病床削減予定5万床にー政府誘導で医療体制衰退ー(2025年4月22日 厚生労働委員会)
医療機関の倒産・休廃業が過去最多を記録するなか、病床を削減する
病院には給付金を出すという異常な「病床数適正化支援事業」への給付
金申請が殺到し、削減対象が5万病床に上っている実態について、日本
共産党の倉林明子議員が22日の参院厚生労働委員会で追及しました。
厚労省が都道府県に示した同事業の配分額(第1次内示)は294億
円に上り、廃止届が前提となる対象病床は7170床に達します。配分
額は補正予算の枠を超えましたが、同省は6月中旬にも第2次内示を予
定。医療機関が提出した計画書では削減予定病床は5万床に達してお
り、同事業の対象病床は今後も増える見通しです。倉林氏は「これ以上
の病床削減を大規模に進めれば医療提供体制は崩壊する」と警告しまし
た。
倉林氏は「診療報酬引き下げと物価高で経験したことのない赤字が累
積している病院には、上限50床で2億円の給付金は喉から手が出るような金額だ。政府による休
廃業の加速、病院つぶしにつながる」と指摘。物価高・人件費の伸びに見合った思い切った直接
支援や、2年に1度の改定を待たない診療報酬引き上げ、社会保障費を「高齢化の伸びの範囲に抑
制」する予算の枠組みそのものの見直しを政府に迫りました。
福岡資麿厚労相は「関係者の意見を丁寧に聞きながら検討を進める」と述べるにとどめまし
た。
倉林氏は「医療提供体制の弱体化が地方にとどまらず都市部でも急速に進行している」と強調。
医療現場で離職が増え、賃上げが求められるなか、人件費に充当可能な支援事業(2024年度
補正予算で828億円)は200床の病院でも818万円しか交付されないと批判し、「医療機関
の赤字の規模は数億円単位だ。支援の枠組みが小さすぎる。ただちに全額公費による賃上げ支援策
に踏み出すべきだ」と政府に迫りました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
自民党からも質疑ありましたけれども、医療、介護、ここの提供体制というのは崩壊の危機に直面しているんだと、これ厳しい認識を持つべきだというふうに改めて申し上げたいと思います。
帝国データバンクによりますと、去年一年間の医療機関の倒産、休廃業、何と七百八十六件と過去最多となっております。既に地域から病院がなくなると、こういう事態は始まっております。帝国データバンクは、二〇二六年、来年には何と一千件にも倒産、休廃業が達する可能性が高まっていると指摘しております。
私、医療提供体制の弱体化という問題がこれ地方にとどまらない、都市部でも急速に進行しているというふうに受け止めているんですけれども、大臣、認識どうでしょうか。
○国務大臣(福岡資麿君) さきのやり取りの中でも、この医療機関の置かれた経営環境の厳しさについては指摘があったところでございます。そして、これまでも申し上げてきていますように、地域医療を支えるその医療機関がその地域からなくなってしまうというような事態については避けなければならないというふうに思っています。
これまで、令和六年の診療報酬改定、それで足らざるところについては昨年末の補正予算、そして、それがこれから行き渡るんですが、その前に医療機関が倒れてしまってはいけませんから、WAMによる緊急融資等の措置を講じてきているところでございます。
引き続き、足下の状況をしっかり見ながら必要な対応については検討してまいりたいと思います。
○倉林明子君 報道によりますと、東京武蔵野市の吉祥寺駅周辺、十年の間に四つの病院が姿を消したと。二次救急医療を担っていた病院なんですよね。何と三百三十三床がこの地域から消えると。そのうち二か所については昨年なんですよ、休廃業、二四年に起こっているんですね。これさらに、全国で統廃合の計画も進んでいると、これまでの地域医療構想の中でね。新しい病院を建てなあかんというタイミングのところもあります。ところが、これが、物価、資材高騰ととんでもない値上げの中で、計画が暗礁に乗り上げているというような事態もこれ進行しているんですよね。
自民党の衛藤議員からも指摘ありましたけれども、じゃ、現場が何でこんなことになっているかというと、離職が本当増えているわけですよ。じゃ、その賃上げ、効き目がある賃上げというのは現場に届いていますかということで、私からも意見申し上げたいと思うんです。
