倉林明子

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必要な支援遠ざける 大麻取締法改定案 批判(2023/12/5 厚生労働委員会)

(資料があります)

 大麻取締法などの改定案が5日の参院厚生労働委員会で、自民、公明、立民、維新、国民民主の各党の賛成多数で可決しました。日本共産党とれいわ新選組は反対しました。

 共産党の倉林明子氏は、改定案で大麻の「使用」に新たに刑事罰を設けるのは、「必要な支援から遠ざけ、社会的孤立を強い、再使用にもつながる。健康被害・問題使用の減少にも反する」と批判。武見敬三厚労相は「刑事司法の手続きがなければ、薬物依存症の治療につながりにくいとの指摘もある」と合理化しました。

 倉林氏は、諸外国は非刑罰化や、薬物使用によるリスクや健康被害を減らすことを目的としたハームリダクション(被害低減)に転換していると指摘し、「ハームリダクションは100カ国で導入されている。刑罰からの転換を検討すべきだ」と要求。武見厚労相は「わが国は薬物の生涯経験率は諸外国に比べ低い。薬物の乱用が進み、ハームリダクションを講じることには慎重だ」と答えました。

 倉林氏は「犯罪化は自分や家族の罪悪感を増長している。非刑罰化の成果は明らかだ。世界の実践にも学ぶべきだ」と主張しました。


「1年以内の薬物使用あり」症例における乱用薬物の比率の推移


10代における「主たる薬物」の推移


覚醒剤取締法違反の同罪名による2年以内再入率の推移


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 まず、法案に入る前に、私からも、生活保護の裁判について質問したいと思います。
 先日の十一月三十日に名古屋高裁で、二〇一三年からの生活保護引下げ、これ厚労大臣の裁量を逸脱して違法であること、そして、原告の精神的苦痛に対し国家賠償としての慰謝料請求を初めて認めるという判決が下されました。
 国はこの判決を重く受け止めて、上告せず判決確定させるべきだと。もう一点、直ちに生活保護基準の引上げ、これ踏み込むべきだと思います。大臣、いかがでしょう。

○国務大臣(武見敬三君) 十一月三十日の名古屋高裁で判決がありまして、当時の生活保護基準の改定について適法であると認められなかったということは承知しております。現在、判決の内容の詳細を精査するとともに、関係省庁や被告自治体と協議をしておりまして、今後、適切に対応してまいりたいと考えております。
 なお、厚生労働省としては、今後とも、自治体との連携を図りつつ、生活保護行政の適正な実施に努めてまいりたいと考えます。

○倉林明子君 生存権裁判で見ますと十三例目の勝訴ということで、二〇一三年の引下げが違法な統計不正であったという司法判断の流れというのはもう止まらないというふうに判断すべきだと思います。現状、異常な物価高が続いておりまして、生活保護利用者の生存権脅かすという実態があるわけですよ。この実態を直ちに解決すべきだというふうに思います。政治決断、強く求めておきたいと思います。(発言する者あり)質問していないから。
 続きはまたやらせていただきます。
 で、法案です。
 大麻施用罪の創設など、これ重罰化と併せて薬剤としての大麻由来医薬品の使用を可能とすると。これ、趣旨も目的も異なるものだというふうに受け止めているんですけれども、一本の法案として出されたということなんだけれども、何でこれ一本での提案になったのか、改めて御説明を。

○国務大臣(武見敬三君) 今回の改正法案におきましては、まず、大麻由来の医薬品についても治療に用いることが可能となるよう、他の麻薬と同様に医師などによる施用等を可能とする必要があり、現行の大麻取締法ではなく、麻薬及び向精神薬取締法に大麻を位置付けることで、同法に基づく流通規制の下で、その製造や施用を可能とすることとしたものであります。
 また、この見直しによりまして、麻薬としての施用の枠組みに大麻由来の医薬品など大麻が含まれることとなる中、若年層を中心に大麻事犯が増加傾向にあり、早急に大麻の施用に対する対策を取るべきとの背景もございます。大麻についても、他の麻薬と同様に、施用罪を適用することが適切と判断をいたしました。
 このように、これら二つの見直しにつきましては互いに関連することから、一つの改正法案として提出をさせていただいた次第でございます。

