生活保護の権利を侵害 改定法案成立 倉林氏が批判(2018/5/31 厚生労働委員会)
生活保護法改定を含む生活困窮者自立支援法等改定案が1日、参院本会議で可決、成立しました。日本共産党は、生活保護受給者の人権を侵害する規定が入っているとして反対しました。希望の会(自由・社民)、沖縄の風も反対しました。
採決に先立つ5月31日の参院厚生労働委員会で、日本共産党の倉林明子議員が反対討論に立ちました。
倉林氏は、反対理由を三つあげました。
第1は「生活保護利用者のみに後発医薬品使用を原則化すること」。倉林氏は「本人の意志による先発薬の選択を認めないことは人権侵害にほかならない」と批判しました。
第2は「『払いすぎた』生活保護費の返還について、不正受給と同等の徴収規定を設けること」です。生活保護費から返還金を強制的に天引きすることを可能とするもので、倉林氏は「手取りは最低生活費を下回る」ことになり、憲法25条に反すると指摘しました。
第3は「無料低額宿泊所を生活保護の恒久的な受け皿に変更すること」です。倉林氏は、質の悪い宿泊所での生活を強いる可能性があるとしました。
倉林氏は進学等準備給付金の創設は当然としながらも、今年10月からの生活保護削減計画を許せば「貧困の連鎖を防ぐことなどできない」と強調。同計画と合わせて法案の撤回を求めました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
本法案で無料低額宿泊所の規制強化ということを取られるわけで、それは当然のことだというふうには思っているんです。一方、この無料低額宿泊所が、一定要件を満たせば、日常生活支援居住施設ということで、保護利用者の新たな恒久的な保護施設ということになるんですよね。これ、やっぱり重大な懸念があるというふうに思っています。
一つは、現在の無料低額宿泊所のガイドラインに示されているわけですが、面積要件が今どうなっているのか。要件を、まあ都道府県によって違うみたいなことはあるようですが、要件を満たしているということでいうと、この無低の割合というのはどの程度現状確認しているのか。
○政府参考人(定塚由美子君) 現行のガイドラインにおいてですけれども、無料低額宿泊所の居室については、原則として個室とし、一居室の面積は七・四三平方メートル以上とすること、また、地域の事情によりこれにより難い場合は、居室の床面積は一人当たり四・九五平方メートル以上確保することといたしております。
この居室の面積、平成二十七年に調査を行っておりまして、全国の無料低額宿泊所五百三十七か所のうち個室がある四百六十二か所について、主な個室の面積ということで調査をしておりますが、個室の面積が七・四三平方メートル以上の施設は二百六十一、約五六%、個室の面積が四・九五平方メートル以上七・四三平方メートル未満の施設は百五十六か所、約三四%、両者合わせると四百十七か所、約九〇%となっております。
○倉林明子君 現状は七・四三平米のところでも五六・四パー、五六パーぐらいということだったかと思うんですね。
そこで、新たなこの日常生活支援住居施設、ここが生活保護法で位置付けるということになる以上、住宅扶助の減額対象とならないという面積要件は、最低面積、これ十五平米ということになるんですね。これ、随分乖離があるわけだけれども、この十五平米というのは当然担保されるべきだと思いますけれど、いかがでしょうか。
○政府参考人(定塚由美子君) この日常生活上の支援の委託につきましては、このサービスの要件を都道府県等で認定をするということになるわけでございまして、こうした支援を行う施設の要件として、必要な人員体制あるいは居室面積等についてどう考えるかということを定めるということとしているわけでございます。
一方で、住宅扶助費の算定基準でございますが、この支給額が住宅の質に合うかどうかということで判断をしておりまして、御承知のとおり、二十七年から床面積が十五平米以下の場合には減額をするということとしているわけですけれども、必ずしもこの減額をした住居に入居すべきでないとするものではございませんので、この二つについては考え方が異なるものと考えているところでございます。
○倉林明子君 要は、生活基準、最低の住居基準ということで、一定の担保がないと私、駄目だというふうに思っているんです。考え方が違うと言って最低面積可能にするというようなことでいいのかということを問うているわけです。
無料低額宿泊所ということで言うと、現在の基準七・四三、これ、でも個室で見たら四畳半ですよ、一間ですよ。さらに、国交省が最低居住面積水準と出しているのは、単身で二十五平米ですよ。その三分の一以下ということを生活保護の最低基準として容認していくのかということですよ、問いたいのは。余りにも狭いのと違うかということです。現状の指針をクリアしている無料低額宿泊所で生活保護利用者の人権をきちっと保障する、この質が担保されることになるかというと、そうならないんじゃないかと、劣悪な住環境の固定化にもつながりかねない、これは指摘しておきたい。
そこで、新たな生活支援居住施設というのは、対象となるのが介助、介護の必要は少ないが単独居住が困難、こういう方々になっていくわけですが、入所対象者の具体的な要件はどうで、この判定というのはどこがするのか、端的にお願いします。
