国会レポート

パリ協定 批准遅れ 政府の責任重大(本会議)

2016年10月19日

 2020年以降の地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」の承認案が19日、参院本会議で審議入りし、日本共産党の倉林明子議員が質問に立ちました。条約や協定は衆院から審議を始めるのが国会運営の基本ですが、政府・与党が環太平洋連携協定(TPP)の衆院審議を優先したため、パリ協定は参院先議とされました。

 パリ協定は、温室効果ガス最大排出国の中国、米国を皮切りにインド、EU(欧州連合)などが批准し、日本抜きで11月4日に発効することがすでに決まっています。倉林氏は「こうした世界の流れを理解せず、承認案の提出が大幅に遅れた政府の責任は極めて重大だ」と指摘。パリ協定の年内発効を想定せず、TPPを最優先に臨時国会にのぞんだ安倍内閣の姿勢を厳しく批判しました。
 そのうえで、倉林氏は、2030年度の温室効果ガス削減を13年度比26%とする日本の目標は「低すぎる」と指摘。「直ちに見直し、大幅に削減目標を引き上げるべきだ」と主張しました。
 また、石炭火力発電所の新増設は「『脱炭素化』というパリ協定の合意に逆行する」として中止を要求。原発と石炭火力をベースロード電源と位置付けるエネルギー基本計画を撤回し、再生可能エネルギーの飛躍的な導入拡大へ舵(かじ)を切るよう求めました。

 岸田文雄外相は「(パリ協定が)当初の見通しよりも早期の発効となったことは事実だ」と答弁。世耕弘成経産相は「(原子力に対する)幅広い理解が得られるよう粘り強く取り組む」などと述べ、原発推進を続ける姿勢を示しました。

