倉林明子

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確定拠出年金 危険も 倉林氏「要件の緩和やめよ」 / 全対象者に全額支給 倉林氏 年金「振替加算」で要求 / 公的責任を一層後退 倉林氏 年金制度改定法案に反対(2020/5/28 厚生労働委員会)

 日本共産党の倉林明子議員は5月28日の参院厚生労働委員会で、確定拠出年金の対象を拡大する年金制度改定法案について、「コロナ禍で運用に影響が及びかねない。リスクを伴う確定拠出年金の要件緩和をすべきでない」と迫りました。同法案は5月29日の参院本会議で可決・成立しました。

 倉林議員は、個人型確定拠出年金は「解約料金が利息を上回れば元本割れを引き起こしかねない」「一度積み立てれば受け取り開始まで資産を引き出すことができない」などのデメリットがあることを加入者に周知徹底するよう要求。加藤勝信厚労相は、デメリットがないとは言い切れないと述べつつ「運営管理機関が適切に情報提供するよう引き続き監督指導を行う」と述べるにとどまりました。

 倉林氏は企業型確定拠出年金について、労使合意がなくても厚生年金加入者の過半数の労働者代表による合意で導入でき、受給当事者が運用に意見を言うことができない制度となっているとして、「当事者抜きの運用は受給権侵害にあたる」と強調。受給者の権利保護に資する制度の見直しを求めました。

 政府が積極的に推進しているリスク分散型企業年金について、「追加の掛金の範囲を超えるような積立金の変動があった場合、受給者は給付減のリスクを負う」と答弁した厚労省の高橋俊之年金局長に対し、倉林氏は「企業は掛け金だけの負担の一方、受給者は給付減というリスクを伴う。要件緩和して推進すべきでない」と主張しました。


 日本共産党の倉林明子議員は、5月28日の参院厚労委員会で、年金の振替加算支給漏れ問題について「時効適用せず、全ての対象者に全額支給せよ」と求めました。

 妻が65歳になり、夫の老齢厚生年金に加算されていた加給年金が打ち切られると、その代わりに妻の老齢基礎年金に振替加算がつきます。しかし、共済組合と旧・社会保険庁との間で、情報の連携や処理にミスが生じたことにより、17年に大量の支給漏れが発覚。年金機構は全対象者に未支給分をさかのぼって支払うとしていますが、年金請求時に妻から生計維持関係の申告がなかったとされる場合は、時効を適用して直近5年分しか支払っていません。

 倉林氏は、時効適用5年以前の全額を支給するとして裁判で和解したケースを示し、「裁判で争わなければ不支給分を支払わないのか。時効を適用せず全対象者に全額支給せよ」と迫りました。

 加藤勝信厚労相は、訴訟や審査請求などの手続きを取らずとも、申告が行われたことが確認できれば不支給分を支給する姿勢を示しました。


公的年金の受給開始時期の選択肢を75歳まで広げることなどを盛り込んだ年金制度改定法案が、28日の参院厚生労働委員会で日本共産党以外の各会派の賛成多数で可決しました。

 日本共産党の倉林明子議員は反対討論で、公的年金の水準を自動削減する「マクロ経済スライド」を維持したままの選択肢拡大について、「『高齢者は死ぬまで働けということか』と怨嗟(えんさ)の声が上がっている。新型コロナウイルス感染拡大で働く場を失っている現実をあまりに見ていない」と批判しました。

 コロナ禍で株価が大きな影響を受けるなかでの確定拠出年金の対象拡大も問題視し、「公的年金の所得代替率50%を確保できるとの見通しを示した財政検証の前提は大きく崩壊している」と指摘。日本の所得代替率は国際的な指標によれば3割台と極めて低い水準だと述べ、「低い代替率を自己責任で補う仕組みである確定拠出年金の対象拡大は、公的責任を一層後退させる」と強調しました。

 パート労働者への厚生年金の適用拡大については、「必要な措置だが、加入者や事業者への減免措置の拡充なしに進めようとしていることは問題だ」と指摘。「コロナの経済への影響は長期化が避けられず、高齢者の働き方も変わらざるを得ない。いま求められているのは、マクロ経済スライドをやめ、減らない年金制度にすることだ。基礎年金の底上げを直ちに行うべきだ」と主張しました。


