倉林明子

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過労死ライン2倍批判 医師時間外 病床削減法案で参考人(2021/4/27 厚生労働委員会)

 参院厚生労働委員会は27日、病床削減推進法案の参考人質疑を行いました。同法案は、病床削減した病院に給付金を配る事業を盛り込み、医師の時間外労働の上限を過労死ラインの約2倍(年1860時間)まで認めるもの。

 過労死を考える家族の会の中原のり子氏は、小児科医の夫を過労自死で亡くし、全国でも医師の過労死・過労自死が後を絶たないと述べ、「なぜ過労死ラインの2倍まで認めるのか理解できない」と批判。若手医師と共同し、8000人分の反対署名を厚労省に提出したことを紹介し、「新型コロナウイルス感染拡大の前から医療現場はひっ迫していた。適切な人とお金の配置が必要だ」と述べました。

 自治労の福井淳衛生医療局長は、感染症の拡大時に「公立・公的医療機関で確実に医療を提供するには、有事に備えて人員に余分をもたせる災害対策の発想に基づいた人員の拡充と財政支援が求められる」と指摘。病床の再編統合について、「コロナ第4波が到来するなか、現在が本当に再編を促す時期なのか。公立・公的病院のリストは取り下げるべきだ」と主張しました。

 日本共産党の倉林明子議員は、「医師の『働き方改革』の原点は過労死をなくすことだ」と投げかけ、中原氏は「過労死防止法が2014年にできたが、過労死は減らず、じくじたる思いだ。政府の強い政策を求める」と応じました。


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林でございます。
 今日は、参考人の皆さん、コロナ第四波というような状況の下でもこうして出席いただきまして、本当にありがとうございます。法案審議に当たって、是非参考にさせていただきたいと思います。
 最初に、先ほども御指摘ありましたけれども、医師はいずれ過剰になるという議論ありまして、猪口参考人と福井参考人の方からも不足しているというお話をいただいたかと思うんです。私、働き方改革ということで、決して十分ではないし、到底受け入れ難い長時間の上限だという意識あるんですけれども、これさえも進めていくには医師の増員なしには実現できないんじゃないかという思いを強く持っているんですね。
 そこで、先ほど御意見伺った以外の上家参考人、中原参考人、山本参考人も聞けていなかったかと思うので、この医師の不足、増員の必要性ということについて思いを聞かせていただけたらなと思います。

○参考人(上家和子君) ありがとうございます。
 私は、医師の養成を増やせば済むという問題ではないと思っています。数が、人数が増えたらいいこともたくさんあるかもしれませんが、経験する症例数が減ってしまうと医師としての資質の向上ができなくなるという意味では、ある程度経験できる症例がなければいけない。だから、幾らでも増やせばいいというものではないということは一つ言えると思います。
 それから、偏在の問題はさておきということもあるかもしれませんが、偏在という、偏在といっても地域的な偏在というだけではなくて、診療科の偏在あるいは働き方の偏在、そういったものを是正していくことでかなり違ってくる部分がある。
 もう一つは、医師でなければできない仕事をやっているかどうかということをもっとちゃんと見直すべきだと思います。医師の数を増やすということも要るのかもしれませんけれども、それよりも医師の働いている内容をもっと見直して、医師でなくてもできる仕事、やらなくてもいいこと、そういうことをちゃんと見直していく。そのためには、繰り返し申し上げて恐縮ですが、患者教育がなければ、患者さんが納得しなければできないという意味では、患者教育、医療の受け方教育が絶対に必要だと思っています。