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○議長(伊達忠一君) 倉林明子君。

   〔倉林明子君登壇、拍手〕

○倉林明子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりましたパリ協定の締結について承認を求めるの件について、以下、関係大臣に質問します。
 二〇二〇年以降の地球温暖化対策の新しい枠組みであるパリ協定は、昨年十二月のCOP21で法的拘束力を持つ文書として採択されました。歴史上初めて世界の全ての国が参加した合意の背景には、気候変動の脅威に対し共通した危機感がありました。私は、同時開催されたIPU国際会議に国会代表として派遣していただき、脱炭素に向けた各国代表の思いを強く感じました。
 その後、早期締結に向けた動きは加速し、温室効果ガス最大排出国である中国、アメリカを皮切りに、インド、EUなど、十二日現在で七十六か国が締結、総排出量が約五九・九%となり、発効要件である五十五か国、総排出量の五五%をクリアし、日本抜きの十一月四日発効が確定的となりました。
 こうした世界の流れを理解せず、承認案の提出が大幅に遅れた政府の責任は極めて重大です。そもそも、パリ協定の年内発効という目標は、日本が議長国となった今年五月のG7伊勢志摩サミットの首脳宣言に盛り込まれたものでした。年内発効のためには、ぎりぎりでもこの臨時国会がリミットになるはずでした。ところが、直後の五月三十一日の記者会見で、当時の丸川環境大臣は、私の希望としては少なくとも次の通常国会中にはお願いしたいと答えています。首脳宣言では年内締結に合意しながら、初めから年内の国会承認は考えていなかったということではありませんか。引継ぎを受けた環境大臣に答弁を求めます。
 総理は、今国会冒頭の所信表明演説でパリ協定に一言も触れませんでした。そこで、外務大臣に質問します。EU全体での批准手続は不可能と見込んで、年内発効を想定していなかったのではありませんか。政府にとって、臨時国会ではTPPを優先し、パリ協定の承認は後回しでよいとの判断があったのではありませんか。明確にお答えください。
 結果として、十一月七日からモロッコで開催されるCOP22に日本は締約国として参加できない事態となりました。批准していない日本は、詳細ルールを確定する議論に参加できても決定権を持てない可能性は否定できません。たとえ詳細ルールの議論に参加できたとしても、締約が間に合わなかった日本は気候変動の取組に消極的だということを世界に示すことになることは明らかです。
 パリ協定では、今世紀中に温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという分かりやすい長期目標を示しました。各国に削減目標が義務付けられなかったものの、長期目標の実現に向けて、各国が実施状況を報告し、レビューを受ける仕組みをつくり、それぞれが目標を更新していくという新しい枠組みとなりました。パリ協定を踏まえれば、いかに早く対策に着手し、目標を達成し、より高い目標を立てて実現していけるのかが問われているのです。
 環境大臣、世界第五位の温室効果ガス排出国の日本には、パリ協定の合意を踏まえ、脱炭素化に向けた長期戦略を明確にし、実践していく責任があると考えますが、いかがですか。
 政府は、パリ協定の採択を受けて地球温暖化対策計画を策定していますが、二〇三〇年度の温室効果ガス削減目標は、二〇一三年度比二六%にとどまっています。一九九〇年の基準年と比較すれば僅か一八%程度の削減にすぎず、目標は低過ぎると言わざるを得ません。
 パリ協定は、各国に、最初の目標の更新、提出を二〇二〇年までに求めています。長期目標として掲げた二〇五〇年までに八〇%の削減目標を確実に達成するためにも、早期に削減のスピードを上げる必要があります。二〇三〇年度の目標を直ちに見直し、大幅に削減目標を引き上げるべきではありませんか。
 日本では、福島第一原発事故後、石炭火力発電所の新増設が進んでいます。環境NGOである気候ネットワークが現在把握している新規の建設予定は計四十八基、合計二千二百八十四・六万キロワットに上っています。これらが全て建設されれば、推計で年間一億三千七百七・六万トンの二酸化炭素が排出されることになり、二〇三〇年の二酸化炭素排出削減目標を大幅に上回ることは明らかです。
 さらに、アセスが不要な十一・二五万キロワット未満の小規模な石炭火力発電所は、全容をつかむ体制もなく、効率の悪い発電所も少なくありません。脱炭素化というパリ協定の合意に逆行する石炭火力発電所の新増設は直ちに中止すべきです。
 日本政府は、石炭火力発電所をインフラシステム輸出戦略に位置付け、公的支援をし続けています。NGOの調査によれば、二〇〇七年から二〇一四年の間に投じられた公的資金は世界最大で、二百四億ドル、二兆三千億円にも上ります。最先端とされる高効率の石炭火力発電所でも、LNGの二倍の二酸化炭素を長期間にわたって排出し続けるのが石炭火力です。石炭火力発電所の高効率化が温室効果ガス削減に貢献するという考え方は撤回すべきです。
 世界の投資家の間には、石炭火力発電所は座礁資産という考え方が広がり、石炭火力発電所への投資から撤退する動きが強まっています。こうした動きに対する経産大臣の見解をお聞かせください。
 さらに、政府は、原発を四十年超えた老朽原発も含めて使い続けるとしています。果たして、原発が地球温暖化対策の役に立ってきたでしょうか。福島原発事故以前、原発の設備容量は増え続けてきたものの、温室効果ガスは減りませんでした。なぜなら、原子力発電は石炭火力と表裏一体で、原発が事故やトラブルで停止すれば、石炭火力が代わりの電源として活用されてきたからです。ところが、稼働している原発がなかった二〇一四年度は温室効果ガスが前年比より減少したのです。環境大臣、原発が稼働ゼロで温室効果ガスは減った、この事実を認めますか。
 福島第一原発事故を起こした日本こそ、原子力発電に頼らない温暖化対策の道を進むべきです。どんなに安全対策を重ねても、原発の事故は起こり得るのです。鹿児島に続き新潟でも原発の再稼働反対の知事が誕生しました。新潟県知事選挙の出口調査によれば、原発の再稼働に反対は六四%、そのうち七割の方が米山隆一氏に投票しています。民意は明らかです。経産大臣はどう受け止めますか。お答えください。
 日本政府は二〇一四年、エネルギー基本計画を策定し、原発と石炭火力をベースロード電源と位置付け、二〇三〇年の電源構成は原発が二〇ないし二二%、石炭火力は二六%としました。このエネルギー基本計画そのものがパリ協定と両立しないことは明らかです。このままでは、日本は脱炭素化を目指す世界の流れに乗り遅れるだけでなく、世界の気候変動を悪化させる国になりかねません。
 政府は、エネルギー基本計画を撤回し、原発は直ちにゼロを決断すること、石炭火力発電所の新増設を中止させること、再生可能エネルギーの飛躍的な導入拡大へかじを切るべきです。強く求めて、質問を終わります。(拍手)