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林です。
 確定拠出年金について質問したいと思います。
 加入要件が先ほどのように緩和されるという改定になるわけですが、コロナの影響ということで、株価がどんと下がってびっくりされた方も多いと思うんです。大体元に戻ったということで取り返せそうだというお話もあるわけですけれども、この影響というのはちょっと予測し難いということがはっきりしてきたのかなと思うんです。
 本会議で私、手数料負けの可能性があるんじゃないかということに対して、明確に否定はされなかったというふうに受け止めたんですね。それ以外にも、この確定拠出年金の場合、考えられるデメリットというのがほかにもあるんじゃないかと思うんです。デメリットとして三つ例挙げますので、それについて可能性があるのかないのか、制度の説明はいいですので、あるかないか明確にお答えいただきたい。
 一つは、元本保証型でも、保険商品の場合、解約料金が発生するということになるんですね。その料金が利息を上回る、こういうケース考えられますが、元本割れを起こすというケースがあるんじゃないかと。
 二つ目、掛金の積立て停止、これ、できても途中解約できないということで、受取開始時までに積み立てた資産の引き出しができない、それによって新たな運用に回せない、こういうことが起こり得るのではないか。
 三つ目、拠出金の引き落としというのが、毎月二十六日と決まった日になる、で、一定期日内に買いの発注がされるということになりますから、規模が大きくなればなるほど市場にインパクトを与える、つまり高値づかみされる傾向があるという指摘があります。
 以上について、可能性の問題でいかがですか。

○政府参考人(高橋俊之君) まず一つ目の保険の商品の場合ですね、元本確保型の商品で保険の場合にどうかと。これは、途中解約をいたしますと解約料金が発生する場合がございまして、この料金が利息を上回ると元本割れを起こす可能性はございます。ただ一方で、商品の中には解約料金が利息の範囲内で設定されているという商品もございまして、そういった場合には発生しないといったことでございます。いずれにしましても、金融機関、運営管理機関、元本割れを起こす可能性があることを含めて商品の特徴を説明するということになっておりますので、そこのところでございます。
 二点目の点でございます。iDeCoは老後の所得確保に係る自主的な取組を支援するという目的でございますので、原則として中途引き出しを行うことはできないことになっております。この点につきましては、制度の説明をしっかり行うということにつきましては、運営管理機関がしっかりと加入時に説明をするということになってございます。
 それから三つ目の、iDeCoの引き落としが毎月二十六日なので、iDeCoで購入されたものが市場に影響を与えるかという点でございますけれども、これは、規模的に言いまして毎月百五十億円程度でございます。それも、半分は元本確保型で、残りの半分は国内外の債券、株式に広く投資信託で運用されるものでございますので、全体の市場規模から言いまして、この三つ目の時点、影響を与えるというのはないんではないかなと考えてございます。

○倉林明子君 一番目と二番目については可能性は否定できないということですよね。運営機関ですか、運営会社がきちんと説明することになっているということですけれども。さらに、その規模感から高値づかみっていう影響は少ないんじゃないかということですけれども、これ推進、どんどん広げようと、もっと広げないといけないという議論先ほどありましたけれども、こういう仕組みだとやっぱり高値づかみという傾向も出てくるんじゃないかというのは可能性としては私否定できないんじゃないかなと、運用次第だとおっしゃりたいと思うんですが、否定できないと思うんです。
 つまり、この確定拠出年金というのはやっぱりデメリットもあるということを私はしっかり加入者が知っておく必要がある情報だと思うんですね。国が税制優遇措置もとって促進を図るという位置付けしているんですよね。つまり、言いたいのは、デメリットについてもこの周知というのは義務化すべきじゃないかと。これ、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君) もう委員御承知のとおり、iDeCoに加入する際は、厚労省又は金融庁の登録を受けた運営管理機関、これ二百四十二ありますが、それを自らが希望する機関を選ぶ仕組みになっておりまして、その運営管理機関ごとに取り扱われる金融商品は多々、種々でありますけれども、投資信託や元本確保型商品、それぞれについて期待できるリターン、元本割れの可能性の有無を含めて考えられるリスクなどについて適切に加入者に情報提供することが運営管理機関には義務付けられているところであります。
 また、iDeCoの実施主体である国民年金基金連合会の責務である投資教育においても、例えば、六十歳前の中途引き出しができないことを含めたDC制度の仕組みのほか、金融商品の仕組みや特徴、資産運用の基礎知識などの情報を提供することになっております。
 こうしたもの以外にも、運営管理機関には法令を遵守して加入者の立場に立って業務を遂行する義務が課せられているところでありますので、運営管理機関の監督は金融庁がなさっておられますけれども、金融庁とも連携をしながら、厚生労働省としても引き続き、運営管理機関がそうした機能、役割をしっかり担っていけるように監督指導を行っていきたいと思います。