○参考人(中原のり子君) 私の夫は、都内の民間病院ということで、中野区だったんですけれども、そこの病院には新宿区の方から、大きな大学病院から、週末になると、夜勤というか当直のアルバイトの先生方に大変お世話になっていたようです。
 そうやってお世話になるということはもう数も足りなかったということなんですけれども、やはりうちの夫の場合は、やっぱり、うちの夫が部長代行になったときに三人の小児科医が現場を去ってしまったということが一番大きな原因だったと思います。六人いたスタッフが三人に半減したということはやはり危機的な状況だったんですけれども、やっぱり東京であっても、中野区とかそういう都会であっても医師は見付けられませんでした、なかなか。ですから、私はもう絶対的な不足はあるというふうに思っています。
 もちろん診療科のそういう偏在とかいうこともあるのかもしれませんけれども、今の状況ではやはり厚労省が認めているように医師不足である。そうしたらどうするのかというと、やはり医師の補助職が今緊急的に必要なのではないかというふうに思っています。それを看護師さんだけに頼るのではなく、やはりさっき上家先生がおっしゃったように、医者だけが全てをまとめるのではなく、やはり医師補助職、そういう秘書的な役割をする方とかサポートするところがすごく大切なんじゃないかと思います。
 あと、先ほど梅村先生の方からもお話しいただきましたけれども、チーム医療ということであれば、やはりもっと技師さんとか薬剤師とかそういった、コメディカルと言っていいのかどうか分かりませんけれども、そういう医療者をもっともっと活用するべきだと思うし、今、やはり今必要なんです。だからそのために何をしたらいいかというのを、是非ここのお話は進めていっていただきたいと思います。
 以上です。

○参考人(山本修一君) 私は、単純に多い少ないという議論は余り意味はないのではないかなというふうに実は考えております。
 先ほど来出ておりますように、やはり地域偏在、診療科偏在、これ同時に解決しないと、偏在を残したまま、ちゃんとみんなが足りているようにするとすると、もう医者をじゃぶじゃぶに増やさない限りは、あふれるぐらいつくらない限りは、いろんな診療科あるいは地域で医師が足りているということにはならないと思います。やはりここをきっちりやらないと、本当に必要なところ、例えば内科医でも、専門分化した内科医ではなくて、先ほど猪口委員がお話しになったような、総合診療医のような間口の広い内科医も一定数育てるとか、そのような配慮もやはり必要ではないかなというふうに考えます。
 あと、地域偏在に関しましては、今、地域枠の学生が大体年間八百から九百人ぐらい地域枠として入っておりまして、それがもうどんどん今卒業が始まっています。この子たちは基本的にその医師不足地域への派遣を前提としておりますので、彼らをあといかに有効に使うかと。これは、先ほど申し上げた地域の医療提供体制の効率化と併せて行うことで、その推移をやはり見ていく必要、しっかりその体制の見直しを行いつつその推移を見ていかないと、本当に多いのか少ないのかという議論はなかなか難しいのではないかなというふうに私は考えております。

○倉林明子君 ありがとうございます。
 引き続き、福井参考人に伺いたいと思うんですけれども、公立・公的病院のリストの問題のお話もありました。今回、医療法でその病床再編を消費税財源を使ってやっていくということは法定化されるということになりまして、百九十五億円、今年度も予算ということになりました。これかなり、病床再編、病床削減に付く補助金ですから、病床削減の促進につながっていくのではないかという懸念を非常に持っています。
 コロナの下で、将来的にどう再編統合していくかという課題の議論というのは完全に否定するものではないんだけれども、コロナを踏まえた今やることだろうかという思い、強く持っているんですが、公的・公立病院の再編の現場においても感じておられることがありましたら、教えていただきたいと思います。

○参考人(福井淳君) ありがとうございます。
 公立、公的の病床再編について御質問があったと思うんですが、我々も、日本はもう人口減少社会に入っていますので、地域によって今ある病床数や病床機能がこのままでいいのかということについてはやはり議論が必要だし、例えば年齢の構成が変われば必要な医療も変わってくるんだろうなというふうに思っておりますので、そのことについては粛々と進めていく必要もあろうかと思っています。
 一方、何度も言いますけれども、このリストのことについてですけれども、このリストについては、決して調整会議の議論が活性化するというわけではないと思いますし、この病床再編の今回の支援事業なんですけれども、これと関連しているところもあると思うんですが、重点支援区域についてはかなり、重点支援区域のほとんどがもう公立・公的医療機関ということになるので、この再編の支援がまずは公立、公的からやられる、始められるということについては、ちょっと今回のコロナの対応も踏まえるとどうなのかなと思っております。
 コロナの対応は、民間病院も含めて、民間も多くの病院が対応していただいていて、公立、公的、民間というそういう対立構造にはないとは思いますけれども、割合でいうと公立、公的がかなりの割合を占めているということですので、このことについては少し議論が必要ではないのかなと思っております。
 厚生労働省の資料でも、この再編統合のリストの病院の百九十病院でしたかが今回新型コロナを実際に受けた医療機関ということになっておりますので、今本当にこの再編の支援をしていくのが地域によっては必要なのかもしれませんけれど、少し冷静に考えるところも必要なのかなというふうに思っております。

