教員に適用の余地ない 変形労働制 倉林議員が迫る / 台風被災 雇用の実態は 倉林氏 調査し就労支援求める(2019/11/19 参議院厚生労働委員会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は19日の参院厚生労働委員会で、公立学校の教員に1年単位の変形労働時間制(変形制)を適用できるようにする教員給与特別措置法改悪案について、労働時間の予測が困難な職種に変形制は適用できないことを政府に認めさせ、「教員に適用の余地はない」と迫りました。
倉林氏は、厚労省の2017年度版『過労死白書』の教職員調査を紹介。それによると、所定勤務時間を超えて業務が発生する要因では「業務量の多さ」(69・6%)、「予定外の業務が突発的に発生」(53・7%)、「業務の特性上、その時間帯でないと行えない業務がある」(48・9%)が続きます。
倉林氏は、1年単位の変形制は恒常的な時間外労働がないことを前提とした制度だと指摘。厚労省の坂口卓労働基準局長は、1994年の通知で、労働時間をあらかじめ定めておくことが困難な業務や所定労働時間が業務の都合で日常的に変更される業務には「適用する余地はない」としていることを認めました。
倉林氏が「変形制は教員の長時間労働をさらに助長する」と批判したのに対し、加藤勝信厚労相は文科省に運用を丸投げする無責任な答弁に終始。倉林氏は「厚労省の過労死ゼロ目標にも逆行する。変形制の導入は断じて認められない」と強調しました。
日本共産党の倉林明子議員は19日の参院厚生労働委員会で、台風19号の被災地域の雇用状況を調査し、公的な就労支援を検討するよう求めました。
倉林氏は、台風19号で被災した中小企業には、雇用調整助成金の特例措置で休業補償の助成率や支給限度日数が拡充されるものの、雇用保険に未加入の非正規労働者は対象にならないと指摘。「こうした労働者は直ちに収入が断たれる。実態を把握し、対策をしているか」と問いました。
厚労省の達谷窟庸野(たがや・のぶなお)職業安定局審議官は「労働基準監督署やハローワークなどの特別労働相談窓口で、雇用保険への加入の有無を問わず相談に応じ、労働者の状況を必要に応じて把握している」と答えました。
倉林氏は「被災地域に本社を置く会社の約76%が中小企業だ。多くの経営者が60歳以上で、被災を機に廃業するなど多くの雇用不安が生じる可能性が高い」と指摘。「当面の就業先を失った被災者や、助成の対象にならない非正規労働者がどれだけいるか調査し、就労に関する公的支援を検討するべきだ」と迫りました。
加藤勝信厚労相は「実態をよく把握し、出張相談等も必要であれば考えたい」と述べました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
まず最初に、全世代型社会保障検討会議の議事録の問題が理事懇でも話題となっております。
私、この問題は議事録の扱いにとどまらず、年金の制度変更に伴う、つまり在職老齢年金の立法事実の可否に、存否に関わる問題だというふうにも思っております。
内閣府の問題とせずに年金問題での集中審議を繰り返し要求してまいりましたが、この際、この問題も含めて、厚生労働委員会として集中審議を要求したいと思います。
○委員長(そのだ修光君) ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議いたします。
○倉林明子君 台風の被害の状況が拡大しているということで、今日も農業被害の問題が報道ありました。
そこで、今日は雇用の問題なんですけれども、被災労働者及び企業からの各労働局に関する相談状況ということで、ちょっと数字小さいんですけれども、いただいた資料を配付しております。相談件数と相談内容ということで、記載がされているとおり、大変増えてきております。
そこで、雇用調整助成金ということで見ますと、相談が八百九十二件ということで、十月三十日には、激甚ということも受けまして、追加の措置もとられました。これによりますと、中小企業が、休業補償でいうと、休業補償が助成率五分の四ということで、相当しっかり出るということになるし、支給限度の日数も年間三百日まで延長してもらっているということで、活用を大いに進めていただきたいと思うんですね。ただし、これ、実際の活用はこれからだということで、どれだけ使えているかはまだ分からないということでした。
確認をしておきたいと思います。対象となる労働者の適用基準、これはどうなっているか、端的にお願いします。
○政府参考人(達谷窟庸野君) お答えいたします。
