倉林明子

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虐待防止策強化を 倉林氏質問 法改正案審議入り(2019/6/5 参議院本会議)

 児童虐待防止対策を強化する児童福祉法等改正案が5日、参院本会議で審議入りしました。日本共産党の倉林明子議員が質問し、児童相談所の体制強化や虐待の陰にあるDV(家庭内暴力)被害者への支援を求めました。

 倉林氏は、貧困・格差が広がり、子育てする家族が孤立し追い詰められていると指摘。子どもへの虐待を、個別の家族の問題としてだけでなく、それを支える社会の問題としてとらえ直し、親、家庭に重い責任を負わせていないか検証が必要だと主張しました。

 「子どもは権利主体として、尊厳、身体の不可侵性が尊重されなければならない」として全ての体罰の禁止、親権者の懲戒権を認めた民法規定の削除を要求。安倍晋三首相は「本法案により、懲戒権を有する場合でも体罰禁止が法定化される」と答弁しました。

 倉林氏は、児童虐待の相談対応件数はこの10年で3・3倍に増え、児童福祉司の配置数は1・4倍にとどまると指摘。一時保護では、一人ひとりに向き合ったケアの充実が必要だとし、手厚い施設基準や心理職などの専門職配置を含め個別対応可能な体制を求め、根本匠厚労相は「衆院での修正で追加された付則の趣旨や現場の実情を踏まえ検討する」と答えました。

 また根本氏は、市町村で虐待対応にあたる職員で児童福祉司と同様の資格を有するのは約2割だと答弁。倉林氏は、身近な場所で子どもと家族を支える基礎自治体への財政支援の拡充、公務員削減の見直しを求めました。


