“核燃サイクル固執”を批判 再処理等拠出金法(本会議)
日本共産党の倉林明子議員は27日の参院本会議で、電力会社に使用済み核燃料の再処理事業費の拠出を義務付ける再処理等拠出金法案について質問し、「原発再稼働を大前提に、破綻した核燃料サイクルにしがみつくものだ」と批判しました。
政府は、2004年に12.6兆円と試算した再処理費用が今後どこまで膨らむか明確な見通しを示していません。
倉林氏は、巨額の費用負担が電気料金という形で国民に転嫁される可能性を指摘。託送料金(送配電網の利用料金)への再処理費用の上乗せはやめるよう求めました。
そのうえで、倉林氏は、高速増殖炉「もんじゅ」は運転再開の見通しがなく、使用済み核燃料を再処理・加工したMOX燃料を通常の原発で使うプルサーマル発電も計画通り進んでいないことを示し、「すでに(核燃料)サイクルは破綻している」と強調。今年3月、電気事業連合会はプルトニウムの利用計画を出すことができなかったとして、余剰プルトニウムを持たないという原則も完全に崩壊したと迫りました。
林幹雄経産相は「『もんじゅ』の管理体制の問題は、核燃料サイクルを推進する基本方針に影響を及ぼすものではない」と述べ、何の見通しもなく核燃料サイクルを続けていく姿勢を示しました。
〔倉林明子君登壇、拍手〕
○倉林明子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました法律案について質問します。
質問に先立ち、熊本、大分県を中心とした九州地方の地震で亡くなられた皆様と御遺族に対し、哀悼の意を表明するとともに、被害に遭われた全ての皆様に心からお見舞いを申し上げます。
被害の全容把握はこれからであり、避難所や屋外、車中泊、やむを得ず自宅に戻る被災者の生活改善は急務となっています。政府として、二次災害や被害の拡大防止に全力を集中すること、被災者の実態に応じた支援を求めるとともに、日本共産党も被災者支援に全力を尽くす決意を表明するものです。
今回の地震は、マグニチュード六・五規模の前震の後、それを上回るマグニチュード七・三の本震が発生したもので、気象庁は、過去にこうした例はなく、今までの経験則から外れているとの見解を示して、地震活動が今後どのようになっていくかは分からないとしています。震源域は九州を横断して拡大し、識者からは南西側の警戒も必要だと指摘されていますが、政府はどう認識していますか。
川内原発が稼働し続けていることに多くの不安の声が寄せられています。不測の事態に備えて、川内原発は直ちに停止すべきです。
規制委員会は今のところ問題はないとしていますが、過酷事故の発生を想定外として対策を取らずに引き起こしたのが福島第一原発事故でした。余震で夜も眠れず苦しむ住民、国民の不安に応えるために、少なくとも、稼働継続ありきではなく、稼働継続の是非について政府として英知を結集して真剣な検討を行うべきです。官房長官の答弁を求めます。
本法案は、電力自由化の下でも使用済燃料の再処理を着実に実施するために、原子力事業者に原発の稼働実績に応じて再処理事業費の拠出を義務付けるものとなっています。膨大な再処理費用を将来にわたり安定的に確保するためには、相当数の原発の再稼働が前提となります。どれだけの原発の稼働を前提にしているのか、経産大臣、お答えください。
さらに、この拠出金総額も示されておりません。現行法制定当時の二〇〇四年に示された試算では十二・六兆円、今回新たに拠出を求めるMOX燃料加工工場に係る費用は当時でも一・二兆円が見込まれておりました。合計十三・八兆円に上りますが、その後、原発事故を受けて作成された新規制基準に伴う新たな安全対策費は反映されていません。加えて、これまで積立金の対象外としていた使用済燃料の再処理に係る費用と合わせると、原発事業者に義務付けられる拠出金総額の見込みは一体幾らになるのか。
経産大臣は政府として試算を行っていないと答弁していますが、事実なら極めて無責任です。また、当時と大差がないとも答弁していますが、具体的な根拠を示すべきです。
しかも、誰がこの費用を負担するのかもはっきりしていません。経産大臣は、衆議院の質疑で、発電に関わる費用は電気の利用者から料金の形で回収することが一般的だと答弁し、さらに、再処理等の費用を託送料金に乗せることはないのかと問われて、明確に否定しませんでした。
再処理費用は原発固有のコストです。電力自由化の下で、原発ではなく再生可能エネルギーを使いたいという消費者の選択に応えるためには、全ての利用者に広く負担させる託送料金に上乗せすべきではありません。一体その総額が幾らになるのか、今後どれだけ増えていくのかも示さず、巨額の費用負担を国民に電気料金という形で転嫁するなど、到底容認できません。
そもそも、本法案の大前提となっている核燃料サイクルは、どこからどう見ても行き詰まっています。核燃料サイクルは原子力政策の根幹に位置付けられ、その中核となるはずの高速増殖炉「もんじゅ」は、これまでに一兆円以上を投じ、年間二百億円の維持費を掛けながらトラブルを繰り返し、ほとんど稼働せず二十年経過しました。昨年十一月、日本原子力研究開発機構は、規制委員会から、適格性に重大な懸念があるとして、新たな実施主体を示すよう最後通牒を突き付けられました。
