倉林明子

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AV被害法案可決/性交契約規制を要求(2022/6/14 内閣委員会)

 アダルトビデオ(AV)出演被害の防止・救済法案が14日の参院内閣委員会で全会一致で可決されました。
 
 採決に先立ち日本共産党の倉林明子議員は「AV出演だとわかった上で契約しても虐待や貧困、性暴力から抜け出すため契約せざるを得ないという実態がある」として、解除権があっても事実上行使できないとの懸念にどうこたえるかと質問。提案者の山下貴司衆院議員(自民)は「お金が必要で契約せざるを得ない事態を生じさせないようにすることは必要だ。相談体制の規定を設け、相談に応じる体制を整備する」と述べました。
 
 また倉林氏が、第三者との性交を義務付ける契約は刑事罰の対象となり、それ自体が公序良俗違反とされる可能性もあるとただしたのに対し山下氏は「事案によって公序良俗違反で無効となる場合もある」「刑事罰の対象となる行為が行われれば取り締まりの対象となる」と認めました。
 
 倉林氏は、衆院質疑で提案者が「AV出演において有償で性交を実際に行う行為の条項の有効性」は検討事項だと答弁したことへの認識を質問。提案者の宮崎政久衆院議員(自民)は「被害者支援に取り組む団体の懸念の声などを聞き、検討していく」と述べました。
 
 倉林氏は「対価を払って性交させる契約は個人の尊厳を傷つけるものだ」と指摘し、性交を伴う契約自体を規制する新たな法整備を求めました。


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 本法案に対して、救済できるように成立を早くと、こういう求める意見と同時に、この法律では救えない被害者も多いんじゃないかという声が上げられております。スカウトだと思って行ってみたらAVだったと、こういう話が違うという人たちにとって取消しや解除というのもしやすいということになりますけれども、AV出演だということを分かった上で契約した場合、虐待、貧困、性暴力から抜け出すためと、生きるためにお金が必要で契約せざるを得ないと、こういう実態もたくさんお聞きしているわけですね。
 解除権があっても事実上行使できないのではないかという懸念の声が示されているわけで、この声に発議者はどう答えますか。

○衆議院議員(山下貴司君) 倉林委員の御指摘、その懸念について我々もしっかりと対応していきたいと思います。
 まず大前提として、出演料を返還しなければ契約を解除できないというふうに言われることがありますが、これは事実ではありません。事実と異なることでございます。確かに、出演契約が解除された後、各当事者はその相手方に対して原状に回復させる義務を負うことになりますけれども、原状回復義務は、まず解除があってその後に初めて生ずるものでございまして、解除権を行使する条件として原状回復義務を同時に履行しなければならないというものではないというのは、先ほど國重衆議院議員がおっしゃったとおりでございます。
 ですから、出演者は出演料を直ちに返還できない状態であっても契約が解除できます。このことは強調しておきたいと思いますし、また、出演契約の任意解除を妨げるために事実でないことを告知したり、あるいは出演者を威迫して困惑をさせた場合においては、これは罰則の対象にもなる、犯罪にもなるということで、これは違うということは周知していきたいと思います。
 また、委員御指摘のとおり、そもそもお金が必要で契約をせざるを得ないという事態を生じないようにすることはもう必要であると思っております。そのためには、本人が契約せざるを得ないと考えたとしても、例えば一度立ち止まってほかの方法がないか相談して考える機会を持てることが重要であると考えております。
 そうしたことについて、熟慮期間など制度的に設けているんですが、そうした相談先を確保すべく、本法案十七条において相談体制の整備という規定を設けて、出演者等からの相談に応じる体制を整備することとしております。こうした相談機関も活用していただき、必要な情報提供や支援を受けることで、お金が必要で契約せざるを得ないというふうに思い込むということ自体を避けることがなるということを期待しております。
 また、本法十八条において、委員御指摘のとおり、AV出演被害の背景に貧困問題が指摘されているということで、そのことを踏まえて、出演に係る被害の背景にある貧困、性犯罪及び性暴力の問題の根本的な解決に資するよう、社会福祉に関する施策、性犯罪及び性暴力の被害者への支援に関する施策その他の関連する施策との連携を図りつつ、出演者その他の者への支援その他必要な措置を講ずるということを規定しているところでございます。そうした、こういう条文も見て我々もしっかりフォローアップしていきたいと思います。

○倉林明子君 御紹介しましたようなケースの場合、契約を結んだのは自己責任と思い込むと、AVへの出演が被害だという認識するまでに何年も掛かると。誰にも相談できないで、迷った末にようやく相談と至ったときには、既にもう二次利用されている、海外サイトにまでアップされていると。拡散されているということも決して珍しくないということです。
 本法案は、理由がなくても解除できる任意解除権と、一年間、まあ経過措置の間、二年間行使できるということなんだけれども、解除権が行使できると、これ知るまでに時間掛かったら救済できないわけですよね。
 私、本法案が成立した場合、AV出演契約の規制がどのようなもので、どのような被害防止と救済の手段があるのか、これ広く周知啓発することは決定的に重要だと思います。端的にお答えください。

