倉林明子

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「求人詐欺」合法化やめよ/生産性向上で失業増加のおそれ(厚生労働委員会)

日本共産党の倉林明子議員は23日の参院厚生労働委員会で、募集広告などでしめした労働条件と実際の条件が異なる「求人詐欺」を合法化する問題や、雇用関係助成金で生産性向上を要件とすることについて、政府の姿勢をただしました。

職業安定法改定に関わって、労働契約締結直前まで労働条件の変更が可能だとする政府に対し倉林氏は、「労働条件などをあらかじめ知ることが労働者保護と定着につながる」と指摘、「労働者を守るべき厚労省が“求人詐欺”を合法化するなどもってのほかだ」と厳しく批判しました。「裁量労働制なども含めて条件を明示すべき」と求めた倉林氏に対し塩崎泰久厚労相は「今後検討していく」と述べました。

雇用保険法改定に関わって、“生産性”が向上すると雇用関係助成金が上乗せされる仕組みについて、「従業員数が減っても、長時間労働があっても、生産性が向上することになるのではないか」と指摘。坂根雇用開発部長が「そうなる」と認めたことに対し、倉林氏は「失業と長時間労働を増やすことを誘導しかねない。厚労省が行う事業に生産性向上の要件を入れること自体がなじまない」と政府の姿勢を厳しく質しました。


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○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 私も、続きまして、労働条件等の変更の明示の義務付けについて質問をしたいと思います。
 この質問をする前に、そもそも現行の職業安定法において労働条件等の明示の義務がある、その設定をした理由というのは何なのか、御説明ください。

○政府参考人(鈴木英二郎君) お答え申し上げます。
 現行の職業安定法におきましては、働く方が労働条件等を認識した上で応募でありますとか事業主との労働契約の締結に向けた交渉などを行うことができますよう、労働条件等の明示を義務付けているところでございます。

○倉林明子君 あらかじめ知るということが極めて重要だというふうに思うんですね。労働条件等を知る、これがあらかじめよく知っていることでこそ労働者の保護及び定着ということにつながっていくものだと思うわけです。
 現在、職業紹介、募集広告で示された労働条件の内容と実際の労働条件が違うということで、求人詐欺という言葉まで出て大問題になっているわけです。先ほど来、御相談や苦情も多いという指摘がありました。この中身は本当にひどいんですね。正社員が契約社員だった、あるいは賞与ありと書いてあるけれどもなかった、さらには、固定残業代、先ほど来紹介ありました、込みなのに記載がない、これは大問題です。こういう労働条件が明示されていたものと実際に異なるということになりますと、労働者の生活設計、人生設計、これ大きく狂わせることになって実際深刻な問題になっているという、ここを本当にしっかり押さえて考えていく必要があると思うわけです。
 そこで、法案では、求職者に対して明示すれば労働条件等の変更が可能になるということなんですね。変更の時期はいつまでなのか、また、どんな変更まで認められるのか、ここが極めて大事になってくるわけです。
 そこで、先ほど来議論もありましたが、衆議院の質疑のときには、大臣の答弁は、労働契約を締結する前までなら違法ではないと。先ほどは一時間という話もございました。
 例えば、こういう場合どうか。契約社員で、給与は十七万円、販売職が本当は欲しいと、こういうふうに思っている企業が、人を集めたいということで、事務職だ、正規雇用だ、給与は二十万円だと、こういう求人情報を出して応募があったという場合、労働契約の前だったら、実際の求人条件を提示したらこれは法違反にならない、そういうことになりませんか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 一般論として、初めから求人票に記載した労働条件で雇う意思がないと、そういうような場合には虚偽の条件の提示に該当するというふうに考えられると思います。
 現行制度においては、虚偽の条件を提示して働く方を募集した事業主は罰則の対象となるわけでありますが、今回の改正法案では、ハローワーク等に虚偽の条件を提示する事業主も罰則の対象に加えるということでございます。

○倉林明子君 いやいや、明示がこれまでだったら違反なんですよね。そういう意思が、そういう元々虚偽を、こういう雇うつもりもないのにいい条件出していたというような場合はこれは違反なんですけれども、今度は、虚偽の意思があったかどうかというところを立証できないという場合、こういう条件を後から出したら法違反にならない、そういうことじゃないですか。

○政府参考人(鈴木英二郎君) 大臣が申し上げましたのは、そもそも最初から違う条件で雇うことを前提に求人ないし募集を掛けているということでありましたら、これは明示義務の違反があるなしにかかわらず虚偽求人若しくは虚偽募集ということでございますので、募集でありましたら従来から違反でございますし、求人でありましたら今回の改正で違反になるということでございますので、それにつきましては、明示の時期がどうあれ、そちらの条文の方が違反になるということでございます。

