倉林明子

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ジェンダー主流化急げ(2024/6/21 本会議)

(議事録は後日更新いたします)

 国会の行政監視・監督機能を果たすための政府の政策評価報告と質疑が21日の参院本会議で行われました。日本共産党の倉林明子議員は「参院が行政監視機能を強化していくために、ジェンダー主流化(あらゆるレベルの政策などでジェンダー平等を進めること)の視点が強く求められている」と主張。男女賃金格差の是正、単身高齢女性の貧困やケア労働者の処遇改善などについて政府の姿勢をただしました。

 倉林氏は、閣議決定された「女性版骨太の方針」に男女賃金格差の情報開示義務を課す事業主を「従業員301人以上」から「101人以上」に拡大することを検討すると明記したことは前進だが、「さらに踏み込んだ開示が必要だ」と指摘。正規雇用男性労働者の賃金を100とした正規女性、非正規男性、非正規女性の賃金の比率を公表するよう迫り、企業に原因分析と是正措置を義務付けるよう求めました。

 武見敬三厚生労働相は「男女賃金格差の要因分析や改善に向けた取り組みを行い是正を図る」と述べました。

 倉林氏は、医療・介護・障害福祉サービス報酬の改定を決めたトリプル改定は「『物価高に負けない公的賃上げ』の期待を裏切り、失望と怒りを招いている」と批判。現場での担い手不足は深刻で、ケア労働者の多くを女性が占めているとし、「速やかに国費による賃上げ、報酬の再改定を行うべきだ」と迫りました。

 武見厚労相は「賃上げは重要な課題だ」と認めつつ、「必要な改定を行った」と強弁しました。


議事録を読む(未定稿)
(この会議録は未定稿です)

