倉林明子

倉林明子

メルマガ登録

病床削減法が成立 倉林氏「医療崩壊踏まえ対策を」(2021/5/21 本会議)

 病床削減推進法が21日の参院本会議で自民、公明、維新、国民民主各党の賛成多数で可決・成立しました。日本共産党や立憲民主党は反対しました。

 共産党の倉林明子議員は反対討論で、法案は「コロナ禍でぎりぎりの地域医療体制から、さらに病床を削減し、医師不足を放置して『過労死』を招く長時間労働を容認するものだ」と批判しました。

 倉林氏は、消費税を財源にした病床削減の補助金の法定化に対し、単純計算で今年度は1万床規模が削減され、医師・看護師の体制後退につながると指摘。コロナ禍が日本の医療体制の脆弱(ぜいじゃく)さを明らかにしたもとで「補助金は廃止し、その予算は苦闘する医療機関・従事者にまわすべきだ」「救える命を守れない事態をこれ以上生まないため、必要な人員・施設を一定規模、常時確保することを感染症対策の基本にすべきだ」と強調しました。

 また、「過労死ライン」の2倍の長時間労働を合法化する問題を批判。法案で盛り込まれた追加的健康確保措置に対し、前提となる労働時間の把握を正確に行う担保がないとして「正確な時間管理なしに医師の命は守れない」と追及しました。

 医師・看護師の絶対的不足を放置したまま、リスクの高い医療行為の業務移管などを法案で進めれば、医療の質・安全性を脅かしかねないと警鐘を鳴らしました。

 そのうえで、コロナ禍での医療崩壊の現実を踏まえ、医師・看護師の抜本的増員、医療提供体制の拡充こそ急務だと強調しました。


 日本共産党の倉林明子議員が21日の参院本会議で行った病床削減推進法に対する反対討論(要旨)は次の通りです。

 第1の反対理由は、新型コロナ感染症の拡大で医療の逼迫(ひっぱく)が広がるなか、消費税を財源とした補助金で病床削減を支援することを法定化することです。今年度は195億円が計上され、削減される病床は単純計算で1万床規模にのぼります。医師や看護師の体制後退にもつながります。

 コロナ危機が明らかにしたのは、重篤化しても入院できず、命の選別が迫られる脆弱(ぜいじゃく)な医療体制です。地域医療構想はパンデミックを想定せず、高度急性期・急性期を中心に約20万床も削減するものです。命が守れる必要病床数を再検証すべきです。病床削減の補助金は廃止し、予算はコロナ禍で苦闘する医療機関・医療従事者にまわすべきです。436の公立・公的病院の再編統合リストの撤回を強く求めます。

 第2に、医師の過労死を容認するものに他ならないからです。

 政府はすべての勤務医に年960時間の時間外労働上限を設けるとともに、年1860時間を上限とする特例を認めようとしています。960時間は過労死ライン、1860時間はその2倍にあたります。異常な働き方を合法化し、医師の過労死の増加につながるもので、到底容認できません。法案は1860時間が上限の医師に追加的健康確保措置を求めていますが、正確な労働時間を把握する担保はありません。最低限、客観的な時間把握を義務付けるべきです。

 政府は、将来は供給過剰になるとして医師数を抑制しようとしています。しかし、高齢者増に伴う医療需要は想定せず、労働時間も過労死ラインを前提とするなど実態とかけ離れています。需要推計を見直し、医師を抜本的に増員すべきです。

 第3に、医師不足に対応するため、タスクシフト(業務移管)を推進、医師養成課程を見直すことです。医師・看護師の絶対的不足を放置したまま侵襲性の高い医療行為の業務移管を進めれば、質・安全性を脅かしかねません。新設される「重点外来」のうち、一般病床200床以上の病院は紹介状なしの場合、窓口定額負担の徴収が義務付けられます。窓口負担の拡大は受診抑制を招きかねません。

 コロナ禍で奮闘する医療現場から、「使命感だけでは安全は守れない。働き続けられない」と悲痛な声があがっています。医療崩壊の現実を踏まえれば、医師・看護師の抜本的な増員、医療提供体制の拡充こそ急務です。