一九九五年のナトリウム漏れ事故以来、使用済燃料を再処理、加工したMOX燃料を通常の原発で使うプルサーマル発電でプルトニウムを利用するとしてきました。しかし、青森県六ケ所村の再処理工場は、竣工予定を二十三回も延期してなお完成していません。MOX燃料加工工場も完成時期は延期され、経費は膨らむばかりで、国産のMOX燃料は一度も生産されていないのです。既にサイクルは破綻していることを認めるべきではありませんか。
それでもなお、経産大臣は、核燃料サイクルを推進する意義を廃棄物の減容化、放射能レベルの低減及び資源の有効利用としています。衆議院の質疑を通じて、再処理をすることで廃棄物量は減るどころか、日本原燃の見立てでも一年で五・三倍に増えることが明らかになりました。
さらに、通常の原発では排出しない毒性の高いクリプトン85やプルトニウムを気体、液体として放出します。また、再処理で生じるウランは全体の九四%を占め、既に七千トンに上るものの、その使い道は全く示されていません。これでも核燃料サイクルの意義があると言えるのか、明確な答弁を求めます。
政府は、プルトニウムの利用について、計画遂行に必要な量以上のプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たないとの原則を堅持し、プルトニウム利用計画の透明性の確保に努めるとしています。二〇一五年度までに十六から十八基の原発でプルトニウムを利用するという計画は実施されないまま、今年三月、電事連は今後のプルトニウムの利用計画を出すことができませんでした。
利用するとしていたプルトニウムが実際は利用されず、使うめども立っていません。利用計画もない現状で保有しているプルトニウムは、客観的に見れば余剰としか言いようがありません。日本は現在、余剰プルトニウムを保有しているという認識を持つべきです。
以上、経産大臣の答弁を求めます。
日本が保有するプルトニウムは国内外合わせて四十七・八トン、核兵器に換算すれば数千発分にも上ります。二〇一八年七月に満期となる日米原子力協定は、日本が再処理を進める土台となるものです。日米いずれかが六か月前に通告すれば破棄されることとなっていますが、日米原子力協定の延長にはアメリカ議会の承認が必要となります。日本がプルトニウムを減らす具体策を示せない下で、米側からは、再処理事業の停止や期限を示すべきだとの声が伝わっています。現状のまま再処理を進めるなら、プルトニウムが増えることは明らかです。これで協定の延長ができるとお考えか、外務大臣の見解を求めます。
本法案は、原発の再稼働を大前提に、破綻した核燃料サイクルにしがみつくものにほかなりません。東京電力福島第一原発事故から五年、再稼働反対、原発のない日本を国民の多くが望んでいます。この声に真摯に向き合い、核燃料サイクルから撤退し、再エネ最優先のエネルギー政策へ抜本的に転換することを求めて、質問といたします。(拍手)
〔国務大臣林幹雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(林幹雄君) 倉林議員より六つの質問がありました。
まず、使用済燃料の再処理費用と原発の稼働状況の関係についてお尋ねがありました。
原発については、何よりも安全性を最優先し、原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められた場合のみ、地元の理解を得つつ再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針です。政府としては個別具体的な原発の稼働見通しを有しておりませんが、原子力発電が行われ、使用済燃料が発生する以上、稼働基数にかかわらず認可法人が適切な拠出金単価を設定することになります。これにより、再処理等のために長期的に必要な資金を確保することが適当と考えております。
次に、事業費の総額についてお尋ねがありました。
拠出金の対象となる事業費の総額については、法案成立後、認可法人の運営委員会において専門家等の外部有識者にも加わっていただき精査することとしていることから、政府として予断を持ってお答えすることは適切でないと考えております。
また、事業者からの最新の報告によれば、六ケ所再処理工場における再処理事業に要する費用は、現時点で明らかになっている新規制基準への対応に必要な費用も含め、二〇〇四年の審議会の試算とほぼ変わらず、約十二・六兆円であると承知しております。
再処理費用と託送料金についてお尋ねがありました。
本法案においては、再処理等に要する費用は原子力事業者が負担することを大前提としており、託送料金による費用回収に係る新たな措置は講じておりません。その上で、原子力費用の負担の在り方については、今後、個別の内容を踏まえて検討するべきものと認識しておりますが、いずれにせよ、現時点で何らか具体的な決定をした事実はありません。