○政府参考人(定塚由美子君) 判断については、福祉事務所が単独での居住が困難であるかどうかということについて判断をいたします。
また、単独での居住が困難で日常生活の支援が必要なものであるかどうかということにつきましては、福祉事務所が適切に判断できるよう、判断する際の基準を示す必要があると考えておりまして、その具体的な内容については、事業者、自治体等の関係者の意見を聞きながら、今後検討してまいります。
○倉林明子君 本来、適切なサービスがあったら一般入居での暮らしということも可能、一般入居、アパート等の一般の居宅ですね、そこで暮らすのが可能な人たち、これも対象になり得ると思うんですね。
独り暮らしが難しい、住宅確保が困難、こういう人たちに対して居宅保護の原則、これを生活保護法で定めているわけですよね。この居宅保護の原則に反し、意に沿わない生活支援居住施設への入所、これ迫られるようなことが起こったらあかんと思うわけです。本人が、その対象となる方が、本人がアパートなどの一般住宅を希望する、施設へ入るのは嫌だと、こういう場合あると思うんですよ。歯止めはどう取りますか。
○政府参考人(定塚由美子君) 委員御指摘のとおり、単独の居住が可能だということにもかかわらず、意に反して入所させるというようなことはあってはならないわけでございまして、この点、しっかり留意していく必要はあると思っております。
このために、単独での居住が困難かどうか、福祉事務所において判断する際の基準について、先ほど申したように国において示すとともに、この保護の要否を判断する場合には、本人の状態を的確に把握してケース診断会議などにおいて判断することを求めるなど、適正な運用がなされるようにしてまいりたいと考えております。
○倉林明子君 必要な人たちに生活支援が行き届くようにする、これ当然のことなんだけれども、生活支援が受けられるということになるのは、無低の中でもこの要件を満たしたという施設になっていくという立て付けです。過重な負担になっているというのがこれ福祉事務所の現場ですよね。判定したり、ケースを、保護にするのか施設に入れるのか、こういうことを迫られるのは現場なんですよね。これ、保護支給を条件にして、生活支援の必要な居宅困難者にこの施設への入所を迫るというようなことになりかねないと、現場で起こり得るということで、この懸念についても指摘をしたいと思うんです。
その上で、悪質な事業者というのをどれだけやっぱり排除できるのかと、この問題、契機にもなった改正であります。
昨年三月、貧困ビジネス事業者に対してさいたま地裁が、最低限度の生活を営む権利を侵害し、不法行為が成立する、こういうことで千五百七十九万円の支払を命じる判決を出しております。その判決では、健康で文化的な最低限度の生活水準に満たないサービスしか提供せず、生活保護法の趣旨に反し、その違法性は高いと、こういうふうに指摘したんです。その結ばれた契約についても、公序良俗に反し、無効といたしました。
大臣、本法案で生活保護法の趣旨に反する無届け施設の規制強化、これ、されると自信を持って言えますか。
○国務大臣(加藤勝信君) 今回の法律で根拠のある最低基準の創設を行うということでありますし、同時に、無料低額宿泊事業の範囲、これをしっかり明確化していく必要があるんだろうというふうに思います。あの札幌のときも、入るのか入らないのか、いろんな御議論がありました。
そうすることによって、今後、無料低額宿泊所に該当すると認められるにもかかわらず届出がなされていない、これはある程度はっきりしてくるわけでありますから、そうした無届けの事業者に対しては、まずは報告徴取や調査を行って届出を促す、また、最低基準に違反し、また改善の見込みがない場合には、福祉サービスの提供を受ける者の処遇につき不当の行為があるとして事業の停止命令等を行うことが容易になるわけでありますし、そして、必要があれば転居の支援といったことも行っていくわけでありますので、そういった一連の対応を通じて、こうした要するに貧困ビジネス、そういったものに対して、そうしたものをより規制をしていくということにつなげていきたいというふうに思います。
○倉林明子君 より規制の方に近づけたいんだけれども、無届けのところは無届けでやっぱり残るという現状になると思うんですよ。本来、居宅保護が可能な人は居宅で保護していくという、この原則をやっぱり徹底できるような環境整備というのも必要なんだということは言っておきたい。
ところが、二〇一五年に厚労省がやったのが、住宅扶助基準を全体で三・八%引き下げる、こういうことがやられました。これで、民間無料低額宿泊所及び簡易宿所に入所している生活保護利用者が一般住宅への転居、これがすごく難しくなったという状況を聞いております。
住宅扶助では入居できる住宅がない、だから、貧困ビジネスだと分かっていても、現場の福祉事務所が当てにせざるを得ない、こういう状況になっているんじゃないでしょうか。事実、どうつかんでいますか。
○政府参考人(定塚由美子君) 前回、二十七年七月の見直しでございますが、これ、各地域における家賃実態を踏まえつつ、最低居住面積水準を満たす民間借家など、一定程度確保可能な水準とするということで水準を設定したわけでございます。