雇用の維持を図る事業主に助成する雇用調整助成金につきましては、雇用保険料を財源としておりますことから、助成を受けようとする事業所における雇用保険の被保険者が対象となってございます。ただし、休業等を実施する前におきまして同一の事業主に引き続き雇用保険被保険者として雇用された期間が六か月未満の者につきましては助成対象外としております。
この点につきましては、今般の台風十九号による災害に伴う経済上の理由により休業等を行う事業所が雇用調整助成金の支給申請を行う場合には特例措置を講じてございまして、同一の事業主に引き続き雇用保険被保険者として雇用された期間が六か月未満でございましても助成の対象としているところでございます。
○倉林明子君 雇用保険の被保険者であるということが大前提で、今回、特例で対象や期間についても拡充して広く対象になるようにということにしていただいていることについては、それ踏まえてなんですけれども、要は、そもそも雇用保険未加入の方々がどうなっているかということなんですね。非正規で、アルバイト、パートですね、助成金の対象にならないという方々については、やっぱり直ちに収入が断たれるということになっていると。直ちに収入が断たれるということになるわけで、こうした労働者の状況というのはつかんでいるのかということと、こういう労働者に対しても具体的な対策あるのかどうか、いかがですか。
○政府参考人(達谷窟庸野君) お答えいたします。
台風十九号に関しましては、被災した地域の労働局管内の労働基準監督署及びハローワーク等に特別相談窓口を設けてございまして、雇用保険の被保険者であるか否かにかかわらず、労働者の方などから相談に応じているところでございます。その中で、労働者の皆様の取り巻く状況につきましても必要に応じて把握しているところでございます。
また、特別相談窓口におきまして受けた御相談につきましては、丁寧に対応させていただくとともに、ハローワークにおいて新たな就職先への就職を希望される方には、その置かれた状況に応じまして、担当制によるきめ細かな就職支援等を実施しているところでございます。
○倉林明子君 特別相談窓口ということで開いて、そこで情報もつかんでいるということだと思うんですが、これ、東京商工リサーチが堤防決壊地域の企業調査というのをやっているということで報道を見ました。それ見ますと、被災地域、本社二千七百七十二社がある、そのうち資本金一千万円未満七六・二%、大方が中小企業だということです。注目は、その経営者、代表者が六十歳以上というところが多いというんですね。つまり、これを機に、やっぱり廃業を含めて、多くの雇用が不安になるという可能性極めて高いというふうに思うんです。
そこで、今特別窓口開いているということでしたけれども、被災自治体、特に福島や長野のところが相談件数も多くなっております。そういうところでは、自治体に出向いてハローワークを実施するというようなことを考えられるんじゃないかと。で、当面の就業先を失った被災者や現在施策の対象外となっている非正規を含む労働者、こういう方々がどれだけいるのかということで緊急の調査もしたらどうかと思うんですね。その上で、公的就労事業ということも私は検討もしていくべきではないかと思う。これ、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) 今も、台風十九号に関して申し上げれば、被災した地域の労働局管内の労働基準監督署、ハローワーク等に特別相談窓口を設けて、雇用保険の被保険者であるか否かにかかわらず、労働者からの相談に応じ、委員がお出しいただいているやつもそうなんですけれども、これ見ると、労働者よりもむしろ事業主が多いような傾向にあるように思いますけれども、また、それぞれの地方公共団体の窓口から聞いても、避難者の就業に関する相談、要望は決してそう多くはないというのが今の実態だとは思いますけれども、ただ、これから、むしろこれからということもあるんだと思います。
よくその辺の実態を把握しながら、また場合によっては出張相談等も、ニーズを把握した中において、必要であればそういったことも考えていきたいというふうに思います。
○倉林明子君 この台風被害、台風等の被害につきましては、総理がやれることは全部やるという基本方針だということを伺っておりますので、やっぱり踏み込んでニーズもつかむということでやっていただきたいということは強く要望しておきたいと思います。
次に、衆議院で、地方公務員の教員に変形労働制を導入する法案、これが採決されたと。強く抗議したいと思うんですね。
これ、そもそも教職員は、閣議決定された過労死等の防止のための対策に関する大綱、これで過労死が多いという重点業種の一つになっているんですよね。この過労死防止対策ということで調査研究もされてきたというものであります。