○倉林明子君 明確な違反になるというんだけれども、立証が極めて困難という下で重大なトラブルが多発しているということなんですね。まして、違うという条件を示されたとしても、あしたから働かざるを得ない、こういう労働者が契約せざるを得ないという状況に追い込まれているからトラブルが起こるわけですよ。求人詐欺と怨嗟の声が上がっているという現状を本当に是正できるのか、この法改正はと、ここが問われるわけですよ。
 私、下手したら、この求人変更を直前に認める、条件変更を認めるということになれば、違反を逆に誘発する、求人詐欺に法的根拠を与えかねないということになると思うんですよ。さらに、虚偽とは言えないけれども、求職者にとって、正規か非正規か、こういう死活問題が隠れていたという場合、書き切れなかったというようなことで隠れていた場合はどうなるか。
 現行法で募集時に提示する条件というのが一体、今、今現在ですね、現行法で募集時に明示するという条件はどうなっているか、そして、先ほど来も少し触れられていましたけれども、労政審の建議で今後明示事項に追加すべきとされているものは何になるのか、お願いします。

○政府参考人(鈴木英二郎君) お答え申し上げます。
 現行の職業安定法に基づきまして労働条件等で明示しなければいけないものにつきましては、業務の内容、それから労働契約の期間、就業場所、始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、賃金、社会保険、労働保険の適用でございます。
 加えまして、昨年十二月の労働政策審議会の建議におきましては、試用期間の有無、それから試用期間があるときはその期間、試用期間中と試用期間満了後の労働条件が異なるときはそれぞれの労働条件、さらに、雇用する事業主の氏名又は名称、派遣労働者として雇い入れようとするときはその旨を明示事項に追加すべきとされまして、さらに、明示内容として明確化すべきということで先ほどの固定残業代の事項が挙がっております。

○倉林明子君 大臣に聞きたいと思うんですね。
 求職者にとって決定的となる労働条件の明示、これは法的にきっちり担保されるということが非常に大事だし、前提とも言えると思うんです。そこで、労政審の建議では指摘がない事項なんですけれども、裁量労働制、これについても重大な労働条件になっていく、求職者にとっては、重大な労働条件だと言えると思うんです。先ほど労政審で明示すべき事項ということで追加するものも含めて、この裁量労働制もしっかり、私、省令で縛りを掛けていくべきだというふうに思うんですよ。いかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今御指摘がありました、この建議の中では触れられていない裁量労働制についてどうだと、こういうことでございましたが、裁量労働制であるかどうかを明示事項に追加することについては、改正法の成立後、その施行に向けて検討を進める中で検討してまいりたいというふうに思います。

○倉林明子君 指針による明示という分け方もされているんですよね、労政審で出た今後の明示事項について。私、省令でしっかり担保してほしいということです。
 先ほども紹介あった職業安定法第五条の三の三項、ここで厚生労働省令で定める方法により行わなければならないという明記もありますので、私は、きちんと明示していく、そういう対応をしていただきたいということですので、検討の上で裁量労働制についてもしっかり検討いただきたいということは重ねて求めておきたいと思います。
 隠れた情報というふうにさせないために、先ほども指摘がありましたけれども、こうした明示が必要な労働条件、これを示した求人票ですね、先ほども今の求人票が網羅した中身になっていると山本委員からの指摘もありました。これについては、やっぱり厚生労働省が運用して拡大を図ろうとしています総合職場情報提供サイト、ここに、先ほどは検討していくと前向きな答弁ありました。大臣からも、この掲載については検討していくということでお願いしたいと思います。

○国務大臣(塩崎恭久君) この総合的職場情報提供サイトにつきましては、先ほど橋本副大臣からも御答弁申し上げましたが、企業の職場情報、例えば平均勤続年数とかあるいは研修の有無などを一覧的に掲載をすることを想定をしているサイトで、かなりの数の項目を今想定をしています。
 是非、じゃ、そのような中でどのように活用をするのがよいかを、今お話があったとおり、橋本副大臣からも御答弁申し上げましたけれども、検討をしてまいりたいというふうに思っておるところでございます。

○倉林明子君 その点では、是非、厚生労働省が開設したサイトということで間違った情報提供にならないという点での一つの重要なポイントにもなろうかと思いますので、前向きに進めていただきたいと思います。
 次に、また戻るようではありますけれども、募集時の定義ということが繰り返し議論にもなっています。衆議院段階では鈴木政府参考人が、労働契約を締結するまでに明示せよという解釈だと、つづめて言ったらこういう答弁だったと思うんですね。
 募集時というのは募集の開始時ではなくて労働契約直前までと、こういうことなんでしょうか。

○政府参考人(鈴木英二郎君) お答え申し上げます。
 現行の職業安定法に基づきましては、職業紹介、労働者の募集に当たり労働条件を明示しなければならないとありまして、この明示につきましては労働契約を締結する前に行う必要があるというのが現行の解釈でございます。