○倉林明子君 関連するんだけれども、これはやっぱり新たに刑事罰を設けるということになるわけで、立法事実があるのかという専門家からの指摘もあった、これは本委員会でも指摘があったところですが、罰を科すということはきちんと緻密にやっぱり議論すべきだというふうに思うわけですね。こういった、要は医薬品として使えるようになるという希望がある一方で、刑事罰によって、刑事罰の強化によって、要はそういうスティグマ等につながるというような指摘もあるわけですよ。こういったくくった出し方というのはやめてほしいと改めて言うておきます。
 次です。
 日本では、かつては、覚醒剤やめますか、人間やめますかという標語ありました。今も、「ダメ。ゼッタイ。」と、あのポスターの一覧の紹介もありました。こういう広報、教育によって抑止効果、一次予防ということで成功しているんだということなんだけれども、一方で、差別や偏見が助長されて、早期発見、早期治療、社会復帰のハードルとなっていると、こういう事実としての意見も挙がっているけれども、認識はいかがでしょうか。

○国務大臣(武見敬三君) この「ダメ。ゼッタイ。」を含めた一次予防は、やはり分かりやすいメッセージとして社会に幅広く定着をして一定の効果を上げていると私どもは評価をしております。他方で、一次予防の啓発に当たり、どのような標語であれ、薬物依存症者への偏見の助長や治療の阻害を生まないように実施していく必要がございます。
 このために、薬物乱用防止の普及啓発に当たっては、全国各地に設置した相談窓口を紹介するなど、薬物に悩む方々への配慮も行っておりまして、引き続き、適切な治療と社会復帰支援による再乱用防止といった二次予防の方にも配慮をしながら、実際にこの法の改正を進めてきた次第であります。

○倉林明子君 一次予防効果がありと、そこを否定しているわけではないんだけれども、差別や偏見を助長するというところも生んでいるよというところについては、悩む人への配慮するかどうかというのは別の話で、やっぱりハードルになっているということをしっかり見るべきだと思うんですね。
 今日、資料用意しておきましたけれども、三枚目のところ、一次予防のところで成果上げているというものの、覚醒剤取締法違反のところのいわゆる再犯の状況でいうと、一番右側ですけど、同一罪名でこれ八割以上なんですよね。母数そのものは減っているんだけれども、再犯率は高位のままで推移しているというのが実態ですよね。
 規制や摘発を強化した薬物、つまり覚醒剤、危険ドラッグ、こういうものは減少するんです、確かに。しかし、合法薬物、これ大量服用やオーバードーズというのが極めて拡大しているんですね。
 これ、一枚目の資料のところに入れたのは、二〇一四年と二〇二〇年の比較です。一番左の水色が覚醒剤、そしてブルーと緑色、これが睡眠薬、抗不安薬、市販薬ですから合法の薬物なんです。これが、危険ドラッグはオレンジのところで、危険ドラッグはほとんどなくなったんだけれども、逆に合法薬物の使用、乱用薬物として使われているという実態あるんですね。
 これ、二枚目のところは、十代に注目した主たる薬物の推移で見てみると、何と市販薬がこれだけこの間増えているという実態があるんですね。
 学校にも家庭にも居場所がないという若者たちがコロナ禍によって非常に増えているという実態も指摘されております。専門家に聞きますと、相談に乗っている方に聞きますと、薬を使うということが唯一の死なない道だったのではないかという声が上がっているんですね。これは重く受け止めるべきだと思うんです。孤立する若者を更に窮地に追い込むというようなこと、あってはならないと思うんですね。
 大麻使用等の厳罰化ということが今回盛り込まれるわけですけれども、薬物を使用した者、これは犯罪者だという烙印が押されることになるわけですね。今でも、少量の所持でも名前をさらされる、学校や職場からも排除されている、実際起こっています。必要な支援からこうした若者も含めて遠ざける、社会的孤立を強いる、これ、再使用にもつながっているんじゃないかと思うんです。
 健康障害、健康被害、問題使用をどう減少させるかということが目的だと思うんだけれども、これに反することにならないかということを考えているんですけれども、大臣、どうですか。

○国務大臣(武見敬三君) やはり再犯防止であるとか、それから、薬物依存症の方々に対して、こうした犯罪を犯してしまったことを切り離して依存症の患者として考えるならば、社会復帰の支援や治療などの支援を提供していくことが必要なことはもう言うまでもありません。
 ただ、この点、審議会の議論では、依存症治療の専門家からも、刑事司法の手続がなければ患者が実際に薬物をやめるきっかけがないため、依存症の治療等につながりにくいという指摘もございます。今年八月に策定した第六次薬物乱用防止五か年戦略でも、刑事司法の手続を一つの契機として、治療や断薬プログラムなどの支援を行うことが必要であるというふうにされております。
 したがって、こうした委員の御指摘をきちっと踏まえた上で、こうした改革を進めていきたいと考えております。