今もありましたけれども、効果を見極めるということを繰り返し答弁されている補正ですよね、令和六年の補正。この効果がどうなのかということです。一千三百十一億円、緊急支援パッケージということで補正で積まれました。うち八百二十八億円、これ確保されたのが人件費にも充当可能だとされた生産性向上・職場環境改善等の支援事業ということになっております。パッケージの中で一番大きいんです、これね、額は。ところが、その進捗状況はどうなっているのかということを御報告いただきたい。申請件数はどうか。決定件数。そのうち人件費に充当しているということでの状況はどうなっているのか。行き渡っているかどうか。
○政府参考人(森光敬子君) お答え申し上げます。
御質問にありました生産性向上・職場環境整備等支援事業につきましては、国において必要な予算を措置した上で都道府県において事業が実施するものでございます。都道府県や医療機関において十分な準備期間を確保する必要がございますので、令和七年度予算に繰り越した上で実施しているというところでございます。
現在、都道府県において準備中であり、お尋ねの申請件数、決定件数及び人件費への充当額、これはこれから把握していくということになります。一部の都道府県では募集を始めておると聞いておりますが、全国でも速やかに取組が進められるよう、引き続き都道府県と連携しながら対応してまいりたいと考えておるところでございます。
○倉林明子君 まだ手挙げるというようなところまで把握できていないという実態だと思うんですけれども、これなかなか手挙げにくいと思うんですよ。
許可病床数に掛ける四万、そして一つの施設に十八万円ということになりますよね。これ仮置きして二百床の病院ならどれだけになるかと。八百十八万円なんですよ、額が。そうすると、一回限りでしょう、使えるのは。つまり、賃上げに使うなんていうことには額も余りにも少ないし、将来の見通しにもならないと。今、医療機関の赤字の規模って億円、数億円単位になってきていますから、そういう意味でも支援の枠としては小さ過ぎるということを指摘しておきたい。手挙がらないのは当然だと思います。
その上で、ベア評価料や補正予算はどれだけその賃上げ、結果が出せているのかということでいいますと、直近の春闘の回答状況、これ医労連から、医労連が公表しております。平均の引上げ額は昨年を下回っていると。夏のボーナスもマイナスなんですよ、回答。去年と比べてもマイナスということになっております。現場からはどんな声が上がっているかと。私は勤続二十年だと、ところが、ユニクロの新入社員と同じ基本給だと、悲しいというんですよね。
こういう声まで寄せられて、私、追加の賃上げ支援というのは待ったなしだと。来年の話じゃないんですよ、今、今要るということなんだけれども、いかがでしょう。
○国務大臣(福岡資麿君) 賃上げの状況につきましては、令和六年賃金引上げ等の実態に関する調査におきまして、医療、福祉の一人平均賃金の改定額は六千八百七十六円、改定率は二・五%というふうになってございます。
ちょっとそのデータの取り方、先ほど御紹介されたデータ等のいろいろ、様々なデータございますが、更なる賃金上昇につながるように取り組んでいくことも含めまして、今、先ほども言いましたその補正予算、そしてそれに足らざる部分等については緊急融資等も使いながら、足下の状況を見て必要な対応を行ってまいりたいと思います。
○倉林明子君 足下の危機的な状況をしっかりつかんでもらわないと追加の支援ということにつながっていかないと思っているんですね。
医療、介護、福祉分野で働いている人というのは九百万人いらっしゃると、全労働者のうち一四%占めていると。こういうところを公定価格上げないということになると、どうなるかと。賃上げの足を引っ張るということになるんですよ。直ちに全額公費、繰り返し求めてきましたけれども、賃上げ支援策ということに踏み出すべきだと、これ重ねて求めておきたいと思います。
一方、申請が殺到している、このパッケージの支援事業の中で殺到しているのは何かといいますと、病床数の適正化支援事業なんですね。これ、何とですよ、七千床規模で予算化されていたはずなんだけれども、五万床を超える計画書が提出されていると、現時点でですよ。これ、公表された第一次の内示によりますと、廃止届が前提となるんですね、これ、使おうと思ったら。これ、給付金の対象病床数は既に七千百七十と、一次の内示が。配分額、合計は二百九十四億円ということになっております。これ、上限を超えています、既に。さらに、にもかかわらず、六月中旬にはこれ二次の、第二次の内示が示されるということです。一体どこから予算持ってくるんだろうかと。
給付金の対象病床数、これ何床を見込んでいるのか。手挙げたのは五万床です。どこまでそういうのを拡大して対象にするのか。いかがですか。
○政府参考人(森光敬子君) お答え申し上げます。
