倉林明子

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学童保育 基準改善を 倉林氏 安心できる場こそ(2022/4/21 厚生労働委員会)

 日本共産党の倉林明子議員は21日の参院厚生労働委員会で、学童保育の職員・施設基準の改善などを求めました。

 学童保育は、国が実施基準を定め、それをもとに市町村が最低基準を定めています。支援員の資格要件や2人以上の配置は当初、市町村が「従うべき基準」とされましたが、5年で「参酌基準」に変更されました。

 倉林氏は、無資格者や1人でも可能という条例変更が行われていると批判。「安心して遊べる場」「生活の場」としての学童の質を担保するためにも「従うべき基準」に戻すよう求めました。

 後藤茂之厚労相は「地域の実情に応じた運営に資する効果があった」としつつ、「実施状況を把握し、検討する」と答えました。

 倉林氏は、指導員の半数が年収150万円未満だとして、「求められる役割にふさわしい処遇とは到底言えない」と指摘しました。

 また、指定管理者制度等によって民間企業による運営が増加するなか、支援員を全員雇い止めにする事態も発生していると告発。「子どもとの安定的、継続的な関わりが重要であり、長期に安定した雇用とすることを求めた『運営指針』に逆行する」と批判しました。


議事録を読む
○倉林明子君 日本共産党の倉林です。
 今日は、学童保育の問題について質問したいと思います。
 コロナ禍の第一波、二〇二〇年の学校の臨時休業、これ突然宣言されましたけれども、急遽午前中からの児童の受入れに対応してきた、これ学童保育でもありました。子供に感染が拡大した第五波、第六波、ここでも、保育所とともに子供の遊びと生活の場を確保し、保護者の就労を支えることで社会機能を維持すると、こういう役割も発揮してまいりました。
 これ、学童が、大臣に伺いたいんですけれども、コロナ禍で果たしてきた役割、これどういうふうに認識されているか。

○国務大臣(後藤茂之君) 放課後児童クラブにつきましては、新型コロナの感染拡大の状況の中でも原則開所という方針で、感染防止に気を付けていただきながら、自宅で過ごすことが困難な子供の居場所として運営をしていただいております。
 特に、令和二年春の学校の一斉休校を始めとした学校の臨時休業の際には午前中から開所していただいておりまして、大変重要な役割を担っていただいているものと認識しておりますし、そうした活動を支えていただいている皆さんに感謝の気持ちを持っております。

○倉林明子君 学童の支援の単位ということでいいますと、子供の集団規模というのは、省令によりおおむね四十人以下ということとされているんです。しかし、全国学童連絡協議会が調査しておりまして、二〇二一年、これ四十人を超えるという学童は約四割もあるんですね。で、狭い施設ということで、大規模、過密になるほど感染リスクが高まるということ、これ明らかだというふうに思うわけです。
 そこで、大臣、支援の単位としての四十人以下、そして面積基準、これ児童一人当たり一・六五平米、決して広くないんですけれども、これ感染拡大防止の観点からも最低限の基準だと考えますけれども、いかがでしょう。

○国務大臣(後藤茂之君) 御指摘の放課後児童クラブの人員基準だとか面積基準、放課後児童クラブが児童にとっての放課後の生活の場であると、コロナ禍であるか否かにかかわらず安全に安心して過ごすことのできる場所である必要があることを踏まえた基準でございます。
 放課後児童クラブは、この基準を参酌して、市区町村において定める条例に基づいて運営されております。厚生労働省として、各市町村の責任の下、放課後児童クラブの一定の質を確保しながら、各地域の多様性を踏まえた運営がなされているものと考えておりまして、引き続き適切な運営に御尽力いただきたいと考えております。

