倉林明子

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児童虐待防止 監視でなく支援拡充を 改正法成立 倉林議員が賛成討論(2019/6/19 本会議)

(議事録は後日更新いたします)

 児童虐待防止対策の強化を図る改正児童福祉法等が19日の参院本会議で、全会一致で可決・成立しました。賛成討論に立った日本共産党の倉林明子議員は、体罰禁止を明文化したことは重要だと述べ、改正法を受けて厚生労働省が示すガイドラインには、国連子どもの権利委員会が規定する水準であらゆる場面での体罰その他品位を傷つける行為の禁止を明示するよう要求。体罰容認の根拠とされている民法の懲戒権規定の早期廃止を主張しました。

 倉林氏はまた、児童相談所や一時保護所の体制強化が急務だと強調。児相職員の専門性にふさわしい処遇改善や、一時保護所における専門職の確保や処遇改善のための財政支援の拡充などを求めました。

 さらに、児童福祉施設などの社会的養護から巣立った人への支援が国と地方自治体の責務だと明記すべきだと主張。児童虐待と女性の貧困やDV被害等との関連を指摘し、「困難を抱える女性を最前線で支援する婦人相談員の市町村への配置を義務化し、処遇改善のための財政措置を講ずるべきだ」と訴えました。
 
 最後に、厚労委員会の参考人質疑で、近年の虐待防止策について「監視社会になっていくようなあり方が提案されすぎている」と指摘されたことに触れ、「虐待を個別の家族の問題としてのみとらえるのではなく、雇用不安や貧困と格差の広がり、孤立を招く社会のあり方を変えなければならない」と強調しました。


議事録を読む(未定稿)
(この会議録は未定稿です)

