一律GoTo見直せ/倉林氏コロナ対策迫る/新型コロナワクチン関連法案(2020/11/20 本会議)
新型コロナウイルスワクチン接種関連法案が20日の参院本会議で審議入りしました。日本共産党の倉林明子議員が質疑に立ち、新型コロナウイルスが急速に感染拡大する中、コロナ対応やワクチンの承認についてただしました。
倉林氏は、菅義偉首相が「爆発的な感染は絶対に阻止する」としながら「Go To」事業を延長継続するのは「全く矛盾だ」と批判。全国一律を見直し、地域実態に応じた事業者への直接支援に踏み出すべきだと迫りました。菅首相は「感染対策と経済の回復の両立が基本的考え方だ」として、見直しは語りませんでした。
倉林氏は、「大規模・地域集中的なPCR検査」を政府の大方針に据え「国の責任で強力に推進すべきだ」と主張。医療機関、介護・福祉施設、保育園などの定期的な「社会的検査」の実施を求めるとともに「全額国庫負担で実施するのは今だ」と迫りましたが、菅首相は明言しませんでした。
倉林氏は、ワクチンの承認のあり方に衆院の参考人質疑で専門家から多くの懸念が示されたことをあげ、「国内での検証的臨床試験で慎重に検証すべきだ」と主張。菅首相は「総合的に確認する」と述べるだけで試験の実施にはふれませんでした。
倉林氏は、国がワクチンの情報提供を「徹底して行うべきだ」と要求。田村憲久厚生労働相は、接種は「国民自らの意思で決定する」とした上で「効果や副反応のリスクも含め、周知・広報に取り組む」と答えました。
日本共産党の倉林明子議員が20日の参院本会議で行った新型コロナウイルスワクチン接種関連法案についての代表質問の要旨は次の通りです。
総理は新型コロナウイルスの「爆発的な感染は絶対に阻止する」と発言しましたが、人の移動を促進する「Go To キャンペーン」の延長継続は全く矛盾します。全国一律のキャンペーンは見直し、地域の実態に応じた事業者への直接支援に踏み出すべきです。
感染の爆発的拡大を阻止するにはクラスター(感染者集団)対策だけでなく、無症状感染者を把握する検査が必要です。「大規模・地域集中的なPCR検査」を大方針に据え、国の責任で強力に推進すべきです。
医療機関、介護・福祉施設、保育園・幼稚園、学校、学童クラブなどクラスターが発生すれば多大な影響が出る施設には、定期的な「社会的検査」を直ちに実施すべきです。
行政検査には地方負担問題があり、地方創生臨時交付金はすでに不足しています。全額国費で行うのは今ではありませんか。
コロナ患者を受け入れていない医療機関も経営危機に直面し、冬のボーナスが払えない局面に至っています。全ての病院・診療所への早急な減収補てんを決断すべきです。
このままでは年が越せないとの悲鳴が上がっています。雇用調整助成金の特例措置の延長・拡充、持続化給付金の追加支給、家賃支援給付金の給付など、年末の期限の延長をいま決断すべきです。
予防接種の副反応による健康被害が社会問題化し、多くの集団訴訟も起こされました。健康な人に接種するワクチンは、治療薬よりも高い安全性と有効性が求められます。衆院の参考人質疑では「海外で薬事承認を得たものに日本での承認審査を経ずに承認を与える特例承認は適用すべきではない」などの懸念が示されました。コロナワクチン承認では日本で検証的臨床試験を実施すべきです。
現在開発が先行しているコロナワクチンは、ウイルスの遺伝子情報の一部を体内に接種して免疫をつくる新しい技術を活用しており、安全性や有効性、免疫の継続性などの詳細な情報は不明です。接種の安全性や有効性の担保はいつどのように確認するのか。予算執行の透明化の観点からも徹底した情報開示をすべきです。
本法案は、コロナワクチンによる健康被害への損害賠償による製造販売業者の損失を政府が補償する契約を可能としますが、契約が国会承認を得る仕組みとしないのはなぜか。
政府は、コロナワクチンは「個人の判断で接種されるもの」としていますが、国民に接種の努力義務を課す以上、「個人の判断」に丸投げしてはなりません。十分な情報に基づき自己決定できるよう、情報の開示と提供を徹底して行うべきです。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
私は、日本共産党を代表して、予防接種法及び検疫法の一部を改正する法律案について質問します。
法案の質疑に入る前に、日本学術会議への任命拒否問題について質問します。
