倉林明子

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マクロスライド凍結を 参院委で倉林氏 低年金底上げ 今こそ(2020/5/26 厚生労働委員会)

(資料があります)

 日本共産党の倉林明子議員は26日の参院厚生労働委員会で、コロナ禍で雇用環境が悪化し高齢者への影響も甚大だとして、年金水準を自動削減する「マクロ経済スライド」の凍結を求め、“経済成長”“雇用環境改善”を前提とした年金制度改定法案も撤回するよう迫りました。

 倉林氏は、基礎年金について「一定の年金額を保障する所得再分配機能を将来にわたって維持することが重要」とする安倍晋三首相に対し、「今こそ低年金の底上げをするべきだ」と主張。年金積立金を活用し、年金水準を減らし続けるマクロ経済スライドを凍結するよう求めました。

 安倍首相は「凍結は考えていない。積立金を取り崩して現在の給付に充当することも責任ある対応ではない」と拒否しました。

 倉林氏は、「受け取れる年金が減り続ける要因に『増え続ける負担』がある」と指摘。首相肝煎りの「全世代型社会保障改革」で狙われている75歳以上の医療費窓口負担2割への引き上げや介護保険の負担増は「到底認められない」と批判しました。

 倉林氏は、政府が年金水準の指標とする「所得代替率」について、OECD(経済協力開発機構)のデータでは32%(2018年)なのに、年金財政検証では60・1%(同)となっていると指摘。財政検証の方は「代替率が高く出る計算式になっている」と述べ、「条件をそろえれば、世界的にも公的年金の水準が低いことは明らかだ」と強調しました。


OECD加盟国の所得代替率(2014年)


OECD加盟国の所得代替率(2018年)


議事録を読む(対総理質疑)

○倉林明子君 日本共産党の倉林でございます。
 さっきの石橋さんの質疑を聞いていまして、私からも東京高検の黒川元検事長の処分の問題について質問したいと思うんです。
 これ、退職金が、自己都合分で減額される分はあるというものの、大方六千万円余りが入ると、支払われると、これが訓告ですよね。で、納得できないという抗議の声が国民の中に広がっているわけですよね。
 今、総理は、任命責任があるんだということを繰り返しお認めになるんだけれども、国民が注目しているのは、総理がどう責任を果たすのかと、総理の姿勢、注目していると思うんですよね。
 そこで、先ほど来の議論でもありました、総理は、なぜですよ、なぜ懲戒は不要だと判断したのか、その根拠。そして、調査についても、もう要らない、もう法務省がしたのでいいということでしたけれども、この調査は五月前に黒川元検事長がマージャンしていたのかどうかという調査はやっていないんですよね。なぜ、調査もっと必要だという判断に至らないのか、総理自身の判断どうなのか、お聞かせください。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 黒川氏の処分については、先日二十一に法務省から検事総長に対し、調査結果に基づき訓告が相当であると考える旨を伝え、検事総長においても訓告が相当であると判断して処分したものと承知をしております。
 そして、私自身は、森法務大臣から、事実関係の調査結果を踏まえて処分を行ったこと、その上で黒川氏本人より辞意の表明があったので、これを認めることとしたいと、この報告がありまして、法務省の対応を了承したものでございます。
 そして、その上において、今御質問がございましたが、この訓告という処分については、検事総長が事案の内容等、諸般の事情を考慮し、適正に処分を行ったものと承知をしています。
 処分量定等の詳細については、もし国会のお求めがあれば法務大臣を始め法務省において適正に説明を行うものと考えております。

