倉林明子

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建設石綿 救済を一人残さず 「国の責任で」(2021/5/20 厚生労働委員会)

(資料があります)

 日本共産党の倉林明子議員は20日の参院厚生労働委員会で、最高裁が国と企業の責任を認めた建設アスベスト(石綿)訴訟をとりあげ、国の責任で被害者を一人残さず救済するよう求めました。

 倉林氏は、田村憲久厚労相の原告団への謝罪内容を質問。田村厚労相は「国が規制権限を行使しなかったことにより、建設業に従事していた方々が石綿による健康被害をこうむったことについて、心からおわびする」と述べました。

 倉林氏は、裁判で賠償責任が認められたメーカーは10社のみだと指摘。「全ての建材企業が警告義務違反をしてきた。国の責任で全ての企業に責任を果たさせるべきだ」と迫りました。

 田村厚労相は「与党プロジェクトチームが検討しており、所管省庁と連携して対応する」と答弁。倉林氏は「与党任せにせず国の責任で対応すべきだ」と強調しました。

 倉林氏は、判決で屋外建設労働者が賠償から除かれたものの、屋外で曝露(ばくろ)した実態もあると指摘。「屋外も含め一人残さず救済すべきだ」と迫りましたが、田村厚労相は応じませんでした。

 倉林氏は、石綿による労災認定のハードルが高く、石綿救済法に基づく補償は月額約10万円の療養手当にとどまると指摘。「基本合意の趣旨を生かすためにも救済法の給付水準引き上げと認定のハードルを下げることが必要だ。全ての被害者を救済につなげるべきだ」と主張しました。


労災補償と石綿救済法の補償の比較表"


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林です。
 建設アスベストについて伺いたいと思います。
 初めての提訴から十三年、十七日の最高裁は国とメーカーの責任を認めると。原告のうち七割の方々はこの判決を聞かずに亡くなっているわけです。同じ病院に通っていた仲間が一人また一人と来なくなる、次に死ぬのは自分かもしれないと、そういう恐怖を抱きながら裁判を続けてきたと。これ横浜の、横浜訴訟の原告団長の声が紹介されておりました。
 最高裁判決は、命あるうちの解決をと望んでこられた原告、遺族に救済の道を示したものとなったと受け止められていると思います。非常に時間掛かったということだとも思います。
 厚労大臣と原告団で五月十八日に基本合意書が交わされることとなりました。大臣談話、是非御紹介いただきたいと思うんですけれども、おわびの内容というところです。

○国務大臣(田村憲久君) 私の方から昨日、一昨日、おわびを申し上げさせていただき、基本合意調印式においてでありますけれども、この談話でありますが、もうそのまま読み上げさせていただきます。
 国が規制権限を適切に行使しなかったことにより、建設業に従事していた方々が石綿による健康被害を被ったことについて、被害者の方々や御遺族の方々の、長期間にわたる御負担や苦しみ、悲しみに思いを致し、厚生労働大臣の職務を担う者として、心からおわび申し上げます。
 今後は、この基本合意書を踏まえ、係属中の建設アスベスト訴訟の原告の方々と、和解を進めてまいります。
 また、既に石綿関連疾患を発症し、あるいは将来発症する方々も、多数いらっしゃるものと認識しております。こうした方々に対する給付制度の実現のため、与党における法制化に、最大限協力してまいります。
 改めて、長期間にわたり、様々な御苦労を抱えてこられた被害者の方々と御遺族の方々におわびを申し上げるとともに、基本合意書の誠実な実施をお約束いたします。
 以上でございます。

○倉林明子君 真摯な反省、誠意も示されたものだというふうに私も受け止めさせていただきたいと思うんですね。
 そこで、未提訴の方々に対する、未提訴の被害者に対する補償ということで直ちにPT案が、与党のPT案が示されて、原告団と合意したというふうに伺っているわけです。
 そこで、給付金の額、合意された和解金、賠償基準額とこれ同様とするという規定になっているかと思うんです。和解金、賠償基準額の考え方というものを御紹介いただければと思います。

○政府参考人(吉永和生君) 未提訴の被害者に対する補償の考え方につきましては、一昨日締結いたしました基本合意書の第三に記載しているところでございます。
 その中におきましては、令和三年の五月十七日時点で未提訴の被害者に対する補償に係る制度における給付金の額につきまして、第二の三の(一)のアに記載する表の額と同様とすると記載しておりますけれども、その表につきましては、遅延損害金相当額を含むものといたしまして、病態ごとの区分に応じた和解金の額を記載しているものでございます。
 死亡した方につきましては、最大千三百万円というふうになっているところでございます。

○倉林明子君 これ、未提訴の救済に向けてメーカー責任をどう果たさせるのか、ここが問われどころになってきています。先送りになっているという認識ですよね。
 裁判で賠償責任が認められたメーカーというのは、今回でいえば十社程度だったと思うんですね。全ての石綿建材企業、ここが警告義務違反をしてきたということなんですよね。
 国の責任でやっぱりこの全ての企業にメーカー責任を果たさせていくということが今後求められていくんじゃないかと。大臣、いかがですか。