病床数適正化支援事業につきましては、議員御指摘のとおり、医療機関から五万床を超える申込みが、申請がございました。約七万床の予算配分について、四月の十一日に都道府県へ第一次の内示を行ったところでございます。
執行状況、他の補正予算の事業や融資拡大と併せて、まずは必要な支援が現場に行き届くよう取り組むとともに、執行状況や足下の情勢変化を丁寧に把握した上で、本事業の第二次の内示も含めて、これは他の補正予算等の執行残も活用した予算確保、更に必要な対応を検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
○倉林明子君 とんでもない規模になると思うんですよ、削減病床数というのは。
報酬改定と物価高で、経験したことがない赤字というのが今現場の経営者のところに押しかぶさっているんですよね。数億円規模だということを申し上げました。上限二億円ということで使えるんですね、これ、二百床規模の場合。こういう、あっ、ごめんなさい、上限五十床までで二億円の給付金が使えるということになります。赤字で苦しんでいるところにとったら、本当に喉から手が出るような金額になっていると思います。
政府による、これ、五万まで行くかどうかは別として、更に拡大していくというお話だと、政府によるこれ休廃業の加速と、病院潰しということにつながっていくということを強く指摘したいです。
令和二年度から始まった病床削減支援ということで、これは事業ずっと続いています。コロナのときも削っていました、病床。地域医療構想実現がこれ目的とされておりまして、今回の補助金とはちょっと性格は違うと思っているんですね。最大これ一床当たり二百二十八万円だったわけです。消費税財源として令和五年度までに合計二百二十四億円を超えて配分されているんですね、既に。
廃止した病床数というのは、令和五年度まででどんだけ廃止してきたのか、直近の報告病床数というのはどれだけになっているか。
○政府参考人(森光敬子君) お答え申し上げます。
地域医療構想におきましては、病床機能の分化、連携を推進するため、地域医療介護総合確保基金における病床機能再編支援事業として、自主的に行われる病床減少を伴う病床機能の再編等に要する経費として財政支援を行っております。
この事業により減少しました病床数につきましては、令和二年から令和四年度までにおいて、単独医療機関における減少分が七千百七十七床、複数医療機関の統合による減少分が九百九十一床となっております。
直近では令和四年度において、単独医療機関における減少分が二千三百五十四床、複数医療機関の統合による減少分が百九十八床となっております。
また、先ほど私、七万床の申請と申し上げましたが、七千床の申請でございました。おわびしまして訂正させていただきます。
○倉林明子君 既に令和五年度までこれ入れた額というのは分かっているわけですよね、二百二十四億円になっていますから。もう一万床を超えるような削減に結果なっていると、概算で計算してもね。そういう数字ははっきり出した方がいいと思います。既にその第一次の内示については数出ていますから、そういうところ含めて、きちんと議論できるような材料提供をしていただきたい、これは強く申し上げたい。
現行の地域医療構想では、二〇二五年の必要病床数、先ほども紹介あったけれども百十九・一万床ということにしておられます。これ以上ね、これ以上病床削減を大規模に進めるということがどういうことを意味するかということなんですよ。医療提供体制が地域でも都市部でももたないということになるんじゃないかということを指摘したいわけです。
物価高、人件費の伸びに見合った思い切った直接支援と併せて診療報酬の期中改定、社会保障費に掛けられてきた、高齢者の、高齢化の伸びの範囲に抑制すると、こういう予算の枠組みということを本当に来年度に向けてこれは本格的にやらないと駄目だと。自民党も決起集会を開かれたようですけれども、そういう声しっかり受け止めた対応を求めたいと思います。いかがでしょう。
○国務大臣(福岡資麿君) 目安対応等については、これまでもこの委員会でもかなり議論をしていただいてまいりました。
社会保障関係費の財政フレームにつきましては、令和七年度予算においては、骨太の方針二〇二四に基づきまして経済・物価動向等に配慮を行ってございまして、例えば医療機関の入院時の食事、食費基準の引上げを行うなどの対応を行っております。
今後も、この経済・物価動向等の配慮も含めまして、関係者の方々の御意見も丁寧に伺いながら検討を進めてまいりたいと思います。
○倉林明子君 いや、医療提供体制の崩壊が始まっているんですよ。パンデミックはいつ起こるか分からないんですよ。あのコロナのときの教訓を本当に踏まえた対応ということになるのかと、ならないと指摘して、終わります。