消費支出下回る年金額 最低保障機能の強化を(厚生労働委員会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は10日の参院厚生労働委員会で、年金支給額が高齢者の消費支出を下回っていると指摘し、最低保障機能の強化を求めました。
基礎年金は満額でも月6万5千円で、単身高齢者の基礎的消費支出7万2千円を大きく下回っています。
倉林氏は、1986年に基礎年金がスタートした際、首相だった中曽根康弘氏が「老後生活の支えとしての基礎的部分の保障」と国会で答弁していたことを示し、「基礎的支出をカバーできていないのは導入時の約束に反する」とただしました。
塩崎恭久厚生労働相は、「単身世帯でも基礎的消費支出をおおむねカバーしている」と強弁しました。
倉林氏は、物価上昇時に給付額を抑制するマクロ経済スライドによって、厚労省の試算でも2014年度時点で50~60代の人は、40年代には給付額が実質1~2割も減少することを追及。塩崎氏も「下がるのはその通り」と認めました。
安倍政権は賃金水準がマイナスになっても年金給付額を減額する「年金カット法案」を今国会に提出しています。倉林氏は、「少ない年金をさらに削る。最低保障機能を細らせるような制度改変はやめるべきだ」と批判。「社会保障全体で総合的に手を打っていく」と言い逃れる塩崎氏に対し、「医療も介護も負担を引き上げ、給付を引き下げるもので、補うことになっていない。最低保障年金を確立し、年金制度の信頼回復につなげるべきだ」と訴えました。
本法案で、加入期間の短縮によって無年金者は大きく減らせる、歓迎であります。しかし、いまだ二十六万人の無年金者と低年金の問題というのが残るわけです。
そこで、政府は繰り返し答弁で、基礎年金で高齢者の全ての暮らしを賄うという考え方ではないと言われているわけです。振り返って、そもそも一九八六年、月五万円でスタートしたのが基礎年金というわけですが、この発足時の議論で当時の厚生労働省は、月五万円の水準の根拠、これどう説明していたでしょうか、お願いします。
○政府参考人(鈴木俊彦君) お答え申し上げます。
基礎年金導入当時の考え方でございますけれども、基礎年金は老後生活の基礎的な部分を保障すると、こういった考え方を基本といたしまして、まず第一点目といたしまして、食料費、住居費、光熱費、被服費といった衣食住に関わる基礎的な消費支出額、第二点目といたしまして、生活保護における生活扶助の基準、三点目といたしまして、当時も今後増えていくというふうに見込まれておりました将来の保険料負担の水準、こういったものを勘案して設定をしたということで承知をいたしております。
○倉林明子君 つまり、発足当初は、基礎年金によって老後の基礎的部分を賄うと、これが基本的な考えだったということは改めて確認したいと思うんです。
当時の、中曽根大臣だったわけですけれども、この月五万円という当時の基礎年金の水準については、老後生活の支えとして基礎的部分の保障、そしてこの考え方は憲法の精神にも合致しているというふうに答弁されているわけですね。
ところが、現在の水準はどうかということです。基礎年金導入時と同じ考え方で、六十五歳以上の単身高齢者の消費支出、ここから雑費を引いた基礎的消費支出は直近のところで月額幾らになっているでしょうか。
○政府参考人(鈴木俊彦君) 総務省が実施をいたしております家計調査の平成二十七年時点の数字でございますけれども、六十五歳以上の単身無職世帯の基礎的消費支出は七万二千百九円となっております。
○倉林明子君 単身高齢者、今おっしゃっていただいたように七万二千百九円と、基礎年金額は満額六万五千円ということになりますから、これ、月七千円低いということになります。
大臣に確認したいと思うんですけれども、元々の一九八五年、基礎年金導入時の、老後生活の基礎的部分を保障する、こういう約束から見ると反することになるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど局長から御答弁申し上げましたが、一九八六年の基礎年金水準は、基礎的消費支出のほかに、現役世代が負担可能な保険料の水準などを勘案して設定をしたものだということを申し上げました。