○国務大臣(田村憲久君) これに関しては、合意書を結ぶ場においてもいろんな御要望がございました。
 現状から申し上げますと、建材メーカーの対応の在り方に関しては、与党の建設アスベスト対策プロジェクトチーム、この取りまとめの中で引き続き検討していくということになっております。その検討の中で、建設業界、いやいや建材業界に対してですので、所管省庁であります関連省庁と連携しながら我々も対応させていただきたいというふうに思っております。

○倉林明子君 先ほども連携という答弁あったんだけど、連携にとどめていいのかと思っているんです。
 経産省の要請に対して、メーカーはデータの公開に応じないというような、ちょっと後ろ向きですよね。協力を得られなかったら企業責任を取らせないと、こういうことを許すわけにはいかないと思うんです。
 そういうことからも、企業責任を取らせて初めて基本合意、原告の願いに応えるということになると思いますので、その点、強く要請しておきたいと思います。与党PT任せにするなと、国の責任でということを重ねて言っておきます。
 基本合意において、建設アスベスト訴訟全国連絡会との間で継続協議も確認されております。これ御紹介ください。

○国務大臣(田村憲久君) 継続協議をしていくこととしている事項でありますが、一昨日締結した基本合意書の第四に記載しております。この箇所ですね、読み上げさせていただきます。
 国は、建設業に従事する者について、石綿被害を発生させないための対策、石綿関連疾患の治療・医療体制の確保、被害者に対する補償に関する事項について、建設アスベスト訴訟連絡会と継続的に協議を行う。
 以上でございます。

○倉林明子君 原告勝利、勝利の判決の中で、救済されなかったという部分が残りました。それが屋外建設労働者です。屋外だったことをもって賠償対象外とされました。これ、逆転敗訴の部分でもあります。
 暴露の実態というのは個々のケースでも私異なっているということ言えると思うんです。屋内での作業の実態とかも含めて、救済の趣旨に沿って、救済の道閉ざすようなことになっちゃならないということを指摘したい。
 一人も取り残さずに救済していくべきだという思いを述べていただけたらと思います。

○国務大臣(田村憲久君) 屋外建設労働者につきましては、令和三年五月十七日の最高裁判決におきまして、屋外建設作業員については、全体として屋内の作業に係る石綿粉じん濃度は大きく下回るところ、これは、屋外の作業場においては、屋内の作業場と異なり、風等により自然に換気され、換気がされ、石綿粉じん濃度が薄められているためであることがうかがわれるとした上で、結論といたしましては、厚生労働大臣が、石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として、石綿含有建材から生ずる粉じんに暴露する石綿肺、肺がん、中皮腫等の重篤な石綿関連疾患にり患する危険がある旨を示すこと等を義務付けなかったことは、著しく合理性を欠くものとは言えず、国家賠償法一条一項の適用上違法であると言うことはできないと、このように示されているわけでございまして、国の違法性を認めた大阪高裁判決を破棄しているわけであります。
 また、一昨日のこの基本合意書においても、和解の対象者は屋内建設作業に従事した者及び吹き付け作業に従事した者ということでございまして、そういう意味では、未提訴の被害者における給付金制度の対象者は、これは和解の対象と同様というのは先ほど話ありましたけれども、ことでありますけれども、我々としては、この内容を踏まえた上で法制化作業に積極的に協力をさせていただきたいというふうに思っております。

○倉林明子君 その最高裁の判決踏まえた対応になるんだということなんだけれども、実際にそのアスベストによる健康被害を被ってきているわけですよね。労働、労災の場合ですと救済の道があって、その立証よりも、その屋外、屋内ということを問わないで、その状態でやっぱり認定しているという経過もあるんですね。
 私、基本合意のところはそういうことで合意したということは尊重したいと思うんだけれども、救済の道を閉ざすべきではないという姿勢で臨んでいただきたいということは重ねて申し上げたい。いろんな考え方で救済できる道をちゃんと示していくべきだということです。
 そこで、今でもその裁判によらない救済の道ということで作られてきたものとして、労災はもちろんですけれども、石綿救済法というものがございます。それ一覧にして、どういう補償が受けられ、給付が受けられるのかというものを一枚物にしています。
 見ていただきたいと思うんですが、これで見ますと、八割が補償される労災、賃金のですね、労災と、月額十万円、約十万円の療養手当にとどまるという救済法、こう大きなやっぱり開きがあるということはずっと指摘もされてきたことです。性格違います、もちろん。見舞金ということで救済していこうという立て付けですのでこういう開きになっているということは承知しているんですけれども、まず労災について確認したいと思います。
 アスベストによる中皮腫、肺がんの発症によって労災給付等の申請件数、認定者数、そのうち建設業占める割合、直近のところでどうなっていますか。

