京都府亀岡市 アユモドキの生息環境の保全について(行政監視委員会)
(ページ下部に資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は25日の参院行政監視委員会で、絶滅危惧種に指定されているアユモドキの生息地に開発計画がすすんでいる問題を取り上げ、生息環境の保全のため国が責任を果たすよう求めました。
日本固有の淡水魚であるアユモドキは、国際的にも保護の優先度が最も高いランクに分類され、国内3カ所のみで繁殖が確認されています。そのひとつである京都府亀岡市ではJR亀岡駅の北側に商業地や住宅地などを造成する計画があり、川を挟んだ北側にはサッカースタジアムの建設が予定されています。
倉林氏は、アユモドキが極めて重要な種で、開発行為などの二次的環境破壊が絶滅危機の要因であることを確認。2014年に南丹都市計画に対して環境相が「生息環境保全措置が最善となるよう」にとの意見を述べていることを示し、その保全対象地域を尋ねました。丸川珠代環境相は「亀岡駅北地区とその周辺を一体として捉えたものだ」との認識をあきらかにしました。
「国が、法整備や土地の買い取り、予算、人材を確保すべき」と求めた倉林氏に対し、丸川環境相は「大きな課題として受け止めており、地元関係者とも協力してアユモドキの種の保全に取り組む」と答えました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
今日は、我が国における淡水魚の現状、そして保全の取組について質問をしたいと思います。
まず確認をさせていただきたいと思います。
環境省が二〇一三年二月に第四次レッドリストを発表されていると。そのうちで、汽水・淡水魚類、この評価対象は何種類あったか、そして状況どうだったか、御説明ください。
○政府参考人(奥主喜美君) お答えいたします。
平成二十四年度に公表した環境省第四次レッドリストでは、汽水・淡水魚類について、約四百種を対象として絶滅の危険度を科学的、客観的に評価し、その結果をリストにまとめました。この汽水・淡水魚類の約四百種のうちおよそ四二%に当たる百六十七種を絶滅危惧種として選定しており、この割合は哺乳類、鳥類等、全分類群の中でも最も高い割合となっています。
○倉林明子君 二〇一五年十一月には、国際自然保護連合、IUCNがレッドリスト改訂ということになりました。ここで、アユモドキ、先ほどの汽水・淡水魚の中でもピックアップされた種ということですが、このアユモドキが絶滅危惧種の中でもごく近い将来における絶滅の危険が高い、極めて高いと、CRと記載されました。危機的状況で世界的にも保護の優先度が高いと、こういう判定だというふうに受け止めました。
そこで、アユモドキの種としての特徴は何なのか、そして、今確認されている生息状況、どうなっているか、御説明ください。
○政府参考人(奥主喜美君) お答えいたします。
アユモドキはコイ目ドジョウ科に分類される日本の固有種であり、河川の中下流域、それに連続した水路に生息する体長十五センチから二十センチの魚類です。生息場所の消失や生息環境の悪化等により個体数が減少しており、現在は岡山県の吉井川水系と旭川水系及び京都府の淀川水系の三水系のそれぞれごく限られた場所のみで繁殖が確認されています。
このため、環境省第四次レッドリストでは、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い絶滅危惧種ⅠA類に選定されています。
○倉林明子君 日本固有ということで、今確認されているところで絶滅してしまうと本当に世界的になくなってしまう種だということだと思います。起源と分散経路含めまして、生物地理学的、系統学的にも極めて重要な種だという指摘があったかと思います。
そこで、今年四月に有識者による淡水魚保全のための検討会、これが二次的自然を主な生息環境とする淡水魚保全のための提言をまとめておられます。絶滅の危機に瀕する淡水魚、これに対し優先的な対応が必要だというふうに記載しているわけですけれども、そういうふうに必要になったその要因、それについてはどういう指摘になっているのか、これは大臣から御紹介いただきたいと思います。
○国務大臣(丸川珠代君) 二次的自然を主な生息環境とする淡水魚保全のための提言は、学識経験者等の有識者から成る淡水魚保全のための検討会において作成をされ、平成二十八年四月、つまりこの四月に環境省が公表したものです。
この提言では、高度経済成長期以降の土地利用や人間活動の急激な変化等によって生息環境が損なわれたことが淡水魚の減少の主な要因として記載をされております。
○倉林明子君 つまり、開発行為などによって二次的環境、いわゆるアユモドキ等の生息環境が本当に破壊進んでいるということが危機の要因だという認識だと、大臣も同じだと。よろしいでしょうか。