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 会派を代表して、ただいまの報告に対して質問します。
 参議院においては、一九九八年に新たな常任委員会として行政監視委員会が設置され、二〇一八年、参議院改革協議会では、行政監視機能の強化は院全体で取り組むこととされました。その大前提となるのが、国民の監視に堪え得る情報の透明化です。ところが、今般可決された政治資金規正法は、国民の不断の監視と批判から逃れるための改悪と言わざるを得ません。既に国民は本質を見抜いていることを自公政権は深く自覚すべきだと申し上げ、質問に入ります。
 世界経済フォーラムが二〇二四年のジェンダーギャップ指数を発表し、日本は百四十六か国中百十八位と、昨年より改善したとはいえ、G7では依然として最下位にとどまっています。
 政府は、昨年、議長国として開催したG7の各国首脳によって確認されたファクトシートで、ジェンダー平等、並びに、あらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享受を実現すること、さらに、ジェンダー分野における変革の実現へのコミットメントを再確認しています。我々参議院が行政監視機能を強化していくために、ジェンダー主流化の視点が強く求められています。
 世界の国々でも、ジェンダー平等を達成するための最も重要な国際基準は、一九七九年に採択された女性差別撤廃条約であり、日本政府は、一九八五年に批准しながら、その実効性を高めるための選択議定書の批准を拒み続けています。国内での性差別を受けながら救済されなかった人が国連の委員会に個人通報することを可能とする選択議定書について、繰り返し、早期締結に向けて真剣な検討を進めるとしながら、いまだに批准しない理由は何ですか。
 本年十月には、八年ぶりに女性差別撤廃委員会による第六回目の日本報告審議が行われることとなります。批准に向けた速やかな決断を求めるものです。
 以上二点について、官房長官、お答えください。
 ジェンダー平等が進まない日本でも、変化を求める声が大きく広がっています。日本経団連は、夫婦同姓の強制を廃止するよう求めた女性差別撤廃委員会からの勧告も紹介し、選択的夫婦別姓制度の実現を提言しました。夫婦同姓の強制によって氏の変更をしているのは圧倒的に女性であり、個人の尊厳の問題であり、人権問題です。党首討論で求めた一日も早い民法改正法案の審議を求めるものです。官房長官、お答えください。
 先日決定された女性版骨太方針の中で、女性活躍推進法に基づく賃金格差の公表について、百一人以上の事業主への拡大を検討するとしています。賃金格差の公表は前進ですが、全労働者、正規労働者、非正規労働者ごとの格差を示すだけでは、賃金格差の実態は見えてきません。更に踏み込んだ開示が必要です。まずは、正規男性労働者の賃金を一〇〇とした正規女性、非正規男性、非正規女性のそれぞれの割合を公表すべきです。厚労大臣、お答えください。
 また、雇用形態間だけでなく、総合職と一般職といった雇用管理区分ごとの賃金や待遇の情報も公表すべきです。今年五月、一人の女性が、家賃補助の利用が、ほぼ全員が男性の総合職に限られ、女性が多い一般職は利用できないことは女性に対する差別だと訴えた裁判で、女性への間接差別を初めて認める判決が確定しました。コース別人事は間接差別であることを政府は認め、男女雇用機会均等法の抜本的な見直しをすべきです。
 男女の賃金格差是正にとどまらず、男女の賃金格差是正を実効あるものとするために、公表にとどまらず、企業に対して原因分析と是正措置を義務付けることを求めるものです。厚労大臣の答弁を求めます。
 公務の賃金格差は民間の格差より深刻です。二〇二二年度の各府省庁のデータを基に、男性の常勤職員の給与を一〇〇とした場合の女性の非常勤職員の割合を計算すると、僅か三七%しかありません。会計年度任用職員の約八割が女性であり、圧倒的な職員が最低賃金に張り付く低賃金となっています。
 政府が直接改善できる公務で率先してこれらの取組を行い、政府の姿勢を示すべきではありませんか。男女共同参画担当大臣と総務大臣の答弁を求めます。
 男女の賃金格差の大きな要因の一つに、女性の約七割が非正規労働者であることがあります。L字カーブに見られるように、女性は、三十代以降で正規雇用と非正規雇用の割合が逆転し、非正規雇用の割合が高くなる実態があります。結婚や育児、介護といったライフステージの転換点に立ったときに、自らの働き方について、女性にどれほどの選択肢があり、どれほどの自由を持っているのかが問われています。非正規雇用に女性が多い実態を踏まえれば、非正規雇用の処遇の低さは女性差別にほかなりません。低年金の高齢女性の増大を招く女性の低賃金構造の放置は許されません。
 総理は所信表明演説で、本丸は物価高を上回る所得の実現、あらゆる手を尽くし、今年実現しなければなりませんという決意を述べられました。
 しかし、完全に置き去りにされたのが年金生活者です。今年度分の支給が始まりましたが、物価が上がり過ぎ、節約できるレベルではないと窮状を訴えています。
 特に深刻なのは、貧困率四四%に上る単身高齢女性です。二十代から働き続け、年金は九万円、初めて食料支援の列に並んだという女性、七万円の年金では生活できず、痛む足を引きずり食堂を続ける女性など、働き続けた末、低年金にあえいでいます。これは、非正規、低賃金、無償家族ケアなど、ジェンダー格差を放置してきた結果ではありませんか。
 国民年金法第四条は、国民の生活水準に著しい変動が生じた場合、速やかに改定の措置が講ぜられなければならないと規定しています。四十年ぶりの異常な物価高で、高齢者の家計は著しい変動を余儀なくされています。物価を上回る年金額の再改定を速やかに行うべきではありませんか。以上二点、厚労大臣、お答えください。
 医療、介護、障害福祉サービスの報酬のトリプル改定は、物価高に負けない公的賃上げの期待を裏切り、失望と怒りを招いています。
 現場での担い手不足は、既に必要なケアを届けられない事態に追い込んでおり、放置することは許されません。ケア労働者の多くを女性が占めています。
 新型コロナ感染症と物価高、人手不足による現場の困難を打開し、ケア労働者の処遇を抜本的に改善するために、厚労大臣、速やかに国費による賃金アップ、報酬の再改定を行うべきではありませんか。
 四月一日、困難な問題を抱える女性の支援に関する法律が施行されました。大きな特徴は、国、地方自治体が民間団体と協働して、女性支援事業を進めることです。
 これまで、女性支援は多くの民間団体が担ってきましたが、財政面も人的基盤も、非常に厳しい状況に置かれています。DV、性暴力、性搾取、困窮、居場所などの、居場所の喪失など、困難を抱え孤立を強いられた女性たちが、どのような状況でも助けを求め、地域差なく、当事者主体の支援を利用し、心身の回復支援が保障されるよう、裏付けとなる予算を大幅に拡充することが必要です。厚労大臣の答弁を求めます。
 世界でも日本でも、今、ジェンダー平等を求める声は巨大なうねりとなり、世界各国の政治を動かしています。日本で最も遅れている政治、経済分野におけるジェンダーパリティー、すなわち男女比同率の実現が全ての人々にとっての解決策につながる道であることを申し上げ、質問といたします。

