倉林明子

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女性支援新法を提出 全会一致 倉林氏「相談員処遇改善を」(2022/4/12 厚生労働委員会)

(資料があります)

 参院厚生労働委員会は12日、女性支援新法の委員会提出を全会一致で決定しました。公的支援(現・婦人保護事業)の根拠法を人権の理念が欠如した売春防止法から切り離し、新たな女性支援の根拠法を制定するものです。法案は超党派でまとめました。支援に取り組んできた関係者の長年の実践と要請が結実したものです。

 日本共産党の倉林明子議員は質疑で、関係者に敬意を表するとともに、法の実効性を担保するためには財政措置の抜本的拡充が必要だと強調。公的支援事業の相談員の抜本的な処遇改善を要求しました。現在の婦人相談員の86%が非正規で、その割合も増加傾向にあります。倉林氏は、処遇改善を困難にしているのが2020年度導入の「会計年度任用制度」だと指摘。▽1年ごとの更新で3~5年で雇い止めとなるケースが少なくない▽賃金は月16万円未満が35%といった深刻な実態を示し、無期雇用への転換を求めました。後藤茂之厚労相は「地方公務員制度の運用のあり方の中で婦人相談員の適切な処遇の確保に努めていく」と答えました。

 倉林氏は新法でも「婦人相談員」を、専門的技術に基づいて必要な援助を行う「女性相談支援員」に改めるのに、雇い止めでスキルアップを阻み、相談員自身を「困難を抱えた女性」にすることなどあってはならないと強調しました。また相談数は大幅に増加する一方で相談員は増えていないとして増員を要求。市区の財政負担を軽減し、全市区町村配置の目標を持つよう求めました。

 さらに売買春・性搾取被害者を犯罪者とみなす一方、買う側は問われない規定が残っているとして、売春防止法の抜本的な見直しを求めました。


婦人相談員活動強化事業【拡充】


婦人相談員(非常勤職員)に支給する手当額の国庫補助基準額に対する割合(令和2年度の状況)


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林です。
 まず、今後採択に付されます両法案について、意見を表明しておきたいと思います。
 まず、障害者情報アクセシビリティー推進法についての意見を表明します。
 本法案の制定により、障害のある人の情報取得、利用、意思疎通が実質的に保障されることが必要です。手話通訳、要約筆記、情報通信機器等、情報コミュニケーション支援は地域生活支援事業の位置付けにとどまり、地域間格差が深刻です。今後、当事者参加の下、現状を点検し、自立支援給付に引き上げ、財政措置の拡充など実質的な権利保障の措置を求めるものです。
 次に、女性新法についてです。
 女性の権利を保障する福祉制度がない下で、不十分な制度、財政措置にもかかわらず、多様で複雑化する女性が抱える問題に寄り添い、支援に取り組んでこられた関係者の皆さんに改めて敬意を表するものです。
 こうした支援等の現場から、人権の理念が欠如した売春防止法を根拠法とすることに強い批判の声が上がり、新たな女性支援法の制定が求められてまいりました。婦人保護事業を売春防止法から切り離し、新たな女性支援の根拠法とする女性支援新法を制定することは、支援現場の方たちの長年の実践、そして要請が結実したものだと考えております。
 新法制定によりまして、当事者を権利主体とし、自己決定が尊重され、切れ目のない専門的支援が可能となり、若年女性、DV、暴力、性搾取被害、困窮など、それぞれの、それぞれの必要に応じた多様な支援が選択でき、被害回復、生活の再建につなげていける体制を地域格差なく構築することが重要です。法の実効性を担保するために、財政措置の抜本的な拡充が必要です。
 また、新たに位置付けられた民間団体によってつながった女性たちに、被害回復、生活再建、尊厳回復まで長期の支援を保障するためにも、これまで婦人保護事業を担ってきた公的三事業の抜本的強化を求めるものです。
 それでは、質問をさせていただきます。女性支援新法についてです。
 コロナ禍で困難を抱える女性に対する支援の必要性、これが大変顕在化しております。大きな役割を発揮しております民間支援団体への予算措置も強化されまして、女性支援新法によって位置付けも明確になりました。
 あわせて、公的支援体制の強化、これは待ったなしだと考えております。先ほどもありましたけれども、婦人相談員の八六%が非正規という実態でありまして、先ほど非正規規定は外したというものの、その非正規が占める割合というのは増加傾向になっております。これ資料でもお付けしていますので、見ていただきたいと思います。
 これ、令和二年度の状況はどうかということです。国の補助事業を利用している人のうち、手当基準額、二の方ですね、資料二の方です、手当基準額に達していない相談員は四五・九%ということになっています。手当の引上げ等をやっていただいてもこの実態があると。
 本法を受けて、抜本的な処遇の改善が求められると考えますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(後藤茂之君) 婦人相談員は婦人保護事業の重要な担い手でありまして、実効性のある支援を行うに当たって非常に重要な役割を果たしていただいているものと考えております。
 これまで婦人相談所の全国団体と意見交換を行う中で、婦人相談員の専門性に見合った処遇改善が必要との点について御意見をいただいているところでございます。このため、令和四年度予算におきましては、婦人相談員手当について、経験年数に応じた加算の設定や期末手当の支給に必要な経費を盛り込むなど、婦人相談員の適切な処遇の確保に向けた措置を講じたところでございます。
 厚生労働省としては、こうした予算の活用を働きかけるなど、自治体と連携いたしまして婦人相談員の処遇改善に努めてまいりたいと考えます。

