倉林明子

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全世代に負担増強いる 改定健康保険法成立 倉林氏「命脅かす」(2023/5/12 本会議)

(議事録は後日更新いたします)

 75歳以上の医療保険料などを引き上げる健康保険法等の改定法が12日の参院本会議で、自民、公明、国民の各党の賛成多数で可決、成立しました。日本共産党、立民、維新は反対。日本共産党の倉林明子議員が討論に立ち、「全世代型社会保障」の名のもとに、「全世代の国民に負担増を押し付け、国の責任を後退させるものだ」と厳しく批判しました。

 改定法は、社会保障負担を全ての世代で賄うとし、後期高齢者の保険料を収入に応じて引き上げることや、「出産育児一時金」の財源の一部を後期高齢者医療制度から負担する仕組みを新たに導入。また、国民健康保険料水準の統一を推進し、国保料の引き上げにつながるものです。

 倉林氏は、改定によって負担増となる高齢者の年収は153万円以上だとし、「余裕などない」と強調。すでに医療・介護にかかる費用が家計を圧迫していると述べ、「過重な保険料を、これ以上引き上げることは、命を脅かすものであり、到底容認できない」と批判しました。

 また、国保料統一を強行すれば、自治体は独自の負担軽減策の取りやめに追い込まれ、国保料が高騰すると指摘。「国保に加入する非正規労働者、フリーランスなど多くの若い世代が、さらに過酷な国保料負担を強いられることになる」と主張しました。

 倉林氏は「財源を国民の負担増で賄うやり方が、新たな貧困を拡大する」と指摘。国庫負担の抜本的増額と富裕層、大企業にこそ応分の負担を求めることで財源を確保すべきだとただしました。


 日本共産党の倉林明子議員が12日の参院本会議で行った健康保険法等の改定法に対する反対討論の要旨は次の通りです。

 改定法の最大の問題は、75歳以上の保険料の大幅引き上げです。負担増となるのは、年収153万円以上の高齢者です。月13万円の年金暮らしに、余裕などありません。激変緩和措置の対象とならない年収220万円では、年間11万円もの保険料です。

 高齢者の多くは定期的に受診が必要な病気を抱え、貯蓄や生活費を削り何とか受診しており、過重な保険料をこれ以上引き上げることは命を脅かすもので到底容認できません。

 重大なのは、高齢者への負担増は、これにとどまらないことです。介護保険の利用料2割負担の対象拡大、老健施設、介護医療院の多床室料負担について今年の夏までに結論を出すとしています。2割負担の対象は後期高齢者医療制度と横並びにすることも検討され、多くの高齢者が、医療費も介護保険も2割負担を強いられることも否定できません。

 出産一時金のため、後期高齢医療から他の医療保険へ拠出することは、制度の根幹に関わる問題であり、今後、保険料引き上げをもたらしかねません。

 反対の第2の理由は現役世代への過酷な負担増です。国民健康保険料水準の統一は国保料の引き上げをもたらします。政府は保険料水準統一の前提として、自治体に公費の繰り入れを早期にやめさせるため圧力をかけてきました。全国に先駆け来年度の保険料完全統一を掲げる大阪府では保険料が大幅に引き上げられ、全国の他都市と比べても際立って高額となっています。

 保険料統一を強行すれば全国で同様の事態になりかねません。国保に加入する非正規労働者、フリーランスなど多くの若い世代がさらに過酷な国保料負担を強いられます。国庫負担を抜本的に強め、保険料引き下げに今すぐ着手すべきです。

 国保のみにある均等割は、子どもからも保険料を徴収し、子どもが増えるほど負担は重くなります。子どもにかかる人頭税となっている均等割はすべて廃止するよう求めます。

 改定法は「全世代型社会保障」の名のもとに、全世代の国民に負担増を押しつけ、国の責任を後退させるものです。社会保障の財源を、国民の負担増で賄うやり方が、新たな貧困を拡大しています。富裕層、大企業にこそ応分の負担を求めることで財源を確保すべきです。


議事録を読む(未定稿)
(この会議録は未定稿です)