この見直しの影響によりまして実家賃が限度額を超えることとなった世帯というのは約二十七万世帯、減額となった世帯のうち四五%ということでございまして、実際に転居したり転居を求められているのは二五%ということでございまして、入居環境に必要以上の影響を及ぼしたというふうには考えていないところでございます。
○倉林明子君 いや、実際にそういうこと起こっているんですよ。貧困ビジネスだと分かっていても福祉事務所が紹介しているという、こういう事実があるんですよ。それ聞いているんだから、まともに答弁していただきたい。再答弁は結構です。
住宅扶助の、私は、この基準というのはきちんと底上げしていくと、こういうことをしないと貧困ビジネス排除なんということはできないと申し上げておきたい。
生活困窮者自立支援制度の一時生活支援事業、これ拡充されるということになるわけですが、居住施設については、社会福祉法の位置付けもない、最低基準もない。私も実際いろいろ見せてもらいましたけれども、ドヤもあれば倉庫を仕切っただけの居室と、とても健康で文化的とは言えない状況のところもあるんですよ。質の確保ということを寄附や献身的な事業者の良心で支える、こういう実態になっていると言わざるを得ないと思います。
きちんと必須事業として位置付けるということにとどまらず、人件費とか居住環境を本当に引き上げるということも賄えるような財源措置というのをとるべきだと思います。とるのかとらないのか、どうでしょうか。
○政府参考人(定塚由美子君) この一時生活支援事業でございますけれども、特に、必須化ということは地域の実情が異なる中で難しいと考えておりますが、相談体制については、自立相談支援事業の中で、この財源を活用して一時生活支援事業の相談支援を行うということができることとなっております。
実際、このような取扱いをしている自治体もあるところでございまして、こうした活用について、できるということを普及してまいりたいと思いますし、また、今回、地域居住支援事業を強化をしておりますので、こうしたものとも一体となりながら住まいの支援というのを進めていきたいと考えております。
○倉林明子君 生活保護法で、第三十条、ここで居宅保護の原則を定めています。これは、憲法二十二条、憲法二十五条、これがあってこういう規定がされているというふうに思うわけですよね。
改めて大臣に聞きたいんだけれども、生活保護制度における居宅保護の原則、これ逸脱するようなことあってはならないと、私、この一連の議論を通じて確認したいと思う。どうでしょう。
○国務大臣(加藤勝信君) この今の三十条第一項を読めば、まず、これは、「生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとする。」と明確に書いて、その後、ただし書もございます。
したがって、申請者の住まい、すなわち居宅において保護を行うこと、これを原則とする、ただし、居宅保護が困難な場合等においては入所による保護の実施を可能にしていると、こういうことでございますので、この制度を進めていくに当たっては、この法第三十条、居宅保護の原則を定めたこの第三十条に沿って適切な運用がなされるよう十分に配慮していきたいと思います。
○倉林明子君 同三十条二項では、ただし書についての規定もしているんです。被保護者の意が、意思が尊重されるという規定になっていることも踏まえて対応していただきたい。
終わります。
○倉林明子君 私は、日本共産党を代表して、生活困窮者自立支援法等改正原案に反対の討論を行います。
本法案に反対する第一の理由は、生活保護利用者にのみ後発医薬品使用を原則化することです。
保護利用を理由に本人の意思による先発薬の選択を認めないことは、人権侵害にほかなりません。明らかな劣等処遇であり、生活保護の権利性を否定し、利用者、制度に対する偏見を強めるものであり、容認できません。
第二に、払い過ぎた生活保護費の返還について、不正受給と同等の徴収規定を設けることです。
現行では、自立のため必要な経費を返還金から控除できるのに対し、強制的な天引きを可能とすれば、手取りは最低生活費を下回ることになります。最低限度すら下回る生活を強いることは、憲法二十五条にも反するものであり、許されません。
第三に、無料低額宿泊所を生活保護利用者の恒久的な受皿に変更することです。
最低基準を満たせば保護利用者のついの住みかとなりますが、支援の必要な人たちに低質な無料低額宿泊所での生活を強いる可能性を否定できません。無料低額宿泊所は一時利用にとどめ、利用者の人権を保障し得る施設運営基準を設けるとともに、施設整備を支援すべきです。居宅での支援を基本とし、生活困窮者等を含め地域生活を支援する体制をつくること、人たるに値する住居を保障するために、貧困な住宅政策の転換を強く求めます。
今回の進学等準備給付金の創設は当然ですが、世帯分離を継続したままでは大学等への進学を実現することは困難です。生活扶助基準、母子加算の減額等、子供たちの将来に重大な打撃を与えながら、僅かな給付金を支給することで貧困の連鎖を防ぐことなどできません。
今年十月からの生活保護基準引下げは、保護利用者を追い詰め、希望を奪うものです。最低所得層と均衡を理由に削減を強行すれば、生活保護基準と社会保障全般、ナショナルミニマムの際限ない切下げをもたらすことは避けられません。
生活保護基準は国民の命のとりでです。憲法が保障する生存権を空洞化させる生活保護基準の引下げの撤回を求めまして、討論といたします。