医師の増員求める 病床削減法案を批判(2021/5/11 厚生労働委員会)
日本共産党の倉林明子議員は11日の参院厚生労働委員会で、“医師の働き方改革”の名で残業を過労死ラインの2倍(年1860時間)まで容認する病床削減推進法案を批判し、長時間労働の是正のために「医師の増員を」と求めました。
倉林氏は、厚労省の調査で、病院勤務医の半数近くが労働時間を自己申告しており、客観的な時間管理ができていないと指摘。残業時間を正確に申告していないとの回答が、残業月80時間「以下」で45%、「以上」で53%に上り、「申告できる残業時間の上限が決められている」との回答があると述べました。
倉林氏は、申告上限の設定は労働時間の適正把握のためのガイドラインに反するのではないかと質問。厚労省の吉永和生労働基準局長は「反する」と認めました。
倉林氏は、「客観的な労働時間管理を義務付けるべきだ」と主張。田村憲久厚労相は「労働時間の適切な管理は雇い主の責務だ」と述べました。
倉林氏は、人口減のため医師は将来、過剰になるとする政府の推計は、過労死ラインの労働時間を前提としていると批判。「ギリギリの医療体制を医師の長時間労働が支えている。医師の増員抜きに国民の命は守れない」と強調しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林です。
法案では、医師の健康確保措置ということで新たに位置付けられたということになります。その前提となるのがやっぱり医師の労働時間の正確な管理だと思うんですね。
長時間労働で過労死を生むような実態どのぐらいつかめているのかということで、先ほども足立委員の質疑で紹介ありました、令和元年度厚生労働省の委託事業として、病院勤務医の実態調査ということで行われております。残念な、調査項目ないというような指摘もございましたけれども、かなり、何というんですか、たくさんの項目も含めて全体つかむ調査になっているというのは初めてと言っていいような調査じゃないかと思って受け止めました。
そこで、この調査について幾つか確認したいと思うんです。まず、この調査で出勤簿や自己申告が全体に占める割合というのはどの程度になっているのか、御紹介ください。
○政府参考人(吉永和生君) 御指摘の調査につきましては、令和元年度に実施をいたしました医療分野の勤務環境改善マネジメントシステムに基づく医療機関の取組に対する支援の充実を図るための調査・研究というものでございますが、このアンケートの中で労働時間の管理方法について聞いてございます。
その中で、タイムカード等の客観的な記録に基づく時間管理を行っている割合は約五〇%、御質問にございました出勤簿、管理簿が約二八%、自己申告が約一九%となっているところでございます。
○倉林明子君 もうちょっとゆっくり、数字は聞こえやすく言うてもろうた方が有り難いです。お願いします。
結局、いまだに半数近いところの勤務医が客観的な時間管理ということになっていないという、これ実態だと思うんですね。その上で、時間外労働の申告の状況について、これ時間外労働時間どおりに申告していないという勤務医の比率がどうなっているのか、そしてまた、その理由について、特徴的なところで御紹介ください。
○政府参考人(吉永和生君) 失礼いたしました。
先ほどのアンケート調査の結果によりますと、ふだんの時間外労働時間申告状況を聞いてございますけれども、時間外労働時間のとおり申告していないという割合が四五%となってございます。その理由として最も多いものが、残業と認められない業務だからというものでこれが約三八%、次いで、申告するのが面倒だからというのが約二六%、自分の都合や自分のこだわりのために残業したからというものが約二三%、また、申告できる時間、残業時間の上限が決められているからというものが約一七%となってございました。
○倉林明子君 これくくって御報告あったんですけれども、残業が月八十時間以下の場合と八十時間以上の場合と分けて統計取っているんです、あっ、調査しているんですね。これ見ますと、残業が月八十時間以下の場合というのは四四・五%なんだけれども、八十時間超える場合、これ五三・三%申告していない。つまり、残業多いほど残業時間を申告していない人が多いという特徴が出ているんですね。
そこで確認したいと思うんです。
労働時間管理がこれ自己申告の場合ですね、申告できる残業時間の上限が決められているから、こういう理由が先ほど多いんだという紹介ありました。この理由になっている場合、ガイドラインがあります。労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン、これに反することになるんじゃないかと思うんですけれど、見解どうですか。