今回のこの法改正によりまして教職員の長時間労働というのが縮減されるのかと、過労死防止につながると、こういうふうに認識されているのか、基本的な認識を大臣に伺っておきたい。
○国務大臣(加藤勝信君) 今般提出されております公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法、いわゆる給特法の改正は、本来であれば、労働基準法に基づく一年単位の変形労働時間制について地方公務員は適用が除外されているものを、公立学校の教職員に限って適用を可能にするという、そういうものであります。
そもそもこの一年単位の変形労働時間制は、業務の繁閑に応じて労働時間を配分することによって、年間を通じて時間外・休日労働の減少による労働時間の短縮を図るという趣旨で設けられている制度であります。
今回の公立学校の教育職員の導入する目的は、長期休業期間を活用して一定期間に集中して休日を確保するということにあると承知をしておりまして、また、給特法改正に伴って新たに制定する指針においては、在校等時間の上限を遵守すること等を規定して、業務の削減も併せて進めていくというふうに承知をしております。
法改正後は、文部科学省において一年単位の変形労働時間制を適切に運用していくというふうに考えているところであります。
○倉林明子君 いや、過労死防止につながるのかという点で明確な答えがあったのかなと、よう聞いていたつもりなんですけど、よく分かりませんでした。
その上で、平成二十九年度の過労死白書が出ております。教職員の調査研究結果が報告されている特集のようになっておるものであります。これ、一部を資料の二枚目に付けております。これ、明らかなのは、地方公務員の公務災害認定の要因、長時間の過重業務があるということなんですね。
それで、長時間勤務が発生する要因ということでこれ資料を付けてあるんですけれども、一番目は、自身が行わなければならない業務量が多いということです。二つ目、予定外の業務が突発的に発生する、三つ目、業務の特性上その時間帯でないと行えない業務があると、こういうものが上位に上がっているんです。分析しているんです、これ、白書で。
それで、変形労働時間制については、これは平成五年に労基法を改正されております。最長期間をそれまでの三か月から一年まで延長したものとなっております。そこで、突発的なものを除いて恒常的な時間外労働がないことを前提とした制度ということで延長もされてきた。この実施に当たって、平成六年一月四日に発した通知がございます。これは、変形労働制を適用する余地はないものとして紹介している業務、これどんな業務なのか、例えば以降で通知で明記してありますので、その文を読み上げて紹介してください。
○政府参考人(坂口卓君) 御指摘の通達でございますけれども、業務の性質上、一日八時間、週四十時間を超えて労働させる日又は週の労働時間をあらかじめ定めておくことが困難な業務又は労使協定で定めた時間が業務の都合によって変更されることが通常行われるような業務については、一年単位の変形労働時間制を適用する余地はないものであるということを示しておりまして、議員御指摘のように、この通達ではこのような業務として、例えばという形で貸切り観光バス等の業務を示しておるということでございます。
○倉林明子君 平成二十九年度の過労死白書の教員の調査結果というのを見ますと、労働時間の特定が予想し難いと、変形労働時間制を適用する余地がない職種と、これ明らかだと思うんですよ、白書でも書いてありますよ。
変形労働時間制の一年間への期間延長は、年間単位で休日増を図ることが所定労働時間の短縮に有効だというふうに、これ、労基法は導入の理由として挙げていました。しかし、あれから四半世紀になるわけですね。
じゃ、果たして実際にこの法改正の趣旨であった実労働時間、総労働時間というのは減ったのかと、これ、どうでしょうか。
○政府参考人(坂口卓君) 御指摘の点でございますが、委員御指摘のように、平成五年の労基法でこの制度を導入されたところでございますが、お尋ねの一年単位変形労働時間制を導入している企業に限って労働時間の推移を調べたものということについては、私どもとしては把握をしておらないということでございます。
○倉林明子君 変形労働制についてはどうですか。
○政府参考人(坂口卓君) そういった変形労働時間制というような形での結果についても持ち合わせていないということでございます。
○倉林明子君 労働政策研究報告書、JILPTが出している二〇一一年のものですけれども、報告書がありまして、ここで大規模なアンケート調査もやって結果が出ております。これを見ますと、一般の労働者よりも変形労働制の方が月の総労働時間で十五時間長い、こういう調査結果が出ているんですよ。改めて、変形労働時間制が長時間労働につながる傾向があるという結果だと思うんですね。これはしっかり、調査もしていないというわけですから、厚労省はしっかりこの調査結果というのも踏まえる必要があるということは指摘しておきたい。