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
日本共産党を代表し、児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案について、賛成の討論を行います。
本法案が親権者による体罰禁止を明文化したことは重要です。
子どもの権利委員会は、体罰を、どんなに軽いものであっても、有形力が用いられ、かつ、何らかの苦痛又は不快感、屈辱感を引き起こすことを意図した罰と規定し、子供をけなし、辱め、侮辱し、身代わりに仕立て上げ、脅迫し、怖がらせ、又は笑い物にすることを意図した罰が含まれるとしており、その水準での実施が求められます。
厚労省が今後示すガイドラインでは、あらゆる場面での体罰、その他品位を傷つける行為を禁止することを明示するとともに、懲戒権の早期廃止を求めるものです。
同時に、法改正の議論が進む中で、しつけとの区別に悩み、子育ての新たなプレッシャーとなっているのも事実です。家族のみの問題にせず、子育てを社会が支えることが重要であり、たたかない、どならない子育てができるよう、情報提供や手厚いサポート体制の整備が必要です。
厚生労働委員会では、参考人から、児童虐待の通報件数が増加を続ける中で、児相に負荷が掛かり、正常な業務ができなくなっているとの指摘がありました。重く受け止める必要があります。
この間、児童福祉司の定数は徐々に増やされてきたものの、一人当たり百数十ケースを抱え、日々新たな相談や初期対応、政府から要請される緊急対策に追われています。過酷な日々に疲弊しているとの現場の訴えに緊急の対応が求められます。
児相職員が、一人一人の子供、家族と十分な関わりを持ち、本来の相談支援ができる体制を保障することが急務になっています。個々の職員が適切なケース数を維持できるよう、国の責任で、必要な人員の確保と計画的な人材育成を図ること、専門性にふさわしい処遇改善を早急に行うべきです。また、多様な通報に対する安全確保の在り方も含め、現場、関係者の意見を踏まえた検討を求めるものです。
一時保護所について、この間、定数超過、在所日数の長期化、学習権の保障、混合処遇等、厚労省の検討会や国会審議などにおいて重ねて問題が指摘されてきました。厚労大臣も検討を約束してきましたが、養護施設の基準を準用する施設、職員配置の基準等の見直しは手付かずのままに置かれています。
様々な背景を持ち、心身に傷を負った子供たちに、一人一人に向き合った適切なケアができる施設、環境面の整備、人員体制の確保は喫緊の課題です。児童心理司、看護師、栄養士も含めた専門職の配置、個室の確保等、一時保護の特性に見合った基準を早急に検討し、各地の施設が改善できる財政的保障を行うことを求めます。
市区町村の状況について、参考人質疑では、非常勤の家庭相談員さんが夜討ち朝駆けで献身的に活動しているが、子供の命を守る仕事、人の一生に関わる仕事でありながら、月額十数万円の報酬、研修の機会もほとんどないと、深刻な実態が改めて示されました。
市町村には、子供、家族を受け止め、支える役割が期待されています。しかし、児童福祉司と同等の資格を持つ者の比率は少なく、非正規職員が多く占めています。他の相談業務との兼務も多いなど、体制整備は依然多くの課題が残されています。
専門職を確保し、安定して働き続けられるよう処遇を抜本的に引き上げるために、財政支援を拡充すべきです。
地方自治体は、政府の方針により、長年、公務員の削減を求められてきました。その中で、子供や家庭、女性に関わる相談員、保育士など、専門職の非正規化が進んでいます。自治体が、子供の安全、安心、命を守る仕事に責任を果たすために、公務員の削減の押し付けはやめるべきです。
職員削減率を用いた交付金算定により、子育て支援に努力する自治体が不利になるような仕組みの見直しを強く求めるものです。
社会的養護を巣立った人たちへの支援の強化が必要です。
施設を退所した方たちの多くは、その日から自ら働き、収入を得なければ、日々の生活を維持できません。
厚生労働委員会では、アフターケアを担う事業所の代表から、若い彼ら、彼女たちは失敗することも、立ち止まることもできない緊張状態の中で暮らしていかなければならないと指摘し、今困っている、今苦しいという事情を抱えた当事者の人たちの問題解決の支援が一番求められていると訴えがありました。これらの声に応えるべきです。
児童福祉法に、社会的養護等を巣立った人たちのアフターケアが国、地方自治体の責務であると明記すること、高い専門性が求められる現場にふさわしい人員配置に見直し、適切な予算化を求めるものです。
子供たちを守るためには、女性が守られなければなりません。法案は、子供への虐待を防ぐために、配暴センターとの連携強化、婦人相談所や婦人相談員への早期発見の努力義務を課すなどの改正を行いました。しかし、DV被害者の相談支援を最先端で担う婦人相談員は、市町村に必置義務ではなく、配置している市区町村は二割にすぎず、自治体間の格差も生じています。
DV被害者を始め、性暴力被害、経済的困窮、障害を抱えた女性など、様々な困難を抱える女性に対し、相談者の人権を尊重し、相談、問題解決に関わる総合的な支援に当たる婦人相談員の役割は極めて重要であり、各自治体への配置を義務化すべきです。専門性が問われる業務であり、雇い止めをさせず、雇用の継続性を保障するとともに、専門職にふさわしい処遇改善が行えるよう財政措置を講ずるべきです。
DV法の抜本的見直しの検討に早急に着手するとともに、DV対策について民間支援組織を含む関係団体から多くの運用上の問題が指摘されており、早急な見直しが必要です。その際、民間支援団体を重要な担い手として位置付け、財政支援を抜本的に強化する必要があります。
売春防止法を根拠とする婦人保護事業は早急に見直しが必要です。DVを始め、貧困、居場所を失い孤立した女性、性的な搾取など、様々な困難を抱えた女性が、人権と自己決定が尊重され、必要とされる支援が切れ目なく受けられるよう、抜本的な見直しを求めるものです。
最後に、小さな子供を育てる家族から、子供が泣いただけで虐待を疑われるのではという声を聞くようになりました。不安になったとき、相談したときに、疑われたり、否定されたと感じれば、声を上げることはできません。
参考人質疑の中で、支援を求めにくい状況について、監視社会になっていくような在り方がこの数年間かなり提案され過ぎているとの指摘がありました。その視点から、これまでの対策を検証する必要があるのではないでしょうか。
子供への虐待を個別の家族の問題としてのみ捉えるのではなく、子供への虐待の背景にある、子育て世代の雇用不安、貧困、格差が広がり、安心して子育てできず、孤立化を招く社会の在り方を変えなければなりません。
日本共産党は、正規雇用が当たり前で八時間働けば普通に暮らせる社会、将来の心配も、お金の心配もなく子育てできる社会、誰もが尊厳を持って生きられる社会を実現するために全力で奮闘する決意を申し上げて、討論といたします。