独占禁止法改正案 審判制度の廃止を批判(経済産業委員会 政府質疑・反対討論)
公正取引委員会の審判制度を廃止する独占禁止法改定案が6日の参院経済産業委員会で自民、公明、みんな、維新の賛成で可決されました(7日に本会議で可決・成立)。民主党は欠席し、日本共産党は反対しました。
反対討論で日本共産党の倉林明子議員は▽談合やカルテルなどを摘発し、公正なルールを企業に守らせる機能を果たしてきた審判制度の廃止は、公正取引委員会の独立性と権能を弱めることにつながる▽審判制度を廃止する必要性が明らかにされていない―などの問題点を挙げ、「審判制度の廃止は独禁法を骨抜きにするものだ」と批判しました。
質疑で倉林氏は「今回の改定は、独禁法違反をくり返してきた経団連役員企業の要求にこたえたものであり、消費者の利益を守る立場こそ求められる」と強調しました。
(委員長の異動
12月5日大久保勉君委員長解任につき、その補欠として北川イッセイ君を議院において委員
長に選任した。)
○私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案(第百八十三回国会
内閣提出、第百八十五回国会衆議院送付)
〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子でございます。
独禁法一部改正案について質問をさせていただきます。
この改正案を審議するに当たって、私、非常に公取の果たしてきた役割ということで押さえる大事な視点があるかと思っております。それは、市場の番人として企業への、経済発展の公正なルールを守るという役割を果たすと同時に、消費者にとっては本当に頼りになる存在でもあろうかというふうに思っているわけです。消費者、国民の利益をしっかり守るという役割が後退することがあってはならないという立場から質問をしたいと思います。
そこで、昨日の報道でも談合の問題が取り上げられておりました。東京電力、関西電力等が発注しております送電線工事で大規模な談合が長年繰り返されていたという報道でございます。課徴金納付命令を出す方針だということで報道されておりましたけれども、現状で説明いただける範囲で結構ですので、どういう状況になっているのか、御説明を求めたいと思います。
〇政府特別補佐人(杉本和行君) お答えさせていただきたいと思います。
委員御指摘の東京電力及び関西電力がそれぞれ発注いたします鉄塔を通じる送電事業を行っております、架空送電工事と申しておりますが、この工事、それから地中ケーブルによります送電を行います地中送電工事、これらの工事に関する独占禁止法違反被疑事件につきましては、独占禁止法の規定に基づきまして審査を行ってきたところでございます。
これらにつきましては、既に報道されておりますように、相手方事業者に対しまして、予定される排除措置命令、それから課徴金納付命令の内容等を書面で通知し、相手方事業者がそれに対し意見を述べ、又は証拠を提出することができるという、いわゆる今は事前手続の段階にあるということは事実でございます。
具体的に、相手方事業者に通知した書面の内容、今後の見通しについて申し述べることは、個別事案にかかわることでございますので差し控えさせていただきますが、公正取引委員会としては、今後、相手方事業者から提出された意見等の内容を検討した上で本件に関する判断を行っていくということになろうかと考えているところでございます。
〇倉林明子君 当然ながら厳正な対応をお願いをしておきたいと思いますが、この談合事件で発注者となっておりました東京電力に関連してですが、二〇一二年、昨年の三月に、山梨県のスーパー、消費者団体等が公正取引委員会に是正措置を求めました。電力の値上げに関連してですが、この対応の内容はどうなっていたでしょうか。
〇政府特別補佐人(杉本和行君) 委員御指摘の件は、東京電力が自由化対象需要者の間で締結している契約上、あらかじめ合意がなければ契約途中で電気料金の引上げが行うことができないにもかかわらず、平成二十四年四月一日以降に使用する電気料金の一斉の引上げを行うこととする、当該需要家のうち契約電力が五百キロワット未満の需要家に対しては、当該需要家から異議の連絡のない場合には電気料金の引上げに合意したこととみなすとした書面によりまして電気料金の引上げの要請を行っていたという件ではないかと思います。