○国務大臣(丸川珠代君) この検討会で御指摘のこと、つまり、高度経済成長期に経済成長や人口増加などへの対応を優先して生活を豊かにしてきた一方で、人間活動や自然に対する働きかけの縮小、拡大ではなくて働きかけの縮小というところが特に淡水魚に対しては大きな影響を与えたというところは認識は共通でございます。
○倉林明子君 提言でも紹介されていますアユモドキの生態、これについて紹介を、環境省、お願いします。
○政府参考人(奥主喜美君) この提言によれば、アユモドキは河川中の湧水を利用して越冬する魚です。春には小さい河川や水路に移動し、取水のためにせき止めた場所や梅雨の大雨等により河川や水路が一時的に増水して生じるところで植物の茎などに産卵します。稚魚は、水田間の細い水路を遡りながら、水田で発生しその細い水路に流れ出るプランクトン等を食べて成長します。その後、カゲロウの幼虫やイトミミズなどの多様な底生生物等を食べて更に成長して、再び河川や水路に戻ります。
このように、アユモドキは人間の営農活動と密接に関わる水田や水路等の多様な環境に依存して生活する種であると言えます。
○倉林明子君 今日は資料で、そのアユモドキの生息が確認されております京都府亀岡市の曽我谷川周辺地図を入れております。曽我谷川を中心に南北を、これ水田ですね、休耕田もありますけれども、水田で囲まれた地域であります。
今御紹介ありましたように、アユモドキにとっては、河川に湧き水、湧水があるということが必要だし、水田が周辺にある、さらには大雨などによる増水が確保されている、どれも欠かせないというのがアユモドキの生息環境だということがはっきり分かってきたということだと思うわけです。
そこで、この地図で見ますと、真ん中、下のところにJRの亀岡駅というものがあります。その北側の農地約十六ヘクタールを商業施設や住宅地に造成する都市計画の変更、あわせて、曽我谷川を挟んで北側にサッカー専用スタジアムを建設するということで進んできたわけですが、二〇一四年一月に、京都府の当時の都市計画の変更に対しまして、アユモドキ等の生息環境保全のためということで環境大臣が意見を出しておられます。その内容について環境省に確認させてください。
○政府参考人(奥主喜美君) お答えいたします。
環境大臣意見では、実施計画の策定に対し、平成二十五年に京都府と亀岡市で設置いたしました環境保全専門家会議の意見を聴取し、環境保全措置を計画に反映させること、事業の着手までの間も専門家会議等の意見を踏まえ自然環境の保全に努めること、実施計画策定や事業実施に当たり事業による地下水への影響等を考慮すること、事業後も環境の状況につきモニタリングを実施することなどが必要であるとしているところでございます。
○倉林明子君 環境大臣意見で主に四点指摘があったわけだけれども、その二つ目のところを確認したいと思うんですね。
自然環境の保全を求めた駅北地区及びその周辺ということになろうかと思いますが、具体的にその地域というのは、地図もありますので、地図の上でも明確にお示しいただければと思いますが、どの範囲になるでしょうか。
○政府参考人(奥主喜美君) お答えいたします。
先生御提出の資料でございますけれども、駅北地区及びその周辺地域とは、先生御提出の資料のうち、黄色で囲まれたJR亀岡駅北口周辺の亀岡駅北地区土地区画整理事業地と、赤色で囲まれた曽我谷川の北側を含むアユモドキの生息域と考えられる地区一帯を指していると認識しております。
○倉林明子君 生息も確認された地域で保全活動にも取り組まれている地域ということで、この地域を本当に指定していただいたということだと思います。
アユモドキの生息環境を確実に維持すると、これはもう本当に喫緊の課題になっているわけですから、そのためにはもう最低限配慮が求められる地域であると、この認識に間違いございませんでしょうか、環境省。
○政府参考人(奥主喜美君) 環境省といたしましては、アユモドキの生息保全につきましてしっかりした対応が必要であるというふうに考えております。
○倉林明子君 そこで、大臣に確認をしたいと思います。
生物多様性条約第十回締約国会議で採択された愛知目標、ここで絶滅危惧種について具体的に定めた目標は何だったか、さらに、二〇二〇年までに達成しなければならないとした意味について御説明をいただきたい。
○国務大臣(丸川珠代君) 生物多様性条約第十回締約国会議で採択された戦略計画では、愛知目標十二として、二〇二〇年までに、絶滅危惧種の絶滅が防止され、また、それらのうち特に最も減少している種に対する保全状況の改善が達成、維持されることが設定されております。
この戦略計画の短期目標は二〇二〇年までを区切りとしておりますが、これは締約国間の議論の結果、二〇二〇年までに生物多様性の損失を止めるために効果的かつ緊急の行動を実施するものとして設定をされました。