核燃料サイクルは破綻しているのではないかとのお尋ねがありました。
核燃料サイクルについては、エネルギー基本計画で閣議決定したとおり、自治体や国際社会の理解を得つつ推進する方針です。
その上で、昨年十一月に日本原燃が、六ケ所再処理工場やMOX燃料加工工場の竣工時期の変更を公表しましたが、この変更は、トラブルによるものではなく、新規制基準への対応など一層の安全性向上の観点から行われたものと認識しています。引き続き、日本原燃には、審査に厳格に対応し、六ケ所再処理工場やMOX燃料加工工場の竣工へ向けて着実に取り組むよう指導してまいります。
また、「もんじゅ」の管理体制の問題は、核燃料サイクルを推進する基本方針に影響を及ぼすものではないと考えています。
こうした直面する課題を一つ一つ解決しながら、安全確保を大前提に核燃料サイクルを推進してまいります。
核燃料サイクルの意義についてお尋ねがありました。
放射性廃棄物を安全に処分するという観点からは、極めて有害度の高い高レベル放射性廃棄物の量の減少、その有害度の低減を図ることが非常に重要であります。また、再処理工場から放出される放射性物質については、原子力規制委員会により適切に規制されております。再処理の過程で生じる回収ウランについては、将来に備えた資源として保管しております。
このように、核燃料サイクルは、高レベル放射性廃棄物の量の減少、放射能レベルの低減、資源の有効利用などに資するものであり、引き続き推進してまいります。
プルトニウムの利用についてお尋ねがありました。
我が国は、利用目的のないプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たないとの原則を堅持しています。こうした方針を遵守するため、これまでも、事業者が、この方針の下、プルサーマルや再処理等を実施するよう指導し、また、原子力委員会が事業者の策定するプルトニウム利用計画の妥当性を確認するとともに、核不拡散条約に基づいてIAEAとの協定を締結し、その厳格な監視の受入れ等を行ってきております。
さらに、今回の法案が成立すれば、経済産業大臣が再処理等事業の実施計画を認可することとなります。政府の方針に反する計画が策定されることは想像し難いですが、万が一そのような計画が策定された場合には、当然のことながら認可いたしません。
このような取組により、今後とも、利用目的のないプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たないとの原則を引き続き堅持し、プルトニウムの適切な管理と利用を行ってまいります。(拍手)
〔国務大臣菅義偉君登壇、拍手〕
○国務大臣(菅義偉君) 今後の地震活動についてお尋ねがありました。
熊本地震は、熊本県から大分県にかけて地震活動が続いておりますが、現時点の観測結果において、活動地域が更に南西側に広がっているという状況にはありません。
一般に地震活動の予測は困難でありますが、政府としては、活断層が存在しているということを念頭に、地震活動について引き続き厳重に警戒をしてまいります。
川内原発の稼働についてお尋ねがありました。
稼働中の川内原発は、今回の地震による最大の地震加速度が約十二ガルと、原発を停止する基準値八十から二百六十ガルよりも十分に低いことなどから、原子力規制委員会は専門的な議論を行った上で、現状において停止する必要はないと判断をいたしております。
原発については、安全最優先の観点で、原子力規制委員会の専門的な判断を尊重するのが基本方針であり、政府として今後とも適切に対応してまいります。(拍手)
〔国務大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
○国務大臣(岸田文雄君) 日米原子力協定についてお尋ねがありました。
日米原子力協定の当初の有効期間は三十年、すなわち二〇一八年七月十六日までですが、その後は自動的に失効するのではなく、日米いずれかが終了通告を行わない限り存続されます。
日米原子力協定については、我が国の原子力活動の基盤の一つを成すものであり、極めて重要です。政府としては、今後の協定の在り方も含め、日米原子力協力に関する様々な課題について、米国との間で緊密に連携していく考えです。
なお、我が国の保有するプルトニウムを含む全ての核物質は、IAEAの厳格な保障措置の下で平和的活動にあるとの結論を得られています。
政府としては、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を引き続き堅持し、回収と利用のバランスを十分に考慮し、プルサーマルの推進等によりプルトニウムを着実に利用するとともに、高いレベルの透明性を確保しつつ、国際社会にも明らかな形で適切な管理、利用を行っていきます。こうした我が国の方針について米国に丁寧に説明しながら連携をしてまいります。(拍手)