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 私は、日本共産党を代表して、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 本法案に反対する第一の理由は、新型コロナ感染症の拡大による医療の逼迫が全国に広がる中で、消費税を財源とした補助金で病床の削減を支援することを法定化することです。
 地域医療構想を実現するために、昨年度の補助金によって全国で二千七百床が廃止されました。そのうち、現在深刻な病床不足に陥っている大阪府は百二十三床、兵庫県は七十九床です。今年度は、消費税を財源に百九十五億円が計上され、削減される病床数は単純計算をすれば一万床規模に上ります。
 病床を削減すれば、連動して地域で働く医師や看護師の体制後退にもつながります。一般病床が一万床削減されれば、医師千六百人、看護師五千八百人という規模で影響が出るのです。この事実に、正気の沙汰とは思えないと厳しい批判が寄せられています。
 コロナ危機が明らかにしたのは、重篤化しても入院できず、高齢者施設や自宅で亡くなる方が相次ぎ、命の選別が迫られる、余りにも脆弱な医療体制です。その最前線で闘う公立・公的病院を今、病床削減することなど絶対に許されません。
 そもそも、地域医療構想が目指す二〇二五年の病床必要量は、新興感染症のパンデミックを想定せず、高度急性期、急性期を中心に約二十万床も削減するものです。新興感染症の感染拡大時、一般医療と両立し、命が守れる必要病床数は一体どれだけなのか、再検証が求められています。
 病床削減のための補助金は廃止し、その予算はコロナ禍で苦闘する医療機関、医療従事者に回すべきです。四百三十六の公立・公的病院を名指しして病床削減を求める再編統合リストは撤回するよう強く求めます。
 新たに医療計画に位置付ける新興感染症拡大時の医療提供体制は、病床削減計画はそのままに、パンデミック時は施設、人員を迅速に切り替えろというものです。
 しかし、そのやり方が破綻していることは明らかです。余裕の全くない現場では、看護師不足で確保病床すら稼働できず、医師は過労死ラインの数倍という過重な労働で治療に当たっています。救える命を守れない事態をこれ以上生まないために、必要な人員、施設を一定規模常時確保することを感染症対策の基本とすべきです。
 第二に、本法案は、医師の過労死を容認するものにほかならないからです。
 政府は、全ての勤務医に年九百六十時間という時間外労働上限を設けるとともに、それを超える医師が勤務する医療機関について特定労務管理対象機関として指定、年千八百六十時間を上限とする特例を認めようとしています。九百六十時間は過労死ライン、千八百六十時間はその二倍に当たります。現状の異常な働き方を合法化し、医師の過労死の増加につながるものであり、到底容認できません。
 本法案は、千八百六十時間を上限とする医師に対し、追加的健康確保措置として、面接指導、連続勤務時間制限、勤務間インターバル規制、代償休息を実施することを求めています。
 しかし、前提となる労働時間管理について厚労省が行った調査では、約半数の勤務医について客観的な労働時間管理ができておらず、過労死ラインを超えて働く医師ほど時間外労働時間を正確に申告しておりません。申告できる残業時間が制限されているなど、ガイドライン違反すら横行しています。
 厚生労働大臣は、適切な労働時間の管理は使用者の責務だと答弁していますが、法案には正確な労働時間を把握するための担保はありません。逆に、副業、兼業を行う医師は自己申告を基本としています。正確な時間管理なしに医師の命は守れません。最低限、客観的な時間把握を義務付けるべきです。
 医師の長時間労働は、女性医師が出産や子育てを機に常勤医師を続けることができない要因にもなっています。異常な働き方を前提とする環境こそが、女性医師を差別する構造を生んでいます。
 また、医師の長時間労働は、患者の命も危険にさらす可能性があります。日本外科学会の調査によれば、医療事故、インシデントの原因に過労、多忙が八割を超えています。医療の質を守り、女性医師への差別をなくし、医師のワーク・ライフ・バランスを実現するためにも、勤務医の労働環境の改善が必要なのです。
 医師の働き方改革のために、医師の増員は欠かせません。
 政府は、将来の人口減を見込めば医師は供給過剰になるとして、医師数を抑制しようとしています。しかし、高齢者の増加に伴う医療需要は想定されておらず、労働時間も週六十時間と過労死ラインを前提にするなど、前提条件そのものが実態と懸け離れたものとなっています。需給推計を見直し、医師を抜本的に増員すべきです。
 第三に、医師不足に対応するため、タスクシフトを推進、医師養成課程を見直すことです。医師、看護師の絶対的不足は明らかであり、それを放置したまま侵襲性の高い医療行為の業務移管を進めれば、医療の質、安全性を脅かしかねません。
 今回、法案によって新設される重点外来のうち、一般病床二百床以上の病院は、紹介状なしの初診の場合、窓口定額負担の徴収が新たに義務付けられます。窓口負担の拡大は、地域によっては通院先をなくしてしまう可能性もあり、受診抑制を招きかねません。
 また、定額負担の額は保険給付から外し、それ以上の額を上乗せするというものです。国が不要不急とみなす医療を保険給付から外すことなどが示唆されています。国の財政を理由として保険給付の範囲を削減する、保険免責制の本格導入に道を開くなど、決して許されることではありません。
 以上、本法案は、コロナ禍、ぎりぎりの地域医療提供体制から更に病床を削減するとともに、医師不足を放置して過労死を招く長時間労働を容認するものです。コロナ禍で奮闘する医療現場からは、使命感だけでは安全は守れない、働き続けられない、悲痛な声が上がっています。
 医療崩壊の現実を踏まえるのであれば、国民が安心して医療を受けられる体制の強化のため、医師、看護師の抜本的な増員、医療提供体制の拡充こそ急務であることを指摘し、討論といたします。