○倉林明子君 この二〇二〇年までに達成しなければならないと。本当に、要は再び元に戻らないという性格の目標だということだと思うんですね。二〇一四年の生物多様性条約第十二回の会議では、愛知目標の中間評価が発表されております。そこでも、緊急的で有効な行動が不可欠だというふうな指摘があったかと思います。
目標達成に向けた国の責任、私は極めて重いと思いますけれども、大臣、認識いかがですか。
○国務大臣(丸川珠代君) 愛知目標については二〇二〇年までというのが一つの節目になっておりまして、かつ、それまでに非常に緊急性を有するという意識が共通して貫かれているものと認識をしております。
私どもといたしましても、特に今回の検討会で指摘しているのも、人の手が入っている二次的な自然環境の中で絶滅の危機を迎えている種をどのように保全するかということで、大きな課題として捉えているがゆえの検討会の結論でございますので、しっかり受け止めて、行動すべきは行動していくべきと考えております。
○倉林明子君 そこで、御紹介したように、この貴重なアユモドキの生息地になっております曽我谷川周辺で、まさに今、開発計画が進行中ということになっております。専門家会議等も時間を掛けて検討もしていただいて、引き続き調査も必要だというようなお話も伺っているわけです。地図上で示しましたその赤色で囲んだところがサッカースタジアムの建設予定地というふうになっているわけですが、ここの建設については無理だろうという御提言も出た。私は当然のことだと思うんですが。先ほど一体で保全すべき地域だという御指摘があったその駅北、黄色の枠で囲んだところについて、建設計画を移動してはどうかというような御提案も出ている。
私、やっぱり保全すべき地域ということで国が責任を持つというところが、やっぱりその曽我谷川の北も、そして駅北、いわゆる曽我谷川の南も一体だというふうに思うんですね。二次的自然、人間がつくり上げた環境がこのままでは崩壊してしまうと、こういうときに、愛知目標も含めて生物多様性、この危機的な状況のアユモドキを保全する、そういう意味で国の役割を今本当に果たすべきじゃないかと思うんですけれど、いかがでしょう。
○国務大臣(丸川珠代君) 里地里山を始めとする二次的自然が危機に瀕しているという思いは先生と共通だと思います。
今、環境省では、森里川海のキャンペーンを行って、全国でそうした意識を地域地域で持っていただけるような取組というものをしておりますし、またそれらの車座集会等でいただいた御意見をどのように生かしていくかということを今検討しているさなかでございますが、この亀岡市の件につきましては、私どもが意見を言える場面というのは、まさに今御指摘をいただきました平成二十六年一月の南丹都市計画に対する都市計画法に基づく環境大臣意見の提出の機会でございましたので、この機会には、駅北地区及びその周辺ということで、そもそも駅北地区とこの周辺を一体として捉えていただきたいという思いを込めた意見書を提出させていただいたわけでございますので、今後、これまでもこの亀岡市及び京都府と、種の保存法に基づいて策定されましたアユモドキの保護増殖事業計画に基づいて進めてきた事業はございますけれども、引き続き、地元の関係者の皆様の御協力をいただき、また理解をいただいて、この地域の専門家会議の検討の結果をしっかり受け止めていただきたいと思っております。
○倉林明子君 環境大臣の意見までなんだということでは駄目だと、種が保存できないアユモドキの危機的な状況というのは避けられないんじゃないかと思うんですね。改善できないと思っているからこそ取り上げているわけで、私は、このアユモドキの保全に関して国が何をどう責任果たすのかという点でやっぱり一歩前に出て、国が、必要な地域としてここ要るんだということははっきりしているわけですから、それを保全するために法整備、土地の買取り、そのための予算、人材、こういったものも確保して保全に、前面に対応していくべきだと思うんですけれど、大臣、いかがですか。
○国務大臣(丸川珠代君) 今、専門家会議で御議論いただいている経過を私どももつぶさに拝見をしておりまして、座長の御意見等も今伝え聞いているところでございます。
やはり、アユモドキが全国三か所しか生息が、循環しているところがなくて、かついずれも千匹程度しか確認をされていないということの重要性については地域の皆様方も十分御理解いただけるものと思っておりますし、今の議論の流れを鑑みるに、よく御理解をいただいてこの後進めていただけるのではないかと思っておりますが、いずれにいたしましても、私どもこれまでも共に保護増殖計画等取り組んでまいりましたので、引き続き、その流れの中で地元の関係者の皆様としっかり協力をして、また意見を交換して、このアユモドキの種の保全に取り組んでまいりたいと思います。
○倉林明子君 やっぱり、開発と保全というものが両立してこなかったということをしっかり教訓にしながら、保全に対して国が一歩踏み込んでその責任を果たすということを強く求めておきたいと思います。
質問を終わります。