国会レポート

年金受給資格期間短縮法案 消費税頼みの転換を(本会議)

2016年11月2日

 年金の受給資格期間を25年から10年に短縮する法案が2日、参院本会議で審議入りしました。日本共産党の倉林明子議員が質問に立ち、無年金者を救済する上で喫緊の課題だとして賛成を表明。そのうえで、新たに年金を受け取る人の平均受給額は月2万1000円にすぎないとして、抜本的な引き上げを主張しました。

 倉林氏は、低年金者に最大月5000円を上乗せする制度が行われても、10年の加入期間では月1250円にしかならないとして、定額で5000円を加算すべきだと主張。保険料の後納制度によって保険料納付が増えており、恒久化を検討すべきだと迫りました。
 塩崎恭久厚労相は、低所得・低年金対策は「社会保障全体で総合的に講じる」とごまかし、後納制度の恒久化については「世代間の助け合いの仕組みを揺るがす」と否定的な姿勢を示しました。

 倉林氏は、受給資格期間短縮のための財源は650億円にすぎず、消費税増税に頼らなくてもできるとし、「消費税増税に縛られない恒久的な制度として実施すべきだ」と求めました。麻生太郎財務相は「消費税増税の増収分で安定的に手当てする」と、消費税増税に固執する態度を示しました。

 倉林氏は、本法案と並行して提出されている「年金カット法案」について「高齢者の貧困と生活苦を助長し、家族の生活をも圧迫する」と批判。「全ての世代が安心できる制度への改革こそ行うべきだ」と主張しました。


質問要旨
 国際的にも異常に長い日本の年金受給資格期間を25年から10年に短縮する本法案は、最大118万人と見込まれている無年金者を救済する上で喫緊の課題です。現行法では2019年10月の消費税増税まで施行が延期されるのを、来年8月1日施行とするもので、消費税増税と切り離して前倒しすることには賛成です。

 現行法の最大の問題は、受給資格期間短縮のための財源を消費税の増収分とセットとしている点です。受給資格期間短縮に必要な額は650億円にすぎず、歳出のごく一部を見直せば確保できます。消費税増税に頼らない恒久的な制度として実施すべきです。

 無年金者救済のための課題は残されたままです。10年で受給資格を得た場合、受け取れる額は月1万6000円です。報酬比例部分がある人も含め、新たに年金を受け取る人の平均受給額は月2万1000円にすぎません。

 年金生活者支援給付金として、低年金に最大月5000円を上乗せするとしますが、施行は消費税10%への増税時とされ、加入期間が10年の場合、加算額は満額の4分の1で、月1250円にしかなりません。生活者支援給付金に、保険料の納付期間を比例させるべきではありません。定額で月5000円加算すべきです。

 12~15年に実施された年金保険料の10年後納制度では、納付人数は118万4747人、納付額は2396億円以上です。後納制度の有用性は明らかであり、恒久化を検討すべきです。

 受給資格期間を短縮しても、残される無年金者は26万人に上ります。無年金から救済されても低年金の問題が残ります。すでに年金を受給している人でも、相次ぐ年金削減に加え、医療や介護の負担増・給付削減が続く中で、高齢世代の貧困・生活苦が深刻化しています。

 それにもかかわらず、政府が今国会に「年金カット法案」を提出していることは大問題です。これ以上の年金カットは高齢者の貧困と生活苦を助長し、家族の生活をも圧迫します。年金のほとんどが消費に回っており、地域経済に直結する問題です。

 政府が社会全体の所得と消費を底上げする具体策の一つとしている受給資格期間の短縮と、年金カットを一緒に提案するのは明らかな矛盾です。全ての世代が安心できる年金制度への改革こそ必要です。財源は消費税頼みでなく、「能力に応じた負担」の原則で、所得税の累進課税の強化、法人税の大企業優遇の見直しなどで確保できます。