○政府参考人(吉永和生君) 御指摘の労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインの中では、使用者が労働者の自己申告により労働時間を把握する場合には、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めないなど、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する……(発言する者あり)失礼いたしました。労働者による労働時間の適切な申告を阻害する措置を講じてはならないことを示してございます。
本件調査結果のように、使用者が申告時間を、できる残業時間の上限を定め、それ以上の申告を認めないような対応は本ガイドラインに反するものと考えてございます。
労働基準監督署におきまして、このような時間、事案を把握した場合につきましては、本ガイドラインに基づきまして適切な労働時間管理を行うよう指導をしているところでございます。
○倉林明子君 明確にこのガイドラインに反するし、実態があれば指導するという対象になるんですよね。ところが、医療現場、勤務医のところでいうと、そういう働き方はかなりあるということが想定される実態調査になっているということは、これ重く受け止める必要があるというふうに思うわけです。
客観的な労働時間管理が基本は原則なんですね、はい。ところが、自己申告、自己申告というのはあくまでも例外ということになっているんで、立て付けは、労基法はね。で、半数の勤務医がこれ今行っているのが兼業、副業。もちろん地域医療を支えると、大きな役割果たしているということは十分承知しております。しかし、ここも自己申告が基本になるんですね、労働時間については。そうなると、そういうガイドラインがいかに徹底して守られているのかということが、これ本当に把握が困難。実態からスタートするんだということを、本当にこれ重く受け止める必要があると思うんです。
これ、現状、現状では正確な労働時間の、医師のですね、正確な労働時間の管理というのは基本できていないところ多いというところは押さえておく必要があるというふうに思うんです。
そこで、更に確認したい。
これ、前年度の長時間労働に係る医師の面接指導、面接指導、これ受診の有無も調査されております。その結果はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(吉永和生君) 長時間労働を行う労働者が面接指導を受けたいと申し出た場合には、労働安全衛生法に基づいて事業主が医師による面接指導を実施しなければならないというのが現行法の、労働安全衛生法の枠組みとなってございます。
先ほどのアンケート調査、医師本人のアンケート調査によりますと、月八十時間超の時間外・休日労働を行った医師のうち、医師の面接指導を受けなかったと回答した割合は約八四%となってございます。
○倉林明子君 これも先ほど同様に、残業時間が八十時間以下、そして超える場合で分けて調査されていますけれども、八十時間以下の場合だったら九六・七%、そして八十時間超えの場合八三・五%、医師の面接指導受けていない。まあほとんど受けていないと言っても言い過ぎじゃないような実態があるわけです。
労働安全衛生法の医師の面接さえこういう実態があるんです。そして安全確保措置だというわけですよね、今回。九百六十時間の上限さえ、私、これは過労死ラインなんですよね、明確にね。で、その二倍の千八百六十時間の特例と。これ、先ほどもありましたけれども、二〇三五年まではこれ容認ということになるんですよね、結果として。こういうその過労死を、上限を作って一歩前に進めていくとおっしゃるけれども、二〇三五年まで容認するというのは本当に認められないということは強く申し上げておきたいと思います。
この労働時間さえ、この労働時間の上限さえまともに把握できないという現場の実態があるということも調査でも見えてきていると思うんです。問題は、本当に過労死なくしてほしいという訴えもありました。参考人のお話もありました。これさえやっぱりなくせないというところのスタートになっているというところに非常に問題意識を持っております。
その上で、労働時間管理の正確な把握からやっぱり始めないと、その一歩にも正確に近づけていけないんじゃないかと思うんです。
そういう立場から、これは大臣にお聞きしたいんですが、医師の労働時間ですね、自己申告じゃなくて客観的な時間管理と、これ義務付けるということに踏み込むべきじゃないか。本会議でも聞いたんですけど、明確な答弁いただけなかったので、もう一回聞いておきたい。お願いします。