○倉林明子君 結局、募集時ということでいうと、労働契約直前までということが今の答弁で確認できたと思うんですよ。
 求職者がいよいよ就職を決めようと、こういう時点になって、労働契約直前ということでいいますと、そういうときになって初めて、要は変更条件、変更した労働条件が示されるということが私可能になると思うんですよ、これ、この改正では。そうなったら、そのときに初めて固定残業代込みだと、有期雇用だとか派遣社員だと、こんなことが判明したら、私は、職業安定法上であらかじめ知らせると、ここに意味があると、この法の趣旨にも反することになると思うんですよ。
 募集時、これを曖昧にするのではなく、労働条件の変更を示す際に、募集開始時と。要は、そういう変更があるんやったら求人票を出し直したらいいんですよ。募集開始時という限定を掛けるべきではないでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 今、募集に当たりについては募集時にすべきではないかと、こういう……(発言する者あり)開始時ですね、開始時ということを御提起いただいているわけでありますけれども、この募集時には、一部の条件が定まっていないということもあり得るほかに、個々の具体的な労働条件についての事業主と働く方との交渉の在り方も様々であって、したがいまして、募集時の労働条件について、募集を開始する時点で全てを明示しなければならないと一律に義務付けるというのはなかなか難しいケースがあり得るんじゃないかというふうに考えられます。
 なお、一般論としては、働く方の保護の観点から、働く方を募集する際の労働条件の明示は可能な限り速やかに行われることが望ましいというふうに考えているところでございます。

○倉林明子君 いや、職業安定法の根幹にも関わる問題だし、職業を選択をして人生が懸かった問題になるわけですよ。そんな職業やったら選ばんかったというところに就職せざるを得ないというふうに追い込んでいるから、今、求人トラブル、求人詐欺やということで大問題になっているわけです。まして、今人手不足が深刻だという議論もありました。そういうところで懸念されるのは、見かけの良い求人、これがますます増加するという懸念あるわけですよ。労働者を保護すべき厚生労働省、求人詐欺を合法化すると、こんなことはもってのほかだと私は強く言いたいと思います。労働条件の変更、その根幹部分の変更についてはきっちり求人票を出し直すと、こういう対応を求めたいと思います。
 次に、雇用保険二事業について質問したいと思います。
 今回の法改正で初めて、労働生産性の向上に資するものになるよう、これが法上も明記されるということになりました。そこで、生産性向上を要件として助成が上乗せされるわけですけれども、この生産性向上の分母は何か、雇用保険被保険者数、つまり従業者数ということになるわけですね。で、分子、これが人件費も含まれるということになっております。こうなりますと、どうか。分母の労働者数が減少しても、分子で長時間労働で人件費が増加しても、これ、生産性向上するということになりますね、確認です。

○政府参考人(坂根工博君) 計算式の上ではそういったお考えもありますけれども、委員御指摘……(発言する者あり)従業員を減らすことによって生産性の向上を図ることは、雇用の安定という助成金の目的に照らして適当ではないため、生産性の計算期間内において事業主都合による離職者を発生させないことを要件とし、これを明示をしているところでございます。

○倉林明子君 いや、そんなにあっさり認めてもろうたら困るんですよ。要は、従業員数が減っても、長時間労働でも、この生産性は向上する代物なんですよ。おっしゃいましたよ、事業主都合による離職者は入れないんだと。そんなの当たり前ですよ。厚労省が助成金の上乗せするのに、事業主都合の解雇まで入れられたらたまったものじゃないですよ。問題は、この従業者数を減らすというときに、自己都合ももう隠れていると、これ、実態知っているはずですよ。なのに、この生産性要件を厚労省がやる事業に入れ込むというのは、私はちょっと何考えているんだと思うんですね。
 厚労省がやる事業として、経産省がやるのと違うんですよ、厚労省がやるんですよ、その事業に対してこうした生産性の向上要件ということを入れ込むことはなじまないと思いますよ。認めたんだから、余計こんなことはやるべきじゃないと思います。大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(塩崎恭久君) 急速な少子高齢化が今進んでいるわけで、働く方の能力を向上させて生産性を上げるということは、雇用の安定にもつながる上に賃金も上がるということにも近づくわけでございまして、今回、生産性の向上を後押しする理念を雇用保険法に明記をするということにいたしました。
 企業の生産性の向上によって、今申し上げたように、賃金のアップあるいは経済成長につなげていくという、あるいは企業の収益力の向上ということで、それが賃金アップにつながってくるわけでありますから、経済の好循環の推進が重要であって、御指摘のように、この雇用保険二事業の中には、経済上、まあ全部についてやると言っているわけではなくて、経済上の理由によって事業を縮小せざるを得ない企業への支援とか、就職が困難な方々の就労支援のための助成金など、生産性の向上を求めることが必ずしもなじまないというようなものについては、それはこの要件の対象とする考えはないわけでありまして、このような形で生産性を上げることが賃金のアップにもつながっていく、このことを私たちは念頭に入れながら助成金行政を改革をしていきたいと思っております。

○倉林明子君 厚労省がやるべきは、そういう首切りにつながるようなことを許さないような雇用の安定の方向というのを考えるべきだと。事業目的にも逆行するような結果を招くことになりかねない、私はそのことも厳しく指摘して、続きはまたやります。