一律休校 政府の感覚にずれ 倉林氏に学者ら公述人(2020/3/10 予算委員会公聴会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は10日の参院予算委員会公聴会で、恵泉女学園大学の大日向雅美学長と、国際政治学者の三浦瑠麗(るり)氏に、新型コロナウイルス対策に関し安倍首相が要請した全国一律の休校によって子どもや保護者たちがどう影響を受けているかを問いました。
NPO法人の一時保育に携わり、小学生の受け入れもしている大日向氏は「子どもたちが公園で邪魔者扱いされるなど、居場所づくりが悩ましい」と語り、三浦氏は「休校により行動範囲が変わり、生活スタイルの崩れだけでなく、感染経路が広がる可能性もある」と述べました。
倉林氏は、休校によって休まざるを得なくなり解雇されるシングルマザーもいると紹介し、休業補償など国や行政が取るべき具体的な支援策を聞きました。三浦氏は、休業への補償制度は中小企業が申請することまでサポートしてこそだとして、「制度をつくれば申請するだろうという大企業目線で、政府の感覚のずれを感じる」と指摘しました。
また倉林氏がジェンダー平等社会の実現のために求められることは何かと問うと、大日向氏は「女性の人生にリスペクトを。女は家庭で子どもといるのが幸せだとして女性を一人の人間としてリスペクトとしていただけなかったことを変えてほしい」と語りました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
今日は、両先生、本当にありがとうございます。
そこで、早速質問なんですけれども、先ほども出ていました新型コロナウイルスをめぐる一斉休校の問題なんですね。これ突然始まったということであって、もう既に一週間、大分もういっぱいいっぱいになってきているんじゃないかなということで心配をしております。
大日向公述人は、港区でNPO法人あい・ぽーと、一時保育で小学生のところまで対象にしてお預かりになっているという実践も見せていただきました。先ほどは、子育てしている親の窮状を是非見てほしいという御発言もございました。
そして、三浦公述人のツイッターも見せていただきまして、率直に本当にそうだなと思いましたのは、私が想像したのは数多くのぎりぎりで働いているお母さんたちのことだったと、シッターさんを雇う余裕もない人たち、余裕があっても、前もって計画しなければ来週から手配できるわけでもない、学童に一月いれば息が詰まる、危なくて一人で家に置いていけないと、こういう発言は本当にそのとおりだし、木曜日から金曜日にかけての葛藤はたくさんお聞かせもいただきました。
そこで、改めて、今、一週間で何があったのか、そして子供や保護者が置かれている実態ということで、先ほど御紹介もあったんだけれども、是非リアルなところを、やっぱりみんな、想像できない人もいるんじゃないかと、是非御紹介いただきたいと。その上で、今回の総理の要請についてですけれども、子供、そして母親、この目線から率直な御意見もお聞かせ願えればと思います。お願いいたします。
○公述人(大日向雅美君) これなかなか難しい問題でございまして、春休みはどうしていたんだということになると思うんですね。春休みは何とかやっていたじゃないかと言う方もいらっしゃいます。でも、それには準備期間がきちんとあったということでございます。突然あしたから、あさってからと言われて本当に困っているということは先ほど申し上げたとおりでございます。
そこで、もうあの手この手を使ってできることをみんなやっている。行政もやってくれています。私のNPO法人は港区と千代田区でございます。そこで広場もやらせてもらっているんですね。プログラムで人がたくさん集まるところは駄目だけど、港区は広場オーケー。そして、港も千代田も一時預かりは継続をさせてくれています。
でも、そこで困っているのが、マスクが足りなくなっている。ですから、やはり支援者は、子供と対するときにマスクを掛けなくてはいけないけど、このマスクの調達に非常に頭を悩ませているということは一つ大きいところでございます。
それから、先ほど、このコロナの問題が子供たちにどういう影響を与えるかということに関しまして、子供たちが公園に行っても邪魔者にされる、学童に行っても何か窮屈な思いをさせる、そういうことを見ながら、親たちが、自分が十分面倒を見れない、仕事をしていて、そのつらさ以上に、子供たちがおうちで、あるいは公園でどうしているだろうかという不安にさいなまれています。さらには、中学生以上になりますと、もうおうちにいろというのはこれは無理です。ですから、中学生たちが随分繁華街に出歩いているということもあって、その居場所づくりということも非常に悩ましいところですね。
その辺りを、確かに喫緊で十分議論する時間がなかったという御説明もありましたが、でも、この事件が起きてから、騒ぎが起きてから一か月ございましたので、その辺りでは、もう可能な限り関係省庁と連携を取っていろんな対策を取っていただき続けることがこれからまた必要ですし、もっと心配なのは四月以降でございます。四月になって新学期がオープンできるかどうかによって、今の、もう過去のことを言っても仕方ないと、今起きていることの窮状をどれだけ各省庁、基礎自治体、そして地域、親たちが力を合わせて子供を守り切れるかということがまさに今瀬戸際だというふうに考えております。