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 私は、日本共産党を代表し、児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案について質問します。
 児童福祉法は、一六年改正で初めて第一条に「児童の権利に関する条約の精神にのつとり、」と規定され、子供が権利の主体者としてうたわれました。子どもの権利条約批准から二十年、この精神をいかに具現化していくかが問われています。
 子供を守り育てるのは社会の責任です。しかし、今、子育てをする家族の現状は、貧困、格差が広がり、孤立する親子が少なくありません。親の責任が様々に追及される中で、支援を求めることもできず、余裕なく追い詰められているのではないでしょうか。
 様々な対策が取られる中で、虐待の相談通報が増え続ける背景に何があるのか。子供への虐待を、個別の家族の問題としてのみ捉えるのではなく、それを支える社会の問題として捉え直し、親、家庭に重い責任を負わせていないか、改めて検証する必要があります。総理の認識をお聞かせください。
 子供は、権利主体として、その尊厳、身体の不可侵性が尊重されなければならず、子供に対する暴力である体罰は許されません。
 法案が、しつけを口実とした体罰は虐待であり、許されないことを明らかにしたことは重要です。しかし、なぜ親権を行う者による体罰に限定しているのですか。
 しつけ、指導の名を借りた体罰は、父母以外の親族、父母の内縁者からも行われています。家庭内のみならず、子供たちのあらゆる生活の場で起こり得るものです。誰からのものであっても禁止されるべきではありませんか。あわせて、民法八百二十二条の懲戒権の削除に踏み込むべきです。
 児童相談所の体制強化について質問します。
 児童虐待の相談対応件数はこの十年で三・三倍に増えたのに対し、児童福祉司の配置数は一・四倍にとどまっています。
 厚労省は、児童福祉司一人当たりの担当の目安として四十ケースを示しています。しかし、現場からは、百ケース以上を担当し、虐待通報への初期対応に追われ、保護者と対立するなど困難な対応の増加で疲弊しているとの声が上がっています。
 四十ケース以上担当する児童福祉司の数と比率はどうなっていますか。政府は、新たな児童虐待防止対策体制総合強化プランで児童福祉司の増員を前倒しして実施するとしました。これによりどの程度改善するのですか、お答えください。
 児童福祉司の勤務年数は三年未満が四四%を占めています。日本自治体労働組合総連合が二〇一二年に公表した調査では、一五%が無資格のまま児童福祉司に任用されているといいます。専門性の確保に向け、国の責任で計画的な人材育成が求められます。
 同時に、相談支援に関する効果的な取組の構築と継承が求められています。そのためにも、児相職員の日々の支援によって子供たちが守られたケース、これにも光を当て、支援の手法の検証、蓄積をすることが必要ではありませんか。
 次に、児童相談所の一時保護について質問します。
 児童相談所による一時保護は年々増加し、都市部を中心に一時保護所が不足し必要な措置がとれない、定数超過、在所日数の長期化、学習権の保障、混合処遇等、様々な問題が指摘され、この間強く改善が求められてきました。
 入所する子供たちは、家庭環境に深刻な問題があり、自身も深い心の傷を負っていることや、発達障害などの子供も増えるなど、一人一人に応じた個別の支援が必要になっています。また、一時保護は、子供たちのアセスメントを行って、次の支援につなげていく重要な役割を担っています。
 現在、一時保護所には、養護施設の設備、職員基準が準用されているものの、対応の困難性、一人一人に向き合ったケアの充実の必要性を踏まえれば、更なる基準の引上げが求められています。一時保護所の役割を踏まえ、個室化など独自の手厚い施設基準、心理職などの専門職の配置を含め、個別対応が可能な職員配置基準が必要ではありませんか。
 子供への虐待を防ぐために、身近な場所で子供と家族を支える基礎自治体の役割が重要です。市町村が子ども家庭相談の窓口として位置付けられて十数年。二〇一六年の児童福祉法改正では、市町村を子ども家庭支援の要とし、指導、支援の窓口として役割を明確化しましたが、市町村の体制はいまだ確立したとは言えません。
 市町村の虐待対応窓口の担当職員で、児童福祉司と同様の資格を持つ職員の比率はどうなっているでしょうか。
 有資格者の比率は、人口規模が少なくなるとともに低くなっており、十万人未満の市でも三割は無資格者です。また、非正規職員が多く、専任職員が少ない。加えて、異動周期が短く、専門性が定着しないとの指摘があります。
 基礎自治体である市町村には、子供、家族を受け止め、支える役割が期待されています。国は、市町村における相談支援についても、専門性を蓄積するために、複数の正規職員の配置や心理職等も含め、専門職を確保できるよう財政支援を拡充すべきです。答弁を求めます。
 子供の安全、安心、命を守るためにも、更なる公務員の削減は見直すべきです。新プランに基づく増員について、職員削減率を用いた交付金算定を見直すとしていますが、市町村の子ども家庭相談、虐待相談を担当する職員についても、交付金削減の対象から外すべきです。子育て支援に努力する自治体が不利になるような仕組みの見直しを強く求めるものです。答弁を求めます。
 千葉県野田市で少女が虐待死させられた事件で、母親が逮捕されたことにDV被害者は衝撃を受けています。DVという過酷な暴力の支配下にある家庭で、母親なのだから子供を守るべきだなどということが通用するはずがありません。少女の母親は、加害者として逮捕されるべき存在ではなく、保護、支援されるべき存在です。一方的に非難されることがあってはなりません。
 虐待の陰にはDVがあり、DVと子供への虐待を一つながりのものとして捉えた対策が必要です。関係機関が、DVによる支配とコントロールの構造、被害者、子供への影響を含め正しく理解するために、子供に関わる全ての機関で専門的研修、教育を義務付けるべきではありませんか、お答えください。
 現在のDV支援については、民間支援組織を含む関係団体から多くの問題が指摘されており、法改正を含め早急な見直しが必要です。答弁を求めます。
 DV被害者を始め、多岐にわたる困難を抱える女性の相談、危機介入、生活再建等に関わる総合的な支援に当たる婦人相談員の処遇は極めて重要です。市町村への配置を義務化するとともに、その専門性にふさわしい処遇改善が行えるよう財政措置を講じるべきです。
 子供を守るためには、母親、女性が守られなければならず、その支援の在り方を抜本的に見直すことが必要です。
 現在の婦人相談員を始めとする婦人保護事業は売春防止法を根拠としており、女性の人権も尊厳も認めていません。DVを始め、貧困、居場所を失い孤立した女性、性的搾取など、様々な困難を抱えた女性が、人権と自己決定が尊重され、必要とされる支援が切れ目なく受けられるよう、抜本的な見直しをすべきです。
 以上、答弁を求め、私の質問といたします。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 倉林明子議員にお答えをいたします。
 虐待の相談通報増加の背景とその検証についてお尋ねがありました。
 虐待の相談対応件数の増加の背景には様々な要因が影響するため、一概には言えませんが、虐待に対する意識が高まったこと、警察を始めとした関係機関の通告の増加なども影響しているのではないかと考えています。また、子育てにおける負担感の増大や孤立化といった課題もあり、地域における子育て相談や支援の強化を図るなど、社会全体で子育てを支えられるよう全力で取り組んでまいります。
 体罰についてお尋ねがありました。
 体罰は、たとえしつけを目的とするものであっても許されないものであります。そもそも、親権者以外の者については、民法上の懲戒権を持たないため、従来より体罰を加えることは許されていません。さらに、本法案により、たとえ懲戒権を有する場合であっても、体罰の禁止が法定化されることとなります。
 いずれにしても、体罰はどのような理由であっても許されないということを法律の上でも国民の意識の上でも徹底し、虐待の根絶につなげてまいります。
 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。