○倉林明子君 いや、それじゃ、やっぱり国民は納得しないと。先送りしたからって、国民は忘れませんよ。やっぱり、検察庁法、これを、人事の介入が可能になると、これ大問題になったわけですよ。これ、やっぱりきっぱり廃案にするということと、定年延長、黒川さんの定年延長を決めた一月三十一日の閣議決定、この撤回を強く求めておきたいと思います。
 年金です。
 一問目飛ばしまして、今コロナで、感染リスクから、解雇そして雇い止め、高齢者にすごく影響やっぱり出ています。そこで、総理は、基礎年金について、所得の多寡にかかわらず一定の年金額を保障する所得再配分機能を有する給付で、将来にわたって維持していくこと必要だと、こういう判断示されております。そうであるなら、今こそ低年金の底上げ、直ちにやるべきじゃないでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 公的年金制度では、基礎年金が所得の多寡にかかわらず一定の年金額を保障するといった所得再分配機能を有する給付でありまして、この機能を将来にわたって維持することが重要であると考えていますが、今般の法案に盛り込まれている被用者保険の適用拡大は、厚生年金のみならず、基礎年金の水準を確保する上においてもプラスの効果を持つことも確認されているところであります。まずはパートの皆さんへの適用拡大をしっかりと進めていくことで、基礎年金の水準の向上も図っていきたいと考えています。
 また、委員が御指摘になった低年金や無年金、また低年金の、あっ、低所得や無年金、そして低年金の高齢者の方々には、年金受給資格期間の二十五年から十年への短縮、そして年金生活者支援給付金の支給、また年金給付から天引きされる医療、介護の保険料軽減を実施をしているところであります。
 今後とも、年金水準を確保するための見直しを行っていくとともに、低年金、低所得の方々には社会保障全体で総合的に支援をしていく方針でございます。

○倉林明子君 今、年金でできることということで考えるべきだと思うんですね。年額百万円未満の年金受給者、女性で六割になります。全体でも四割強ということになっていますね。いろいろやってもらっているんだけれども、更なる取組が必要だと。
 一番大事だと思っているのは、減り続ける年金になっているマクロ経済スライドだと思っているんです。このマクロ経済スライドをやめるために、やっぱり積立金、これからもため続けていくという積立金、今使うべきじゃないでしょうか。どうでしょう。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 我が国のこの公的年金制度は、平成十六年の改革によって、現役世代と高齢世代のバランスを確保しつつ年金制度の持続可能性を確保するために、将来の保険料水準を固定し、そして、積立金を活用しつつその収入の範囲内で給付水準を調整するマクロ経済スライドを導入いたしました。そして、このマクロ経済スライドを導入することによって、おおむね百年間の給付と負担を均衡させる仕組みを構築をしているところでございます。年金というのは相当先までしっかりと保障されているものだということを国民の皆様に御理解をいただきながら、年金の、若い皆さんにも年金保険料を、この負担をしていただくということが大切なんだろうと思います。
 このように、年金のマクロ経済スライドについては、将来世代の給付水準の確保のために不可欠な仕組みであることから、政府としてはもちろん凍結することは考えておりませんし、今この積立金を取り崩して現在の給付に充当するということについては、まさに長期的な給付と負担の、負担をバランスできる水準を超えて、今申し上げましたように、積立金を今使ってしまうというのは、現在の給付に充当してしまうということは、責任ある対応とは我々は考えていないところでございます。

○倉林明子君 全部使えという提案ではございませんので、一部を取り崩して、今の緊急時の対応として求めているということです。
 その上で、受け取れる年金が年々減らしているという、受け取れる年金が減るという要因に、やっぱり増え続ける負担というものがあります。七十五歳以上の高齢者の医療費窓口負担二割という検討がずっと宿題ということで言われて、検討されてきたわけです。
 私、到底認められないと、コロナ禍で高齢者の負担増などはやるべきではない。いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 二〇二〇年には、いわゆる団塊の世代が七十五歳以上の高齢者となる中において、現役世代の負担上昇に歯止めを掛けることは引き続き重要な課題であります。
 そのため、昨年取りまとめた全世代型社会保障検討会議の中間報告において、七十五歳以上の高齢者であっても、これは一定所得以上の方については新たな窓口負担割合を二割とすることとし、本年夏までに成案を得ることとしていたものであります。しかしながら、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴いまして、全世代型社会保障検討会議の最終報告は本年末に行うこととしたところであります。
 引き続きまして、高齢者の疾病、そして生活状況等の実態をこれ踏まえる必要がもちろんあります。そうした実態を踏まえて、全世代型社会保障検討会議や関係審議会等において丁寧に検討を行っていきたいと考えております。