○倉林明子君 確かに少しずつ改善の手は打ってきていただいていると。
 しかし、この処遇改善を困難にしている大きな要因に、令和二年度から導入されました会計年度任用職員の問題があるんですね。これ全国婦人相談員連絡協議会のアンケートによりますと、一年ごとの更新、で、三年から五年更新したらそこで雇い止めとなるという状況なんですよね。少なくないです。これ、賃金、いろいろ基準示していただいていますけれども、平均で、あっ、平均じゃない、月十六万円未満というような人たちが三五%も占めているんですよ。そうなると、これ一本では食べていけないということで、ダブルワーク、トリプルワークをしないと生活できないという実態があります。それでもやりがいを感じて経験を積んでいると、これが相談員なんですね。こういう人たちをこういう雇用契約によって雇い止めにするなんというのは、私はもってのほかだと申し上げたい。
 この法施行までには賃金、雇用の実態調査、実態把握するとおっしゃいました。実態しっかりつかんでいただいて、せめてですよ、せめて無期雇用、無期雇用への転換ということを決断すべきだと思います。いかがでしょう。

○国務大臣(後藤茂之君) 婦人相談員につきましては、厚生労働省において毎年度、雇用形態に関する調査を実施しておりまして、令和二年四月一日の時点では、全国で千五百三十三名配置されている相談員のうち千三百十三名、八五・六%が非常勤職員となっております。
 先ほどもちょっと御指摘ありましたけれども、平成二十八年の売春防止法の一部を改正して、婦人相談員を非常勤とする旨の規定を削除して常勤による配置を可能といたしておりますけれども、実態は今申し上げたとおりでございます。
 なお、厚生労働省として、非常勤を配置する場合であっても適切な処遇が確保されるよう取り組んでいるところでございますけれども、引き続き、必要な調査を行って実態把握に努めるとともに、地方公務員制度の運用の在り方の中で婦人相談員の適切な処遇の確保に努めてまいりたいと考えております。

○倉林明子君 いや、無期雇用に転換すべきじゃないかと、そこ答えていないんですけれども、いかがでしょう。

○国務大臣(後藤茂之君) もちろん、そういう先生の御意見を踏まえたところで、よく実態を把握しながら、地方公務員制度の運用の在り方の中で婦人相談員の適切な処遇の確保に努めていくということをしっかり取り組んでいきたいと、そういう意味で申し上げております。