○国務大臣(田村憲久君) 労働時間を適切に管理するというのは、これは労働基準法上、要するに雇主のこれは責務になっているわけでございますので、そういう意味ではしっかりと管理をいただかなければならないということであります。
同時に、医療という、確かに今委員がおっしゃられるとおり、一千八百六十という時間、これも今長過ぎるというお話をいただきましたが、それを超える方々ですら今調査によると一〇%おられるということでありますから、そういう意味では、何とかこれをこの範囲の中でまずは収めていただくカテゴリーをつくらさせていただいたわけであります。
やはり、特にこういう地域医療等々を担っていただいている医療機関等々、いろんな努力をしてこれから労働時間を、一千八百六十というのは上限でありますけれども、これを更に縮めていただくという努力をしていただかなきゃなりませんので、元々長いということが前提の職場でありますから、特に経営者、管理者がそこは意識改革をやっていただかなきゃならぬわけでありますので、例えば、労働時間管理、なるべく労働時間を減らそうというようなことを試みられておられるような、そういうところの院長等々に、トップマネジメント研修というような形で、いろんなノウハウ等々も管理者や経営者の方々にしていただく等々やっていく。
一方で、働いておられる方々に対しても、これしっかりと労働法制というものを学んで、先ほどお話ありましたけど、学んでいただかなきゃならないということでありますので、これ、法律成立いたしましたら早速検討会つくって、そこでどういうような、勤務医も入っていただきながら、またそういう勤務医等々にうまく情報発信できるような、そういう能力のある方々にも入っていただきながら、全体として、そういう労働法制というのがしっかりあって、医師であったとしても勤務医守られているんだということも認識いただく。
あわせて、大学の医学部でも、基本的にそういう教材を厚生労働省として提供を文科省にさせていただきたいと思っておりますので、そんな中において、もう学生のときからそういう意識を持っていただきながら現場に入っていただいて、主張していただける部分は主張していただきながら、トップの方もしっかり認識を持っていただいて労働時間を管理いただいて長時間労働を是正いただく、そのようなことをこれからしっかりと進めてまいりたいというふうに考えております。
○倉林明子君 労働時間が長いという前提の職場と、そんな職場に誰がしたという話もあると思うんですよ。
特に、過酷な長時間労働、これ助長しているのが、先ほどもありましたけど、宿日直の問題ありますよね。調査にはなかったということですけども、全国医師ユニオンなどの勤務医労働実態調査という、五年ごとぐらいにやられていて、最近のでいうと二〇一七年にはなるんですけれども、ここで調査されております。
当直の中身が通常業務と同じという方が三四・五%あります。通常よりも業務が少ないというのは四七・二%、通常業務ほとんどないというのは一三・七%しかないんですね。交代制勤務がないというところはこれ八割を超えておりまして、当直明け通常勤務、これが医師、こういう医師が八割おられます。つまり、三十四時間連続勤務というのがかなりの部分にあるという実態調査の結果であります。
これ、夜間勤務の実態を踏まえれば、こういうところに適正に時間管理入れていって、交代制勤務必要なところから踏み出せるようにしていく必要あると思うんですけれども、これ、いかがでしょう。
○国務大臣(田村憲久君) そういうことも含めて、連続勤務の規制を入れたり今回させていただいておるわけでありまして、健康確保措置しっかりとやっていかなければならないと思っております。
今言われた交代勤務制も、そういうやり方もありますので、しっかりとこれは周知をしていかなきゃならぬと思っておりますし、特に救急等々対応いただいている医療機関、非常に忙しいということがあります。地域医療を支えていただいております。
そういう意味で、前回の診療報酬改定で、一定の規模以上救急等々の医療を受けていられる、救急車を受けていただいているところに関しては診療報酬、それ以下に関してはこれは地域医療総合確保基金という形の中からしっかり手当てをさせていただいて、体制が組めるようにということで対応すべく今進めさせていただいている最中でございます。
○倉林明子君 現状としては、まだまだ広範、広範にそういう実態あるということを指摘させていただいたんですね。その上で、やっぱり医師の長時間労働というのは、医師の過労死リスクを高めるだけじゃないんですよね。医療の安全性も脅かすという重大な問題があります。
これ現場では、絶対的な医師不足、医師不足の実態があると。なのに、将来の人口減を見込めば医師の供給は過剰になると、こういう説明ですよね。マクロでいうたら医師は要らなくなるんだという話です、いや、医師は足りるんだという話かと思うんですけれども。