○倉林明子君 社会保障検討会議の話ありました。先送りということです。介護保険の負担増、これも計画されておりますので、その撤回も求めておきたい。
 国家公務員の定年延長は、これコロナで状況変わったから提案しない、こう言うんだったら、年金法も撤回した方がいいと強く求めて、終わります。

議事録を読む(対政府質疑)

○倉林明子君 日本共産党の倉林でございます。
 まず、年金の給付水準について質問をさせてください。
 この水準については、総理も、単身では年金だけじゃ足りないと、これもうお認めになっていると思うんです。それでは、所得代替率五〇%、これは暮らせる水準になっているのか。どうでしょうか。

○政府参考人(高橋俊之君) この少子高齢化が進む中で、将来世代の負担が過重なものとなることを避けるために、二〇〇四年の改正におきまして、保険料の上限固定あるいはマクロ経済スライド等によりまして、長期的な給付と負担のバランスを取りながら将来にわたって年金の給付水準を確保すると、こういったところの中で所得代替率五〇%というものが出てきた経緯なわけでございます。
 これは、モデル年金で見て、将来にわたって所得代替率を維持すると。生活、人々の生活、それぞれ様々でございますので、個々の生活で、現役時代の生活状況ですとか、高齢期の収入ですとか資産の状況ですとか、それぞれ望ましいと考えられる生活水準も様々でございますので、一律にこれで足りる、足りないといったものではないと思っておりますけれども、公的年金が老後生活の基本を支えると、こういった役割のための目標としてしっかりと対応してまいりたいと考えてございます。

○倉林明子君 分かりやすく問いには答えていただけたら有り難いと、希望したいと。結局の話、今の説明でいえば、足りる人もいるかもしらぬけれども、やっぱり足りない人も出てくるということやったと思うんですね。
 安定した賃金が、このモデル世帯というのはですね、安定した賃金が四十年間もらえたことが前提になるわけですよね。で、マクロ経済スライドによって、これ長期的には所得代替率下がるということになりますよね。で、五〇%というのは、目標にしている五〇%というのはどういう水準かというと、その受給時、開始時ですね、そのときの到達目標になっているんだけれども、これ給付水準というのは長期的に下がり続けますから、長生きするほど実は暮らせないという年金になっているというのが実態だと思うんです。
 これ、OECDの議論、もう何度かさせていただいていて、これ物差しが違うんだという議論もありました。しかし、改めて公的年金の水準ということでいうと、国際比較でいえばやっぱりOECDになっていくんだろうと思うんです。国際的に見てこのOECD加盟国の所得代替率比較、これ、前回議論したときの二〇一四年の国際比較、そして二〇一八年、直近の比較を一枚目、二枚目に付けているわけです。
 二〇一四年は所得代替率が日本は三五・一%、二〇一八年三二%ということで、加盟国の中では下位に、下の方にいるんですね、位置していると。さらに、これ代替率が、他の国もそういう傾向あるんですけれども、日本も代替率がこれ下がっているんですね。
 財政検証におけるこの所得代替率というのは、OECDは三五・一から三二%ということになっていますが、財政検証における所得代替率が二〇一四年、二〇一八年、それぞれ何%になっていたか、そしてOECDの所得代替率と何でこんなに違うのか、説明をお願いします。

○政府参考人(高橋俊之君) 先生に二つ資料を出していただきました。OECDのペンション・アット・ア・グランスの二〇一四年と二〇一八で、日本の数字が二〇一四年は三五・一%、二〇一八年が三二・〇。これ、下がったように見えますけど、これ下がったんではなくて定義が違うというものでございます。二〇一四年のOECDのレポートはこれ四十五年加入の数字になっています。それから、二〇一八年レポートはこれ四十三年加入でございまして、その違いでございます。それから、これ現在の所得代替率ではなくて、それぞれの国におけます将来の数字でございます。そういう意味で、日本でいえばマクロ経済スライドが進んだ後の数字でございます。
 ただ、この数字が三二%という、低く見えますのは、これ基礎年金一人分と報酬比例一人分を足した単身世帯の数字でございます。OECDのこの調査でも二人世帯の数字も出しておりまして、それにおきます日本は四二・五%となってございます。この四二・五%も、日本の財政検証のケース三のマクロ経済スライド終了時五〇・八と違うわけでございますけれども、これもまた設定が違いまして、OECDの方は分母が、分母の賃金が異なっていて、OECDの方は税、社会保険料控除前になっていて、財政検証は控除後になっているとか、それから就労期間とか平均賃金の違い等々も異なってきている。そういう意味で、単純比較はできないものでございます。