平成十六年改正に向けた議論の中でも、少子高齢化の一層の進行などを背景にいたしまして、当時の制度のままでは保険料がどこまでも上がっていってしまう、そして将来年金を受け取る現役世代の負担が過重なものになってしまうと、そういうおそれがあるという課題が浮き彫りになってまいりました。このため、現役世代の保険料負担を過重なものとしないように、上限を固定をするとともに、その範囲内で給付水準を調整する枠組み、いわゆるマクロ経済スライドを導入することとして、高齢期の生活の状況等を参考にしながら給付水準の下限を定めることとした経緯があるわけでございます。
こういう中で、年金の支給額でどこまで賄えるのかといったことにつきましては、基礎年金で全てを賄うことは難しく、ある程度の蓄えはお願いをせざるを得ないのではないかということを御答弁申し上げてきたところでございます。
現在の基礎年金の額も、高齢無職世帯の支出との比較で見ますと、夫婦世帯では基礎年金額が、十三万十六円が衣食住といった基礎的消費支出十一万五千九百三十三円をカバーをしているわけでありますが、一方で、単身世帯におきましては、基礎年金額が六万五千八円、そして基礎的な消費支出が七万二千百九円ということで、おおむねカバーをしているという表現を使わせていただいておりますが、そういう状況でございます。
これに加えて、基礎年金のみの方など低年金、低所得の方に対しては、平成三十一年十月までに施行される予定でございます年金生活者支援給付金、これによって最大月五千円が年金額に上乗せをされて、年金と相まって高齢者の生活を支えるということになると考えているところでございます。
○倉林明子君 つまり、基礎的部分をカバーするということには単身の場合はならないんだということの説明ではなかったかというふうに思うんですね。この単身の方の場合でいいますと、年間だと乖離が八万四千円という本当に大きなところになってきているのが現状だと思うんです。
また、一九八四年当時に基礎年金月五万円、これ決める際に、基礎的消費支出だけじゃない、高齢者の生活保護、これも基準として参考にされました。現在、高齢単身世帯の生活扶助額は二級地で月七万円、一級地で月八万円、ここでも乖離あるんですけれども、満額だったら夫婦のところはカバーできるというふうにおっしゃる。しかし、これも今後どうなるかということなんです。
ざっくり分かりやすいマクロ経済スライドの仕組みというのを、日経新聞からこれ取りましたのを載せています。物価上昇に見合ってこれまで上がっていた、それがマクロ経済発動したら抑制されるよと。これ、とても単純化したものですので、こういうイメージで今度、二〇一五年ですね、初のマクロ経済スライドが発動されたということになったわけです。
これ、この導入でどうなっていくのかという試算を厚生労働省自身がされているわけですね。それが二ページ目のところに入れております。これ、赤や黄色を付けたのは私の事務所ですけれども、ベースは社会保障審議会の年金部会に出された資料ということになっております。
これ見ていただきますと、二〇一四年六十五歳、二〇一四年のときは六万四千円ということなんだけれども、これ導入されていくとどうなるか。二〇三九年、五万一千円になるんですね。つまり、実質二割の目減りということになるわけです。そのほかのところも見ていただければ分かるとおりで、二〇一四年度から五十代、六十代という人たちが二〇四〇年に受け取る年金というのは実質一割から二割減っちゃうということになると思うんですけれども、厚生労働省、これで間違いないでしょうか。
○政府参考人(鈴木俊彦君) 平成二十六年の財政検証におきましては、今お示しいただきましたように、生まれた年度別に見た年金受給後の基礎年金受給額の見通し、これを物価の変動率で平成二十六年、二〇一四年度でございますけれども、これに割り戻した額ということでお示しをしております。先生がお示ししたこの資料でございます。
これによりますと、財政検証を八通りやっておりますが、そのうちのケースEでは、二〇一四年度に六十五歳となる一九四九年度生まれの方、この基礎年金の額が受給開始時で六・四万円、九十歳になります二〇三九年度には、物価で二〇一四年度に割り戻した額が五・一万円という結果になっているということでございます。
一方で、先ほどおっしゃったように、二〇一四年度に五十歳から六十歳である方につきましても、二〇四〇年代の基礎年金額、これを物価で二〇一四年度に割り戻しますと受給開始時よりも低い額となるということでございます。