○倉林明子君 そういう参酌基準ということで、四割が四十人という基準を超えたような状況になっていると。これ、大規模学童の危険というのは感染リスクだけじゃないんですね。京都では、教室サイズの部屋に百名ほどの児童がぎゅうぎゅう詰め、遊ぶおもちゃも取り合いになっていると、こういうような学童があります。
 全国学童連絡協議会の令和元年分のデータの分析結果、これによりますと、七十一人以上の学童では、骨折などの重篤事故の出現率、これが四十人以下の場合の六倍にも達しているというんですよ。
 これ、二〇一四年の放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準、定めているわけですよね。職員の体制、支援の単位となる子供の集団の規模、そして専用区画面積、これ、それぞれどうなっているかと。そして、これ、参酌する基準ということで、達成状況が大変厳しい状況にあると認識しておりますけれども、達成している施設数、そしてその比率はどうなっているでしょうか。

○政府参考人(橋本泰宏君) 御指摘の放課後児童クラブの人員基準や面積基準は、厚生労働省令において定める基準を参酌して、実施主体である市区町村において定める条例に基づき運営されているところでございます。
 それで、厚生労働省において、令和三年五月一日時点で放課後児童クラブの運営状況を調査した結果でございますが、まず、人員配置につきましては、省令上、放課後児童支援員等の職員を二人以上配置するというふうになっているわけでございますが、この厚生労働省令で定める基準を満たす放課後児童支援員等の職員を二人以上配置している放課後児童クラブが全体の七七・九%に当たります二万九百六十六か所。それから、一つの支援単位につきましてはおおむね四十人以下ということになっているわけでございますけれども、この四十人以下ということでなっている放課後児童クラブは、全体の四七・五%に当たります一万二千七百九十七か所。それから、児童一人当たりの専用区画面積につきましてはおおむね一・六五平米以上ということになっているわけでございますが、これ以上である放課後児童クラブは二万二千二百二十七か所、全体の八二・六%ということになってございます。

○倉林明子君 これ、省令基準が策定された当初で見ますと、指導員の資格と複数配置という基準というのは、最初は従うべき基準ということだったんですよ。常勤職員の、これによって常勤職員の複数配置というのが実現する、初めて実現したというようなところも生まれまして、現場では学童保育の質の底上げが始まったというふうに受け止められて、実践も進んだんです。
 ところがですよ、ところが、この基準策定から僅か五年でこの基準の見直しになったんです。それは、人手不足ということを理由にして地方自治体から声が上がって、第九次の地方分権一括法によって、この従うべき基準から、今御紹介のとおり参酌すべき基準になっちゃったんですね。これ、その後の変化がやっぱり起こっていまして、自治体の条例改正によりまして、無資格者あるいは一人でも可能とするというような基準下回る変更が条例でやられているということが起こっているんですよ。
 やっぱり、まずは、これ従うべき基準に戻すことが必要だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょう。

○国務大臣(後藤茂之君) 放課後児童クラブの人員配置等に関する基準については、今先生の方からも御指摘がありましたけれども、令和元年の法改正によりまして、従うべき基準から参酌すべき基準に、令和二年度からの実施となっております。これは、従うべき基準であったことによりまして人材確保が困難であるといった地方からの要望を踏まえて、全国一律ではなく、自治体の責任と判断により、質の確保を図った上で、地域の実情に応じて運営を行うことを可能とするために行われたものであると承知しております。
 この参酌化に伴う条例改正等の状況について調査したところ、令和三年七月一日時点において、条例改正実施済みと回答した自治体のうち六割が参酌化の影響ありと回答いたしております。具体的な内容としては、事業の継続が困難な状況であったものが事業の継続が可能となった、急な退職があった場合でも運営に支障を来さず何とかしのげるようになった等の回答が寄せられています。このため、当該基準の参酌化は、地域の実情に応じた運営に資する効果があったものと考えております。
 本調査は令和四年度も引き続き実施することとしておりまして、自治体の施行状況をしっかり把握した上で、令和元年の法改正の附則の検討規定に基づいて、必要な検討を行ってまいりたいと思います。

