コロナ禍/報酬増で現場守れ/介護の基準緩和案批判(2020/12/10 厚生労働委員会 閉会中審査)
日本共産党の倉林明子議員は10日の参院厚生労働委員会で、9日の社会保障審議会分科会で示された来年度の介護報酬改定に向けた「報告案」を「人員・施設基準の緩和のオンパレードだ」と批判し、新型コロナウイルス感染拡大で疲弊する現場を守るには基本報酬の大幅引き上げこそ必要だと迫りました。
報告案は、特別養護老人ホームや認知症高齢者向けグループホームの定員増、情報通信技術(ICT)の活用を口実とする夜勤職員の配置基準の緩和などを提案しています。
倉林氏は、介護・福祉の現場があまりに余裕のない職員体制だったことが、コロナ禍で改めて浮き彫りになったと指摘。「提案は、少ない職員で多くの利用者を担当することにつながるものだ。職員1人当たりの負荷が大きくなれば、いっそう人材確保が困難になる」と批判しました。
全労連の調査によれば、過酷な環境や低賃金が介護職員の離職を考える理由となっているとし、「現場の切実な求めは、人手を増やし、処遇や労働条件を改善することだ。配置基準の引き下げはやめ、基本報酬の大幅引き上げを」と迫りました。
田村憲久厚労相は、配置基準を拡充すれば公費や保険料の国民負担が増すとし、現場の訴えに背を向けました。
倉林氏は、同じく来年度改定の障害福祉サービス報酬についても、基本報酬を大幅に引き上げ、日額払いから月額払いに改めるよう求めました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林でございます。
病床の逼迫度について、再々議論もありましたけれども、私も連日寒けがする思いで伺っているところです。
そこで、分科会が示しております指標の一つでもあります最大確保できる病床使用率、これ五〇%超えるということで、ステージのお話もあったとおりかと思うんですが、兵庫、大阪、北海道、三重。自治体見てみますと、広島、埼玉、ここでも五〇パー超えているという数字確認できました。一気にやっぱり広がってきているし、更に広がるという事態だと思います。
実際に、この病床確保ということでいいますと、実際に確保すると、数字で上がっている分はあっても、動いていますから、ふだん、それを確保しようと思うと時間も人も必要になると。直ちに受入れ可能なところから見るとどうなのかというと、大阪では八割とか、名古屋でも九割というような状況になっていまして、これ限界だと思いますね。大阪、北海道から自衛隊の要請ということになって、これやっぱり通常の医療で助けられる命が助けられなくなりつつある事態だと思っております。現場の悲鳴も上げ続けていらっしゃるわけで、もう疲弊ということでいいますと、もうピーク超えているんじゃないかとさえ思っております。このままでは感染爆発の前に医療崩壊という状況になりかねないと。
率直に伺いたいと思うんですけど、事ここに至って、医療崩壊どうやって防ぐつもりなのか、率直に聞きたい。
○国務大臣(田村憲久君) 病床確保計画にのっとって病床を確保していただく、そして必要なときにそれをしっかりと対応可能にするというのは、当然、これは本来、医療スタッフもそこにちゃんと確保していただくということが前提で作っていただいている話でありまして、それができていないということに対しては、改めてフェーズを早めていただいて、今の足下よりも更に一歩先に、人も含めてですよ、体制整備をしてくださいというお願いを再度させていただいております。
ただ、もう既にもう足らないという状況が起こっているところは今更言ったところでなかなか時間が掛かるということになってまいりますから、そこで、自治体間のいろんな医療人材等々の調整でありますとか、それから、自治体間というか、都道府県だけではなくて、県と政令市、それから保健所設置市、ここは若干その保健所の関係で管理が違うわけでありますので、そこの連携というものもしっかりと進めてください。あわせて、どうしても医療が足らないところには医療スタッフの支援というのも、これは国が介在してやっておりますし、どうしてもと、更にもう一歩進んで、それでもという場合に関して、自衛隊に関しての災害派遣という形で、今ほど来もお話ありましたけれども、対応をさせていただくということをいたしております。
言われるとおり、まだ感染が広がっていますけれども、私も、これで止まるというような状況ではないということを想定しなきゃいけない。いや、止めるために全力を尽くしますよ。ただ、我々厚生労働省は、全力を尽くすから止まる、必ず止まるというような認識では駄目だと思っておりますので、更にこれでも広がる、冬場に向かって感染力が高まると言われる方もおられます。