これは、少子高齢化といいます長期の人口構造の変化に対応いたしますために、マクロ経済スライドによりまして時間を掛けて徐々に年金水準を調整する仕組みがございますが、この仕組みによるものでございます。このマクロ経済スライドの仕組みにつきましては、年金制度の持続可能性を確保するため、世代間の分かち合いの仕組みということで必要なものというふうに考えているところでございます。
○倉林明子君 いや、つまり、今後について見れば年金の水準は下がる、カバーできないという基礎的な部分というのが増えてくるんじゃないですかと。どうですか。
○政府参考人(鈴木俊彦君) このお示しの資料の意味するところは、年齢が上がっていきますとこのマクロ経済スライドの効果で年金水準も調整をされていくということでございますけれども、一方で、これ、先ほども引用いたしました家計調査によりますと、年齢が上がりますと基礎的消費支出の水準もまた下がりますので、必ずしも受給開始時の水準を保たなければこの消費支出が、年金によってカバーする率が落ちてしまうということではないというふうに承知をいたしております。
○倉林明子君 いや、それでマクロ経済スライドが発動されて、みんなびっくりして怒っているわけですよ、年金受給者、今の人たちがね。
今、この実際の試算のケースを見ても、まずこれで、年を取れば消費支出も減るさかいに、これだけ減っても実質減ることにはならへんみたいな説明というのはいかがなものかと思いますね。実際に減るんだから、それはきっちり説明すべきだと思いますね。
大臣、カバーできない部分、ここがやっぱり増えるということは、マクロ経済スライド、間違いないと思うんだけれども、どうですか。
○国務大臣(塩崎恭久君) これは次の年金で御議論いただきたいと思っている法律に関わる問題でもあるわけでございますけれども、元々この公的年金制度は、年金制度を支える現役世代の負担が、先ほど申し上げたとおり重くなり過ぎないということで、保険料の収入には既に上限が固定をされています。限られた財源をマクロ経済スライドによって現在と将来の受給世代の間に適切に配分をする、分かち合うという世代間の仕組みということでございまして、このマクロ経済スライドは時間を掛けて徐々に年金水準を調整することとしておりまして、また、現在の受給者に配慮をして、マクロ経済スライドによって名目の年金額を下げることはしないといういわゆる名目下限、これを導入をしており、適切なものだというふうに考えているところでございます。
なお、先ほど来、消費との関係のお話が出ておりますが、将来の消費支出を予測するというのはなかなか難しいわけでありますけれども、基礎的消費支出の伸びが物価の伸びと同程度と仮定をいたしますと、財政検証の前提の下では、マクロ経済スライドによる調整が行われたとしても、新規裁定者の年金額改定率、これは賃金変動率マイナスマクロ経済スライド調整率になるわけでありますが、おおむね物価上昇率を上回ることから、夫婦世帯では将来も基礎年金、消費支出をカバーできるのではないかというふうに考えているところでございます。
いずれにしても、低所得、低年金の高齢者への対策については、これはもう社会保障・税の一体改革の中で、消費税の財源によって福祉的な給付に加えて医療、介護の保険料の負担の軽減など、年金のみならず社会保障制度全体で総合的に手を打っていくということを決めているわけでございまして、これらにしっかりと取り組むことが大事であり、また、それに加えて、高齢者にとって就労機会を確保する、あるいは厚生年金の更なる適用拡大をする、さらには個人型の確定拠出年金の加入促進を行うなど、老後の生活をどういう形で総合的に守っていくのかということを考えていくことが大事で、独り年金制度だけで全部をもう全ての人にとって賄い切るような形でいくということではなく、全体としてどうするかということを絶えず見ていくことが大事だというふうに思っております。
○倉林明子君 私はそんな全面的な説明聞いていないんですよ。
このあなた方がこしらえて資料として出した資料を見たって、二〇三九年になったら、これケース設定していますよ。でも、六万四千円もらっていたものが五万一千円になるとはっきり書いてあるじゃないですか。減るんじゃないですか、そうですと、そういうことでしょう。