この件につきましては、こうした事実が認められたものでございまして、この行為は独占禁止法の規定する優越的地位の濫用に該当し、独占禁止法の規定に違反する行為につながるおそれがあるといったことでございましたので、公正取引委員会といたしましては、東京電力に対しまして、自由化対象需要家向け電力取引について独占禁止法違反となるような行為を行うことのないよう、昨年六月二十二日に注意を行ったところでございます。
〇倉林明子君 この件でいいますと、大きな社会問題にもなりまして、同様のことで川口の商工会議所からも公取に対しての申告があったということでした。
私、こうした例は、東京電力等本当に大きな企業に対しても、小さな消費者あるいはスーパー、こういったところが公正なルールを守ってほしいということで訴えることができる、つまり消費者利益を確保するという観点からも公取の果たしている役割というのは本当に大きいものがあるというふうに思っているわけです。
そこで、改めて、今回の改定ですが、肝となる、独禁法の根幹でもあるこの審判制度を廃止するということが提起されているわけです。先ほど来議論ありましたように、経済界から要請があって外観上の問題を是正する必要があるということでの説明がありました。しかし、外観上の問題はさておき、実態としての機能はどう担保されていたのかと、ここの評価が非常に大事な点ではないかと思います。
そこで、二〇〇七年の六月発表されました独占禁止法基本問題懇談会報告書、これは三十回を超えるような審議を通じてまとめ上げられたもので、審判制度を設けることが適当だということが結論になっていたかと思うんです。その適当だとされた結論について、まとめて御説明をいただきたい。
〇政府特別補佐人(杉本和行君) 委員御指摘の独占禁止法基本問題懇談会、ここではお話がありましたように審議を重ねていただきまして、平成十九年六月二十六日に報告書を出していただいております。
その報告書におきましては、平成十七年改正後の独占禁止法で採用されている不服審査型審判方式は、改正前の事前審査型審判方式においては、処分の遅延や制度の趣旨に沿わない審判の生ずる誘因があり、審判件数の増加により違反行為に対する十分な抑止力の確保に支障を来すことが懸念されたこと、それから違反行為が後を絶たない中で迅速な処分、実効的な法執行が求められること、こうしたことを踏まえまして導入されたものでございまして、導入後、早期に処分がなされるとともに、審判の件数が減少していると評価ができ、一定の成果を上げていると考えられることとしております。さらに、その導入後一年余りしかたっていない段階で再度制度変更を行うことにより実務的な混乱を生じさせる可能性にも言及しております。また、不服審査型審判方式が直ちに憲法の要請する手続に反するとも言えないこと、こうしたことを理由といたしまして、当面は不服審査型審判制度を維持することが適当ということで結論付けられた報告書の内容になっていると理解しております。
〇倉林明子君 二〇〇七年の報告書のところでは適当だということで、第一次安倍内閣の官房長官の下に設置された懇談会での
結論だったというものです。当面ということで、その後、経過があります。
そこで、二十五年度の公正取引委員会実績評価書が総務省の政策評価で取りまとめられております。公取が取りまとめたものですが、二〇一二年度、平成二十四年度までのところの実績の分析を行っているわけですが、この中で、二〇〇四年から二〇一二年までの八年間のデータが出ております。この合計で、審決取消し訴訟提起件数、つまり審決が出た後に取消し訴訟を提起した、これは一体何件に、総数で結構ですので、何件になっているか。そして、そのうち取り消された審決件数は何件になっているでしょうか。
〇政府特別補佐人(杉本和行君) 御質問の平成十六年度、二〇〇四年度から平成二十四年度、二〇一二年度までの間でございますが、審決取消し訴訟は八十二件提起されております。このうち、東京高等裁判所において公正取引委員会の審決が覆された案件は一件でございまして、本件は岩手県の談合に関する関係だったと記憶しております。