○倉林明子君 単純比較、日本の五〇%というか、目標にしている分と単純比較はできないんだけれども、随分開きがあるんですよね、将来の数字だけど。
 今の説明にあったとおり、日本の場合というのは所得代替率の分子はどうなっているかというと、妻の基礎年金も入っているということになっています。年金額も税引き前なんですよ、分子は。ところが、分母はどうなっているかというと、現役時代の平均賃金は税引き後なんですよね。つまり、分母が高く出る仕組み、制度的にそうなっているんです。これが大きく差につながって出ていると思うんですね。世界的にも、条件をそろえたらやっぱり低いと、これは明らかだと思うんですね。
 二〇一九年の財政検証の前身であります経済成長、労働参加、これ、コロナで激変しております。このままでは所得代替率の確保、大変困難になるんじゃないかと。給付水準確保する、この観点からもマクロ経済スライドの凍結。そして、加えて賃金スライド、これも始まります、二〇二一年四月から。ということになりますと、これ、コロナの下で解雇や倒産が急増しております。物価は上がると、賃金は下がると、こういう傾向になると思うんですね。こうなったら更に手取りが減って年金が下がっていくという流れになりますので、私、マクロ経済スライドも、直近に発動が決まっているこの賃金マイナススライド、これやめるべきだと。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(加藤勝信君) マクロ経済スライドは平成十六年の年金制度改正で組み込まれたわけでありますが、当時は、保険料水準がどんどんどんどん上昇していく中で、やっぱり若い人の負担という観点から、将来の保険料水準を固定した上でこのマクロ経済スライドによって現役世代と高齢世代のバランスを確保して一定の給付の水準を確保するという形で組み込まれた仕組みであります。将来世代の負担というのが当然ありますから、それを過重なものにせず年金財政の均衡を図るために、基礎年金に対してもマクロ経済スライドによる給付水準の調整がこれは必要であるというふうに考えております。
 今回の新型コロナウイルス感染症の年金財政に与える影響、これ、数十年単位で見た場合、直ちに影響を与えるものではないと考えます。もちろん、これによって日本の経済構造、社会構造が変われば当然それは一定程度反映されることはあるんだろうとは思いますけれども。
 また、基礎年金は、所得の多寡にかかわらず一定の年金額を保障する所得再配分機能を有している給付でありますから、これまでも申し上げているように、この機能は維持することは必要であり、そうした検討はしっかり進めていくべきだと思っております。
 また、賃金マイナススライドの発動についても、二〇〇四年以降、デフレ経済が続き、賃金上昇率が物価上昇率を下回った中でマクロ経済スライドを発動できない状態が続き、特に報酬比例年金のように給付が賃金に連動していない定額の基礎年金への影響が大きくなっていったということを踏まえて、二〇一六年改正で、賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を徹底し、将来世代の給付水準を確保しようとするための見直しであります。
 なお、年金額の改定に当たっては、不測の事態、一時的な事態に過度に影響されないようにするため、三年間の平均の賃金変動率を用いて、これによって年度による経済状況の変化の平準化を図るということであります。
 いずれにしても、財政検証をしっかりしながら持続可能な年金制度の維持に引き続き努力をしていくとともに、今回の法案に申し上げておりますように、適用範囲始め検討すべきものについてはしっかり検討させていただきたいと思います。

○倉林明子君 いや、こんなときに年金が下がり続けるって、これが国民にどんな不安を与えるかと、だからこそ今できることをしっかり措置すべきだと求めておりますので、御検討いただきたいと思います。
 終わります。