○公述人(三浦瑠麗君) 重要なことを大日向先生おっしゃっていただきました。要は、準備がなければ春休みと同様にはならないということですね。
今の小学生が実際に行動範囲、どのような行動範囲をしているかというと、自宅、恐らく徒歩通学の子がほとんどでしょうが、徒歩で行ける小学校、そこからまた、徒歩で行けることが多い、あるいはバスに乗ってでの習い事、それで家に帰ってくるというのが多くの場合です。学童が小学校に併設されていれば、学童からそのまま帰宅する子供たちもいます。つまり、行動範囲というのは非常に狭い範囲だったわけですね。
しかし、休校が始まってどのようなことが起きているかというと、まず、私の友人のママさんたちもそうですが、親に助けを求めます。そうすると、祖父母の方々が必ずしも近隣に住んでおられなくてもお手伝いに来られるんですね。あるいは、ずっと家を空けると不安だからということで、子供さんを連れ帰る祖父母の方もいらっしゃって、それによって長距離移動が生じます。そのような様々な生活スタイルの崩れというのもありますが、それだけでなく、感染の経路のポテンシャルですが、可能性が広がってしまうこともあり得ます。これは当初政府が余り想定していなかったのではないかと思います。
日々ですね、まあ個人的な話になって申し訳ないんですが、どのようにこの一週間を乗り切ってきたかといいますと、まず、金曜日までの時点でほかに行き場がない子供たちを自分のネットワークで募りました。そこから、月曜日に朝一緒に連れていく子たち、あるいは私の職場に連れてきてもらう子供たち。まあ五人から最大十人まで、それ以上超えると、さすがに狭いオフィスですので、ちょっと混み過ぎるかなというふうな気がしますが、そこでやはりお昼を用意しなければいけないわけですね。毎日給食が出ていたのが、そこでお昼を用意しなければいけないという負担がのしかかります。したがって、これも輪番制でやったり、弊社に置いてあるレトルトのカレーであるとか、そのようなものを供出しながら面倒を見ています。
ところが、小学生にもなると運動がやはり必要になってくる。そうすると、皆さんの御近所で、私、千代田区のオフィスなんですが、行けるところってそんなにたくさんはないわけですね。そして、公園に行っても白い目で見られるというのもありますが、オフィスビルのそばで子供が、いかに子連れ出勤をしたとしても、やはりたばこを吸って公園のスペース、屋上スペースを使われている男性の会社員の方々からすれば、いきなり大声で子供が駆け回って、芝生に入っちゃ駄目だよとか、いろんなあつれきもございます。
で、通常の自分の業務量をこなして、そして、私、今朝は六時迎えの早朝の番組担当でございましたので、その前に、十二時に本日の参議院の公述の準備を終えて、そこから今日のお昼御飯を作りました。ですから、皆さんがその次の日の十人分のお昼御飯を作らなければいけないとしたら、どれだけ参議院議員としての仕事のほかに負担が生じるかということを考えれば、やはり末端になればなるほどしわ寄せが来るんだなということが想像が付くかと思います。
ただ、今回の問題は、実際には港区も、私、港区ですが、後々に、学童を学校使用させるとか様々な提案もしてくれました。ただ、それが一週間たってからでしたので、やはり子供も親も三浦さんのところがいいということで、これから四月の上旬まで走り切るというのが実態でございます。御興味があれば。
○倉林明子君 ありがとうございます。
やっぱり突然の総理の要請ということで、現場にかなりのしわ寄せや影響というのが出ているということがリアルにお話しいただけたかなと思うんです。
三浦公述人もおっしゃいましたけれども、科学的な知見、この私権を制限する場合に、まして子供の私権を制限する場合にどれだけ科学的根拠が示されるのかということ、これ重要なことだと思うんですね。確かに、感染拡大防止という観点から私権の制限が必要になると、そういう場合があるということは前提としても、そのためにも、合理的で、それをやる場合にも合理的で最小限なもの、科学的な根拠も示した上で踏み込んでいくということがとても大事になるんだろうということを改めて思っているところです。
そこで、今御紹介もあったように、一週間遅れでいろんな自治体での支援の工夫などもされているという御紹介ありましたけれども、ぎりぎりで生活している方々への所得補償とか、一定の、あした、あっ、今日ですか、公表もされるようですが、休まざるを得なくなって解雇されたというようなシングルマザーのお話なども伺っているんですね。
暮らしと、子供の暮らしを支えるということは、すなわちシングルマザーやその親の所得を補償するということとこれは一体のものでもあると思うんですけれども、具体的に、国、行政、これからやるべきだと思っていることで、具体的な支援策ということですね、御提案あれば是非御教示願いたいと思います。両公述人でお願いします。
○公述人(大日向雅美君) ありがとうございます。
余り国がというような大きなことは、私はちょっと、ごめんなさい、思い浮かばないんですが、例えば各地で御飯の食べられない子に対して子供食堂的な人たちが宅配をしていくとか、そういう動きは起きているだろうと思います。地域が動いているときだと思いますので、そういう動きをどんどんどんどん地方、基礎自治体は活性化してほしいと思います。