○衆議院議員(宮崎政久君) お答えいたします。
 御指摘のとおり、被害の防止、救済、非常に重要であります。この法案のタイトルもそのような形にさせていただいているところでございます。
 本法案成立をした後には、政府において、様々な広報ツールを駆使して本法案の内容については先生御指摘のように周知を図らないといけないというふうに考えております。
 また、AV出演被害を未然に防止するためには、このAV出演被害についての必要な教育、啓発を行うこと、非常に重要だというふうに考えておりまして、この法案の十九条では、学校を始め、地域、家庭、職域その他様々な場を通じてとあえて明記をいたしまして、その上で、被害発生を未然に防止するための必要な教育活動、啓発の充実を図るということにしておりまして、この法案の内容、前提事実もしっかりと社会に伝わるようにしてまいりたいと思っております。

○倉林明子君 法案三条二項では、性行為を強制してはならないと、で、三条三項、公序良俗違反の契約は有効とならない、そして三条四項、刑法や売春防止法で禁止される性行為ができるようになるものではないと、などと注意的に示した条文が複数盛り込まれているわけです。
 AVの中には、暴行を含むなどの刑事罰に当たる、あるいは明らかに公序良俗に反するものもあるわけです。こうした内容を含む契約の場合、出演者はどのような法的な対応を取ることが可能となるか。

○衆議院議員(山下貴司君) どのような行為が刑事罰の対象に当たる、あるいは公序良俗違反に、反するかについては個別具体的な判断によるものでありますが、一般に、刑罰の対象に当たるような強行法規違反の行為あるいは公序良俗に反する行為がある場合の出演契約は無効であると考えております。本法案は、そうした民法九十条その他の規定の解釈適用など、現行法の立場をいささかも変更するものではございません。
 したがって、出演者は、契約後であっても無効を主張し出演や撮影を拒絶できますが、なお簡便には十三条の任意解除により契約を解除することができます。こうした出演契約が無効である場合や契約が解除された場合には、そもそも出演者は当該出演契約に基づいて出演する義務を負いません。
 また、本法案で定めるように、性行為映像制作物の撮影に当たっては、出演者の安全及び衛生並びに債務の履行の任意性が確保されるよう必要な措置を講じなければならないということになっておりまして、出演者が拒絶したにもかかわらずそうした撮影が行われた場合には、当該義務違反があったとして出演者は出演契約の解除を行うことができますし、先ほど申し上げたような十三条に基づく任意解除も可能であります。
 さらに、制作公表者が特定の行為を強要した、暴行、脅迫を用いて強要した場合には、場合によっては強要罪や強制性交罪などの犯罪や、あるいは、解除権について先ほど言った不実なことを言ったりした場合には、不実告知罪などの犯罪も成立し得ます。そうした犯罪が成立する場合には、出演者は、告訴や被害届を出すなどして処罰を求めることができる、また不法行為に基づいて民事上の損害賠償を請求することもできる場合があると考えられます。
 そして、公表されてしまった場合には、先ほど来ありますように、この無効や解除を理由などとして十五条に基づく差止め請求や、十六条において特例が設けられているプロバイダー責任制限法による削除要請等を行うということが考えられます。

○倉林明子君 契約を解除すると、出演者も原状回復義務を負うと、そして報酬は返還ということになります。これが解除権行使のハードルとなって、解除権があっても実際には行使できないと、こういう懸念の声も上がっているわけです。
 まず、契約内容と異なる撮影のために取り消したり解除したりする場合に、別途出演者が損害賠償請求をする余地もあるはずだと思うわけですけれども、いかがかと。
 また、契約違反がなくて任意で解除する場合、これ返金が必要となる、これがハードルになり得るということも考えられるわけです。こうしたケースでの支援というのはやっぱり別途検討が必要だと、別途必要になると思うわけですね。
 法案には相談支援体制を整えるということ含まれているわけですが、予算、人的体制の拡充、これどう進めるのかと、大きな課題だと思います。特に、出演者が解除権を行使できるようにするために、報酬の返金がハードルとなると、こんなことはないようにしないといけないと思うんだけれども、具体的にどんな手だてお考えか。