○国務大臣(根本匠君) 倉林明子議員にお答えいたします。
 児童福祉司の担当ケース数と増員についてお尋ねがありました。
 児童相談所における個々の児童福祉司の担当ケース数については把握しておりませんが、新プランにおいては、児童虐待相談及びそれ以外の相談を併せて児童福祉司一人当たり五十ケース相当だった配置標準を四十ケース相当となるよう見直すこととしています。
 相談支援の手法の検証及び蓄積についてお尋ねがありました。
 各児童相談所での効果的な取組を共有し、職員の専門性向上を図ることは重要です。このため、研修センターにおいて参加者同士の実践報告や事例検討を行っており、今年度からは全国七つのブロックでの研修も行っています。こうした研修でそれぞれの経験に基づくアセスメント等の議論を行い、効果的な取組の共有を通じて、児童相談所職員の専門性向上に努めてまいります。
 一時保護所の体制強化についてお尋ねがありました。
 現行、一時保護所の設置、運営については、児童養護施設に係る基準を準用していますが、本年三月の関係閣僚会議決定では、一時保護所における職員体制の強化や環境整備を促進することとしました。また、衆議院での修正で追加された改正法案附則第七条においても、一時保護施設と職員の量的拡充と質的向上に係る方策を検討し、必要な措置を講ずることとされており、この趣旨も踏まえ、具体的な内容については、現場の実情を踏まえた上で今後検討してまいります。
 児童福祉司と同様の資格を有する市町村職員の状況についてお尋ねがありました。
 市町村で虐待対応を行っている職員について、児童福祉司と同様の資格を有する者は約二割となっています。
 市町村における正規職員や専門職の確保のための財政支援についてお尋ねがありました。
 市町村の相談支援体制を強化するため、子ども家庭総合支援拠点への職員配置について、心理担当の職員を含め、人件費等の国庫補助を行っています。今年度より、常勤職員を人口十万人当たり一名配置できるよう地方交付税措置を講じるとともに、弁護士や医師の嘱託費用等に対する補助制度を創設しました。
 こうした取組を通じて、市町村における人材確保が進むよう、必要な支援に努めてまいります。
 婦人相談員の市町村への配置義務化と処遇改善についてお尋ねがありました。
 全ての市町村に対し婦人相談員の配置を義務付けることは、地方分権の観点から慎重な検討が必要ですが、身近な相談先を確保するため、市に対し配置を要請してまいります。処遇改善については、これまでも国庫補助基準額の引上げを行ってきており、その効果を検証しながら今後必要な対応を検討してまいります。
 婦人保護事業の抜本的な見直しについてお尋ねがありました。
 DVや人身取引、ストーカーの被害を受けた方々など、様々な困難を抱える女性に対しては、売春防止法やDV防止法に基づき支援を行っています。現在、有識者による検討会において婦人保護事業の在り方に関する議論を行っており、夏頃をめどに基本的な考え方を取りまとめます。検討会での議論を踏まえ、必要な見直しについて検討してまいります。