   〔国務大臣岸田文雄君登壇、拍手〕

○国務大臣(岸田文雄君) パリ協定の国会承認に関する政府の考え方についてお尋ねがありました。
 我が国は、各国による締結の動向について注視してきましたが、当初、全加盟国が一括して締結することにより来年以降の締結を目指していたEUが、一部加盟国のみ先行して締結したこと等により、当初の見通しよりも早期の発効に至ったこと、これは事実です。
 しかしながら、政府としてはパリ協定の早期締結を重視しており、本年四月のパリ協定の署名開放当日に署名を行い、また、本年五月には本年中の発効との目標を掲げたG7首脳共同宣言を取りまとめました。その後も協定の国内実施の担保に係る検討を進めるなど、可能な限り迅速に締結に向けた作業、調整を行い、十月十一日に国会承認のための閣議決定を行いました。
 審議の日程は、全般的な状況を踏まえ、国会で御判断いただくことでありますが、政府としましては、TPP、パリ協定それぞれについて、一日も早く国会の承認をいただけるよう全力を尽くしてまいります。(拍手)

   〔国務大臣山本公一君登壇、拍手〕

○国務大臣(山本公一君) 倉林議員にお答えをいたしたいと思います。
 パリ協定の国会承認についてお尋ねがございました。
 丸川前大臣から、G7伊勢志摩サミットにおける首脳宣言を踏まえ、本年中のパリ協定の発効という目標を念頭に置き、我が国としても早期締結を目指す必要があると引継ぎを受けております。一日も早く締結できるよう全力を尽くしてまいりたいと考えております。
 脱炭素化に向けた長期戦略についてお尋ねがございました。
 環境省としては、パリ協定を踏まえ、脱炭素社会の構築を見据えた今後の長期大幅削減に向けて、本年七月から中央環境審議会において御議論をいただいているところです。年度内を目途に、技術、ライフスタイル、経済社会システムの変革などを含めた目指すべき社会の絵姿を示す長期低炭素ビジョンを取りまとめ、今後政府として策定する長期戦略につなげていきたいと考えております。
 二〇三〇年度目標の見直しについてお尋ねがございました。
 二〇三〇年度目標及びその達成に向けた対策、施策等を盛り込んだ地球温暖化対策計画を本年五月に閣議決定いたしました。我が国としては、まず、この二〇三〇年度目標の着実な達成に向けて全力で取り組んでまいります。本計画における対策、施策の実施状況については、毎年厳格に点検を行うとともに、少なくとも三年ごとに必要に応じて見直すとしており、こうしたプロセスを通じて実効性ある取組を進めてまいります。
 二〇一四年度の温室効果ガス排出量についてのお尋ねがございました。
 二〇一四年度の排出量はCO2換算で十三億六千四百万トン、二〇一三年度の排出量は十四億八百万トンであり、御指摘のとおり、排出量が減少いたしております。これは、省エネの進展や再エネの導入拡大等、各種対策の効果が現れつつあることによるものと考えております。(拍手)

   〔国務大臣世耕弘成君登壇、拍手〕

○国務大臣(世耕弘成君) 倉林議員にお答えいたします。
 石炭火力の高効率化が温室効果ガスの削減に貢献するという考え方の撤回や、石炭火力発電所への投資から撤退する動きに関してお尋ねがありました。
 経済性やエネルギー安全保障の観点から石炭をエネルギー資源として選択せざるを得ない国も多く、こうした国にとっては、可能な限り高効率な石炭火力を導入することこそが実効的な気候変動対策だと考えます。
 高効率石炭火力発電の導入が気候変動対策に貢献するとの考え方は、昨年十一月、OECDの場でも認められ、石炭火力発電技術の輸出に対する公的輸出信用の供与の在り方をめぐり、輸出信用アレンジメントの改定にも合意したところであります。
 今後とも、日本の優れた発電技術を活用し、地球規模での温暖化対策に貢献してまいります。
 原発の再稼働に対する民意についてお尋ねがありました。
 原発の再稼働については、いかなる事情よりも安全性を最優先し、高い独立性を有する原子力規制委員会が科学的、技術的に審査し、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針であります。その上で、原発の再稼働に当たっては、地元の理解を得られるよう丁寧に取り組んでいくことが必要と考えております。
 原子力に対する理解活動に終わりはありません。引き続き、立地自治体を始め関係者の声にしっかりと耳を傾けるとともに、国民の皆様に丁寧な説明を尽くし、幅広い理解が得られるよう粘り強く取り組んでまいりたいと考えております。(拍手)