○倉林明子君 ありがとうございます。
 猪口参考人に伺いたいと思います。
 長期化するコロナの下で、様々な医療機関への財政的な支援ということで取り組まれて大きな財政措置もとられたということなんですけれども、一方、受け入れている、コロナ患者を受け入れているところ、そうでないところというところで、支援に格差もあるというところも気にしております。全てのやっぱり医療機関を支えて地域の診療体制というのが機能するというふうに思うんですね。
 その際、やっぱり通常診療への影響がすごく出ているということと、あと減収補填という考え方ですね、どういう在り方がふさわしい、今ね、一番、機能、みんなが頑張れるような減収補填、財政支援の在り方ということで御所見を伺っておきたいと思います。

○参考人(猪口雄二君) こういうことが起きてからもう一年以上たっているわけです。当初、昨年の四月ぐらいにもう本当に、患者さんの激減ですね、四月、五月、これでは医療機関は成り立たないということで、私自身も随分、厚労省とか、そちらの方にお願いも回っておりました。
 様々な形の支援策ができてきて、実は今、日本病院会と全日本病院協会と医療法人協会、三つの団体で、もう四月から始まって、四半期ごとですね、三か月ごとにデータを作っております。最後の一、二、三のデータを入れるとちょうど一年になるんですが、それはまだ今集計中であります。
 十二月までのデータを見ますと、本当に四、五、六が悪いんですけれども、だんだん良くなってきているということは言えます。ただ、中身を見ますと、やっぱり患者数とか、それから手術数とか、救急患者さんとか救急車の台数ってやっぱり回復していないんですね、まだ昨年並みには、一年前のようにはですね。それなんですが、まともにいくとやっぱり全病院では五、六%の赤字で、しかもそのコロナを受け入れるところの方が更に悪くて、受けていないところの方がまだ傷が浅いというような結果が出ました。
 それで、じゃ、それに対してこの支援金をいただくとどうなるかというと、大体平均がマイナス一%ぐらいまで回復しますので、それなりの支援金をいただいて効果があるということは間違いないと思っております。ただ、支援金が、国は出したんだけど都道府県にとどまっていて、交付がされていないということが結構あるということと、もう一つは、やはりその病院によってバランスがあって、支援金で十分に成り立ったところもあれば、例えばクラスター起こしてしまったために、支援金をいただいても全然まだ足らないというところまであるので、そこは今回、一年分のデータを十分にまた精査した上でそこは発表させていただいて、今後のデータにさせていただきたいというふうに思っております。

○倉林明子君 ありがとうございました。
 時間もないんですけれども、最後、中原さんに、やっぱり過労死遺族の運動で実現したのは過労死防止対策推進法だったと思うんですね。今回、医師の働き方改革の原点は過労死をなくしていくということだと思っているんですけれども、最後、思いを是非伝えていただければと思います。

○参考人(中原のり子君) 二〇一四年に過労死防止対策推進法ができまして、今もその二回目の大綱の見直しのために協議会も話し合ってはおりますけれども、残念ながら過労死は全く減っていません。むしろ、私たちがこの過労死という言葉を、まあ皆さんが言いやすくなったのか、あるいは本当に増えているのか分かりませんけれども、だんだん私たち家族会の仲間が増えていってしまっているような状況です。その法律ができたにもかかわらず、何でこれができないのか、進まないのかというのが本当にじくじたる思いです。
 この医師の働き方に関しても、もちろん医師の過労死を減らしたいという思いは強くありますけれども、これが本当に私の活動が有効なのかどうかというのは、日々悩ましく思っているところです。
 是非、ですから、本当に先生方のお力添えをいただき、政府として、もう過労死はあってはならないんだということで、強い政策を求めたいと思います。
 以上です。

○倉林明子君 終わります。