定置漁業に対する助成の拡充を 倉林氏が要求(決算委員会)
日本共産党の倉林明子議員は10日の参院決算委員会で、水産資源の再生産に調和した漁法として注目されている定置漁業に対する助成の拡充を求めました。
定置漁業は、魚を待ち受ける漁法で、資源減少の影響を大きく受けます。倉林氏は、定置網は2~8億円規模の投資が必要で、修理に2~3千万かかり、定置網漁業が厳しい経営状況に置かれていることを指摘。浜の担い手の確保を促進するため、漁船のリース事業に国が助成する制度の対象を定置網にも広げるよう求めました。山本有二農水相は「漁船を最優先に措置しているところで、定置網を対象にすることは今のところ困難だ」と答えました。
倉林氏は、定置網への融資については実態に合わせて事実上「生産設備」とみなしており、償還期間を10~15年に延長してきたことを示し、一方、固定資産税の評価は、定置網を「消耗品」として減価償却期間を3年間に設定しており、漁業者にとって重い税負担になっていると指摘。「実態に合わせて減価償却期間も見直すべきだ」と提案しました。財務省の星野次彦主税局長は「具体的な要望があれば、所管省庁で検討する必要がある」と答えました。
倉林氏は、定置漁業は、漁網がなくなれば漁村がなくなることにつながる問題だと指摘。政府が一体となって漁業者支援に取り組むよう重ねて要望しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子でございます。
今日は、定置漁業、定置網で漁をする定置漁業について聞きたいと思います。
定置漁業は、魚を待ち受けるという漁法であることから、良好な資源状況の下で成り立つものであると。水産資源の再生産に、私、調和した漁とも言えると思うんです。さらに、地元京都でも、地域の雇用機会の創出、これにも大きく貢献しております。これ間違いないというふうに思っているわけですが、大臣の認識を改めて確認させていただきたい。
○国務大臣(山本有二君) 全国津々浦々の漁村では、様々な沿岸漁業が営まれております。地魚と言われるような各地域の多様な魚介類を漁獲しまして、漁村の地域経済を支える重要な産業でございます。それが定置網でございますが、その中で定置漁業というものに注目しますと、沿岸漁業の生産量の約四割を占める中核的な漁業としまして位置付けられておりまして、漁村地域の経済を支えていると言っても過言ではございません。サケ、ブリ等の日本の食卓には欠かせない多種多様な魚の安定供給に大きく貢献してきたと、そういう認識でございます。
○倉林明子君 そのとおりだと思うわけです。ただ一方で、この間、やっぱり資源の減少、この影響も非常に大きく受けているのが定置漁業でもあると言えると思うわけです。
この資源の減少と魚価安が長期に続いているという現状の下で、定置漁業そのものが大変厳しい経営状況に置かれているという認識は大臣もお持ちかと思います。とりわけ、漁獲のためということで、最も重要となるのが網、漁網であります。
この漁網が実は二億円から八億円という非常に多額の投資が必要となるというもので、これを修繕しながら何とか使い続けているという状況なんですけれども、修理にも二千万から三千万というお金が掛かるということになっております。ところが、これが滞るとたちまち経営破綻に追い込まれるということでもありまして、私、緊急にここに対する支援が求められているんだろうというふうに思います。
そこで、この間、見直しもされたということで伺っております融資制度の中身について、見直した中身はどうなのか、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(佐藤一雄君) お答えいたします。
今先生の方から御指摘ございました定置網、漁具の取得に対する支援策といたしましては、漁業近代化資金というものと公庫資金といった低金利の制度資金の二つの活用が可能でございます。また、自らの漁業経営の改善に取り組む、いわゆる認定漁業者と呼んでおりますが、この方々に対しましては、これら制度資金の借入れについて利子助成を行いまして、実質で無利子で資金の貸付けを行うといったようなことも推進しているところでございます。
さらに、今年度からでございますが、認定漁業者制度の運用の見直しを行いまして、いわゆる浜の活力再生プランといったものを今推進しているわけでございますが、このプラン等に基づく所得向上の目標を掲げる漁業者についても、今申し上げました無利子での資金貸付けの対象にするといったような見直しを行ったところでございます。
○倉林明子君 これ、目標が一五%という高い目標を立てないといけなかったものが、浜の再生プランでいいますと一〇%というところになってきますので、随分とこれは融資対象広がるんだろうというふうに思っているわけです。
また、これまでは漁具は消耗品だということで、期間をどれだけ置くのかということでいうと、償還期間が十年から十五年ということで、非常に延長してもらっているという経過もあります。ここのところで償還期間を、融資対象を漁具ということで延長した理由というのは何なのか、御説明ください。
〔委員長退席、理事松下新平君着席〕
○政府参考人(佐藤一雄君) お答え申し上げます。
漁業近代化資金につきまして、主たる借入者である沿岸漁業者の単年度当たりの償還額を軽減する観点から、平成二十七年度に、大型定置網の取得に係る償還期限というものを五年から十年に延長したところでございます。これは全国団体からの要望を踏まえたものでございます。
○倉林明子君 現実的に大変実態に合った対応になっているというふうに思うわけです。要望も踏まえたということですが、消耗品三年という扱いじゃなくて、ほとんど生産設備ということでの評価になっているんじゃないかなというふうに思うわけです。
さらに、現在、定置網に対する補助金制度というのはないんですね。創設が京都府からも要望されているというふうに伺っているわけです。しかし一方、TPP対応ということで緊急な対策が打たれる中で、漁船に対しては上限二・五億円と、半額まで助成という仕組みが作られました。浜の担い手漁船リース緊急事業、漁網ももう欠かせない設備として機能しているわけで、これもやっぱり使用可能となるように対象を広げてほしいと、こういう要望を承っております。私、検討すべきじゃないかと思います。いかがでしょうか。