そういうことも含めた上で、どのような体制ならば、今言われたとおり、医療スタッフ、急に増えませんので、養成するのにはそれなりの年数が掛かりますので、そうすると、今おられる中で、もちろん潜在的に休まれている方々に出てきていただくということも考えなきゃなりません。ただ、その方々も、ちゃんと感染を防ぐためのいろんな教育といいますか訓練していただかないと、いきなり数年間休んでおられる方が現場に来られて、例えばコロナの現場に行かれたらこれは大変なことになりますので、そういうことも含めて対応しなきゃなりませんので、様々なことを考えながら、対応できる方策、今検討をいたしております。検討して、それが固まり次第、パッケージでお出しをさせていただいて、各自治体にそれをお願いをさせていただくということになろうというふうに思っております。
○倉林明子君 人には限りがあると、感染拡大については更に広がる可能性も視野に入れてということだけど、先ほど自衛隊の方からも説明あったけれど、元々自衛隊の病院に張り付いている人たちを剥がすと、こういう作業を伴うようなことしないと、救急に対応できる看護師なんて即配置できないですよ。
私は、自衛隊も都道府県も要請の全てに応えられるような実態はないと、この現実を踏まえる必要がある。キャパがないんですよ、いろいろ連携しろといったって、全国的な感染拡大の様相ですから、そういう状況で、いかに自治体に計画作れと言っても、その限界を見極めておく必要があると、その医療崩壊のラインというのは本当に目前に迫っているという危機感から申し上げているんです。
緊急事態宣言の話もありました。私も、この検討、もう求められる事態に入っているという認識です。休業補償とセットでですね、休業補償とセットで感染拡大防止に取り組む、緊急事態も視野に入れて検討入るべきだと。逆行しているのが、これはGoToキャンペーンだということは重ねて言いたい。これ、直ちにやめるように強く求めておきたいと思います。
コロナ禍で、介護そして福祉の現場、ここでクラスターが相次いで発生しております。ただでさえぎりぎりの体制のところで感染者、濃厚接触者発生しますと、たちまち職員の負担激増と、事業の継続も困難と、広がっております。感染者が発生していない現場でも極度の緊張状態が長期間続いております。御存じのとおりだと思います。
職員の精神的、肉体的な疲労、限界だと。余りにもですね、余りにもですよ、元々余裕のない職員体制だったと。そこに起こったコロナ禍で、私はこの元々の体制が余りにも脆弱だったということが浮き彫りになったと思っているんですけれども、大臣、認識はいかがでしょうか。
○政府参考人(土生栄二君) 申し訳ございません。お答えさせていただきます。
まず、新型コロナウイルス感染症の影響が広がる中、介護の現場で働く皆様には強い使命感を持って感染拡大の取組に最大限御尽力いただいておりますこと、改めて感謝を申し上げたいと思います。
御指摘ございましたとおり、介護人材確保は大変重要な課題と考えておりまして、処遇改善を始めとする総合的な人材確保の取組が必要であると考えております。
また、感染症への対応といたしましては、感染症が発生した場合でございましても職員体制が確保できるよう、緊急時に備えた応援体制の構築を進めているところでございまして、引き続き介護サービスが安定的、継続的に提供できるよう支援を進めてまいりたいと考えております。
○倉林明子君 せっかく答弁してもろうたけど、聞いたこと答えていませんよ。大体脆弱な体制やったんちゃうんかと、そう聞いたんですよ。
医療提供体制、これ守るためにも、今、介護、福祉に手厚い支援が要るんですよ。ところが、昨日ですよ、案が出された二〇二一年度の介護報酬改定、見てびっくりですよ、ほんまに。人員、施設基準、この緩和のオンパレードですよね。
特別養護老人ホーム、これまで一ユニット十人以下の定員、これが十五人を超えない範囲だと。認知症グループホーム、ユニット数は一施設当たり原則一又は二だったのに、三以下ということになれば、これ、利用者定員を増やすという緩和ですよ。さらに、重大だと思ったのは、ICT導入。結構ですよ。しかし、これを要件に夜勤の職員配置基準の引下げと。これはどういうことだと思います。少ない職員で多くの利用者を担当すると、こういうことにつながります。
大体、そういうときに一人の職員に対する業務が更に過重になるというリスクについてはどのように検証されたんでしょうか。
○政府参考人(土生栄二君) 生産年齢人口が減少していく中で、介護ニーズも増大しております。
先ほど申し上げたとおり、介護人材の確保は大変重要な課題でございまして、現在、御指摘ございました介護給付費分科会において、介護職員の負担軽減を図りつつ、効率的に質の高いサービスを提供する観点から議論を行っているものでございます。
御指摘いただきました論点につきましては、例えば関連の検討会の報告書、そうした中で、一定の規模が大きい方が職員の配置、全体のシフトに余裕があるといったような御指摘もございました。
そうした関係団体、現場からの要請、さらには骨太の方針等を踏まえまして、例えば見守り機器の導入につきましては、介護業務の効率化、職員の負担軽減に一定の効果があるといった調査も行いながら御議論いただいているというところでございます。