○倉林明子君 岡崎参考人もおっしゃっていましたよ。やっぱり犯罪ということがどれだけのスティグマになって、支援につながるそのハードルになっているかということは、彼の、本当に重大な決意して参考人としてここで述べていただいたんだけれども、犯罪として規定することがハードルにやっぱりなっているという現実を見るべきではないかと思います。
 そこで、厳罰化と規制強化ということで、一九九〇年代、各国でこれ進められました。そこで、厳罰化以前と比べますと、オーストラリア、これ、ヘロインの過剰摂取による死亡者数が、厳罰化前というのは六人だったというんですよ。ところが、厳罰化によって千人を超えるまで増加したと。死刑という重い刑罰を科していたのはマレーシアですけれども、ここではHIVの新規感染者数が七千人まで急増したという専門家の報告もあります。
 薬物使用、これ、厳罰化のデメリットという面も明らかにあると思うんですけれども、どう評価されていますか。端的にお答えください。

○国務大臣(武見敬三君) やはり外国と我が国の場合にいろいろな事情の違いがあることは御理解いただきたいと思います。
 我が国では、これまでも薬物使用に対して厳しく対処してきておりまして、諸外国と比べて薬物の生涯経験率を低く抑えることに成功しています。厳罰化や規制強化が原因となった過剰摂取による死亡者の増加といった御指摘のような問題は、これまで我が国では実際には起きておりません。したがって、引き続き必要な規制はしっかりと講じていくことがやはり大切だというふうに思います。

○倉林明子君 薬物をやめさせるのではなくて、使うことによってリスク、健康面の被害を少しでも減らすことを目的とするということで、ハームリダクションというものが各国で取り組まれております。
 各国で非刑罰化、そしてハームリダクションに転換するということで、先ほど紹介したオーストラリアのところでいうと、死亡者数やHIV患者が減少しただけじゃないんですよね。ハームリダクションに一豪ドル、いわゆる一オーストラリア・ドルを投入すると、医療費は四豪ドル、公的資金で七豪ドルの節約ができたということがありました。マレーシアでも、八年間で一万二千人を超えるHIVの新規感染者数の予防に成功したと、二千万ドルの国家予算の削減にもつながると、こういう報告出ているんですよね。
 私、今ではこのハームリダクションを導入するという国が百か国にも上っているわけです。確かに我が国では、我が国と外国の違いはあるというんだけれども、刑罰による政策からの転換ということを検討すべきじゃないかと思います。いかがでしょう。

○国務大臣(武見敬三君) 残念ながら、その点はちょっと違う考え方を私どもは持っておりまして、我が国では薬物の生涯経験率、非常に諸外国に比べて低いんです。
 したがって、仮に薬物犯罪における薬物の使用等の刑罰を軽減、廃止した場合に、薬物を使っても罰せられず、その使用等が合法であり問題ないとの誤解が広がり、薬物の乱用が進み、現在の入口での使用禁止という一次予防の抑止効果が期待できなくなるという可能性がありますから、諸外国とは異なり、いわゆるハームリダクションといった政策を講じることには慎重でなければならないと思っております。

○倉林明子君 日本でも民間のところでこの取組始まっていまして、ハームリダクション東京、二〇二一年六月からスタートした取組があります。昨年三月末までに、チャットによる相談人数五百四十五人、チャット数は、回数、四千二百三十回だというんですね。ここには、九割以上が薬物使用のある当事者の相談が書かれている、寄せられているというわけです。薬物を使用していたら犯罪で捕まるかもしれないといったら、相談がしにくくなるの当たり前だと思うんですね。ここでは、薬物を使用していても安心して正直に話せる場所になっているというんですよ。ここが大事だと思うんですね。
 大麻使用罪の創設というのは、必要なケアにつなげる取組、入口、ここを狭めることになるんじゃないか。大臣、どうでしょう。

○国務大臣(武見敬三君) ハームリダクション東京といったような団体では、大麻に限らず、所持罪と施用罪がある違法薬物の使用者に支援を行っていると承知しております。大麻に施用罪が適用されることになっても、支援の取組に支障を生ずるものとは考えておりません。
 引き続き、薬物に悩む方々に対しては、一次予防のみならず、二次予防、三次予防に配慮した情報提供を行っていくことが必要と考えています。

