付の見直しであります。現場にこれ衝撃と混乱を広げております。
そもそも補足給付の導入について、これいつから、そしてなぜ実施されることになったのか、御説明をいただきたい。
○政府参考人(土生栄二君) お答えいたします。
その経緯でございますけれども、まず、平成十二年、二〇〇〇年の介護保険制度創設時には、介護保険施設等につきましては、介護保険給付の中に食費、居住費が含まれていたということでございますけれども、その後、平成十七年、二〇〇五年に法改正が行われまして、在宅の方との公平性等の観点から、これらのサービスに係る食費、居住費につきまして、一旦給付の対象外というふうに整理をされたということでございます。
他方で、これらの施設等には低所得者の方が多く入所されているという実態等を考慮いたしまして、住民税非課税世帯である介護保険施設入所者につきまして、世帯の課税状況あるいは本人の年金収入等を勘案いたしまして、特定入所者介護サービス費、これがいわゆる補足給付でございますけれども、本体給付とは別に、いわゆる補足給付としまして食費、居住費の負担軽減を図る措置を平成十七年十月から実施しているという経緯でございます。
○倉林明子君 そもそも、負担軽減の前にその食費と居住費を取ることになったと、それで負担軽減措置として導入された経過あるんですね。だから、負担増えたんです、この軽減措置をとられたけれども、実態としては。本当に重い負担だったと思います。
これ、二〇一五年に更に見直しになりまして、補足給付の対象者の要件見直しをやっております。この内容についても確認させてください。
○政府参考人(土生栄二君) 御説明いたします。
平成二十六年、二〇一四年に介護保険法改正が行われまして、その際に、このいわゆる補足給付につきましては、低所得者に対応します福祉的かつ経過的な性格を持つという観点から、在宅で暮らす方、あるいは保険料を負担する方の更なる公平性の観点という観点から見直しが行われたということでございます。
具体的には、翌年でございますが、二〇一五年、平成二十七年八月からは、一定額を超える預貯金等がある場合、あるいは施設入所に際しまして世帯分離が行われた際に配偶者が課税されている場合、これらにつきまして補足給付の対象外とされたということでございます。
さらに、二〇一六年、平成二十八年八月からは、補足給付の支給段階の判定に際しまして遺族年金や障害年金といった非課税年金も勘案するという見直しが行われたという経緯でございます。
○倉林明子君 この見直しで一体何が起こったかということですよね。預貯金の要件には、金融機関への照会、不正受給に対するペナルティーということも導入されたと。介護事業所が、これ民間ですよね、利用者のたんす預金の申告とか預金通帳のコピーまで提出を求めなければならなくなったと。現場の大混乱、たくさんの苦情をお聞きさせていただいていました。
これ、在宅の配偶者の暮らしも圧迫しまして、入所継続のためにもう離婚を選択せざるを得ないと、こういうケースも出たというふうに伺っています。これ、独り暮らしの女性は、遺族年金が勘案されたことで入所困難という場合ありまして、費用の工面ができない場合はですね、よろしいか、待機者にもなれないと、こういう事態が拡大しているということになると思うんですね。
そういうところにですよ、今度の八月から所得区分が第三段階で二つに分かれると。その上位の方に該当すれば、施設で食費が月額二・二万円の値上げです。ショートステイ、これ値段三倍になりますね、食費のところ。加えてですよ、加えて、これ資産要件、おおよそ半分まで引き下げるということになるわけです。
これ、現場で、全日本民主医療機関連合会は緊急調査されました。その結果見て驚いたんですけれども、新たに食費負担が増える利用者というのはどのぐらいいらっしゃるかと、これ第三段階全体の中の四割ですよ。資産要件の引下げで補足給付から新たに外れると、こういう人は三段階全体の六割というんですよ。実態に、入所者調べてみての話です。
対象となるのは、本人、世帯主、世帯共に非課税世帯ですよ。こういうところに新たな負担ということになるわけです。
施設入所者の入所継続への影響、そしてコロナ禍で収入減収している家族、これに対する影響について大臣はどう認識していますか。
○国務大臣(田村憲久君) やはり、制度の持続性、可能性というものをしっかりと維持していくために、不断の見直ししていかざるを得ないという部分があります。
決してその入所要件等についていじるわけではございませんので、そういう意味では、確かに御負担増えるという形にはなるわけでありますけれども、今般、世帯全員が市町村民非課税の場合、これ支給対象、ここは変えていないわけでありまして、そういう意味では、御本人の所得に着目をさせていただく中での対応でございますので、御家族等々というところではなくて、御本人のあくまでも所得に着目をさせていただいたというのが今回の決定であります。
○倉林明子君 ちょっと待って、それ影響ないという認識ですか。入所継続や収入減少している家族には影響がないと、そういう認識ですか。
○国務大臣(田村憲久君) でありますから、御本人の所得というものを着目しましたので、そういう意味では御本人の所得に応じてお支払をいただけるというものというふうに考えております。
○倉林明子君 それ、全体への影響ということを考える必要があると思うんですよ。