議事録を読む
   〔倉林明子君登壇、拍手〕

○倉林明子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、以下、関係大臣に質問します。
 本法案は、国際的にも異常に長い日本の年金受給資格期間を二十五年から十年に短縮するもので、最大百十八万人と見込まれている無年金者を救済する上で喫緊の課題となっていたものです。現行法のままでは二〇一九年十月の消費税増税まで施行が延期されるものを来年八月一日施行とするものであり、遅きに失したとはいえ、消費税増税と切り離して前倒し実施とすることには賛成するものです。
 そこで、財務大臣に確認します。
 本法案では、消費税率引上げによる増収分を活用して財源を確保するとした規定は残しているものの、増税実施までの間は適用しないという経過措置が設けられました。これにより、消費税増税までの間に新たな国民負担は生じないものと確認できますか。
 そもそも、現行法の最大の問題は、年金受給資格期間短縮のための財源を消費税の増税分とセットとしているところにあります。本法案による受給資格期間短縮の必要額は六百五十億円にすぎません。国の歳出のごく一部を見直せば確保できる額です。経過措置などではなく、消費税に縛られない恒久的な制度として実施していくべきではありませんか。
 無年金者の救済という視点から見て、解決すべき課題は残されたままです。
 厚生労働大臣に質問します。
 現在、基礎年金は満額で月額六万五千円、今回の改正が行われても、ぎりぎり十年で受給資格を得た場合に受け取れる基礎年金は月一万六千円にとどまります。報酬比例部分がある人も含めて、新たに年金を受け取る人の平均受給額は月二万一千円にすぎません。余りにも少ない水準ではありませんか。
 現行法は、受給資格期間の短縮と併せ、年金生活者支援給付金として、低年金に最大で月額五千円の上乗せをするとしていますが、その施行日は引き続き消費税率一〇%増税時とされ、今回の実施は見送られています。たとえ、この低年金への加算措置が実現しても、この加算は保険料の納付期間に応じた加算とされているために、加入期間が十年の場合、加算額は満額の四分の一で、月額千二百五十円にしかなりません。
 これに対し、厚生労働大臣は、定額加算は保険料の納付意欲を損ない、社会保険方式になじまないという意見を踏まえたものだと衆議院で答弁しています。低所得者対策として、社会保険の枠外で実施している生活者支援給付金に保険料の納付期間を比例させることの方がなじまないのではありませんか。月額五千円は定額として加算すべきです。答弁を求めます。
 この間、納付期間が足りない分を後からまとめて納付できる後納制度が実施されてきました。十年後納制度に続き、五年後納制度も実施されています。二〇一二年から二〇一五年に実施された十年後納制度の実績を見ると、納付人数は百十八万四千七百四十七人、納付額は二千三百九十六億円以上となっています。
 無年金、低年金の改善にこの制度が有効であるだけでなく、保険料の納付額の増加にもつながったことは明らかです。財源は年金制度の中で十分に解決していけるのではないでしょうか。年金制度の枠内で二年時効の見直し、時限措置ではなく、後納制度を恒久的な制度として検討すべきではありませんか。
 今回の受給資格期間の短縮によっても残される無年金者は二十六万人に上ります。無年金から救済された場合も依然として低年金の問題は残ります。さらに、既に年金を受給している人の中でも、この間の年金の相次ぐ削減に加え、医療や介護の負担増、給付削減が続く中で、高齢世代の貧困、生活苦が深刻化し、多くの高齢者にとって老後破産が今や人ごとではないという事態も広がっています。受給資格期間の短縮だけでは解決できない現実があることを大臣はどう受け止めていますか。
 こうした深刻な現実があるにもかかわらず、政府が今国会に、公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部改正案を提出していることは大問題です。
 本来、年金の物価スライド制は、物価の伸びに合わせて年金を引き上げ、年金の目減りを防いで年金生活者の生活水準を維持するための仕組みです。しかし、実際には、物価よりも賃金の上げ幅が小さい場合は賃金に合わせるという制度になってきました。それでも、賃金がマイナスになったときに年金までマイナスにするようなことはせず、年金額は据え置いてきたのです。
 ところが、今回の法案では、賃金が下がったら、幾ら物価が上がっても年金を切り下げ、賃金と物価が両方マイナスとなり、賃金の引下げ幅が大きければ賃金に合わせて年金を引き下げるとしています。ひたすら低い方に合わせて年金を下げる、まさに年金カット法案ではありませんか。
 これ以上の年金カットは、高齢者の貧困と生活苦を助長し、家族の生活をも圧迫するものとなります。年金のほとんどが消費に回っており、年金支給額の削減は地域経済に直結する問題です。
 そもそも、政府は、今年八月に閣議決定した未来への投資を実現する経済対策で、年金受給資格期間の短縮を社会全体の所得と消費を底上げする具体策の一つと位置付けていたのではないですか。受給資格期間の短縮による所得、消費の底上げと年金カットを一緒に提案するのは、明らかな矛盾ではないですか。
 国民の生活を守り、所得と消費を増やすのなら、年金はカットではなく、全ての世代が安心できる制度への改革こそ行うべきです。国連の社会権規約委員会は、日本政府に最低保障年金を導入することを繰り返し勧告しています。財源は、消費税頼みではなく、能力に応じた負担という原則で、所得税の累進課税の強化、法人税の大企業優遇の見直しなどで確保できます。年金制度の改革というなら、この方向にこそ足を踏み出すべきではありませんか。厚生労働大臣の見解を求め、質問を終わります。(拍手)