子供を抱えている親だけではなく、このコロナウイルスの経済的な困難というのは、例えば、お店、レストランやっている方ももう休業しなくてはいけないとか、先ほどお花が売れないとか、もう様々、経済が破綻しかかっている、そこをどうやって一番弱い子供にしわ寄せが行かないようにするかということは、もう本当にどうしたらいいか分からないんですが、できることを、対策をどんなことでも打っていきたいと、NPOをやっている者としては願っているところでございます。
○公述人(三浦瑠麗君) まず、浅田さんの御質問のときに申し上げたとおり、実際には、事業者が、会社の側が申請をすれば、三月に関しては後からの申請であったとしても、二十五万円ちょっとですか、済みません、正確な数字は覚えていませんが、二十数万数千円のチケットの補助が出るというか使えると。つまり、一日一枚しか使えないというふうな枚数制限が、保育サービスのチケットに関しては制限をなくすというふうなことを内閣府は発表しているんですが、そこにたどり着ける事業者がどれだけいるのかと。
これ、試しに電話してみたんです。そうしたら、実は一週間で、新しい事業者さんであったとしてもチケットを送れると、混んでいるんですがというふうにおっしゃって、非常に親切な対応だったんですが、どうして内閣府からそういった通達を出すときにどこに申請すればいいのかを書かないのかと。ニュースに出ても、結構ニュースに出ているんですよ、どこに行けばいいのか誰も分からないわけです。大体、中小企業の今の経営者の方は、御自分の企業の売上げ、経営の厳しい見通しでいっぱいいっぱいで、従業員の使うナニーサービスなんて、そんなの気にしている暇はないという精神状態だと思うんですね。
でも、本来悪意がなくても、そこで二十数万円補助してもらえるのに、それを使わないで、ああ、休めないと思って無理をしてしまったり、子供を一人で家に置いたりするというケースがあるわけですから、まず、現行の制度をしっかり周知する努力、コミュニケーションは頑張るべきです。
それに加えて、先ほど申し上げたとおり、やはり飲みニケーションの経費が経費ならば、保育のサービスは何よりも経費だろうと。これに関しては、企業さんに関しても経費として認めるべきであるし、個人の確定申告においても経費として認めるべきなんですね。それは、多様な生き方と、そして適切な補助というものを両立させるやり方なんだろうと思います。
加えて、このときに、休まざるを得ないという理由で非正規の方に有給休暇を出すと、そういった企業さんに関しては、八千数百円ですか、八千八百円などを補助するというふうに言っていらっしゃるようなんですが、これも中小企業の社長さんがそれを申請するところまでちゃんとサポートしての政策なんですね。
だから、ここら辺が非常に大企業目線であるというか、何か制度を出せばそれに応募してくるだろうという政府の感覚のずれというのを私は感じるんですね。
あとは、フリーランスの方々に関してもそうなんですけれども、今、フリーランスの方々って確定申告されますよね。確定申告の、もちろん時期をずらしてもいいということになっているんですが、既に終えてしまって、新型コロナウイルスの影響を何も考えないで普通に素直に真っ当にやってしまった方が、これから三月は運転資金や生活費で貯金を食い潰してしまったときに本当に所得税払えるのかと。
この所得税を今払えと言われて生活が苦しくなるという方も出てくるので、現場というのはそういうことが起きるんだよということをもう微に入り細に入りあらゆる可能性を検討して、親切に制度を使ってもらう工夫をすべきだし、経済対策というのは、それこそ果断なリーダーシップを求めたいというふうに思っております。
○倉林明子君 ありがとうございます。是非、こういう御意見、本当に生かしていきたいなと思います。
時間がなくなっちゃったんですけれども、大日向公述人からも御指摘あったように、やっぱり少子化対策でもそうなんですけれども、男女平等、ジェンダー平等、この取組というのが日本においては大きな課題になってきていると思うんですね。その上で、やっぱりショックでもあったジェンダー指数が百二十一位と過去最低、最悪という事態になっているわけで、様々な課題があろうかと思うんですね。
先ほど出た選択的夫婦別姓の問題、同性婚の問題どう考えるのか、あるいは、女性の議員の比率が余りにも低いという問題、賃金格差の問題。ジェンダー平等を実現していくという上で一番これを進めるべきだというところや思いがありましたら、最後聞かせていただきまして、終わりたいと思います。
○公述人(大日向雅美君) ありがとうございます。
時間がないようでございます。一言で申しますと、女性の人生にリスペクトを持ってほしいということです。逆に、女性も男性にということでございまして、先ほど三浦先生もおっしゃったように、権利の闘いではない、互いに相手の人生に関心とリスペクトを持つということです。女性、日本の女性がこれだけ低いということは、もしかしたら日本の男性たちは善かれと思ったかもしれないけど、女は家庭で子供といるのが幸せだよね、そこにとどまっていて、女性を一人の人間としてリスペクトしていただけなかった、ここをどうか改定していただきたいというふうに思っております。
○公述人(三浦瑠麗君) 女の子たちが、小さい頃に何にでもなれるというふうなしっかりとした信念を、あらゆる方が、国会議員の方々含めて支えていただきたいなと思います。
○倉林明子君 ありがとうございました。