○倉林明子君 運営機関には義務付けているということなんだけれども、やっぱり加入者の選択の権利を保障するという観点からも、きちんとそういう情報を知った上で選択できるようにということが大事だということは強調しておきたいと思います。
 企業型の場合、事業所全体での加入と。これを決めますと個々の労働者の選択の余地はないということになるわけで、制度導入に当たっては労使合意が基本となると。しかし、労使合意がなくても厚生年金加入者の過半数の合意、これがあれば導入可能ということになるのではありませんか。確認です。

○政府参考人(高橋俊之君) 今、企業型DCのお話でございました。これは、実施主体は事業主でございますけれども、導入時を含む重要な意思決定には従業員の過半数で組織する労働組合か、それがない場合には過半数代表者の同意を得るということが要件になってございます。

○倉林明子君 労働者代表の合意という条件が定まっているんだけれども、これ、代表の選任について使用者が主導する場合が少なくないという指摘の声を伺っております。
 さらに、加入者要件を厚生年金加入者まで、その過半数という、その、またでできる規定、ない場合にできる規定というのは、更に使用者の主導、これ強まりかねないんじゃないかと思うんです。やっぱり原則は労使合意で対応すべきではないかと、この点は指摘にとどめたいと思います。
 そもそも、企業年金は退職金を充てるものという位置付けになっておりますよね。受給者にとっては、退職の時点で確定している労働債権に当たるものだと思うわけです。この退職金の運用について、当事者である受給者が実は決定に関与できないと、こういう仕組みになっているということなんです。制度導入及び改定に当たって最も影響を受けるというのが受給当事者ではないかと思うんですね。
 こうした受給当事者の、受給者、当事者の合意というのも要件としていくべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○政府参考人(高橋俊之君) まず、制度導入時でございますけれども、導入に当たりまして、事業主が確定拠出年金、DCですとか、確定給付企業年金、DBを実施する時点ではまだ受給者がおりませんので、そこの同意ということではないわけでございますけれども、制度変更時ですね、制度変更時になりますと、そのような権利を持った方がいますので、DCにつきましては、拠出段階で個人ごとの資産が管理されて本人が運用するという制度でございますので、そういう意味で、掛金の変更などの制度変更によりまして受給者が影響を受けるということはない仕組みだと思っています。
 一方で、DBですね、DBにつきましては、年金給付の算定方法が決まっている制度でございますので、制度変更によりまして受給者が影響を受けることになるわけでございます。そこで、受給者等の給付の減額を伴うような制度変更を行おうとする場合には、経営悪化など真にやむを得ない場合に限定しております。また、受給者等の三分の二の同意を得なければこういうことはできないというような規定になっているところでございます。

○倉林明子君 当事者の方々から大変要望も受けていまして、当事者参加でこういう受給権に関わるところに物を申すという機会をつくってほしいということでの御要望でもあります。受給者の権利ということを保障するということが大事だと思っておりますので、現状、その三分の二という変更に関われると、意見で受給者にも物を言えるところがあるというような説明でしたけれども、権利が担保されるということで検討を求めたいと思います。
 リスク分担型企業年金ということでいいますと、政府は、日本再興戦略で企業年金を、運用リスクを事業主と加入者で分け合う制度の導入というのを掲げて、政省令で企業年金は公的年金を補完するものと、こういう位置付けをしているわけです。
 その運用損が出た場合なんですけれども、企業は掛金だけを負担する一方で、受給者には給付額の減額で対応されることになるんじゃないでしょうか。これ、確認です。

