倉林明子

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医療者の気持ち縛る 感染症法等改定案 参考人(2022/11/18 厚生労働委員会)

 参院厚生労働委員会は18日、新型コロナ感染拡大時に病床の確保や医療が提供できない医療機関に罰則を設ける感染症法等改定案の参考人質疑を行いました。日本共産党の倉林明子議員は、新型コロナ病床確保の義務化が通常医療に与える影響などを質問しました。

 耳原総合病院の河原林正敏病院長は陳述で、新型コロナ対応で通常医療を制限せざるを得ない中、「断らない救急」を誇りに働く救急スタッフがどうしても心肺停止の搬送依頼を受けられずに断り、悔しさに涙を流したことなど現場の実態を告発。感染症法改定にあたって「医療・介護従事者の心を折るようなことだけは絶対に避けてもらいたい」と訴えました。

 倉林氏は「どのようなことが心を折ることにつながるのか」と質問。河原林氏は「法律の縛りができると、現場の人たちの気持ちを縛ることにもつながりかねない」と指摘し、「現場で奮闘している医療従事者の気持ちを吸い上げてもらいたい」と語りました。

 河原林氏は、コロナ病床の確保が通常病床に与える影響を問われ、「感染症対応は大変なのでコロナ病床は余裕を持たないといけない一方で、急性期医療を回そうと思えばどうしてもコロナ病床を制限せざるを得ない。ジレンマを抱えながら対応してきたことをくみ取ってもらいたい」と答えました。


議事録を読む

○倉林明子君 今日は、本当にお忙しい中、金曜日で、いろいろなお仕事も兼務されていらっしゃる中をこうして貴重な御意見を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。
 まず最初に、齋藤参考人にお伺いしたいのは、齋藤参考人が、今、国立感染研究所の感染症危機管理研究センターの長だということで、元々五人が定員の枠だったのが一気に、五人なんですかね、五人しかいなかったところが七十五人の定員に一気に十倍以上に拡充されたということで、二一年の六月時点では二十人まで確保できたということで記載されているもの見たんですけれども、現状でどうなっているのか。機能の強化ということでいうと、どこまで御説明いただくかというのあるんですけれども、ざっくりイメージできるように、何がどう変わったのかという辺りを教えていただけますでしょうか。

○参考人(齋藤智也君) 御質問ありがとうございます。
 二一年六月で二十人ということは去年の夏前ということになるかと思いますが、それからおおよそ、ちょっと正確な数は覚えていないんですが、五人か六人増えていたと思います。
 特に、今年の春に例えば事務官をきちんと人員として付けていただきまして、センターとしての庶務がかなり回るようになってきたということと、あと、コミュニケーション室という、クライシスコミュニケーション室というところにサイエンスコミュニケーションやヘルスコミュニケーションを専門とする人材を確保できたということで、コミュニケーションの機能拡充というのが進んでいるところです。
 さらに、あと、ラボの検査体制の強化というところも私どもの使命でありますけれども、そこでも少しずつ人材の確保が進んでいるところでございます。

○倉林明子君 まだ二十五人程度ということで、定員の確保には大分まだ距離があるということで、こういう点では大いに応援していかないといけないなと改めて思いました。
 そこで、河原林先生にお聞きしたいと思います。
 本当に第一線で御苦労されていた話を、お話伺ってよく分かったんですけれども、救急は断らないということで取り組んできたんだけれども、コロナの下で心肺停止の方を受け入れることができなかったと。現場の人たちの悔しさというのが本当にあっただろうなと思います。
 その上で、最後に先生おっしゃったのが、現場のこういう心を折るようなことは絶対避けてほしいとおっしゃいました。心を折るようなことはどういうことなのか、現場、コロナと二年、もう三年近く闘ってこられて、どういうことがやっぱり心折れることにつながっていくんだということで、もう少し踏み込んで教えていただければと思います。お願いします。

○参考人(河原林正敏君) 何よりも現場で奮闘しているこの医療従事者の気持ちをどういうふうに吸い上げていただくかということかなというふうに思っているんですが、どうしてもこの法案の、この法律的な縛りというのができますと、それは現場の人たちの気持ちを縛るようなことにつながっていくんではないかなというふうに思っているんです。
 例えば、現場でもそうです、現場の努力もそうですし、地域の中での連携もそうですし、保健所との関係もそうなんですけれども、本当に現場で顔が見える関係の中で何とかこの大変なところを乗り越えてきたというような、そういう現実があるんですよね。それがなかなか、その法律というくくりになりますと、まあどうでしょう、非常に冷たい対応といいますか、そのように感じてしまう場面というのがどうしてもありますので、できれば現場の声を吸い上げていただく。地域での連携とか、行政や保健所、いろんなところと連携しながら現場は進めていますので、そういった取組を是非評価していただいて、これからの政策に生かしていただくような、そういった流れを是非つくっていただければなというふうに思っております。

