負担増の声相次ぐ 2倍化法案で参考人質疑(2021/5/31 厚生労働委員会)
参院厚生労働委員会は31日、75歳以上に医療費窓口2割負担を導入する高齢者医療費2倍化法案の参考人質疑を行い、受診控えによる健康悪化を懸念する意見や負担のあり方を問う意見が参考人から相次ぎました。
意見陳述で、連合の佐保昌一総合政策推進局長は、財源確保には高所得者の保険料の引き上げや「国費による対応」も検討するよう要求。日本高齢期運動連絡会(日高連)の吉岡尚志代表委員は、後期高齢者の医療制度の1割負担を2割に引き上げる政策は審議を中止し、撤回すべきだと強調。「高齢者には受診控えが起こり、健康・病状悪化の原因となり、高齢者の負担を増やすとともに、国民の医療費や国の保健・医療への支出を増やす」と批判しました。その上で、窓口負担の軽減などで「早期発見、早期治療、保健・予防政策を進める」よう求めました。
日本共産党の倉林明子議員は、「(負担増の)暮らしへの影響をしっかり見ないといけない」と述べ、2割負担の導入で3割が「通院回数を減らす」などと答えた日高連のアンケート調査について質問しました。
吉岡氏は、残り7割の高齢者について「『病気が悪化するため(治療に)行かざるをえない』という層も含まれると思う」と答え、自己責任を迫る窓口負担増が「受療に大きなストップをかけている」と批判。公費負担増や所得に応じた保険料の引き上げで2割負担化を中止するよう求めました。
○倉林明子君 今日は、四人の参考人の皆さん、貴重な御意見、本当にありがとうございます。
日本共産党の倉林でございます。
早速、佐保参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、現役世代の負担が重くなっているというお話です。
やっぱり賃金そのものがこの間本当に横ばいという状況続いていますので、保険料率が上がるということになれば、直結して負担感はとっても強いと思うんですよね。
一方、直近の法人企業統計見ますと、企業の内部留保というのは過去最高ということになっております。労働分配率ということについて、この低下傾向についてはどのように評価されているのか、率直にお聞きしたいと思います。
○参考人(佐保昌一君) なかなか明確な回答になるかどうかは分かりませんが、この間、非正規雇用の働き方が増え、フリーランスあるいは曖昧な雇用の働き方が増えていく中で、やはり労働者としての賃金といったものは向上すべきであるというふうに考えておりますし、そういったものがないとやはり生活の安定に結び付かないといったことになりますし、安心の子供、子育てといった問題にもつながってくるのではないかと思いますし、やはり現役世代にも医療費の負担というものが重くのしかかってきているということもありますので、やはり賃金の水準の向上といったものは重要な課題ではないかなというふうに考えております。
以上です。
○倉林明子君 賃上げで私も頑張らないといけないなというふうに改めて思っているんですけれども、この分配率の乖離という状況を踏まえますと、やはり大企業、とりわけ内部留保がたまっているようなところの保険料の負担というのはどう考えるのかと。要は、どう集めるかという点での視点も大事なのではないかなということを思っているんですね。
次、遠藤参考人にお伺いしたいと思います。
雑誌のインタビューに答えておられて、これ一年半ほど前のインタビューでした。ここで、一番の問題は増加する医療費や介護費を誰がどのように負担するのかという合意形成がされていないことだと、国民的な議論が必要だというふうにおっしゃっております。あわせて、高齢者の生活への影響の検証が必要だという御意見で、私もそのとおりだと思って見させていただきました。
あれから一年半、この議論もされてきたかと思うんですけれども、どんなふうにこの点、国民的な合意形成と、あと、その高齢者の生活の影響の検証と、この二点についての評価ですね、改めてお聞きしておきたい。
○参考人(遠藤久夫君) ありがとうございます。どのインタビューかよく覚えていませんけれども、ありがとうございます。
