高年齢者雇用安定法Q&Aの見直しを(2023/5/23 厚生労働委員会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は23日の参院厚生労働委員会で、高年齢者雇用安定法のQ&Aの見直しを求めました。
高年齢者雇用安定法では、60歳以下の定年を禁止し、65歳までの雇用確保措置を義務付けています。ところが、厚労省のQ&Aでは、事実上の定年の前倒しや、低待遇で生活を不安定にする継続雇用制度の導入などを容認しています。
倉林氏はQ&Aを根拠に58歳の時点で60歳で辞めるか、58歳で事実上定年退職し、低賃金の継続雇用制度へ移行するかの選択を迫られていると告発し、「高年法の趣旨に反する。Q&Aを法と指針に沿ったものに見直すべきだ」と強く要求。加藤勝信厚労相は「特段見直しは考えていない」と答えました。
「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」は継続雇用制度による賃金について、生活の安定などへの考慮を求めています。賃金の引き下げは指針の趣旨に反するのではとの倉林氏の質問に、加藤厚労相は「直ちに反するとは言えない」と答弁。倉林氏は「一方的な労働条件の不利益変更を継続雇用制度への移行にかこつけて合法化するものだ」と批判しました。
雇用確保措置の義務付けは年金受給開始年齢の引き上げに伴うもの。倉林氏は「高齢労働者の尊厳をおとしめるような処遇を容認すべきではない」と主張しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
高年齢者雇用安定法について質問したいと思うんです。
現在、ほとんどの企業で雇用確保措置がとられております。六十五歳までの雇用確保措置の指針についてここで確認したいと思うんですね。
四番の賃金、人事処遇制度の見直しについての留意事項というのが挙げられております。
四の(1)、(2)、それぞれ記載はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(堀井奈津子君) お答えいたします。
高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針は、高年齢者雇用安定法第九条三項に基づきまして、事業主が定年の引上げや継続雇用制度の導入等、六十五歳までの高年齢者雇用確保措置を講じるに当たり、その適切な実施及び運用を図るために必要な事項について厚生労働大臣の告示として定めたものでございます。
そして、倉林委員御指摘の指針の第二の四、賃金、人事処遇制度の見直しにおきましては、事業主が高年齢者雇用確保措置を適切かつ有効に実施をし、高年齢者の意欲及び能力に応じた雇用の確保を図る観点から、賃金、人事処遇制度の見直しを行う場合の留意事項を定めております。
お尋ねの項目(1)でございますが、「年齢的要素を重視する賃金・人事処遇制度から、能力、職務等の要素を重視する制度に向けた見直しに努めること。この場合においては、当該制度が、その雇用する高年齢者の雇用及び生活の安定にも配慮した、計画的かつ段階的なものとなるよう努めること。」、そしてお尋ねの項目(2)については、「継続雇用制度を導入する場合における継続雇用後の賃金については、継続雇用されている高年齢者の就業の実態、生活の安定等を考慮し、適切なものとなるよう努めること。」とされております。
○倉林明子君 そうなんですね。賃金のところで御紹介いただいたように、高年齢者の就業の実態、生活の安定と、ここを指針でもしっかり書いているということを押さえておきたいと思うんです。
それでは、実態はどうかということです。電機大手では、週五日勤務を希望したものの週三日勤務ということになって、月収十一万円、貯金取り崩すと、そうやって生活に充てざるを得ない状況になっていますと。また、最低賃金水準の賃金を強いられて、生活苦に陥っていると。
こうした継続雇用制度の運用というのは、高年齢者雇用安定法と、そして紹介いただいた運用指針のこれ趣旨に反するんじゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(加藤勝信君) 個別の事案については控えさせていただきたいと思いますが、継続雇用制度における高齢者の労働条件は、各企業において六十五歳までの安定した雇用を確保するという趣旨を踏まえつつ、労使間で個別に決定していただくものであります。
結果として、仮に賃金、労働条件が労働者個々の希望どおりになっていないとしても、そのことだけをもって直ちに高年齢者雇用安定法及び同法に基づく指針の趣旨に反するとは言えないと考えておりますが、引き続き、こうした指針に沿った対応がなされていけるよう、我々としても努力していきたいと考えています。
○倉林明子君 生活の安定というところも明記されているんですよね、指針では。で、一方的な労働条件の不利益変更を、継続雇用制度への移行ということで、これにかこつけて合法化するということになっているんですよね。
これ、さらに、これ資料の一で、今、雇用確保措置の内訳、あっ、資料の一って、一枚だけ出していますけれども、この内訳を示しておりますが、雇用確保措置は三つほどあるんですけれども、継続雇用制度を導入しているというのは圧倒的に多くて、三百一人以上の企業の場合は八割を超えているという導入状況になっております。この継続雇用制度の中身でどんな運用がされているかということなんです。