〇倉林明子君 つまり、二〇〇七年のとき当面適当だという判断があって、その後、二〇一二年までのところを取りまとめた結果の中でも、この結果を見ますと、僅か八十二件のうち一件だけあったと、取り消されたということですから、極めてこの審判手続は有効に機能しているということが言えると思うんですけれども、その評価についての認識を伺いたい。
〇政府特別補佐人(杉本和行君) 審判制度につきましては、私どもも実質的証拠に基づきまして厳正にやっているところでございますので、そうした観点から、今申し上げましたように、審決取消し訴訟のうち、裁判所において、東京高等裁判所において取り消された、審決が覆されたものは極めて限られたものになっているということだと考えております。
今回の法律改正は、そうした審判制度の公正さについて問題があるから提起したということではございませんでして、外観の公正さ、先ほどから御議論になっておりますような検察官役と裁判官役を公正取引委員会が兼ねることに対する外観の公正さに対する批判に対応するものでございまして、そういった観点から、抗告訴訟を裁判所にやっていただくというものでございます。
〇倉林明子君 先ほど紹介しました公正取引委員会が取りまとめた実績評価書、この中でも有効性そして効率性についても評価がきちっとされております。つまり、改正に向けて検討してきた結果でもこの審判制度は適当である、有効であるということが言われ、さらに、その後の経過を踏まえても中身は制度としては十分機能を発揮してきたということだと思うんです。
それならば、なぜ今回この審判制度を廃止するのかということでいいますと、先ほど来御説明があるように、中身じゃなくて外観なんだということですよね。この外観の変更の要請を繰り返し行ってこられたのが、名立たる大企業が役員を務めておいでの経団連を中心とした経済界からの要請だった、これは事実間違いないと思うんです。
そこで、この経済界の役員を務めておられる方々がどういった方かといいますと、新日鉄住金、トヨタ自動車、パナソニック、住友化学、日立製作所等々、本当に、言わばこの審判制度の下で独禁法違反を繰り返し行ってきた方々からの要請だということなんですね。こういう要請を受けて、公取の機能、独禁法が目指している公正ルールの確立ということでいえば、要は、犯罪者の意見を聞いて見直すのかというようなところが今回問われている問題でもあろうかと思います。
私、やっぱり消費者利益の確保、こういった観点からしっかりその機能を果たせることこそ必要だし、公取としてはその役割発揮を引き続きしていただく必要がある、審判制度の見直しは必要ないということを申し上げまして、終わります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べください。
〇倉林明子君 私は、日本共産党を代表して、独占禁止法一部改正法案に対する反対討論を行います。
本法案は、公正取引委員会の独立性と機能の核でもある審判制度を廃止するという重大な制度変更を行うものであるにもかかわらず、委員長職権での開催に加え、参考人質疑もなく、僅か二時間の質疑で採決という委員会の運営に対し、強く抗議の意思を改めて表明するものです。
反対の理由の第一は、審判制度の廃止は、独立行政委員会としての公正取引委員会の独立性、そして権能を弱めることにつながるものだからです。
審判制度は、談合やカルテルなどを摘発し、公正なルールを企業に守らせるという機能を果たしてきました。この制度の廃止は、独自に培ってきた調査力、指導力を弱めるものであり、市場の番人としての公正取引委員会の役割を後退させることになります。
第二に、審判制度を廃止する必要性が国民の前には全く明らかにされていないからです。
政府が設置した独占禁止法基本問題懇談会の結論は、審判制度を設けることが適当であるとしています。公正取引委員会の政策評価でも、審判制度は必要かつ有効であると評価されています。にもかかわらず、なぜ審判制度の廃止なのかについて納得のいく説明ではありませんでした。
審判制度の廃止に加え、証拠に係る規定の廃止など、独占禁止法違反の名立たる大企業の要求にこたえる改正となっており、独禁法を骨抜きにするものだと指摘をしておきます。
消費者の利益を守る市場の番人としてますますその役割の発揮が求められるとき、公正取引委員会の機能を後退させることになるものだと指摘をして、討論を終わります。