○政府参考人(高橋俊之君) リスク分担型企業年金は、確定給付企業年金、DBと、確定拠出年金、DC、この両方の性質を持ついわゆるハイブリッド型の仕組みとして平成二十九年一月に実施可能になったものでございます。
 リスク分担企業年金の仕組みといたしましては、事業主があらかじめ追加の掛金を負担することによりまして将来のリスクに対応すると。一方で、加入者、受給者は、追加の掛金の範囲を超えるような積立金の変動があった場合に給付が減少するリスクを負うということで、労使がリスクを分かち合うとか、それぞれが分かち合うといったものでございます。

○倉林明子君 リスクということでいうと、受給者の方に給付額の減額という、大変リスク大きいものだということは間違いないと思うんですね。
 これ、リスクがいろいろ考えられるというところをその運営機関に説明責任を負わせるということで説明あったんだけれども、国として税制優遇もやって進めるという上乗せの位置付けあるわけですよね。私、安易に要件緩和ということを進めるべきではないということは指摘したいと思います。
 GPIFの運用についても、私はきめ細やかな情報、とりわけリスク情報について開示が求められているというふうに思います。長期的な運用だから心配ない、任せなさいと言うだけでは心配なんですよ。インカムゲインについても、心配ない、これは安定して入ってくるものだということで説明あったけれども、与党の先生からも指摘あったとおりで、やっぱりここにもリスクがあるんだという指摘だったと思うんですね。
 徹底した情報開示、迅速な情報開示、要はマイナスの情報であってもしっかり情報を適宜国民に開示すると、これ、求めるべきだと思います。これは大臣にお答えいただきましょうか。

○国務大臣(加藤勝信君) 国民の皆さんの年金の保険料をまさに運用していることに関する情報開示、また、その開示が逆に市場にいろんな影響を与えてしまうということにはもちろん留意しなければなりませんけれども、基本的にはGPIFにおいて適切に行っていくことが必要だというふうに思います。
 GPIFの運用状況の情報開示については、まず法律に定められておりまして、GPIFが業務概況書を作成し、これを公表しなければならないとされており、年度単位の運用状況の公表が基本となっております。
 一方、四半期ごとの運用状況は、GPIFが中期計画等に基づき自主的な取組として公表しているところであります。今年の一月から三月の運用状況については、本年七月に昨年度の通期の運用状況を記載した業務概況書において公表するということになっており、それにのっとって公表がなされるものというふうに承知をしております。
 いずれにしても、GPIFのこの年金積立金の運用に関する情報の開示については適切に行っていけるように、引き続き、私どもとしても、GPIFに対してよく連携をしていきたいというふうに思っております。

○倉林明子君 適切に今より情報開示してもらえるかどうかはよう分からぬ答弁やったなと思って聞いていたんですけれども、国民が心配になっている情報も含めて、やっぱりいち早く出してほしいというところが質問の肝ですので、しっかり受け止めていただければと思います。
 その上で、リスクがこういうふうに高まるたびにやっぱり議論になってくるのが基本ポートフォリオの問題ですね。この間、ずっと拡大し続けてきました。日本のGPIFに資産あるから日本の株買ってくれと、総理が外国に言うたこともありました。やっぱりこの株で運用するというやり方は本当に拡大し続けていいんだろうか、やっぱり振り返って拡大前の二〇%というラインまで戻していくということも正面据えて考えていくべきじゃないかと、これは指摘にとどめておきたいと思います。
 次、別な問題なんですけれども、年金に対する信頼ということが度々議論にもなってまいりました。これ、大きく失墜させてきたのが様々な給付漏れの案件でございました。正確な給付が確実に執行されると、そういう組織になることが年金機構にも厚生労働省にも求められているというふうに思うんですけれども、まず大臣の認識を伺いたい。