○国務大臣(石田真敏君) 倉林議員にお答えいたします。
 まず、地方公務員の削減の見直しについてお尋ねがありました。
 地方公共団体の定員管理については、地域の実情を踏まえつつ、各団体において自主的に御判断いただくものと認識をいたしております。これまでも、地方公共団体におきましては、総職員数を抑制する中においても、例えば、児童相談所等の職員を始め防災対策に携わる職員や土木・建築技師等の職員は増加するなど、それぞれの行政需要の変化に対応し、必要な人員配置を行っていると承知をいたしております。
 引き続き、各地方公共団体において、効率的で質の高い行政需要の実現に向け、適正な定員管理の推進に取り組むことが重要と考えています。
 次に、児童虐待防止対策の強化に関する地方交付税算定の見直しについてお尋ねがありました。
 児童虐待防止対策体制総合強化プランに基づき、児童虐待防止対策の強化を図るため、児童福祉司や児童心理司等の地方交付税措置を今年度から拡充いたします。また、職員数削減率を用いて行政改革の取組を反映する地方交付税の算定につきまして、プランに基づき児童相談所や市町村の体制強化を行う必要があること等を踏まえ、来年度算定以降、見直しを行う予定でございます。
 今後、地方団体の意見も踏まえ、算定方法について検討してまいります。

○国務大臣(片山さつき君) 倉林議員から、子供に関わる機関におけるDVに関する知見の専門的研修、教育の義務付けについてお尋ねがありました。
 DVは、家庭内で行われることから、外部からの発見、介入が困難である中で、児童虐待につながるなど、被害が深刻化しやすいとともに、被害者自身も、配偶者からの報復への恐怖や家庭の事情など、様々な理由から保護を求めることをためらう傾向があるといった特性があると認識しております。
 子供に関わる機関におけるDVに関する知見の専門的研修、教育の義務付けについてはお答えする立場にはありませんが、文部科学省の学校・教育委員会等向けの虐待対応の手引、厚生労働省の地方自治体職員向けの子ども虐待対応の手引では、子供への影響を含むDVに関する知見が記載されており、学校や児童相談所等ではこれらの手引を踏まえた対応が取られていると承知をしております。
 内閣府でも、配偶者暴力相談支援センター、民間シェルター、児童相談所等の相談員への研修、DVの特性の理解と被害者への適切な対応のための相談の手引の作成、毎年十一月十二日から二十五日の女性に対する暴力をなくす運動などを通じて、子供への影響を含むDVに関する知見や対応の普及啓発を行うこととしております。
 いずれにせよ、子供への影響を含めて、DVに関する知見を踏まえた適切な対応が取られるよう、関係府省庁により一層緊密に連携してまいりたいと考えております。
 次に、法改正を含めたDV被害者支援の見直しについてお尋ねがありました。
 政府としては、これまでに、男女共同参画会議の下の女性に対する暴力に関する専門調査会において、民間支援団体を代表する委員などからDVを始めとする女性に対する暴力に係る施策についていただいた御意見を女性活躍加速のための重点方針などに反映させるなど、DV被害者支援の充実に努めてきております。
 また、本年、私の下に新設したDV等の被害者のための民間シェルター等に対する支援の在り方に関する検討会でも、民間支援団体の実務家などから御意見をいただき、私ども自身も現場を視察した上で、先般五月三十一日に、支援拡充の方向性を新たなパッケージとして取りまとめました。今後、女性活躍加速のための重点方針二〇一九に盛り込むとともに、様々な理由により生きづらさを抱える女性への支援に漏れがないよう、政府一体となって包括的な支援に取り組んでまいります。
 なお、委員御指摘の配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律は、超党派の議員により真摯に議論を積み重ねて、全会一致により制定、改正されてきたものでございまして、この改正の要否を検討するに当たっては、当時の御議論や経緯等も十分に踏まえる必要があると考えております。
 いずれにいたしましても、内閣府としては、引き続き、民間支援団体等の御意見を十分に伺いながら、DV被害者支援の一層の充実に努めてまいります。