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 私は、日本共産党を代表して、全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。
 五月八日から、新型コロナ感染症の感染症法上の位置付けが五類に引き下げられました。しかし、季節性インフルエンザの数倍という感染力があり、医療逼迫から国民の命が脅かされる危険があることは何ら変わるものではありません。
 この三年間、医療崩壊、介護福祉施設でのクラスターの多発、救急搬送の困難など、深刻な事態が繰り返されました。入院、治療ができず、福祉施設や自宅に留め置かれ、亡くなる事例も相次ぎました。
 これらについて何の検証も反省もなく、医療機関への財政支援、検査、治療への公的支援を削減し、痛恨の事態を繰り返すことは断じて許されません。国の責任で国民の命と健康を守る施策の強化拡充を図ることを強く求めるものです。
 本法案の最大の問題は、七十五歳以上の高齢者の保険料を大幅に引き上げることです。
 負担増となるのは、年収百五十三万円以上の高齢者です。月十二万七千円の年金暮らしに余裕などありません。激変緩和措置の対象とならない年収二百二十万円では、年間十一万二千円もの保険料となります。能力を超えていることは明らかです。
 単身で年収二百万円以上の人たちは、昨年十月から、医療費の窓口負担が二割になりました。その対象者について、日本高齢期運動連絡会が二一年十二月に行った家計調査では、一か月の赤字が単身者でも十万円を超えています。月々の支出は、税金、社会保険料が四万円、介護費が四万五千円、保健医療費二万二千円と、二割化の前にもかかわらず、既に医療、介護に係る費用が家計を大きく圧迫しています。
 高齢者の多くは定期的に受診が必要な病気を抱えて、貯蓄や生活費を削って何とか受診しています。各種調査でも、年金が減り、物価、光熱費が急騰する中、受診を控え、食費を削り、貯金の目減りにおびえる高齢者の姿が報告されています。ただでさえ過重な保険料をこれ以上引き上げることは、命を脅かすものであり、到底容認できません。
 重大なのは、高齢者への負担増はこれにとどまらないことです。
 介護保険の利用料二割負担の対象拡大、老健施設、介護医療院の多床室の室料負担について、今年の夏までに結論を出すとしています。二割負担の対象は、後期高齢者医療制度と横並びにすることも検討されています。多くの高齢者が医療費も介護保険も二割負担を強いられることも否定できません。
 老健施設、介護医療院は自宅復帰を目指す施設です。自宅を維持しながら二重の負担をすることは、低年金の高齢者には不可能です。
 新日本婦人の会が実施した介護保険利用者、家族への調査では、食事代や部屋代、おむつ代など多額の保険外費用も加わり、本人の年金収入を超える介護費用に苦しむ実態が明らかになりました。月五万円を超える介護費用を負担している方が三割を占め、施設入所に限れば十万円以上の負担が七割を占めています。施設入所費など、年金で賄えず、貯金を切り崩すか、子供たちが負担するのか、子供が介護離職するのかなど、追い詰められた声が寄せられています。
 高齢者の負担能力を超えれば、家族が肩代わりするしかありません。現役世代のためといいながら、その負担を増やし、生活までも脅かす事態を更に広げるものであり、断じて認められません。
 出産一時金のため、後期高齢者医療から他の医療保険へ拠出することは、初めての制度変更です。制度の根幹に関わる問題であり、今後、保険料引上げをもたらしかねません。後期高齢者医療制度は、五割と法定化された公費負担が、三割負担導入に伴い、四七%まで減少しています。現役世代の負担軽減は国庫負担比率を引き上げることで実施すべきです。
 法案に反対する第二の理由は、現役世代にも過酷な負担増をもたらすことです。
 本会議質疑でも、加藤厚労大臣は、国民健康保険について、保険料水準の統一に向けた取組を加速化すると明言しました。これは間違いなく国保料の引上げをもたらすものです。政府は、保険料水準統一の前提として、自治体に公費の繰入れを早期にやめさせるため、圧力を掛けてきました。法定外繰入れは、二〇一六年二千五百億円から六百七十億円まで減少、自治体は独自の負担軽減策の取りやめに追い込まれ、国保料は高騰を続けています。
 全国に先駆けて来年度の保険料完全統一を掲げる大阪府では、保険料が大幅に引き上げられ、全国の他都市と比べても際立って高額となっております。保険料統一を強行すれば、全国で同様の事態になりかねません。国保に加入する非正規労働者、フリーランスなど多くの若い世代が更に過酷な国保料負担を強いられることになります。
 本法案は、現役世代の負担軽減に真っ向から反するものと言わざるを得ません。国の圧力で自治体を住民負担増、給付削減へと駆り立てる仕組みは撤廃すべきです。現役世代の負担軽減を本気で考えるのならば、国庫負担を抜本的に強め、保険料の引下げに今すぐ着手すべきです。
 国保のみにある均等割は、収入のない子供からも保険料を徴収するもので、子供が増えるほど負担は重くなります。少子化対策の一つとして、子供に係る人頭税となっている均等割は全て廃止することを求めるものです。
 第三に、今回の法改正により、国庫負担を更に削減することも重大です。
 法案は、前期高齢者の医療給付における保険者間の負担の不均衡を是正する財政調整について、協会けんぽの負担を軽減するため、報酬水準に応じた調整を導入するものです。これに伴い、現在協会けんぽに行われている国庫補助が廃止されます。国庫負担は千二百九十億円も減らしながら、健康保険組合、共済組合などに加入する労働者に負担増を課すことは重大な問題です。
 以上、本法案は、全世代型社会保障の名の下に、全世代の国民に負担増を押し付けるものにほかなりません。世代間の助け合い、相互扶助を制度として強要し、国の責任を後退させる法案の撤回を求めるものです。
 政府は、あたかも高齢者の存在自体が現役世代の負担かのように世代間に対立を持ち込み、社会保障制度を後退させてきました。命と暮らしを守る命綱は限界まで切り縮められ、生存権が脅かされています。
 参考人質疑では、全日本民主医療機関連合会の山本淑子氏は、若い世代に申し訳ない、長生きし過ぎたと高齢者に言わせる社会であっていいのか、高齢者が身を縮めるように暮らしている姿を見て、現役世代が明るい未来を描くのは無理だろうと問いかけました。
 社会保障を共助とし、その財源を国民の負担増で賄うやり方が新たな貧困を拡大しています。能力に見合った負担というのであれば、富裕層、大企業にこそ応分の負担を求めることで財源は確保すべきだと指摘し、討論を終わります。