○国務大臣(加藤勝信君) 年金は、先ほどから申し上げておりますように、高齢者にとって、特に引退後、引退後というか仕事を辞めた後の大変大事な所得、収入の中心になるわけでありますから、それがしっかりと支給がされていくということは非常に大事なことであります。しかも、全体としてもそうでありますし、個々に対しても正確な支給がなされていくということが大事でありまして、まさにそれが日本年金機構の極めて重要な業務である、また、そのことによって国民の安心をしっかりと確保していきたいというふうに思っております。
 ただ、さはさりながらも、年金機構ではこれまで度々こうした事案がありまして、私も、前の大臣のときにもございました。例えば、平成二十九年十二月の年金給付に係る事務処理誤り等の総点検に沿って、システムにより対象者を特定してお払いするとともに、過去の事務処理誤りの諸課題を踏まえた取組も重ねてやってきたところであります。
 今年度からは、各年金事務所で審査した年金の決定内容を別の部署でも更にチェックする、言わばダブルチェックの仕組みを設けるなど、年金給付に係る誤りの防止や早期発見のための取組も進めているものと承知をしております。
 引き続き、年金機構において正確な給付が確実に行われるよう、また、私どもにおいてもそうした指導がしっかりしていけるように更に努力をしていきたいと思います。

○倉林明子君 本当に何度も繰り返してきた事案がありました。年金機構は、令和二年度の計画案で、国民の皆様から本当の意味で信頼していただける組織となるためには、機構の業務運営の原点である年金制度を公正かつ適切に運営し、制度を維持発展させ、無年金者、低年金者の発生を防止し、高齢化社会の安定を確保すること、ここに立ち戻って徹底的に足下を固めると、そして、正確な給付の更なる追求というのも掲げています。本当にこの方向で頑張ってほしいと思うんです。一人の給付漏れも残さないというような構えでやっぱり私はやってほしい。
 残された案件はいろいろあります。その中で一つ取り上げたいのが振替加算の問題です。この振替加算で支給漏れの件数の総数は何件だったか、そして、そのうち対応できた件数は何件になっていて総額幾らになっているか、確認させてください。

○政府参考人(日原知己君) 平成二十九年の九月に公表いたしました振替加算の総点検に沿って振替加算の支給漏れに対応いたしておりますけれども、その総数は十万五千九百六十三件でございまして、この総点検の公表以降令和二年四月までの対応件数、こちらが十万五千四百五十五件となってございまして、支払総額は六百六・七億円となってございます。

○倉林明子君 まだ対応は完了していないということかと思うんですね。
 これ、支給漏れが判明した場合、時効の援用は行わないという取決めをして対応していただいたということになっているんです。ところが、妻に一定の帰責性、つまり、妻の側にも責任があったという場合については時効の適用があると、こういうただし書というか、あるんですね。これが裁判でも争われまして、厚労省は不支給分を全額支給するというふうにしたわけです、話合いの結果。
 つまり、正確な給付、これを徹底するんだという観点から見れば、私は全額支払ったというのは当然の措置だと思うんですけれども、いまだ厚労省は、裁判で訴えてきたら全額支給します、給付しますという対応にとどまっているんですね。帰責性について争わないとあげないと、こういうことにしているんですかね。こういう方向でずっといくんですかね。

○政府参考人(日原知己君) 夫に加給年金が支給されていながらも妻御本人から年金機構に対して生計維持に関する申告が行われなかったケースにおきましても、その個別ケースごとの状況に照らしまして生計維持関係の申告が行われていた蓋然性が高いものと考えられる場合には、消滅時効を援用せずに未払金総額をお支払いしてきたところでございます。
 この消滅時効分も含めて振替加算を支払うかどうかは、受給者の方の申出の内容や年金受給に係る個別の事情を精査した上で個別ケースごとに総合的に判断を行うことが必要でありまして、訴訟や審査請求を通じて申し立てていただくのみならず、年金機構に個別に御相談をいただきました場合にも、そのお申出の内容に関します資料を提出いただいて、個別に丁寧に申立て内容を伺った上で判断を行わせていただきたいというふうに考えてございます。