○政府参考人(吉永和生君) お答え申し上げます。
 令和元年度に石綿によりまして中皮腫や肺がんを発症したとして労災請求があった件数及び支給決定件数につきましては、中皮腫につきまして、請求件数が六百七十七件、支給決定件数が六百四十一件となってございます。肺がんにつきましては、請求件数が四百四十三件、支給決定件数が三百七十五件となってございます。
 また、支給決定件数のうち建設業の件数に占める、建設業の件数及び占める割合につきましては、中皮腫が三百五十八件、五五・九%、肺がんが二百三十九件、六三・七%となってございます。

○倉林明子君 これ、建設業が労災のうち占めるというの大体六割で、それ以外でいうと大体四割ということになろうかと思うんですね、それ以外の職種ということでね。大体千名程度の推移をたどっていると、今後も続くというような見通しになろうかと思います。
 それでは、石綿救済法の方で、中皮腫、肺がん、この受付と、及び認定の直近の件数、御紹介を。

○政府参考人(田原克志君) お答えいたします。
 石綿健康被害救済法に基づく救済制度におきます令和元年度の状況を申し上げます。
 中皮腫では、九百五十九件の申請がなされまして、七百六十五件の認定がございました。また、肺がんでは、二百四十六件の申請がなされまして、百七十八件の認定がございました。

○倉林明子君 石綿救済法の数で、私、令和三年度の分が出ていましたので見ていたんですけれども、今ちょっと数字大分違いましたので、後でまた確認していただけたらなと思います。基本、この救済法に基づく受付と認定というのは、規模感が労災よりも随分多かったと思っているんですよ。
 それで、言いたいことは、ここで、ここでしか救済されないけれども、実際は労災でも救済されるべき人もこっちに流れているというような状況もあるというふうに伺っています。
 特に学校等ですね、公務災害のところがすごく、アスベストの被害認定、公務災害での認定件数が低いということ聞いているんです。労災認定の、学校でのアスベスト対策ということで本格的に始まったのは二〇〇六年だと思うんですけれども、十五年たっても公務災害の認定というのは五件止まりなんです。これ通算で五件しかないと。労災や公務災害というところのハードルが高いということも、これずっと指摘をされておりました。
 救済法は、私は、給付水準、これ思い切って引き上げていくということが必要で、労災、公務災害、このハードルも下げていくと。これ基本合意の趣旨からいっても、この判決、最高裁の判決を本当に真摯に受け止めてアスベスト被害者の救済につなげていくべきだということで、これは大臣に答弁いただきたいんですけど、ごめん、もう一回、救済法のところの認定数、受付と認定数のところ確認してもらっていいですか。

○政府参考人(田原克志君) 石綿健康被害救済制度に基づく直近の数字ということでしたので、先ほど令和元年度の数字を御説明いたしました。(発言する者あり)あっ、数字ですね。
 中皮腫では、九百五十九件の申請がなされまして、七百六十五件の認定がございました。肺がんでは、二百四十六件の申請がなされまして、百七十八件の認定がございました。

○倉林明子君 救済法のところでも給付水準の引上げが必要じゃないかと、そして、労災、公務災害のところでの拡充もしていくことをこの裁判を転機としてやるべきではないかというところについても答弁をいただいておきたい。

○国務大臣(田村憲久君) 今回、基本合意書、基本合意を結ばせていただきました。まず、その建設アスベスト被害者の皆様方に関して、この合意書にのっとってしっかりと我々対応させていただきたいというふうに思っております。
 その対象にならない方というお話の中で、労災給付という形の中で労働災害給付を受ける、これは、そういう制度の中で今やっていただいておりますし、石綿救済制度の中で動いている部分に関しては、これは医療費でありますとかまた療養費等々に対して、手当てという形の中でお支払いされているということでございますから、この制度の中でしっかりと我々としてはこの石綿被害に対して、被害者に対して対応させていただきたいというふうに思っております。

○倉林明子君 日本が石綿の使用を原則禁止としたのは、もう二〇〇六年なんですね。本当に最近なんですよ。これ、大幅に世界から見ると遅れたと。これがやっぱり今の因果関係の立証というところにも大きな障害になったわけです。
 やっぱり国の責任を、建設労働者に関してだけれども、断罪されたと、メーカーの責任も問われたと、断罪されたという下で、石綿による被害、この責任は明確に国にあると。そして、その責任は、建設労働者の今回の裁判にとどめずに、一人残さず救済していくんだという立場に立った制度の見直しというのが必要じゃないかという点から申し述べましたので、もう一回受け止めてもらって、いかがでしょうか、大臣。

○国務大臣(田村憲久君) ですから、労働災害で労災給付にならない、保険給付にならない皆様方に関しても、石綿被害者救済制度、被害救済制度、こういうものを、これ議員立法だったというふうな記憶しておりますが、お作りをさせていただいて、いろんな形で何とか救済をさせていただきたいという思いでやらせていただいているわけでありまして、この制度をしっかりと我々はこれからも対応させていただいて、被害者の方々に対して救済を進めていくということが非常に重要であろうというふうに考えております。

○倉林明子君 もうちょっと前に進めるように、一人残さず救済をと、原告団の願いにも応えていくという方向でより前に進めていただきたい、強く求めまして、終わります。