ある会社の事例を紹介したいと思うんですけれども、一つは、五十八歳で退職すると、で、再雇用で六十五歳までは継続雇用という選択肢が一つ示されると。もう一つの選択肢は、五十八歳で退職しないと、しかし、継続雇用のない六十歳定年までの雇用で終わると、つまり六十歳で辞めるということなんですね。これ、いずれかの選択肢を迫っているんですよ。
こういう選択肢を迫るというようなことがなぜまかり通るのかということで、御紹介いただきたいのは、高年齢者雇用安定法のQアンドA、ここのQの一の五及びQの一の六はどうなっているのか、御紹介いただきたい。
○政府参考人(堀井奈津子君) ただいま御指摘をいただきました高年齢者雇用安定法のQアンドAは、事業主が高年齢者雇用安定法及び……(発言する者あり)あっ、該当部分、はい。
それでは、倉林委員御指摘のQアンドAのQの一の五及びQの一の六の概要でございます。
これは、例えば五十五歳の時点で、従前と同等の労働条件で六十歳定年で退職をする、又は、五十五歳以降の労働条件や雇用形態を変更した上で六十五歳まで継続して働き続ける、このいずれかを労働者本人の自由意思により選択できる制度を導入した場合を例示をして、この場合、高年齢者が希望すれば六十五歳まで安定した雇用が確保される仕組みであれば、高年齢者雇用安定法上の継続雇用制度を導入したものと認められる、その旨の考え方を示しておるところでございます。
○倉林明子君 QアンドAが根拠だから、六十歳で辞めてもらうという選択肢や、あるいは、六十五歳までだけれども一旦は五十八歳で退職して再雇用と、こういう選択肢しか示されていないと。これ大丈夫ですということで、QアンドAで根拠としてこれ労働者にも説明されているんですよ。
労働者は、六十歳で辞めるか、五十八歳に定年が事実上の前倒しということになって、賃金が低い再雇用制度に移行せざるを得ないと、こういうことになっているんです。高年齢者の賃金も下がると。六十歳までは現役、定年前ですよ。そういうところまで賃金、現役世代の賃金も下げると、これ可能になるということになっちゃうんですよね。私、高年齢者雇用安定法、この第八条、第九条、この趣旨にも反すると思うんです。
やるべきは、このQアンドA、法と指針に沿ったものとして見直すべきではないかと。大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(加藤勝信君) 法と指針踏まえて、そして、先ほど説明をさせていただいたように、労働者本人の自由意思による選択ができる場合など、本人が希望すれば六十五歳までの安定した雇用が確保される仕組みであれば、高年齢者雇用安定法に基づく継続雇用制度として考えられる場合があるといったことを示したものでございますので、特段見直すことは考えておりません。
○倉林明子君 いや、あのね、高年齢者安定法の、雇用安定法の第八条というのは、六十歳以下の定年禁止なんですよ。事実上、この法の下で禁止しているのに、五十八歳という六十歳以下の定年の、禁止していることができるようになっちゃっているんですよ、このQアンドAのせいで。六十五歳までの雇用の確保措置の義務付け、これは年金開始年齢が延長されたことによって導入されたものですよ。私は、政府の責任が問われる問題だと思います。
厚労省の高年齢者雇用状況等報告、これ資料で付けておいたものですけれども、実は、ここに肝腎の調査事項抜けていると私思うんです。それは、生活の安定が法の趣旨にあったわけですから、高年齢者の賃金の状況、就労の状況、これをしっかり把握して、つかんでいくべきだと思う。調査項目に入れるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) 御指摘の高年齢者雇用状況等報告、これは、高年齢者雇用安定法に基づいて、事業主に対し、毎年六月一日現在における高年齢者の雇用機会の確保等に関する状況について報告を求めているものでございます。
この報告は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等、高年齢者雇用安定法に基づく事業主の取組の状況を把握するとともに、法に違反する事業主に対して都道府県労働局が指導等を行う情報収集のために実施するものでありますが、御指摘の賃金等の就労状況を調査項目に追加することに関しては、労働者の賃金については、各企業において職務の内容、勤務時間等を考慮して労使間で個別に決定されるものであり、本報告により全国斉一的に把握するのには適さないこと、また項目の追加による事業主の負担にも配慮する必要があるということなど考慮すれば、そうした追加の、項目の追加に対しては慎重に対応すべきものと考えております。
○倉林明子君 指針には留意事項として明記されていると。それは、法改正時に、生涯現役社会の実現だとまで説明してきたんですよ、これ政府ですよ。高齢労働者の尊厳がおとしめられるような処遇というのを私は容認すべきじゃないと、きちんと、どうなっているのかと、生活が安定しているのかと、この法の改正の趣旨からも、きちんと調査項目として入れるべきだと再検討を求めておきたいと思います。
続いて、精神科病院における身体拘束について、議論ありましたけれども、私からも伺いたいと思います。
精神科病院における身体拘束は、今、基準告示の見直しということが論点にも挙がってきております。辺見部長は、必要な期間を超えて行われていないことは、切迫性、非代替性の要件を満たす期間を超えて行われないという趣旨を含めて提案されたものだから、医師の裁量を拡大する趣旨ではないんだと、こういう答弁されております。