○倉林明子君 そういう丁寧な対応に本当にしてほしいと思っているんです。
 その上で、振替給付について、もうこれ正確な給付、完了見えてきていると思うんですよ、もうここまで来たら。きっちり時効の援用は行いませんよということをやっぱり広く徹底して、時効はないので請求してくださいということを逆に声掛けていかないといけないときじゃないかと。もう妻の帰責性は問わないということにして踏み込んでいく時期じゃないかと私は思うんですけれども、これ、大臣、いかがですか。

○国務大臣(加藤勝信君) この振替加算って、私、前のときに起きた事案だったというふうに今聞きながら改めて思ったところでありますけれども、振替加算の総点検に基づき把握された支給漏れケースについては妻の御本人に帰責性がないため時効分も含めて支払うと、そして、しかし他方で、年金請求時に妻本人から生計維持関係の申告がなされなかったケースについては、これは原則として妻本人に帰責性があるので、消滅時効を援用し五年分の未払金、これは五年分について未払金を支払うということ、これはこうした考え方にのっとってやらせていただいているところであります。
 ただ、今説明させていただきましたように、年金請求時に生計維持関係の申告がなされていなかったというケースについても、これはケースごとの個別事情に応じて、生計維持関係の申告が行われた蓋然性が高いというふうに考えられる場合には時効分も含めて未払金の支払は行っているところでありますので、年金機構に個別に御相談いただいた場合には、よくその申出の内容に関する資料も頂戴した上で丁寧に相談をして対応していくよう、また私どもの方から年金機構に引き続き指導していきたいというふうに思います。

○倉林明子君 一点確認したいんだけれども、裁判に訴えたり不服申請ということで手続を取らなければ対象にしないということではない、窓口にしっかり相談してくれたら確認した上で支給すると、こういうことでいいですかね。

○政府参考人(日原知己君) 繰り返しになりますけれども、消滅時効分も含めて振替加算を支払うかどうかは、受給者のお申出の内容や年金受給に係る個別の事情を精査させていただいた上で個別ケースごとに総合的に判断を行うと、これが必要であるというふうに考えております。

○倉林明子君 積極的に支給できるように指導もしていくということで答弁もいただきましたので、しっかり支給漏れをなくしていくんだという姿勢で臨んでいただきたい。
 正確な給付は国民の信頼の前提になるものです。減らない年金、安心できる年金制度への転換こそ必要だと最後申し上げて、終わります。


議事録を読む(反対討論)

○倉林明子君 日本共産党の倉林です。
 国民年金法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 反対の第一の理由は、公的年金の水準を自動的に削減するマクロ経済スライドの維持を前提とし、受給開始年齢の選択肢を七十五歳までに広げることです。
 減り続ける年金で、高齢者は死ぬまで働けということかと怨嗟の声が上がっております。コロナで働く場も失っている現実を余りにも見ていない提案だと言わざるを得ません。
 第二に、コロナによって株価が大きく影響を受ける下で、確定拠出年金の対象拡大を盛り込んでいることです。
 公的年金の所得代替率は五〇%確保できるとの見通しを示した財政検証の前提は大きく崩壊しています。五〇%の所得代替率も日本独自の計算に基づくもので、OECD加盟国の所得代替率で見れば将来の代替率は三〇%台と、国際的には極めて低い水準となっています。低い所得代替率を自己責任で補う仕組みである確定拠出年金の対象拡大は、公的責任を一層後退させるものにほかなりません。
 厚生年金加入者の適用拡大は必要な措置であります。しかし、加入者や事業者に対する減免措置の拡充なしにそのまま進めようとしていることは問題です。
 対象となる事業者は、倒産、休廃業の危機に直面しております。このまま対象拡大を進めれば、社会保険料倒産さえ招きかねません。コロナの緊急事態宣言は解除されたものの、経済への影響の長期化は避けられません。高齢者の働き方も変わらざるを得ない状況が続くことになるでしょう。
 今、年金制度に求められているのは、自動年金引下げ装置となっておりますマクロ経済スライドをやめ、減らない年金制度とすることです。無年金、低年金の不安を拡大させないために、基礎年金の底上げを直ちに行うことであると申し上げて、反対討論といたします。