○倉林明子君 薬物を使用する当事者が、自分は尊重されている、生きていてもいいんだというふうに思える支援に早期につながるということが、本当に薬物使用による健康被害、社会的な弊害を減らしていくことにつながると思うんですね。
 犯罪化ということは、自分の罪悪感、家族も含めた罪悪感を今でも増長しているんですね。ここにも大麻も加えていくということになるんですよ。
 私、世界の実践からも、こうした非刑罰化、ハームリダクションの取組ということの成果というのは明らかじゃないかと思います。
 この一回使った使用による健康障害なくても犯罪化されるということにつながっていけば、人生そのものもやっぱり大きく損なわれることになると思うんですね。世界の実践にも学んで、こうしたハームリダクションが更に進むように考えていくべきだと重ねて申し上げたいと思いますけれども、大臣、どうですか。

○国務大臣(武見敬三君) 委員御指摘のように、薬物使用者の治療、それから社会復帰支援ということは、この薬物を使ったという事実のみならず、薬物を使用した者が置かれた環境や悩みにも寄り添って実施することが重要だということは私も認識をしております。
 しかし、繰り返しになりますけれども、関係審議会では、刑事司法の手続がないと依存症の治療等につながりにくいという専門家からの指摘もあるんです。したがって、刑事司法の手続を契機に治療や支援につなぐことも重要だと考えます。
 今年八月に策定した第六次薬物乱用防止五か年戦略でも、薬物使用者は社会的困難等を抱えている場合があると理解した上で、適切な治療と効果的な社会復帰支援が重要だというふうに考えておりまして、そうした考えに基づいて、各関係省庁と連携をしてこの取組を進めていきたいと、そう思います。

○倉林明子君 先ほど紹介しましたハームリダクション東京、共同代表の上岡陽江さんという方がNHKの番組で紹介されていましたけれども、薬物使用の当事者でもありました。そして、支援の入口は薬物をやめることだということから支援始めていたけれども、ハームリダクション学ぶことで何が分かったかといったら、薬物を使用しても正直に言える、正直に言っても責められない、この関係がないと支援につながらないということに気付いたというふうにおっしゃっているんですよ。
 私、薬物が生活に支障を来しているというのではなくて、刑事司法の介入がその人の生活を奪っている実態があるという、参考人指摘がされておりましたけれども、そういう実態、一方であるというのは本当、そのとおりだと思うんです。
 改めて、世界の流れに逆行するようなこうした厳罰化というのをやるべきではないと申し上げまして、終わります。


議事録を読む(討論)

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 会派を代表して、大麻取締法等改正案に反対、れいわ新選組提出の修正案に賛成の立場で討論を行います。
 本法案は、大麻由来医薬品の施用を可能とするための規定の整備と大麻施用罪の新設と重罰化という、趣旨、目的が異なる改正を抱き合わせた法案となっています。医療用ニーズへの対応は、薬の認可を待っている患者の皆さんの強い要望があり、必要な法整備を進めることには賛成するものです。
 しかし、本法案のもう一つの柱は、大麻施用罪を新設し、単純所持などの懲役上限も五年から七年に引き上げるなど重罰化するものです。これは、当事者、家族へのスティグマ、偏見、差別を広め、社会的孤立を一層強め、必要なケアから遠ざけることになりかねません。
 大麻規制については、国際的には、少量所持、使用は非犯罪化、非刑罰化することが一つの流れになっています。それは、問題使用により苦しむ人を減らすことができるのは、刑事罰ではなく教育、福祉、社会保障であることが、科学的根拠、実践をもって明らかになっているからです。
 大麻使用等の重罰化については、多くの法律関係者、支援・当事者団体等から懸念、批判の声が上がっています。刑法学研究者の声明は、法制審議会への諮問もなく、法務省内での本格的な検討がないことを批判し、法務委員会での慎重審議をすべきと指摘しております。こうした意見を真摯に受け止めるべきです。
 参考人質疑でも、薬物が生活に支障を来しているのではなく、刑事司法の介入がその人の生活を奪っているとの指摘がありました。
 この法案により取締りが強化され、社会的排除に拍車が掛かることはあってはなりません。
 国連人権高等弁務官事務所の声明にあるように、処罰を支援に置き換え、人権を尊重、保護する政策を推進する、このことを強く求め、討論といたします。