女性の低年金解消せよ 参考人質疑(2025/6/11 厚生労働委員会)
(議事録は後日更新いたします)
参院厚生労働委員会は11日、基礎年金の底上げを先送りする年金制度改定法案について参考人質疑を行いました。
日本共産党の倉林明子議員は「就職氷河期世代にとどまらず非正規が拡大するなかで低賃金で働く人たちが増えている。ここが将来の低年金にもつながっている」とし、現役世代の賃上げの緊急性について質問しました。
労働政策研究・研修機構の堀有喜衣統括研究員は「現役世代の賃上げは、日本社会の今後にかかわる大変重要な課題だ」と述べました。駒村康平慶応大学教授は「継続的な賃上げのためには生産性の向上が不可欠だ」と答えました。
倉林氏は「深刻な女性の低年金の構造を解消していくべきだ」と主張し、問題意識を聞きました。
大和総研の是枝俊悟主任研究員は「労働市場の男女格差をなくしていくことが、女性の低年金の解消につながる」と答えました。
倉林氏は「低年金の底上げのために、年金制度の枠内でも低所得者対策は考えられるのではないか」と質問。駒村氏は「本来はユニバーサルな最低保障的な年金があったほうがいいと思うが、まず手段としては年金生活支援給付金制度の給付水準を引き上げておくと、氷河期世代が退職する頃に極めて重要になる」と述べました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子でございます。
今日は、四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。そして、くしくも三人とも部会のメンバーでいらっしゃるということで、部会の様子もリアルに伝わりまして、感謝したいと思います。
私の方からは、まず伊藤参考人にお伺いしたいと思います。
いろいろ議論もありましたけれども、適用拡大で新たに保険料負担を中小企業事業主も持たないといけないということになってこようかと、時期の問題いろいろあったとしてもですね。その場合、現在、中小企業のところで、消費税、インボイスの導入等も含めて、非常に税や社会保険料の負担が重くなってくる中で、社保倒産、社会保険料倒産と言われるような件数が、東京商工リサーチのデータだったと思うんですけど、過去最多というような状況も伝わってきておりまして、大企業には、当然、能力に応じて負担していただくべきだと思っているんですけれども、今、社会保険料を適用拡大するときに当たっては、中小企業に対してはやっぱり支援が要ると思うんですね。直接支援、負担の軽減という方向で、セットで導入要るんじゃないかと思っているんですが、実態と併せて、そこら辺の御要望というか御意見、お聞かせ願えればと思います。
○参考人(伊藤仁君) ありがとうございます。
我々も単純に、先ほど冒頭で申し上げましたように、社会保険全般の負担というものが企業にとって非常に大きな、賃金をアップするとか、あるいは投資することに対しての足かせになっているのは事実であります。
一方で、やはりその年金制度という体系の中で、できるだけそういう従業員として働いていられる方をその仲間として受け入れていくということも、重要性もよく分かっておりまして、その中で負担が出てくることについてはやむを得ないというふうに考えておりますが、しかし、やむを得ないんだけれども、そこをちゃんと体力を付けて、時間を掛けて対応できるような期間を設けてほしいと、これが我々の考え方でありました。
もちろんそういったものに対する支援が仮にあるとすればそれは有り難いことだとは思いますけれども、むしろ今、中小企業の、本質的には生産性を上げ、稼ぐ力を強化するというところにおいての成長というものをやりながら、そういう制度にきちんと適応できていくというのが一番だと思いますので、そういう観点からの支援というのはむしろ優先すべきものではないかなというふうに思っておりまして、単に負担があるからそれを直接支援するというようなことで我々はダイレクトに今の時点で要望を出しているわけではございません。
以上です。
○倉林明子君 ありがとうございました。
そこで、堀参考人、駒村参考人、両参考人にお伺いしたいと思うんですが、先ほども紹介ありました堀参考人の研究分野で、氷河期世代の研究成果も見せていただきましたが、聞き取り調査を踏まえて、リアルな生活の様子が伝わってくるような中身で、非常に貴重なものだなと思って見せていただきました。
私、今、現役世代の働き方が、氷河期世代にとどまらず、非正規が拡大する、多様な働き方が拡大するという中で、低賃金で働くという方々がとりわけ増えていると。ここが非常に将来の低年金にもつながっていくということで、この働き方ですよね、現役世代の賃上げ、底上げと。ここ抜きには、本当に将来の年金の制度設計というのも困難極まると思うんですね、思っているんです。
そういう意味での、現役世代の今の働き方をしている、氷河期世代にとどまらず、今々の働き方で起こっている変化の低賃金の高騰というものに対して、そこを底上げしていく、そして賃上げしていくということは急務であって、緊急性があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、お考えについてお二方に、堀参考人、駒村参考人、御紹介いただければと思います。