   〔国務大臣塩崎恭久君登壇、拍手〕

○国務大臣(塩崎恭久君) 倉林明子議員にお答えを申し上げます。
 年金額の水準及び年金生活者支援給付金についてのお尋ねがありました。
 年金は長く保険料を納めれば受給額も増える仕組みであることから、今回の受給資格期間の短縮により、十年納付すれば十分といった誤解のないように、納付する意義について周知を図っていくことが重要です。その上で、今回の措置で年金の受給権を得た方も含め、低年金、低所得の方に対しては、平成三十一年十月までにスタートさせる福祉的給付や医療、介護の保険料負担軽減などの対策も講じ、社会保障制度全体を通じて総合的に取り組むこととしております。
 なお、この福祉的給付につきましては、社会保障・税一体改革において、当時の民主党政権が政府案として提出した年金額加算では基本的に定額加算としていましたが、三党協議の中で保険料の納付意欲を損ない社会保険方式になじまないという意見が出されたため、給付金の額を納付実績に比例するとともに、年金制度の枠外で実施することとされたものでございます。
 本法案の財源についてのお尋ねがございました。
 年金の受給資格期間短縮の措置につきましては、一定の要件を満たせば受給権が生じ、継続的に給付が保障される恒久的な制度として導入をされるため、こうした制度改正については恒久財源を確保して実施すべきものです。
 後納制度は、将来の年金額を増やしていただく、若しくは年金の受給資格を得ていただくために特例的に時限措置として実施しているものであり、恒久財源たり得ないだけでなく、基礎年金の国庫負担分を賄うものではないことから、受給資格期間短縮の財源とはならないと考えております。
 後納制度についてのお尋ねがございました。
 我が国の年金制度では、現役世代の方々が毎月納める保険料がその時々の高齢者の方々の年金給付に充てられる助け合いの仕組みを取っています。いつまでも保険料を納付できる仕組みは、この助け合いの仕組みを揺るがすものです。
 一方で、できる限り保険料を納めやすくするよう二年の時効を超えて保険料納付を可能とする後納制度を実施していますが、納付意欲や既に保険料を納付した方との公平感に配慮をし、これまでも時限措置として実施をしております。そのため、時限措置の期限が到来するときに後納制度も終了することが基本であると考えております。
 なお、今回の法案が施行されてから現在の後納制度が終了する平成三十年九月三十日まで一年以上の時間があり、後納制度によって十年の受給資格期間を満たそうとする方が確実に利用できるよう制度の十分な周知を図ってまいります。
 無年金者の問題についてのお尋ねがございました。
 年金は長く保険料を納めれば受給額も増える仕組みであることから、できる限り多くの方に長く保険料を納付していただける環境を整備することが重要と考えております。
 具体的には、保険料の納付率向上に向け、口座振替やコンビニエンスストアでの納付、クレジットカード納付など、保険料を納付しやすい環境の整備のほか、保険料免除制度の周知、短時間労働者への被用者保険の適用拡大についても引き続き努力をしてまいります。
 その上で、今回の措置によっても受給資格期間を満たすことができない方に対しては、年金額には反映されないものの受給資格期間には含まれるいわゆる空期間があれば、これを活用することや、過去五年間の未納分の保険料納付を可能とする特例的な後納制度の利用によって十年の受給資格期間を満たすケースもあると考えられるため、個別にはがきを送付するなどにより制度を十分周知してまいります。
 年金の二法案についてのお尋ねがございました。
 衆議院において審議中の年金改革法案は、言わば将来の年金水準確保法案であり、中小企業の短時間労働者への被用者保険の適用拡大、国民年金の産前産後期間の保険料免除、年金額改定のルールの見直しなどを内容としております。
 そして、これらの施策によって若い世代が将来受け取る年金の水準が確保され、経済対策においても年金制度改革の早期実現は社会全体の所得と消費の底上げを行う具体的措置として位置付けられています。受給資格期間短縮法案と矛盾するとの指摘は当たりません。
 年金制度改革の方向性についてのお尋ねがございました。
 年金は限られた財源を世代間で配分をする分かち合いの仕組みであり、次世代にしっかりと引き継いでいくため、衆議院で御審議いただいている年金改革法案を始め不断の改革に取り組むことが必要でございます。
 低所得、低年金の高齢者への対策については、社会保障・税一体改革の中で、受給資格期間の短縮に加え、年最大六万円を支給する年金生活者支援給付金の創設、医療、介護の保険料の負担の軽減など社会保障全体で総合的に講じることとしており、まずはこれらにしっかりと取り組んでいくことが重要であると考えております。(拍手)

   〔国務大臣麻生太郎君登壇、拍手〕

○国務大臣(麻生太郎君) 年金受給資格期間の短縮に係る国民負担や消費税に縛られない恒久的な制度化の二点についてのお尋ねがあっております。
 年金受給資格期間の短縮につきましては、社会保障の充実の一環として、恒久的な制度として実施していくものであります。
 その財源につきましては、消費税率を一〇%へ引き上げるまでの間は、暫定的に、消費税率の八%への引上げによる増収分や社会保障の重点化、効率化によりまして、毎年度の予算編成過程において手当てしていくことになります。赤字国債の追加的な発行など新たな国民負担を生じることはありません。
 消費税の一〇%への引上げ後については、年金機能強化法の本則どおり、消費税率の五%からの引上げによる増収分を財源として安定的に手当てをしていくことになります。(拍手)