この必要な期間というのを判断するのはあくまでも医師、指定医ということになろうかと思うんですね。これでなぜ裁量が狭まると、縮小の方向に行くのかということについて、根拠を含めて御説明いただきたい。
○政府参考人(辺見聡君) 精神保健福祉法に基づく手続におきましては、身体拘束の実施等の判断を行うのは精神保健指定医でございますが、精神保健指定医の判断に当たっての基準を通じて、その判断の適正性を担保することが重要であると考えているところでございます。
令和四年度の精神科医療における行動最小化に関する調査研究においては、行動制限最小化、行動制限最小化に関する調査研究におきましては、行動制限最小化のための方策等について事例収集を行うことと併せて、有識者による総合的な検討を行い、処遇基準告示についても提言を含む形で報告書がまとめられたところでございますが、この提言は、全体として行動制限の最小化や基準の明確化を意図したものと承知しており、御指摘の一時性の要件に係ります、身体的拘束は一時的に行われるものであり、必要な期間行われていない旨についての提案についても、切迫性、非代替性の二つの要件を満たす期間を超えて行われてはならないとの趣旨で提案されたものであり、医師の拡大をするという趣旨ではないと承知をしております。
厚生労働省といたしましては、こうした提言等も参考にしつつ、当事者を含む関係者の御意見を丁寧にお伺いしながら、身体拘束を含む精神科医療における行動制限の最小化に向けて、処遇基準に関する告示改正を含めた方策について引き続き検討してまいりたいと考えております。
○倉林明子君 いや、今のは、指定医、この基準を書くことによって指定医の判断が狭まると、身体拘束をより最小化できるということにどうつながるのかというの、何ぼ聞いても分からぬのですよ。
で、精神科病院における身体拘束について、最小化を目指すと再々説明されるんだけれども、医療や介護では身体拘束ゼロなんですよね。精神科病院では最小化でよいと、これ、こうやって分けること自身が、私、非常に間違っているということを指摘したい。これは私が指摘しているだけじゃなくて、昨年の国連障害者権利委員会の総括所見で明確に指摘されているんですよね。
日本政府に対し、精神障害者の強制治療を合法化し、虐待につながる全ての法規定を廃止するとともに、精神障害者に関して、あらゆる介入を人権規範及び本条約に基づく締約国の義務に基づくものにすることを確保することを勧告、つまり、これ踏まえますと、身体拘束、これ廃止すべき旨をしっかり明記することこそ必要だと、基準告示に明記してはどうかと思います。いかがでしょう。
○国務大臣(加藤勝信君) これまでも申し上げてきているところではありますが、精神科病院の医療は患者のために行われるものであり、患者の尊厳が確保されることが何よりも重要であります。そのために、患者の権利を確保するための取組をより一層推進させていくことが重要と認識をしているところでございます。
今、部長より答弁もさせていただきましたが、精神科病院における行動制限については、検討会での報告を踏まえ、における提言を踏まえ、また社会保障審議会障害者部会における議論、そして同趣旨の提言が行われたことも踏まえて、今、身体的拘束を含む行動制限の最小化、これに関する方策について、当事者の御意見も丁寧に聞きながらその方向に向けて議論を進め、検討を進めさせていただいているところでございます。
○倉林明子君 具体的には、精神科病院における障害者の隔離、身体的及び化学的拘束、強制投薬などの強制的治療が懸念として挙げられているんですね、勧告では。勧告で求めているのは、これらを可能とする法律の廃止なんですよ。精神保健福祉法第三十六条第一項の規定はどうか。身体拘束は医療又は保護に欠くことができない範囲において行うことができるという、できる規定になっているんですよ。原則できないという規定とすべきではないでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) 入院中の患者の状況によっては、生命を保護したり重大な身体損傷を防ぐためにやむを得ず身体的拘束を要する場合があることから、必要最小限度の身体的拘束は必要と認識をしております。
そして、御指摘の精神保健福祉法第三十六条第一項の規定、これは身体的拘束を容認する、単に容認するものではなく、身体的拘束を行うことができる場合の限度を示しており、精神科病院の患者の権利擁護の確保を図る役割を併せて有するものであると認識をしております。
先ほども申し上げましたように、引き続き行動制限の最小化は重要な課題でありますので、その方策については当事者の御意見も丁寧にお伺いしながら検討を進めていきたいと考えております。
○倉林明子君 東京都松沢病院、歴史のある精神科病院です。この病院の院長だった呉秀三氏、百年前に精神障害者への医療の必要性、そして人道的処遇を説かれまして、拘束具の全廃を命じられているんですね。隔離室の使用を制限する、同時に看護職員の資質の向上に努めた、百年前ですよ、そして松沢病院の取組になっているんですね。これ、先代松沢病院長の齋藤正彦さんが著書で、前書きのところだったと思うんですけど、紹介されておりました。
百年後の、百年後のこの日本でいまだに拘束、隔離、看護師による虐待、こういうことが起こっているということは、私、愕然たる思いを持っているんです。精神科病院における身体拘束や隔離は残虐かつ非人道的、人間の品位を傷つけるものであると、こういう認識に立つべきだと、速やかな法改正を求めて、終わりたいと思います。