世論調査でも、説明に納得できないという声が五割から六割に達しています。六人を任命しないことが、総合的、俯瞰的な観点にも、多様性の観点にも逆行することは明らかです。総理は、繰り返し憲法十五条一項を根拠として、任命権者として必要な判断をしたと説明されています。しかし、憲法十五条一項は、公務員の選定、罷免はあくまでも国民固有の権利と規定しているものであり、総理に任命拒否の根拠を与えたものではありません。六人の任命拒否は撤回すべきです。総理は、国民に対し、六人を任命拒否した理由を明確に説明すべきではありませんか。
新型コロナウイルスの急速な感染拡大に対し、総理は、爆発的な感染は絶対に阻止すると発言されています。ところが、人の移動を促進するGoToキャンペーンは延長、継続するというのですから、全く矛盾しているのではないでしょうか。
北海道では、知事が、札幌の感染が止められなければ全道に感染が広がるおそれがあるとして、札幌市をレベル四とし、外出自粛、市内外の往来の自粛を決めています。それでも札幌市を行き先としたGoToトラベルを継続するのでしょうか。
全国一律のGoToキャンペーンは直ちに見直し、地域の実態に応じた事業者への直接支援に踏み出すべきです。総理、お答えください。
感染の爆発的拡大を阻止するためには、クラスター対策にとどまらず、感染急増地となるリスクのあるところに対する無症状感染者を把握し、保護するための検査が必要です。大規模、地域集中的なPCR検査を政府の大方針に据えて、国の責任で強力に推進すべきです。
また、医療機関、介護福祉施設、保育園、幼稚園、学校、学童クラブなど、クラスターが発生すれば多大な影響が出てしまう施設に対しては、感染拡大を事前に防ぐための定期的な社会的検査を直ちに実施すべきです。総理、いかがですか。
行政検査については、実施すれば自治体の持ち出しとなってしまう検査の地方負担問題があります。財源の枠組みとして地方創生臨時交付金が活用できるとしていますが、臨時交付金は既に不足している自治体が圧倒的に多いのが実情です。総理、自治体が実施する検査は全額国費で行うのは今ではありませんか。
総理は、医療機関の支援のために三兆円の予算を投入したとされていますが、十分に行き渡っていないだけでなく、コロナを受け入れているところもいないところでも、経営危機に直面し、職員に対して冬のボーナスが払えない局面に至っています。かつてない感染拡大が懸念される中、医療提供体制に穴を空けるなど断じてあってはなりません。もはや様子を見て追加支援を検討するなどの余裕はありません。全ての病院、診療所に対し、早急に減収補填を総理が決断すべきです。
このままでは年が越せないとの悲鳴が上がっています。現在、日本民主青年同盟が中心となって、困窮する学生を対象に食糧支援プロジェクトが全国で取り組まれ、学生だけでなく、シングルマザーなど困窮世帯も支援を利用されています。今日食べるものにも事欠く状況を政府として放置してよいはずがありません。
雇用調整助成金の特例措置の延長、拡充、持続化給付金の追加支給、家賃支援給付金の給付など、年末の期限は延長するとの決断を今行うべきと考えます。総理、いかがですか。
予防接種法改定案について質問します。
予防接種は、ポリオや天然痘といった感染症の流行防止や感染症による死亡者数の減少に大きく役割を果たしてきた一方で、副反応による健康被害が社会問題化いたしました。古くはジフテリア予防接種禍から始まり、インフルエンザや種痘などの予防接種禍集団訴訟、MMRワクチン訴訟、HPVワクチン訴訟などの集団訴訟も提起されました。
我が国のワクチン行政を進めるに当たって、悲惨な被害の教訓を決して忘れてはなりません。ワクチンが引き起こしてきた薬害に対する総理の認識をお聞かせください。
ワクチンは健康な人に接種するものであり、治療薬よりも高い水準の安全性と有効性を有することが求められます。衆議院の参考人質疑では、自国の第三相試験を飛ばして条件付き早期承認をするのがよいのかどうなのかというのは考えなければいけない、海外で薬事承認を得たものについて、日本での承認審査を経ずに承認を与える特例承認は適用すべきではないと、承認の在り方をめぐって多くの懸念が示されました。
コロナワクチンの承認においては、日本での検証的臨床試験を実施し、安全性と有効性を慎重に検証すべきではありませんか。