○参考人(堀有喜衣君) 御質問ありがとうございます。
今議員がおっしゃられたように、現役世代の賃上げどうやって進めていくかというのは、この日本社会の今後に関わる大変重要な課題だと受け止めております。政府挙げてここ数年ずっと賃上げ進めてこられたと思いますし、実際にだんだん上がってきているということも事実だというふうには思います。
ただ、この先、世界情勢大きく変わる中でどのようになっていくのかということについては不透明感も増しておりますので、引き続き、この賃上げの動き、是非進めていただきますよう、御支援いただきますようにお願い申し上げます。
以上です。
○参考人(駒村康平君) 継続的な賃上げのためには、生産性の向上というのはやっぱり不可欠だと思うんですね。これが不十分だと、社会保険料の事業主負担の費用も含めた労務コストをどう転嫁してくるかと。
要するに、世の中にはフリーランチはありませんので、価格に転嫁するのか、収益を圧縮するのかという話になってくる。もちろん、社会保険料の事業主負担という部分だけ見れば賃金で調整するという方法もあるので、これは逆に賃下げになっちゃいますので、それはあり得ないと。となってくると、生産性がない状態で、上昇がない状態で賃上げを求めると、倒産ですね、先ほどの労務倒産。それから、あるいは価格に転嫁をするということができないといけないということになりますので、そういったものを社会が許容できるかどうかということも考えなきゃいけないだろうと思います。
以上です。
○倉林明子君 最後、是枝参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、今回、二四年の財政検証の中で初めて女性、男女の、いうことで検証もされたということで、非常に大事な検証の前進があったなと捉えているんです。そこで改めてその女性の低年金の実態というのが非常にリアルにも共有されたんじゃないかと思うんです。
今後のその女性の底上げ、下がり過ぎを止めていくといいますか、そういう状況での一歩を踏み込んだんだというお話だと思うんですが、今々の深刻なこの女性の低年金の構造の問題をやっぱり解消していくべきではないかというふうにも思うんですね。そこら辺の問題意識、いや、もう年金だけじゃないよという御意見もいただいてはいるんですが、御意見、参考人、聞かせていただければと思います。
○参考人(是枝俊悟君) 御意見いただき、ありがとうございます。
女性の低年金の問題というのは、確かにおっしゃるとおり深刻でございます。年金というのは、これまで、特に二十歳から六十歳、六十五歳までの期間における拠出実績に基づいて支払われるという形になっておりますので、どうしても、現時点で高齢の方、高齢女性で年金が少ない方を底上げしようというようなことを考えますと、先ほどの調整期間の一致のような無理やりな方法ぐらいしかないというところでございます。
ただ、やっぱり拠出に基づく給付でありますので、労働市場の男女格差をとにかくなくしていくことが女性の低年金の解消につながるものと考えております。特に今、若い世代にL字カーブということが言われていて、中高齢になるほど非正規社員の比率が高くなるという問題がありますが、これは正確に言うと、四十代になったら正規雇用率が下がっていくというわけではなく、二、三十代の裾野が上がったことによってLの形になったという状況なんですね。若い世代では、諸職正社員で女性も働けるようになった、さらに産休、育休を経ても正規社員のままとどまれるようになったということになりますので、このまま男女の家事、育児の分担を頑張って進めていけば、今の三十代のLの頂点のところがそのまま横にスライドしていくという形を実現できるのではないかと考えており、やはり男女の家事、育児の分担、男性育休の普及などを進めていくことが大事だと考えております。
○倉林明子君 最後、駒村先生にお伺いしたい、参考人にお伺いしたいと思うんです。
今のお話で、やっぱり低年金のところの底上げということでいうと、今も低所得者対策ということでやられています、そういう部分を拡充するというようなことも年金制度の枠内でも考えられることではないかと。最低年金の保障ということが必要だと思っているんですけれども、今の枠内でも踏み込めるところがあるんじゃないかと。いかがでしょう。
○参考人(駒村康平君) 低年金問題、いろいろ原因がございます。先ほどの三号の話もございまして、働けないとか拠出できないという方は専業主婦だけではございませんと。そう考えると、本来はユニバーサルな最低保障的な年金があった方が本来はいいとは思います。ただ、現実それまだなかなかできていない状態ですので、まず手段としては、年金生活者支援給付金制度、これがございますので、この要件とか給付水準を引き上げておくと。これは多分、氷河期世代が退職する頃には極めて重要になってくると思いますので、その準備もしておく必要があるんではないかと思います。
ありがとうございます。
○倉林明子君 ありがとうございました。終わります。