まず、高齢者の影響への効果というのであるから、何か自己負担の問題とかそういうような話だったのかなと思うのですけれども、まず、そういう意味では、まさに効果を評価するということは必要です。ですから、今回も実は自己負担引き上げますから、これは恐らくされると思うんですけれども、その影響の調査というのはされてしかるべきだと思います。これは、介護保険でも三割負担入れたときにもそういうふうにして、附帯決議か何かになっていたはずですから、それはやるべきだというふうに思います。
それから、まさに日本の医療制度というのは非常に、先ほど言いましたように、いいんです。いいんですけれども、その費用負担をどうするかというところが少しゆがんできた。そのときの負担の在り方を合意形成をすることが極めて重要で、この間の審議会などはまさにその合意形成が、やって、なかなか結論が出づらかったという、こういうことなので、それの繰り返ししかないわけです、基本的には。という形で、負担の問題が最大の課題だろうというふうに思いますので、是非そのいろんな機会を見付けて合意形成のためのトライアルをしていく必要があるかなと、そんなふうに思います。
○倉林明子君 なかなか最後意見が分かれて、両論併記というような話になったというとこら辺が結果としての難しさというところも表していたんだろうというふうに受け止めております。
そこで、高齢者の暮らしへの影響ということは、本当にしっかり見ていかないといけないというふうに思っているんですね。
そこで、吉岡参考人に幾つかお聞きしたいと思います。
なかなか実行前の負担影響調査ということでいうとできないんだけれども、今日お持ちいただいた資料で、これ今年の四月の時点で三千二百人という大規模な調査をやられていると、そして生の声も聞かれているということ、非常に貴重なアンケートになっているというふうに見させていただきました。これ見ますと、受診控えということで、明確な回答は三割にとどまっているんですね。受診抑制の危険がまさにあるという方々だと思うんですけれども、それ以外の七割の方は今までどおり受診すると御回答になっております。負担が増えても受診継続せざるを得ない、こういう選択肢、当然だと思うんですが、これが暮らしに与える影響というところをしっかりつかむ必要があるというふうに思うんですね。六十五歳以上の高齢者の独り暮らしが増えてきているとか、生活保護世帯も高齢者のところ増えてきているとかいう現状あります。
お寄せいただいた声については、詳細、御紹介いただけませんでしたので、是非リアルなところで出ている生の声というのを追加的に御紹介いただければと思います。
○参考人(吉岡尚志君) 今御質問がありましたように、これでは七割が甘んじてというふうな形で、ある意味では誤解されるかもしれませんが、半分は今の薬をやめるわけにはいかないとか、今の治療をやめるわけにはいかないから行かざるを得ないという部分もあるというか、むしろそれの方が多いかもしれません。高齢者、複数の病気を持っている、そして掛かってもその治療をやめたり処方をやめたりというふうなことになったら、自らの病気が更に悪化すると、だから行かざるを得ないというふうな層もきっと含まれているというふうに思います。そういう意味では、もっと詳しく聞かなければいけないというふうに思いますが、それは是非行政の責任においてというか、もっと国民の声を聞いた上で、ここの審議をもっとそういう論議をやっていただきたい、調査もやっていただきたいと、このように思っています。
声についてはもうここにあるとおり、かなり受療を我慢している、治療を我慢せざるを得ないを始めとして様々な声がありますので、今ちょっと十分、読み上げても時間掛かりませんが、こういう意見があるということを是非踏まえていただければということと、さらに、これもまたごく一部であるというふうに思っていただければというふうに思っております。
○倉林明子君 吉岡参考人に引き続き質問します。
コロナが非常にやっぱり高齢者の生活、あるいは高齢世帯を支えているいわゆる現役世代のところにも大きな影響を与えているというふうに受け止めているんですが、アンケートの中にも幾らか出ているようですが、これが今回高齢者の負担を更に増やすということについて不安拡大しているんじゃないかと、実態としてもそうなるんじゃないかという懸念があります。そこら辺についてはいかがでしょうか。