その上で、萩生田文科大臣は、地方公務員法においては、職員の勤務条件に関する事項は職員団体との交渉事項であって、書面による協定を結ぶことができると、こういう答弁しているんですね。協定結べるから大丈夫だというふうに言っているわけだけれども、そこで総務省に確認したいんです。
地方公務員の教職員団体のうち、給特法に関する協定締結ができている件数というのはどれだけあるのかつかんでいますか。
○政府参考人(大村慎一君) お答えいたします。
地方公共団体と職員団体は、給与、勤務条件などに関する交渉の合意事項につきまして、地方公務員法第五十五条第九項に基づく書面による協定を締結できることとされております。
この協定に関してでございますが、総務省において、お尋ねのあった締結件数については把握はしておりません。
なお、この協定は、同条第十項に基づきまして、地方公共団体の当局と職員団体の双方において誠意と責任を持って実行しなければならないとされているところでございます。
○倉林明子君 確かに、調べてみますと、教育委員会と労組の間で覚書などということで締結している事例もあります。この給特法に関わっても協定結んでいるということを私も調べました。ありました。しかし、全然守られていないんですよ。実効性は確保されないし、長時間労働の実態というのは、当該覚書を結んでいるところでも過労死水準の働き方になっているんですよ。協定があっても長時間労働歯止めにならないということを、既に明らかだと思うんです。
諸悪の根源ということで、私、やっぱりなっているのが、教員のやりがいを搾取する給特法だというふうに指摘せざるを得ないと思います。これ、給特法によって時間外労働の支払義務のない現状を放置して、教員の増員もないと。このまま変形労働時間制を教職員の現場に導入するということは、繁忙期の長時間労働を更に助長するリスクって、これ極めて高いと思うんですね。これ、大臣、認識はいかがですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 私どもが聞いている範囲でとしか答弁しようがないんでありますけれども、給特法が改正された場合には、新たに制定することとなる指針において、所定の勤務時間を通常より延長した日であっても延長を理由とした新たな業務の付加はせず、在校等時間が増加しないようにすることなどを規定することによって在校等時間が現在より増加することがない運用を確保するという方針として承知をしておりますので、法改正後においても、文部科学省においてこの一年単位の変形労働時間制、適切に運用していただくものと考えております。
○倉林明子君 いや、文科省のことだということにしたら、私は、過労死防止対策、過労死をゼロにするんだということで大綱で閣議決定して、重点で教職員を挙げてきたわけですよ。だから、全体として、そして労働法制を預かる立場として、このまま行ったら繁忙期の長時間労働を助長するリスクというのは高くなりませんかということで投げかけたんですね、増員は今のところ見込まれていないわけですから。
そういう意味でいうと、せっかく白書で分析しながら、このまま教職員の現場に変形労働時間制を導入するということは本当によく考える必要があると、過労死をゼロにするという観点からの私は検証が必要だというふうに思っているわけです。
二〇二〇年までに、労働時間について数値目標を大綱で掲げているんです。ここでは、週労働時間六十時間以上の雇用者の割合、これ五%以下とするとしているわけです。この変形労働時間制の適用拡大というのは、私はこの目標達成にも逆行するものだと思うんですよ。
大臣、もう一回よう考えるべきじゃないかと思う。これ、どうですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 先ほどから同じ答弁になりますけれども、今回の変形労働、教職員に導入する目的は、長期休業期間を活用して一定期間集中して休日を確保するということ、それから、先ほど申し上げたように、通常より延長した日であっても延長を理由とした新たな業務の付加はせず、在校等時間が増加しないようにする、こういった、今のは指針でありますけれども、そうした対応によってこうした一年単位の変形労働時間制を導入して、中において適切にそうした管理がなされていくというふうに考えております。
○倉林明子君 平成二十九年度の過労死白書、もう一回よう読んでほしいと、断じて変形労働時間制の拡大については認められないと申し上げまして、終わります。