○倉林明子君 婦人相談員は、女性相談支援員ということで位置付けも明確になります。専門的技術によって必要な援助を行うという位置付けがされました。
 これ、専門職としてスキルをスキルアップしていかないといけないという位置付けになったんですよ。雇い止めが今やったら、今のままだったら、前提になるんですよ。法施行までに時間あります。だから、ここをどうするのかということで取り組んでいただきたいと。それも含んでいるという言いぶりでしたので、是非、こういうところを雇い止めにするなんという雇用では、これ相談支援員のスキルアップできなくなるんだという認識でやっていただきたい。雇い止めで相談員を困難な女性にしちゃうと、こんなこと絶対あってはならないので、改めて申し上げておきます。
 相談は今大幅に増加する下で、相談員の数そのものは増えておりません。女性相談支援員の増員が私必要だというふうに思います。
 市町村配置については、現状、努力義務ということで新法でもなりましたけれども、私、全ての市区町村に配置していく、目標を持った取組が必要じゃないかと思います。いかがでしょう。

○国務大臣(後藤茂之君) 婦人相談員は婦人保護事業の重要な担い手でございまして、可能な限り多くの市区に配置されることが望ましいというふうに考えます。一方、現状では相談員を配置している市区は令和二年四月一日時点で四七・九%にとどまっております。厚生労働省としては、これまでも全国会議等の場において未設置市区に対し早急の配置をお願いしているところでございます。
 こうした中、新たな法案では、婦人相談員から名称変更された女性相談支援員の配置が市区町村に対して努力義務化される旨の規定が規定されるものと承知をいたしております。
 厚生労働省として、具体的な目標を設定することについては自治体の負担などを踏まえる必要があると考えてはおりますけれども、まずは可能な限り多くの市区町村における婦人相談員の配置促進のためどのような支援策が可能か、関係団体や自治体の意見も伺いながら、その促進については十分に検討して前進させていきたいと思います。

○倉林明子君 前進させる上で、やっぱり目標を持つべきだと。市区にとって何が負担になっているかというと、二分の一持たぬなんという財政負担なんですよ。そこを取っ払ってあげて、やっぱり広げると、広げていきたいんだということですから、ここの解消、財政措置をしっかりするということを指摘しておきたいと思います。
 そこで、女性支援新法の目的に人権尊重と明確に掲げられました。基本理念には、人権の擁護を図るとともに、男女平等の実現に資することと明記されました。これ、売春防止法の三章補導処分ですね、四章保護更生、これ削除されるということになりました。しかし、五条は、これ勧誘罪ですけれども、残ることとなります。
 これ、新法の目的、理念を踏まえれば、売春防止法の抜本的な見直し、これ求められていくと思います。大臣、認識いかがでしょう。

○国務大臣(後藤茂之君) お尋ねの売春防止法の罰則部分、規定の在り方は法務省の所管となりますことから、厚生労働省の立場からのお答えは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
 厚生労働省としては、今般の新法に関する国会での議論も踏まえまして、様々な困難を抱えた女性に対しまして必要な支援を着実に実施していくことが重要と考えておりまして、厚労省の立場で求められる支援体制づくり等に対してしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

○倉林明子君 法務省の管轄だから答えられないということですけれども、議論の経過でも、やっぱり五条の廃止ということも必要だと、こういう検討会の議論もあったんですよね。そういう意味でいうと、今回、やっぱり新法制定を急がないといけないということで、五条については先送り、結論先送りというようなことにもなったんです。
 やっぱり、売買春そして性搾取の被害者、これ犯罪者とみなすと、そして一方で、買う側、これについては問われないという規定、ここに女性差別と言われる本当に大きな問題あると思っているんですよ。これは宿題だという認識を持って、やっぱり新法を所管するところとしても認識持ってほしいと思うので、大臣にお聞きしたんです。もう一回いかがでしょうか。

○国務大臣(後藤茂之君) 今の御指摘については、担当の法務省にもしっかりと伝えたいというふうに思います。

○倉林明子君 終わります。