現在開発が先行しているコロナワクチンは、ウイルスの遺伝子の情報の一部を体内に接種して免疫をつくるという新しい技術を活用しており、安全性や有効性、付与される免疫の継続性などの詳細な情報は現時点では不明です。にもかかわらず、政府は、九月八日にはコロナワクチン確保のために六千七百十四億円をコロナ対策予備費から使用することを閣議決定いたしました。既に、ファイザー社、アストラゼネカ社、モデルナ社とワクチン供給を前提とした基本合意や契約を締結しています。明らかになっている情報は、開発が成功した場合の供給数のみです。契約内容や契約単価などの情報は交渉中であり、合意内容を開示すると競争上の地位が著しく害されるとして、全く開示しておりません。
厚労大臣にお聞きします。国内の接種に当たって、安全性や有効性の担保はいつ、どのように確認するのでしょうか。
国民にはその判断材料が示されないまま、来年前半までに全国民に提供できる数量を確保する、こういう政治目標の下、巨額の購入手続だけが先行することになります。予算執行の透明化の観点からも、徹底した情報開示をすべきではありませんか。
本法案では、コロナワクチン使用により生じた健康被害に係る損害賠償による製造販売業者の損失を政府が補償する損失補償契約を結ぶことを可能としています。しかし、損失補償契約の締結に関し、国会承認を得る仕組みとはなっておりません。厚労大臣、なぜ国会承認を得る仕組みとしなかったのですか。
政府は、コロナワクチンの接種について、最終的には個人の判断で接種されるものとしていますが、国民に接種の努力義務を課し接種勧奨する以上、接種を個人の判断に委ねて国が判断する責任を丸投げすることがあってはなりません。接種に当たっては、国民が十分な情報に基づいて自己決定できるよう、国がコロナワクチンについての情報開示と提供を徹底して行うべきであると強く求めるものです。
厚労大臣の見解を求め、質問といたします。(拍手)
〔内閣総理大臣菅義偉君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(菅義偉君) 倉林議員にお答えをします。
日本学術会議の会員の任命についてお尋ねがありました。
今般の会員の任命については、日本学術会議は国の予算を投じる機関であり、任命された会員は公務員となることを前提に、総合的、俯瞰的な活動を確保するため、日本学術会議法に沿って、任命権者として適切に判断を行ったものであり、こうしたことをこれまでも説明してきたところであります。
他方で、会員の任命は政府の機関に所属する公務員の任命であり、通常の公務員の任命と同様に、その理由については人事に関することであることから、お答えを差し控えさせていただいており、その点は御理解をいただきたいと考えております。
また、憲法第十五条第一項については、公務員の選定は国民固有の権利と規定しており、この憲法の規定に基づき、日本学術会議法により、国民から負託を受けた内閣総理大臣が会員を任命することとされていることから、この任命に当たっては必ず推薦のとおりに任命しなきゃならないわけでないという点については、内閣法制局の了解を得た政府としての一貫した考え方であり、今回の任命も日本学術会議法に沿って行ったものである旨、これまでも答弁してきたとおりであります。
GoToキャンペーンについてお尋ねがありました。
感染拡大防止策をしっかりと講じた上で、新型コロナウイルスによるダメージを受けた旅行や飲食などを支援し、感染対策と経済の回復を両立させていくのが基本的な考え方です。事業の対象地域を含めた制度内容については、感染状況や専門家や現場の御意見も踏まえつつ、適切に運用してまいります。
なお、現状では、北海道知事も、GoToトラベルの継続を前提に感染防止策を徹底していく意向と承知をしております。
全国で、ホテル、旅館だけでなく飲食、交通、お土産屋など、約九百万人の方々が観光関連に幅広く従事しており、引き続き感染防止策を徹底した上で、GoToトラベルを適切に運用してまいります。
また、地域の実態に応じた事業者の支援については、各自治体の判断で地方創生臨時交付金を活用することも可能です。
新型コロナウイルス感染症に係る検査についてお尋ねがありました。
政府としては、従来から、感染者が多数発生している地域等においては、感染防止を図るための特定地域における大規模、集中的な検査や、医療機関や高齢者施設等で働く方々や、入院、入所者に対する一斉、定期的な検査をいずれも行政検査として公費により実施する体制としております。さらに、今般、具体的な方針を都道府県等に示しつつ、自治体において高齢者施設等に対する集中的な検査を行うこととしております。