○国務大臣(山本有二君) このいわゆる浜の担い手漁船リース緊急事業でございますが、これは、広域浜プランに基づきまして、中核的漁業者として位置付けられた漁業者が収益性の向上に必要な漁船についてリース方式で導入を推進するものでございます。
我が国の漁船につきましては、老朽化、高船齢化が水産業の競争力強化を阻む大きな課題となっております。新たな漁船を導入していくため予算を措置しておるわけでございますが、当事業は要望が極めて多うございまして、漁業基盤の最たる漁船を最優先に措置しているところでございます。その意味で、定置網を対象とするということは今のところ大変困難でございます。
なお、定置網は支援対象としておりませんけれども、定置漁業で使用する漁船、これにつきましては当事業の活用が十分可能でございます。また、漁業構造改革総合対策事業、もうかる漁業創設支援事業、これにつきまして、定置網の導入等に必要となる経費の一部について支援を現在もしているところでございます。
沿岸漁村地域の社会経済における定置漁業の重要性に鑑みまして、今後とも、これら事業及び関連施策の実施を通じまして定置漁業の振興を図ってまいりたいというように考えるところでございます。
○倉林明子君 困難とはちょっと残念なんですけれども、引き続き強い要望が出ております。検討を求めたいと思うんですね。
加工所などの支援ということで、広域の活性化プランの中では使えるものも確かにあるんです。しかし、魚価の引上げとか付加価値を付けるということでの支援の枠組みになっている。ところが、実態の漁村はどうなっているかというと、住民の高齢化などもあって、加工所は造っても働き手が確保できない、こういうことで踏み出せないという実態もあるわけです。
更に聞きたいと思うのは、漁業者にとって大変大きな負担になってきているのが税金なんですね。定置網の減価償却期間というのは、これやっぱり消耗品扱いのままになっておりますので、三年ということになるわけです。かつては、景気のいいときは一年で償却できた時代もあったというお話伺っています。ところが、これが今は大きな毎年度の負担になっている、本当にせめて五年でも延ばしてもらえないだろうかと、これ切実な声になっているんですね。
こういう点での見直しというのは進めていくべきじゃないかと、実態に応じた対応というのが求められると思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(星野次彦君) お答え申し上げます。
御指摘の定置網につきましては、税制上、漁具という全体の資産区分に含まれておりまして、その耐用年数、先生おっしゃったとおり三年ということになっております。漁業者が取り扱う器具、備品には、定置網のほか、例えば潜水用具ですとか釣り具など様々なものがあるということは承知しておりますが、税制上それらを漁具として一体的に取り扱い、その使用実態を踏まえて三年と定めているところでございます。
したがいまして、定置網の耐用年数をより長い期間とすべきとの御指摘ではございますけれども、定置網のみの事情ではなく、漁具全体として三年という耐用年数が実態に即しているかという検証が必要であるということ、それからまた、定置網のみ切り分けて耐用年数を設定すべきという御主張も考えられますけれども、簡素で分かりやすい制度とすべきという産業界全体の声を踏まえまして、耐用年数につきましては、機械及び装置の資産区分の大くくり化というものを平成二十年度改正に行っているところでございまして、資産区分の細分化はこうした経緯に逆行するものであることにも留意する必要があると考えております。
いずれにしても、具体的な要望がこれまでございませんでしたので、今の段階で財務省としての考え方を申し上げることはなかなか難しゅうございますけれども、具体的な要望がありましたら、まずは所管省庁におきましてどのような対応を取るべきか、まず検討していただく必要があるのではないかと考えております。
○倉林明子君 実態は、十年、十五年というふうに使ってもたせて頑張っているんですね。だから、実態に合わせて、能力にも合わせてということだけれども、融資の方では償還期間をしっかり見てくれているんですね。私、いろいろな経過があったという御説明も分からないわけではないんだけれども、検証や要望も踏まえて、是非実態に応じた対応というのを強く求めておきたいというふうに思います。
政府が今度、農林水産省では水産基本計画の見直しの作業が進んでいるというふうに聞いています。そういう全体としてどうやって自給率向上に向かっていくのかということで、是非一体となった漁業者支援ということで取組を求めておきたいと思います。
定置網というのは、漁網がなくなれば漁村がなくなるということにつながる問題だというふうに受け止めていただきたいと思います。自給率向上に向けた大臣の決意、定置網への支援の思いもお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(山本有二君) 水産基本法におきまして、政府は、水産に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、水産基本計画を定めるというようにされております。水産をめぐる情勢の変化、これを勘案して、並びに水産に関する施策の効果に関する評価等を踏まえまして、おおむね五年ごとに基本計画を変更することとしておるわけでございます。
現行の水産基本計画は平成二十四年三月に策定しておるわけでございまして、今般、その変更に向けまして、漁業者も含む水産政策審議会等で議論を進めているところでございます。新たな水産基本計画につきまして、水産業の生産性の向上、所得の増大、また、我が国周辺の豊かな水産資源を適切に管理しつつ、フルに活用して国民に安定的に水産物を供給していく体制を構築するという命題を受けて、施策の方向性を示していくところでございます。
今般の新たな基本計画の策定に当たりましては、水産政策審議会において現地調査を実施するなどしておりまして、現場からの御意見もいただきながら検討を進めております。実行段階においても、漁業者を始め各方面の声に耳を傾けながら対応していく所存であることを是非御理解をいただきたいというように思っております。
○倉林明子君 本当に頑張って漁村の地域経済も支えながら奮闘しているこの定置漁業について、しっかり全体の底上げにつながるような支援策を盛り込んでいただきたい、強く要望いたしまして、終わります。