多様な民意反映を 参院の役割について(国の統治機構に関する調査会 意見表明)
日本共産党の倉林明子議員は6日、参院・国の統治機構に関する調査会で、「二院制議会における今日の参議院の役割」について意見表明しました。
同調査会(2013年8月設置)は「時代の変化に対応した国の統治機構の在り方」をテーマに参考人からの意見聴取を行ってきました。
倉林氏は「国民主権の原則を根本に据え、参議院が国民の代表として多様な民意を国政に反映できているかの検証が求められる」と述べ、安倍政権による戦争法強行や原発再稼働・輸出、消費税率10%への増税など、国会と民意の乖離はますます広がっていると指摘しました。
倉林氏は、参考人から議員定数削減ありきの選挙制度見直しに対する危機感や、内閣に対するチェック機能が弱まることへの懸念が出されたことに触れ、「多様な民意が議席に正確に反映される比例代表を中心とした制度に抜本的に見直すべきだ」と主張しました。
また、18歳選挙権についての参考人からの期待や、日本の女性国会銀の比率がOECD(経済協力開発機構)加盟国34カ国中最下位であることを示し、女性や若者の政治参加を促進することの重要性を強調。「立憲主義、民主主義とは何か、多くの国民が真剣に考え行動している今、国会が国民主権の原理を深く自覚することが強く求められている」と述べました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
「二院制議会における今日の参議院の役割」を考えるに当たって、憲法の国民主権の原則を根本に据えることが最も重要です。今日、参議院が国民の代表として多様な民意をいかに国政に反映できているのか、憲法の要請に応えられているのかという視点からの検証が必要です。
国会は、唯一の立法府として、国政調査権の行使、議員の質問権を十分に保障した国会審議によって強大な行政権力を監視する重大な任務を果たしていくこと、そして衆参両院がそれぞれ多様な民意を反映する選挙制度によって選ばれた議員で構成されることが重要であり、それが憲法の求めるところです。同時に、国会には、質疑の内容を国民に広く知らせ、それに対する国民の声を審議に反映し合意形成を図るという責務があります。世論を二分するような法案であればなお徹底審議が求められることは当然です。
今、国会は、参議院は、その責務を十分に果たせているのかが問われています。昨年、安倍政権は、歴代内閣の憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認するという閣議決定を行い、多くの反対世論も憲法学者の声も押し切って安全保障法制を強行成立させました。国民に分かりやすく説明するとの約束は全く果たされておりません。東京電力福島第一原発事故から五年が経過しても、事故原因の解明も増え続ける汚染水対策も見通しが立っていません。こうした状況にもかかわらず原発再稼働と輸出に突き進む政府に対し、国民は納得しておらず、司法からも待ったが掛かる事態となっています。さらに、来年四月の消費税一〇%への増税に、世論調査では六、七割が反対しています。
二〇一四年の二月、本調査会に参考人として出席された野中廣務元内閣官房長官は、ここ数年の政治の実態は、憲法が規定し、期待するものと相当に異なったことが平然と行われているとして、与党での議論と国会での野党の議論が形骸化していけば、議会制民主主義は機能不全となる、今日相当危険な状態だと警鐘を鳴らされました。国会と民意の乖離は、その後ますます広がっているのではないでしょうか。
議会制民主主義の根幹である選挙制度が、小選挙区制によって民意の反映がゆがめられ、第一党が圧倒的多数の議席を独占し、得票率と獲得議席に著しい乖離が起きていることが最大の問題です。現状は違憲状態であるとの最高裁判決を繰り返し受け、見直しが衆参に求められました。参議院では昨年見直しが実施されましたが、当面の較差を三倍以内に収めようというものにすぎず、合区に対しては対象県から地方軽視との反発を招いています。衆議院では、定数削減ありきで小選挙区制を温存した見直しの方向が示されています。参考人からは、国会議員の数を減らせばよいという考え方に対する危機感や内閣に対するチェック機能が弱まることへの懸念から明確に反対するとの意見、一票の較差是正がより困難になるなどの意見があり、これは重要な指摘です。多様な民意が議席に正確に反映される比例代表を中心とした制度へ抜本的な見直しが必要です。
国会への民意の反映という観点から、女性や若者の政治参加を促進していくことは喫緊の課題です。国際的には圧倒的な数の国々で導入が進んでいた十八歳選挙権が、次回の参議院選挙からようやく日本でも導入されることとなりました。これまで反対が多かった若者の意識が変化し、七割の若者が良いことだと答えているとの紹介があり、参考人からも賛意と期待が示されました。
一方で、日本の女性国会議員の比率は、OECD加盟国三十四か国中最下位という事態が続いています。参考人からは、女性の国会議員が増えれば政策の中身が変わること、有権者の信頼を回復するという意義があるとし、女性議員を増やすために選挙制度の見直しの提案もありました。
戦後初の衆議院選挙が実施された一九四六年、初めて女性が参政権を獲得した選挙で三十九人の女性議員が誕生しました。自らの体験から戦争反対を訴え、食料事情や労働環境の改善など生活に根差した声を国会で伝える役割を果たしました。
予想外とされた多数の女性議員誕生の背景には当時の選挙制度もあったとされています。その後、選挙制度の見直しにより女性議員が減少し、戦後初の三十九人を超えるまでに何と六十年間を要した事実、重く受け止めるべきです。これは参議院でも同様に問われる問題であり、各政党が候補者の女性比率を高める努力が求められるとともに、この点からも選挙制度の抜本的な見直しが求められることを指摘しておきます。
国会と民意の乖離を生んだ要因として、政党交付金の問題が挙げられます。
一九九四年、金権腐敗政治に対する国民の大きな怒りを受け、企業献金の廃止と引換えに導入されたのが政党交付金でした。ところが、禁止されたのは政治家個人への企業献金だけで、事実上、企業献金を継続するだけでなく、政党交付金も受け取れることとなり、政治と金の問題は繰り返し浮上し、閣僚の疑惑も後を絶ちません。経団連は企業献金への関与を再開する方針を決め、金融危機の下で巨額の公的資金の注入を受け、一九九八年から政治献金を自粛してきた銀行業界もなし崩し的に再開する可能性も出てきています。政党交付金と企業献金の二重取りの状態は今も続いています。企業・団体献金及びパーティー券も含めてきっぱりやめることが国民の政治不信を払拭することにつながるものであることを改めて指摘します。
さらに、今や政党交付金は日本共産党以外の政党の主な収入源となっています。政党の再編、離合集散を促進し、国民の目線から見れば政党交付金を受け取るためかと見え、政界の劣化につながっているのではないかとの参考人からの指摘は深刻に受け止めるべきです。
政党は、国民の中で活動し、その政策を訴え、国民の支持を得て、その活動資金は国民一人一人からの個人献金によるのが常道です。企業・団体献金の禁止と併せて政党交付金を廃止することが政治の信頼回復につながるものであると強調しておきます。
安倍政権が強行した原発再稼働や安全保障法制に対し、全国で国民が立ち上がり、ノーの声を上げています。立憲主義とは何か、民主主義とは何か、多くの国民が真剣に考え、国民こそこの国の主人公だと自覚を深め、行動しています。
憲法前文は、そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表がこれを行使し、その福利は国民が享受する、これは人類普遍の原理であるとしています。衆参両院がその原理を深く自覚することが今日強く求められていることを指摘いたしまして、意見表明といたします。