私、そこで、その上で、いや、だから単純じゃないって、この事実はそうでしょうということを確認しただけなので、それについて認められないというなら、それと、じゃ、こういうケースならどうだという話であればやりたいと思うんだけれども、答弁長過ぎるし、しっかり答えていただかないと次に行けないので、きちんと明確な答弁をお願いしたいと思います。
その上で、本会議でも質問したとおり、年金の最低保障機能、これは本当に弱いということで、国連からも累次の改善の勧告というのが出されているわけですね。マクロ経済スライドと賃金マイナススライドということで、今回の法案でも、新たに年金受給者に確かになるんだけれども、月一万円、月二万円ということで、極めて低額な年金者ということになるんです。
これ、マクロ経済スライドと賃金マイナススライドは、こうした超低年金の方々にも適用されるわけですよね。私、少ない基礎年金を更に削って貧弱なこの最低保障機能を細らせるようなことにつながっていかないかと、こういう改変というのはやめるべきだと思います。どうでしょうか。
○政府参考人(鈴木俊彦君) 今の年金、御案内のように、現在の若い人たちが年金受給世代を支えている賦課方式でございまして、限られた財源を長期にわたって適切に配分するという世代間の分かち合いの仕組みでございます。
その中で、今度御提案を申し上げたルールというのは、現在の若い方の賃金が下がった場合に、現在年金を受給している世代の年金水準が、これを併せてお付き合いをいただきませんと、現在の若い人にとっては、自分の賃金も下がる、そしてそれによって将来の自分が受け取る年金の水準も下がるということで二重の厳しさに直面している、これを何とか解決をするという法案でございますので御理解を賜りたいというふうに思います。
○倉林明子君 いや、若い人だって年いった人だって理解できませんよ。
低年金で最大五千円乗せるんやという話ありました、低年金対策だと。ところが、これ、十年満期やったら千二百五十円ですよ。本当に、そういう意味でいうと、低年金の問題というのを真剣にやっぱり正面から考えないといけない。
医療も介護も総合的な対応をしていくとおっしゃいました。しかし、中身どうですか。今出てきている医療、介護の総合的な見直しのメニューは、医療も介護も総じて利用料の負担を上げること、給付、サービスは削減すること、これで基礎的収支、基礎的支出をカバーするどころか、これに食い込むような改悪やっているんじゃないですか。
私は、全体でフォローするといいながら、高齢者の低年金補うことにはなっていないと思うんですけれど、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(塩崎恭久君) 先ほど長いというお話をいただきましたが、先ほどのこの六万四千円が五万一千円になるということについて、これは言ってみれば実質価格でありまして、この金額、名目は決して減るわけではないということをまずお認めをいただいた上で、御指摘の下がるという、実質価値として下がるじゃないかということは、そのとおりだからこそ、それに対してどうするかということを申し上げているわけでございます。
今、低所得、低年金対策にはなっていない、医療、介護の問題でもむしろ逆を行っているじゃないかというお話でありますけれども、私どもとしては、やはりこの助け合いの仕組みである年金の中でどういうふうにするのか、そして負担能力に応じた負担をしていただくということ、そして世代間、世代内、それらの助け合いの仕組みをどう組み合わせていくかということが大事なことであって、それを絶えず見直すことが大事であるからこそ、こうして今回、今の二十五年を十年の短縮法案に加えて次に御議論いただこうという御提案もしているわけで、これも社会保障・税の一体改革の中で、デフレ下の中で、しかし、今の世代とそして将来世代との間の分かち合い、助け合いの仕組みをどう守っていくかという中で解を見付けようということでお示しをしている、宿題を、民主党政権時代の宿題を果たそうということでございまして、絶えず制度は見直し、そして経済政策と一体としてそれらをやっていくということが大事だというふうに思います。
○倉林明子君 答弁はよく分かりませんでした。
改めて、最低保障年金を確立していく、制度信頼回復していく、こういう方向にこそ向かうべきだと、改めて議論はさせていただきたいと思います。
終わります。