引き続き地域の感染状況を踏まえ、都道府県等とも連携しつつ、感染拡大防止や重症化防止を図るための検査が積極的に行われるようにしてまいります。
新型コロナウイルス感染症に係る検査の費用負担についてお尋ねがありました。
行政検査の地方負担については、法律の規定により二分の一となっていますが、地方創生臨時交付金の算定対象となっており、既に配付された交付金に追加し別途交付されることになり、当該交付金を地方自治体の財源として活用することが可能であります。このことについて地方自治体にも改めてお伝えするとともに、引き続き検査体制の整備に向けて必要な支援を行ってまいります。
病院、診療所に対する減収補填についてお尋ねがありました。
医療機関においては、患者数の減少による収入の減少などが見られることから、これまで約三兆円の支援を実施するとともに、過去に例のない最大減収十二か月を上限とする無利子、無担保等の危機的対応融資を実施してきました。まずは、これらの支援が医療現場の皆様に速やかに届くよう、全力を挙げております。
雇用調整助成金の特例措置の延長などについてお尋ねがありました。
雇用調整助成金の特例措置の取扱いなど雇用を守るための施策については、雇用情勢等を踏まえ、適切に判断をしてまいります。持続化給付金と家賃支援給付金については、緊急事態宣言を経て厳しい状況にある事業者の事業の継続のための特例的な措置であり、必要な方々に行き渡るようにしてまいります。
ワクチン接種の副反応による薬害についてお尋ねがありました。
予防接種は感染症の蔓延予防に大きな役割を果たしてきた一方、副反応による健康被害は、極めてまれですが、完全に回避することは難しいというリスクもあります。このため、過去の事例も教訓としながら、安全な予防接種の実施のために不断の努力を重ねるとともに、予防接種による健康被害への救済を適切に行ってまいります。
ワクチンの承認についてお尋ねがありました。
日本人における有効性、安全性についてしっかり確認したワクチンについて承認することは当然のことであり、海外だけでなく、国内の臨床試験結果も併せて総合的に確認してまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)
〔国務大臣田村憲久君登壇、拍手〕
○国務大臣(田村憲久君) 倉林明子議員にお答え申し上げます。
国内で接種のあった、安全性や有効性の担保の方法についてお尋ねがありました。あっ、接種に当たってでございます。失礼しました。
既に基本合意や契約締結を行った新型コロナワクチンについても、国内での接種に当たっては、接種を始める前に国内における承認が必要となります。承認審査においては、治験等のデータと最新の科学的知見に基づき安全性、有効性を確認した上で承認を行っています。安全性、有効性の確認を最優先するとの前提に立った上で、ワクチンが承認に至った場合には迅速に接種を開始できるよう努めてまいります。
契約内容の開示についてお尋ねがありました。
御指摘の製薬企業は、我が国を含め他国とも契約に向けて交渉中であり、契約内容を申し上げることでより有利な条件で契約することが難しくなるおそれや、逆に、我が国への供給を交渉前から断念する企業が生ずるおそれがあるほか、交渉中の企業との間での秘密保持義務もあるため、詳細についてお答えすることは差し控えさせていただきます。
損失補償契約を締結するに当たっての手続についてお尋ねがありました。
今回の改正法案は、現に発生している新型コロナウイルス感染症に対象を限り、全国民に提供できる数量というワクチン確保の方針も示した上で御審議いただくものであることから、平成二十一年の新型インフルエンザ発生時と同様、個別の契約に当たって国会承認の手続を設けないことといたしております。
ワクチンの情報提供についてお尋ねがありました。
新型コロナワクチンの接種については、今回の改正法案において、原則として接種勧奨の実施や接種を受ける努力義務を課すこととしていますが、これらの規定により国民が必ず接種しなければならなくなるものではありません。このため、最終的にワクチン接種をするかどうかを国民自らの意思で決定していただくことになります。
こうした観点から、感染症予防の効果や副反応のリスクも含め、国民の皆様に正しい情報、知識を持っていただくことが重要であり、厚生労働省としては、国民への周知、広報にしっかりと取り組んでまいります。
以上でございます。