実際に寄せられている声を御紹介したいと思います。コロナで家業が廃業し、サービスの利用中止、こういう実態の声出ています。収入減で支える家族の援助も限界だという声。本人の年金だけでは払えない。それはもちろんそういう方いらっしゃいますよ。退所に追い込まれる人が出てくると、現実、こういう懸念の声が利用者からも、そして事業所からも寄せられているんですね。そして、いまだ見直しがあるということを知らない利用者も、家族も少なくないという、調査に回答寄せていただいています。
利用者へのこれ理解が得られるだろうか。私は到底得られないと思うんですね、現状。一旦この実施については凍結すべきだと申し上げたい。どうですか。
○国務大臣(田村憲久君) 先ほど申し上げましたけれども、今般、施設入所者に関しましては、年金収入等百二十万円超という方々が対象になってくるわけでございまして、そういう中においてしっかり御負担をお願いをさせていただくということでございます。
これ、今回のことをやめろというようなお話もございますが、やはり制度を持続していかなきゃならぬわけでございまして、負担能力に応じて御負担をいただきたいというのが今回の決定でございます。
○倉林明子君 負担能力に応じて負担をと求めるところでしょうかということを本当に考えないと駄目だと思うんですよ。
この年金収入百二十万円だったら負担できるだろうという話ですよね。だけれども、このコロナで、支える家族も、配偶者が在宅でいらっしゃる場合とか、その支えている家族のところでの経済、深刻な経済影響が出ていて、本当に大変になっているわけですよ。単体で見て払えるという評価だけで入所者が継続できるという判断できるんだろうかと思うんです。現場で実際にそういう不安が広がっているということをしっかり受け止めるべきだと思いますね。影響調査は厚労省はしていませんから、そういう意味での。
そういう意味で、事前に現場の声を集めたという調査の結果については届いていると思うんですけれども、改めてお渡ししますので御検討いただきたいというふうに思います。
加えて、本法案では、後期高齢者医療保険料の二割負担ということですよね。国保料値上げの仕組みもこれ組み込まれる、提案されていると、指摘をしたとおりです。
改めて、そもそもの議論が要るんじゃないかと思っております。老人福祉法、この国にはあります。この第一条で何を規定しているかと。老人の福祉を図ることを目的と明示しています。第二条でどう書いているか。多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として、かつ、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとすると、こういうふうに高齢者、定めているんですよね、老人福祉法では。
こうした老人福祉法の目的や理念にも、私、これは逆行するんじゃないかと、高齢者の二割負担、そして今度の補足給付費の見直し、思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(田村憲久君) これ、サービスがなくなればいろんな意味でお困りになられるわけで、それをどうやって維持していくかという中で今回提案をさせていただきました。もちろん、これ以外に例えば高額介護サービス費というのがもうあるのは御承知のとおりでありまして、上限を決めて併給も、医療保険と対応するとかいろんな対応をさせていただいております。それから、さらには、先般申し上げましたけれども、これは消費税を財源に保険料の大幅な引下げを低所得者の方々にはさせていただいております。
様々な対応をする中において、一方で保険を持続するためにお願いを負担能力のある方々に対してはさせていただいておるというところもございまして、この点は大変難しいところではあるんですけれども、何とか御理解いただけるように我々も丁寧に御説明をさせていただきたいというふうに思っております。
○倉林明子君 最近、答弁してもろうているんだけども直接質問に答えていただいていないという答弁が繰り返されているように思います。通告は明確にしておりますので、それに対して正面から答えるべきだと思いますよ。
高齢者の尊厳の問題だということを言いたいんです。これ、その制度が、サービスがなければ使えないような御説明あったけども、これ、高齢者が必要な介護が、介護が受けられると、これが補足給付費導入の際、値上げしたけども、補足給付費導入してきたんですよ。これをどんどんなし崩しに負担増になってきているわけです。生活実態は、コロナで支える家族も含めて大変な時期になってきているわけですよ。こんなときにやることかと。高齢者の尊厳や人権まで脅かすようなことにつながりかねないという思いから老人福祉法の、逆行するんちゃうかと聞いたんですよ。
もう一回ぐらい答弁しますか。
○国務大臣(田村憲久君) そのおっしゃられる意味というのは私も理解しているわけでありますけれども、ただ一方で、今申し上げましたけれども、制度を持続可能という意味からしたら、持続可能性を維持しなきゃいけないという点、それから他の部分で、例えば地域共生社会等々をつくる中において、いろんな重層的な対応、支援という形で高齢者の方々のいろんな困り事に対して対応していく、様々な形でのアプローチで高齢者の皆様方に対する尊厳というものはしっかり守っていかなければならないというふうに思っておりますが、一方で、やはり保険制度を維持するというのはどうしても、つらいですけれども、必要な御負担を能力のある方々にお願いせざるを得ないということでございまして、御理解いただきたいというふうに思います。
○倉林明子君 高齢者の尊厳を本当に大事にするということであれば、介護、医療、ここがしっかり低所得者であっても排除されることなく使えると、ここ整えるのが仕事やと。
終わります。