○倉林明子君 本当に七波で深刻になったなというか、思っていますのが、コロナ病床の確保をせなあかんということで、その患者の層も変わってきて介護、ケアが必要になってくるということで非常に看護師の配置を引き上げないといけないということから、一般医療への影響というのがすごく出たと思っているんですね。
 河原林先生もおっしゃっていたように、コロナを一床つくろうと思ったら、二床潰さないと確保できない。これ、大規模に通常医療の制限を伴わない限りはコロナの病床確保というのはできないんだということが七波で露呈したと思うんですね。
 通常医療にどのようにやっぱり責任を持っていくのか、医療はコロナだけじゃなくて通常医療も回してこそ命を守れるという、使命果たせるということになると思うんですけど、私、本当にコロナの病床の確保の難しさというところで、もう少し現場際で御紹介いただけることあればと思います。

○参考人(河原林正敏君) なかなか、その病床の確保というのも非常に苦労しながらやっているんですが、当院、元々その看護体制も決して十分とは言えない中で、厳しい中でぎりぎりのところで日常を回している。そこでコロナに対応を強いられて、コロナのために一定の病床を確保しなければいけないという、そういった二年半だったんですけれども。
 その中で、コロナの病床をある程度の規模で確保して、そこを完全に使い切るということではなくて、余裕を持たさないと多分回っていかないんですね、感染症ってなかなか大変なので。でも、それ以外の、コロナ以外の病床で急性期医療を回していこうと思えば、どうしてもそのコロナの病床を少し制限せざるを得ないというのもありまして、その中で本当に現場はジレンマ抱えながら対応してきたというところではあるんです。
 そこを酌み取っていただいて、その病院その病院ごとに多分その辺の役割って大分違ってくると思いますので、そこをできれば是非見ていただいて、病院病院の状況というのを聞いていただいて、それを政策に是非生かしていただければというふうに思っております。

○倉林明子君 余裕ある医療体制をどうやってつくっていくのかという議論がやっぱり感染症法の議論でも必要なんじゃないかなという問題意識は、本当に共有させていただきたいと思います。
 田中先生にお伺いしたいんですけれども、先ほどのお話の中で、課題もあるよということで御指摘がありました。協定締結医療機関の確保病床は不足する可能性があると。こういうことを前提として、やっぱり備え、備えといいますか、対応を準備していくということ、とっても大事だと思うんですね、今の医療のキャパの状況もありますので。
 そうした場合、ここで考える方向性として先生指摘していただいたのは、支援病院をあらかじめ確保すると、で、県を越えた連携の仕組みを確保すると。これ確かにそうなんですけれども、第七波を経験したときに、全国的な感染拡大が起こるとちょっとなかなかこれ難しい、機能するのかという問題意識ありまして、少しその点でお考えになっていること、七波踏まえてで、教えていただければと思います。

○参考人(田中雄二郎君) 支援病院というのは、その地域で協定を結ばなかった病院という意味でございます。実際には、七波のように感染者が医療者に広がった場合、その場合の稼働率は大体六〇%ぐらいに下がることは知られていますので、確保病床をほぼ一〇〇%で確保できた場合と六割ぐらいしか確保できなかった場合に分けてシミュレーションして、で、支援病床の数が決まると思うので、それをいろんな医療機関に割り振る、お願いするというのが大事じゃないかなと。それをあらかじめ登録しておいた方がいいと思います。確保する、しておいた方がいいと思います。
 以上です。

○倉林明子君 これから感染症法の議論もまだ続くんですけれども、効果的な感染防止対策というのを行動制限をやらないという下で一体どういう効果的な手が打てるのかというのは今々本当に問われていると思うんですけれども、最後、齋藤先生、御意見伺えればと思います。

○参考人(齋藤智也君) ありがとうございます。
 非常に、行動制限を行えない中でというのはありますが、今その感染対策というのを、市民の方々、いろいろなところでいろいろな方々が生活の中でしっかりとできるようになりつつあると思っております。これをもうとにかく進めて、広く浸透させていくこと、その中で、行動制限などがない形で感染を、流行を乗り越えていくことができるのではないかというふうに考えております。

○倉林明子君 ありがとうございます。終わります。