○倉林明子君 現場から出ているのは、ICTとかAIとか、確かに導入すれば負担の軽減にはなると。しかし、人の代わりにはならないんですよ、火災が出たとか急変が出たとか、ICTやAIは対応できませんから。一人当たりの職員の負荷が大きくなると。これ、一層人材確保が困難になりますよ。人手不足で、実際には基準を超えて職員を配置しているんです、実態。それが賃上げにつながらないという悪循環にもなっているんですね。これ、配置基準の引下げというのは、人手を減らせないんです、現場は、安全にサービス提供しようと思ったら。そういうところにとっては更なる賃下げにもつながる危険があると指摘したい。
これ、全労連の介護労働実態調査がやられていまして、介護職員が辞めたいと思う理由として、仕事がつらい、忙し過ぎる、体力が続かない、賃金が安いと。夜勤をやめたい理由では、夜間の長時間労働つらい、夜間、急変した利用者への対応不安と、こういう声が上位に上がってきています。
現場から今切実に求められているのは、人手を増やす、そして処遇と労働条件を改善することです。配置基準の引下げ、これはきっぱりやめて、基準報酬の大幅な引上げが必要だ。大臣、いかがです。
○国務大臣(田村憲久君) 今、介護の現場は配置基準よりも高い人たちで賄われております。そこにICTを入れることによって、配置基準を弱めても、緩めても、実際問題、その方々、余った方々は解雇されるわけではなくて、ほかの業務に回っていただくと。結果的に、今やっておる業務の中でICTに代わるいろんな業務があって、実際雇っておられる方の数が変わらなければ、当然のごとくそこでいろんな効率的なことができるわけで、最終的には働く方々の付加価値が上がった上で給料が上がっていくというような考え方になってくるんであろうと思います。
一方で、もっと配置をしろという御議論もあるんですが、それができればそうしたいんですけれども、当然それには介護給付が伸びなければ運営できないわけでありまして、もちろん国費も増えますよ。だから、それもそうなんですが、これ、やはり国費だけじゃなくて公費も増えれば、いや、つまり自治体の負担も増えれば、保険料にも跳ね返る話になって、まさに保険料を払っていただいている方々の負担にもなってくるわけでありますから、私はICTやいろんなものを入れて、なるべく効率的に介護、もちろんサービスの低下を招いてはこれは大変でありますから、それは防ぎながら、場合によってはサービス、歳費、更に向上すれば一番いいんですけれども、いろんなものを導入していくということは重要であるというふうに認識いたしております。
○倉林明子君 介護報酬をプラス改定して国民負担増を行うべき事情は見出せない、これ財政審に書いてありました。ばっさりやなと思って読ませていただきました。
障害福祉サービス事業所、ここでも、マスク、密避けることは困難で、生活が激変し、不安、ストレスを増している利用者支援、これ高いスキル必要になっています。一年近く極度の緊張状態続いて、恐怖しかないとか、疲労も限界だという声が上がっているんですね。
そこで、コロナで本当に利用抑制も起こっていまして、大きな声で上がってきているのは、基本報酬を上げてほしい、大幅に上げてほしいということと、安定した運営のために、日額払い、これ月額払いにしてほしいという切実な要請となっております。待ったなしだと思う。いかがですか。
○国務大臣(田村憲久君) これも制度が変わったときに、障害者の方々が日々いろんなサービスをそれぞれ自分で選択できるようにということになって日額払いになったわけであります。
もちろん、そうはいっても事業者の方々の運営も重要でありますから、そこにおいては、例えば欠席時対応加算でありますとか入院、外泊の加算、これはいろんな議論の中でこういうものが必要だということでこういう加算を増やしてまいりました。
更に申し上げれば、今回コロナということでおっしゃられたので、これコロナ特例で臨時の扱いしておりまして、一時的に人員基準を満たすことができない場合にも報酬は減額しないでありますとか、利用者の居宅等でできる限りの支援の提供を行った場合、通常と同額の報酬算定を可能とする特例、こういうことで対応させていただくということでありまして、月額払いということは利用者の方々にとってのいろんな選択をやはり制約することになりますので、我々としては日額払いの中で対応させていただきたいと思っております。
○倉林明子君 日額払いということが経営に本当に悪化要因になっているということは率直に受け止めるべきだと思っております。
コロナ禍を教訓としまして、我が国の社会保障をどうやって立て直していくのかというのは私問われていると思うんですね。ところが、このタイミングで出された財政審の建議、これ後期高齢者の負担増、さらに社会保障費削減、必死で今国民の命を守り生活を支えている医療、介護、福祉の現場に冷や水を浴びせるような中身やと断固抗議して、終わります。