需要推計という話、先ほどもありました。これ見ると、ケース2ということでいうと均衡するという、二〇二九年には均衡するという御説明でした。これ、これ前提として、医師の労働時間はどの程度に見込んでいるものでしょうか。
○政府参考人(迫井正深君) 御答弁申し上げます。
今委員御指摘のその推計でありますけれども、これ労働時間を週六十時間、これ時間外でいきますと、年間九百六十時間の時間外の休日労働ということになります。
それから、なぜ九百六十かということでございますけれども、これ、検討会でいろいろな御議論いただきました実態論も含めてであります。その場合に、医療というのは結局二十四時間三百六十五日で、休日の有無、いつが休日なのかというようなことにかかわらず患者さん参りますので、当該医師の診療が必要なというのはやっぱり休日労働も考慮せざるを得ないのではないか。それからあと、患者数が多い、緊急手術が重なったというような場合が実際にございますので、そういったことも勘案をいたしまして、あるいは労働実態の特殊性を踏まえますと、一般労働の休日労働込みの時間外として、その上限、それはすなわち複数月平均八十時間以下ということになりますので、こういった数字を前提として推計させていただいたということでございます。
○倉林明子君 推計前提にする九百六十時間というのは過労死ラインだと改めて言いたいと思うんですけれども、そういう労働時間を前提として、推計見込んで二〇二九年度均衡だと。しかし、こうなりますと、もう既に医学部定員過剰という話になってくるんじゃないかと思うんですね。
これ、人口の将来予測でも実際の、二〇〇五年の予測ですから、現実に今でも乖離が生じてきています。その人口の予測がどうなのかということも再検証要るんじゃないかと思うんですね。
二〇四〇年には六十五歳以上の人口というのが増えるということも言われているんだけれども、高齢者が増加すると、医療需要これ高まるということ明らかです。そういうその医療、当然増加する医療需要はこの推計に入っていない。地域医療構想そのものがベッドを削減するという計画になっているわけですよね。医師のその労働時間も、これ先ほど紹介したように、過労死ラインが前提ということですよ。
私は、前提の置き方がこれ本当に間違っているんじゃないかと思うんです。さきの医師ユニオン等の調査によれば、現場の医師が一番に求めているのは完全な休日を増やすことだと。一か月、一か月に一度も休みが取れないような働き方をしているという現状からこの要求になっています。それを改善するにはどうしたらいいかと、現場の医師がどう答えているかというと、医師の増員だというのが六三・七%を占めているんですね。
この現場の声にもしっかり応えて需給推計を見直す、医師の抜本的な増員計画に私は転じるべきだと思います。いかがでしょう。
○国務大臣(田村憲久君) 先ほども迫井局長から話ありましたけど、九百六十時間ということを前提に考えておりますが、これ地域医療構想を前提に需給計画立てておりますので、そういう意味からすると、高齢者は増えますが、当然、救急というよりかは回復期、慢性期の病床が増えるということが前提であります。慢性期というのは、その病床だけじゃなくていろんな、介護医療院やそういうものも含めてという話になってきますけれども。
その上で、今三千五百人から四千人、毎年医師の数は、平成八年、九年でしたかね、定員枠の下で増えています。増えてきておりますのを、今のままでいくと二〇二九年にこれは均衡するであろう、二七年にはOECD水準になるであろうと、人口当たりでありますけれども、こういうことでございますので、そこを一つ念頭に置きながら、しかしいろんな事情はあると思います。それこそ、診療科の偏在、地域偏在、そういうものも踏まえて、二〇三五年というものを一つの目安に置きながら、この九百六十時間に収まるというようなことを今回の法律で出させていただいておりますので、それも踏まえた上で、どのように、いきなり減らすのではなくて、どのように医師の養成数というものをこれから見ていくのかというのは、これから自治体と細かくいろいろとお話をさせていただきながら検討してまいりたいというふうに思いますので、あくまでも需給推計というのを一つの目安として、これからの地域の医療状況を踏まえながら、医師の養成というものは検討してまいりたいというふうに考えております。
○倉林明子君 コロナでやっぱり見えてきたことがあって、ぎりぎりの医療体制で、それを支えてきたのが医師の長時間労働だということを改めて私たち見せ付けられているなと思うんです。
やっぱり、この新興感染症の医療提供体制どうあるべきかということも含めて、医師の増員抜きに国民の命を守ることはできないということは強調して、今日は終わります。