○倉林明子君 何とかしのげてよかったというところを、厚労大臣は、何というのかな、肯定的に受け止めていていいのかと思うんですよ。
 大体、その守るべき、従うべき基準としたのは何でかといったら、それはやっぱり学童保育のその質を担保するということのために定められた基準だったわけですよ。今御紹介もありました。三年後の見直しということで、二〇二三年が期限になるわけです。やっぱり、どうやって、学童保育に課せられた、生活の場、安心して遊べる場、これを担保するという質を確保していくのにどうだったのかという視点での私は見直しをしていくべきだと。そのために、やっぱりその基準ということを、従うべき基準ということでの見直しが必要だということを重ねて申し上げておきたい。
 そこで、何で人が集まらないかということですよ。人材確保に何でそんな苦労しているかということです。支援員の処遇について質問したいと思います。
 運営指針というものも作りました、二〇一五年、放課後児童支援員等の役割の規定、これ明記されています。御紹介ください。

○政府参考人(橋本泰宏君) 放課後児童支援員等の役割につきましては、放課後児童クラブ運営指針におきまして、まず、放課後等児童支援員は、豊かな人間性と倫理観を備え、常に自己研さんに励みながら必要な知識及び技能をもって育成支援に当たる役割を担うとともに、関係機関と連携して、子供にとって適切な養育環境が得られるよう支援する役割を担うものとされております。また、放課後児童支援員を補助する補助員につきましても、放課後児童支援員とともに同様の役割を担うよう努めることが求められる、このように定められているところでございます。

○倉林明子君 だから、専門性が要るということなんですよ。必要な研修や必要な条件付けて、資格ということも規定して、これ運営指針定めているんですね。当然です。子供の最善の利益を守り、安全、安心を守り、そういう子供のケアに当たるという点では求められる資格になっていると思うんです。ところがですよ、この学童保育の支援員等の年収がどうなっているかといいますと、半数が百五十万円未満なんです。二百万円未満はおよそ六割を占めております。これ私、求められる役割にはふさわしい処遇と到底言えないと思うわけです。
 処遇改善事業の実施もされております。常勤職員を配置するために一支援の単位に三百万円の補助金を出すと、あるいはキャリアアップの処遇改善事業と、こういうことをやっておられます。
 じゃ、実際に、これどこまで自治体で使われているのか、実績を。

○政府参考人(橋本泰宏君) 今御指摘いただきました二種類の事業がございます。放課後児童支援員等処遇改善事業というものとキャリアアップ処遇改善事業と、この二つでございますが、内閣府所管の子ども・子育て支援交付金の令和三年度交付申請におきまして、放課後児童クラブを実施している千六百二十四市区町村のうち、最初の方で申し上げました放課後児童支援員等処遇改善事業、こちらを実施している市区町村は、全体の二二・五%に当たります三百六十五か所、それから、キャリアアップ処遇改善事業を実施しております市区町村は、全体の二八・一%に当たる四百五十六か所ということになっております。

○倉林明子君 せっかくつくっているんだけれども、使っているところは二割強という程度にとどまっているんですね。これ、利用する自治体としないという自治体によって、支援員の年収格差という課題も広がってきているんです。
 これ、近年、学童保育の運営主体にも変化が起こってきています。学童というのは、もちろん、出発の時点で共同学童だったりということで運営主体は様々でしたけれども、公営や、最近の傾向は、公営や社会福祉協議会が減少する一方で民間企業、株式会社等が大幅に増加しております。その理由、そして支援員等の処遇への影響についてはどのように把握されていますか。