○衆議院議員(宮崎政久君) お答えいたします。
 まず、損害賠償を請求する余地があるかという点でございますけれども、契約内容と異なる撮影が行われ、契約が解除などをされる場合については、その撮影の態様次第では債務不履行になる場合もあります。また、不法行為になる場合もございます。こういったことに該当する場合には、先生御指摘のとおり、出演者が損害賠償請求をする余地は十分にあるというふうに考えております。
 特に、本法案七条三項では、出演者の撮影において拒絶ができるようにするなど、履行の任意性が確保されるように配慮しなければいけないと書いておりますので、契約内容と違うものを強制するということであれば七条三項違反になりますし、十二条で解除をすることもできますし、さらには、別途損害を賠償する場合は十分あるというふうに考えているところでございます。
 そして、出演料の返還が解除権行使の前提にはならない、今日再度答弁もさせていただいているところでございますし、また、出演者の解除権の行使を妨げるために不実の告知をするような場合には、十三条五項に違反して罰則の適用がある。これは、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金、法人の場合は両罰規定もございます。こういったこともございます。
 さらに、被害者が抱えている経済的な問題への支援はどうするんだという御指摘がございました。
 このことは、ワンストップ支援センターが主として担っていくことになるわけでありますけれども、こういった背景事情についても、しっかりと気持ちに寄り添って相談体制をつくっていくべきであるということを相談体制の整備の中でうたわせていただいているところでございますので、こういった第十九条の規定、十七条、十八条、十九条の規定に従って、根本的な、背景にある根本的な問題の解決にも資するような体制の整備をつくってまいりたいというふうに考えております。
 当然、これ政府の方でやっていくことでありますけれども、提出者としてもしっかりこれを見守っていきたいと考えているところでございます。

○倉林明子君 解除権、せっかく行使できると規定したんだけれども使えないと、一つのハードルとして提起しましたので、本当にハードルにならないようにということでの取組が求められると指摘しておきたいと思います。
 AV撮影について、労働者派遣法、職業安定法の有害業務に当たって、刑事罰の対象となったという裁判事例があると。これらの法律は、労働者の安全、公衆衛生を守るためのもので、女性の尊厳を守るということを目的にしたものではありません。しかし、少なくとも、業者が対価を払って第三者と性交させることは、性道徳を著しく害し、性病の危険もあり、これ有害業務と言っていいものだと思うわけです。契約の形式が派遣であれ職業紹介であれ、第三者と性交させるという契約自体許されないと、こういう公序を示したものだと言えると思うんですね。
 いわゆる本番行為を含むAV撮影のように、対価を払って第三者との性交を義務付けるような契約、これは刑事罰の対象となる、それ自体が公序良俗違反と、こういう可能性あると思うんですけれども、いかがでしょうか。

○衆議院議員(山下貴司君) 本法案においては、出演者は、出演契約において定められた性行為に係る姿態の撮影であっても、その全部又は一部を拒絶することができるということになっておりまして、本法律によれば、出演者に対して第三者との性交を義務付けることはできません。
 これを前提として、公序良俗に反するか、あるいは刑事罰に値するかについては、最終的には裁判所によって判断されるものでございまして、一概にお答えすることは困難ですけれども、もとより、事案によって公序良俗違反を理由として無効となる場合や、あるいは罰則として対象となることは当然あるというふうに考えております。
 そうした場合、例えば、性交を含む契約がいわゆるAV出演被害の背景となっているという認識の下に、こうした契約の効力を制限する一方で刑事罰等も設けておりまして、刑事罰の対象となる行為が行われればもとより取締りの対象であるということでございまして、本法案の三条三項あるいは四項はその趣旨を明確にしたというものでございます。

○倉林明子君 対価を払って実際に性交させると、これ個人の尊厳を傷つけるものであって、こうしたAV撮影というのは、私は、禁止されるべきであって、実際の性交を伴うAVについて正面からやっぱり規制する新たな法整備、これ進めることが緊急に求められていると指摘したい。
 その上で、衆議院で発議者は、附則で二年以内の検討事項に、AV出演において有償で性交を実際に行うといった行為の条項の有効性についても検討事項に含まれると、こういう答弁ありました。この点が正面から議論の対象となったと、極めて重要だと思います。
 二年以内となる、時間的には限られているわけですけれども、どのように検討を進めていくお考えか、最後お聞かせいただいて終わります。

○衆議院議員(宮崎政久君) 御指摘のとおり、衆議院内閣委員会の質疑におきまして、本法案の附則第四条第二項の二年以内の検討事項につきまして、AV出演において有償で性交を実際に行うといった行為の条項の有効性についても検討事項に含まれる旨の答弁をさせていただいているところでございます。
 これは、党派を超えてこの本法案を検討する中で、対価を得て実際に性交を行うことが契約で合意された場合に、そのような契約条項を無効とすべきではないかと、こういう指摘があり、附則第四条第二項において無効とする出演契約等の条項の範囲が検討事項として明示することになったと、こういった経緯をたどっているところでございます。
 この点も含めて、出演契約等に関する特則の在り方や本法案の規定全般につきましては、本法案の施行から二年以内に、今後のAV出演被害の状況、本法案第五章の罰則の適用状況を始めとした本法案の施行状況などを勘案しながら検討を加えて、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられることとされております。
 その際には、出演者であったり、被害に遭われた方であったり、被害者支援を始めとして様々な活動に熱心に取り組んでいられる団体の皆様などの声を聞いて、実態に照らした検討が不可欠であって、その中で、先生が御指摘になっている様々御懸念の声についても改めてお聞きをしてしっかり検討するべきものだと、このように発議者としては考えております。

○倉林明子君 終わります。ありがとうございました。