○国務大臣(松本剛明君) 倉林議員から御質問いただきました地方公務員の男女賃金格差の取組について御答弁申し上げます。
 地方公務員の男女間給与差異の情報については、国家公務員と同様の区分で令和四年度分から各自治体のホームページなどで公表されております。
 給与の男女差異については、各自治体における差異の背景にある要因分析に基づき、個々の状況に応じた課題に取り組まれることが大切ですが、総務省としても、分析を行うとともに、優良な分析を行っている事例等について情報提供を行い、自治体をサポートしてまいります。
 会計年度任用職員の処遇については、令和六年度から勤勉手当の支給を可能とするなど取組を進めており、今後とも適正な処遇の確保、改善に取り組んでまいります。

○国務大臣(林芳正君) 倉林明子議員の質問にお答えいたします。
 女子差別撤廃条約の選択議定書についてお尋ねがありました。
 女子差別撤廃条約選択議定書に設けられている個人通報制度は、条約の実施の効果的な担保を図る趣旨から注目すべきものと考えております。
 その上で、女子差別撤廃委員会から出される見解などにつきまして、我が国の司法制度や立法政策との関係でどのように対応するかなどの検討するべき論点があることから、各方面の意見なども踏まえ、女子差別撤廃条約選択議定書の早期締結について真剣に検討しているところでございます。
 続きまして、選択的夫婦別氏制度についてお尋ねがありました。
 選択的夫婦別氏制度の導入につきましては、現在、国民の間に様々な御意見があることから、しっかりと議論し、より幅広い国民の理解を得る必要があると考えております。
 政府としては、関係団体から提言等を含め、関係団体からの提言等を含め、国民各層の意見や国会における議論の動向等を踏まえてその対応を検討していく考えです。