○国務大臣(後藤茂之君) 放課後児童クラブの運営については、事業の実施主体である市町村において、放課後児童クラブ運営指針等を踏まえまして、適切と認めた者に委託等が行われていると認識いたしております。
 放課後児童クラブは、運営主体にかかわらず、その職員体制について、子供との安定的、継続的な関わりのために、放課後児童支援員の雇用は長期的に安定した形態とすることが求められております。このため、民間企業による運営が増加していることが直ちに職員の処遇に影響するとは考えておりません。
 なお、令和四年度において、放課後児童クラブの運営状況及び職員の処遇に関する調査を行うこととしておりまして、その結果も踏まえながら、適切な運営の確保に努めてまいりたいと思います。

○倉林明子君 いや、直ちに影響していないという認識は、その調査も踏まえて、よく実態見ておっしゃっていただきたいなと思うんですね。
 何でかというと、これ指定管理者制度の導入とか民間委託というのを、現場で、市町村で増えてきているということが影響しているんですよ、これ民間企業増えているということはね。どんなことが起こっているかというと、ある自治体では、公営から民間企業への委託行いましたと、そして一年後ですよ、一年後に支援員十三名が雇い止めと、こういう事態が発生しております。指定管理者ということで、三年を限度にとか五年を限度にという規定しているところも少なくないんです。そのときに総取っ替えというようなことも起こって、とても長期的に安定した雇用ということになっていないという実態もお聞きしております。
 子供の継続した関わりがこれ絶たれることになるわけで、処遇の改善ということでいいますと、この運営指針がしっかり実施できると、こういうところに責任を果たすべきだと申し上げたい。この学童の運営指針には、子供との安定的、継続的な関わりが重要であるため、放課後児童支援員の雇用に当たっては、長期的に安定した形態とすることが求められると、これ明記されているんですね。
 学童に指定管理者制度や民間委託を導入すると、こういうことが進んでいるんですよ。これ、運営指針にも逆行することになるんじゃないかと。いかがでしょう。

○国務大臣(後藤茂之君) 放課後児童クラブの運営につきましては、放課後児童クラブ運営指針において、安定した経営基盤と運営体制を有し、子供の健全育成や地域の実情についての理解を十分に有する主体が、継続的、安定的に運営すること、放課後児童クラブの運営主体に変更がある場合には、その活動の継続性が保障され、子供への影響が最小限に抑えられるように努めることを求めております。
 放課後児童クラブの運営を委託する場合にも、これらの趣旨を踏まえながら、事業の実施者である各市町村において適切な運営主体を選定いただいているものと考えておりまして、クラブの運営の委託等が直ちに運営指針に反するものであるとは考えておりません。

○倉林明子君 いや、実態、こういうこと起こっているから、よう見て運営指針が実行できるようにすべきだということで申し上げているんです。よく調査もされるということですから、そういう実態をつかんでいただきたい。
 公営でも、会計年度任用職員、これ、この間も取り上げましたけれども、雇用がこういう、支援員もこの会計年度任用職員になっているということが広がっているんですね。これ、紹介したとおり、一年、あるいは三年まで、五年までということで、一年限りの契約更新にも雇い止めの期限があると、こういう不安定な雇用の状況に置かれています。で、賃上げもないというような状況になるわけです。
 改めて、子供を真ん中に置いた子育て、こども法案が今国会で審議されるということになっていますよ。総理は、十九日の衆議院の本会議で、この子供政策に関する予算についてこんな発言しているんですよ。将来的に倍増を目指していきたいと。倍増ですよ。だから、そういう意味では、自治体がこの学童において国が定めた運営指針が実行できるような私は十分な予算措置が求められているというふうに思います。最後、大臣、決意を聞いて終わりたいと思います。

○国務大臣(後藤茂之君) 学童クラブの、放課後児童クラブの本当に重要性については、重要性については私も同じように考えていますし、先ほど、コロナ禍における御活躍、本当に貢献についても感謝の気持ちを述べたところです。
 どういう実態にあるのか調査をしますので、それを見ながらまた検討もさせていただきたいというふうに思っております。

○倉林明子君 もうしっかり、誇りを持って働いている、そういうやる気を支えるような予算と基準の見直しということを重ねて求めて、終わります。