○参考人(吉岡尚志君) コロナが高齢者に与える影響といいますのは、基本的には人権を極めて阻害していると、人権をじゅうりんしているというか、そういうふうなことがコロナにおいても表れているんじゃないかなというふうに思います。
死亡率が高い、高齢者が死亡の大半を占めているというのがありました。それから、今度インド株を始めとしてまた変わってくるのかもしれませんが、今までは七十五歳以上が九〇%と、死亡者のですね、というふうにも言われておりました。
それから、高齢者施設の死亡が極めて大きいというふうなことがあります。これはフランスとか諸外国でもそうでしたが、大阪においても、そのほか諸都市においても、介護者がみとりをせざるを得ないと。医療を、本来ならば医療機関がやるべきことを介護者がワクチンも打っていない状況の中でやらざるを得ないと、これ極めて大きな問題があるかというふうに思います。
高齢者も医療機関の足が遠のいているというふうなことがあって閉じこもっていますので、フレイルとかそういったことが大きな問題になっているというふうに思います。
それから、先ほどちょっと触れましたが、本来ならば国とかそういったところがきちんと当たるべき感染症の政策医療について、この間十分じゃなかったと、国の方でも手を抜いてきたというふうなことが言えるのではないかと思います。スペインやらフランス等は、緊縮財政の下でこれを、そういった部分を節約してきたがために高い罹患率というふうな代償を払わされたというふうに聞いています。日本もそうならないように、是非この政策医療、感染症への行政を主導とした医療で対応するというふうなことを望みたいというふうに思います。
そういう意味では、八〇年代ぐらいから、八〇年代、今年でちょうど四十年になりますが、臨調第一次答申、第二臨調第一次答申、あれ八一年の七月でありましたが、それ以来、自己責任というものが強調されて、極めて高い医療費及び医療に対する抑制が掛かってきたと。抑制が掛かってきたし、自己責任が追及されたというふうなことも受療に大きなストップが掛かっているんじゃないかと懸念をしています。
○倉林明子君 最後に、吉岡参考人にお聞きします。
日本高齢期運動連絡会が、二〇一九年の十二月の時点で、後期高齢者保険料の減免規定が必要だというような具体的な政策提案をされております。貴重な提案だと思いましたので、是非御紹介をいただければと思います。
○参考人(吉岡尚志君) この二百四国会常会の参考人関連資料の六十三ページにあります。後期高齢者医療制度は元々高齢者を差別する制度だというのの下の方ですが、企業、公費負担の増額と、所得に応じた保険料を増やし二割化は中止してほしいというふうなことであります。
一つは、制度の公費負担を現在の五〇%から引き上げる。定率国庫二四%を抜本的に増額すべきである。それから、現在公費負担の対象となっていない現役並み世帯についても公費負担の対象とし、公費負担率を引き上げるべきである。以下、保険料を高額所得者から能力に応じて負担してもらうというふうなこと。それから四番目には、所得割と均等割の折半ではなくて、所得に応じた保険料を増やすべきであるというふうなこと。最後に、国の社会保障財源確保を、消費税と働き方改革でなく、ここに様々な課題が書いてありますが、軍事費そのほか無駄な経費を削って、大企業や富裕層への課税強化で財源を確保するべきであるというふうな提言をしております。
○倉林明子君 いろいろ参考にしながら取り組みたいと思います。
広域連合のところについても、独自の保険料減免について触れられております。確かに、規定は持つことできるんですけれども、財源を持たないというのが、独自財源を持たないというのが広域連合の弱点で、実際には踏み出せないという状況あると思うんですね。こうした減免に踏み込めない仕組みというところも含めて、大いに参考にしたいなと思いました。
皆さんの御意見を引き続く議論の参考にさせていただいて、しっかり審議をさせていただきたいと思います。今日はありがとうございました。
以上で終わります。