○国務大臣(武見敬三君) 倉林明子議員の御質問にお答えいたします。
 男女間賃金格差の公表方法についてお尋ねがありました。
 令和四年七月、男女間賃金差異の解消に向けて、女性活躍推進法に基づき、従業員三百一人以上の企業を対象に男女間賃金差異の公表を義務付けました。この中で、正規雇用、非正規雇用の男女労働者の割合が賃金差異に大きく影響を与えることから、正規雇用労働者、パート、有期雇用労働者、全労働者の三区分で公表することを義務付け、雇用形態ごとに男女間賃金差異を把握することとしたところでございます。
 引き続き、企業において男女間賃金差異が適切に公表されるよう、取組を進めてまいります。
 御指摘のいわゆるコース別雇用管理と男女間賃金差異についてお尋ねがありました。
 御指摘のいわゆるコース別雇用管理については、それ自体が間接差別に当たるものではありませんが、コース別管理制度が事実上の男女別雇用管理とならないよう、男女雇用機会均等法に照らして問題がある場合には、企業に対し助言、指導等を行ってまいります。
 また、男女間の賃金差異の情報公表に際しては、各企業において、職場の女性の活躍に関する状況把握や課題分析が行われています。
 厚生労働省においても、引き続き、男女間賃金差異の要因分析や改善に向けたコンサルティング事業等の取組を行い、男女間賃金格差の是正を図ってまいります。
 単身高齢女性の貧困についてお尋ねがありました。
 低所得により厳しい生活を送られている単身の高齢女性に対しては、社会保障制度全体で総合的に支援しているところであり、年金生活者支援給付金の支給や介護保険の低所得者の方を対象とした補足給付の支給等にも取り組んできたところであります。
 その上で、お尋ねの非正規雇用や低賃金等の問題については、高齢期の経済的不安に現役期から備えておく観点から、例えば、希望する方の正社員転換に向けた支援や最低賃金の引上げ、同一労働同一賃金の遵守の徹底などにより非正規雇用労働者の処遇改善も進めてきたほか、男女間賃金差異の是正、固定的な性別役割分担意識の解消等にも取り組んできております。こうした取組を複合的に講じることで、高齢期においても安心して暮らせる社会を構築してまいります。
 年金額の改定についてお尋ねがありました。
 国民年金法第四条の規定は、現行の年金額の改定ルールでは対応できないような、国民の生活その他の諸事情の著しい変動が生じた場合に年金額を改定する旨を定めるものであります。公的年金制度では、毎年度、前年の物価などの変動に応じて年金額を改定することを基本としており、今年度の年金額は、今般の物価高の影響を盛り込んだ上で改定をしております。
 このように、現行法の下では通常の改定ルールの範疇で対応でき、国民年金法第四条に基づく改定を行う状況にはないものと考えております。
 医療、介護、障害福祉の分野における賃上げ、処遇改善についてお尋ねがありました。
 医療、介護、障害福祉の分野における賃上げは重要な課題であると認識しており、令和六年度の診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の改定において、令和六年度にプラス二・五%、令和七年度にプラス二・〇%のベースアップを実現するために必要な改定を行ったところです。
 その上で、今般の改定による措置が最大限に活用され、医療、介護、障害福祉の現場で確実な賃上げにつながるよう、関係者とともに取り組むとともに、医療、介護、障害福祉の賃上げの状況等について、今回の改定による措置のフォローアップの仕組みにより適切に対応をしてまいります。
 困難な問題を抱える女性への支援についてお尋ねがありました。
 貧困や性暴力被害など、女性の抱える問題が多様化、複雑化している中、困難な問題を抱える女性への支援も強化していくためには、様々な支援に取り組む民間団体と密接に連携をし、個々の状況に応じた支援を早期から切れ目なく行っていくことが重要であります。
 このため、厚生労働省としては、これまでも官民協働による訪問支援や居場所の提供などの支援の推進、それから支援の担い手となる民間団体の育成支援などを実施し、必要な予算を確保してまいりました。
 女性支援新法が本年四月に施行されたところであり、新法の基本理念にのっとり、新たに位置付けられた女性相談支援センターなどが民間団体と協働をし、本人の意思を尊重したきめ細やかな支援が推進されるよう努めてまいります。
 以上であります。

○国務大臣(加藤鮎子君) 倉林明子議員の御質問にお答えいたします。
 公務部門の男女間賃金格差改善の取組についてお尋ねがありました。
 公務部門においても、令和四年、女性活躍推進法に基づき、国、地方公共団体を対象に男女間給与差異の公表を義務付けました。公務部門では、給与は法令等に定められた俸給表等に基づき決定することとされています。その上で、公務部門の公表においては、任期の定めのない常勤職員、任期の定めのない常勤職員以外の職員、全職員の三区分に加え、任期の定めのない常勤職員の場合には、役職段階別、勤続年数別についても公表を義務付けているところです。
 公務部門の男女間給与差異の情報については、各機関において課題の把握、分析を行い、差異の解消に向けて必要な取組を進めるとともに、一覧性等を確保した見える化サイトの整備を進め、さらに、先般決定した女性版骨太の方針二〇二四等に基づき、各機関が適切な公表に向けた周知、助言、優良な分析を行っている事例等について情報提供を行うことで、各機関における差異の要因等の把握、分析を促進してまいります。