生活保護扶養照会やめよ 生活困窮者支援ただす(2021/3/30 厚生労働委員会)
日本共産党の倉林明子議員は30日の参院厚生労働委員会で、コロナ禍での生活困窮者支援をめぐる対応について政府の姿勢をただしました。
倉林氏は、緊急小口資金・総合支援資金の償還免除について、償還時に住民税非課税で一括免除されたことは評価しながら、免除された額が所得となり翌年の住民税に反映されるとして、「非課税扱いとすべきだ」と主張。また、住民票を移せていないDV被害者への対応も求めました。
田村憲久厚労相は「再来年度の税制改正に向かって要望し、対応を検討したい」と答弁。厚労省の橋本泰宏社会・援護局長は「DV被害者等に配慮を行う方向で検討する」と述べました。
さらに、倉林氏は、生活保護の扶養照会について、法制度上、扶養の可否は保護の要否判定に影響を及ぼすものではないことを指摘。田村厚労相は「(扶養照会は生活保護の要否判定の)要件ではないので、申請は受け付ける」と認めました。
倉林氏は「現場では要否の決定前の扶養照会が実質的に要件として扱われており、申請できない状況を生んでいる」と指摘。「申請時の扶養照会は取りやめるべきだ。最低でも申請者の同意を条件とすべきだ」と強調しました。
また、倉林氏は「生理の貧困」についても質問。学校や公共施設に生理用品をおくよう求めました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林です。
厚労省でも、法案の関係資料の誤りにとどまらず、条文も誤りが発覚したと。これ、立法府軽視と、極めて責任は重大だと指摘をしておきたい。
さらにですよ、さらにです、老健局老健課丸ごとの深夜に至るまでの宴会、言語道断です。もう、この担当している現場、どうなっているかということを想像してほしいんですよね。介護現場では、感染リスクから利用者さんを守るために、自分が感染しないように、もう一年以上外食さえ行っていませんよ。本当にそういう人たちがどう受け止めるのかということを真摯に反省していただきたいと。国民に対する裏切りだと言われても仕方がないと思います。
深刻だと思っているのは、こんなことがなぜできたのか。つまり、官僚が正常な判断というものができなくなっているんじゃないかと思わざるを得ませんよ。一体その背景に何があるのか。調査も掛けるということです。しっかり本当の意味で再発防止につなげていきたいと、そうでないと国民の信頼得られないということで思いますので、質疑は報告を受けて改めてやりたいと思います。
今日質問したいのは、生活困窮者対策を本当に強めていく必要あるという立場からです。
緊急小口、総合支援資金が多額になったということで、これ貸付けですから、返済どうなっていくのかということを非常に心配しておりました。これに対しては、コロナ禍で収入減少にあえぐという多くの人たちに生活をつないできた、これ大きな役割を果たしてきたとは思うんですね。
今回打ち出された償還時には住民税非課税で一括免除ということで、最初の説明どおりというところでは評価できるところあると思うんですね。ただし、免除された額というのが、これ所得ということになります。翌年の住民税に反映されるということになりますから、そうなると、実態として生活困窮続いているんだけれども住民税は課税だということで、住民税非課税なら受けられるような負担軽減措置受けられないという可能性も出てまいります。
非課税の扱い、これ検討すべきだと思います。どうでしょう。
○国務大臣(田村憲久君) 今回、この貸付けに関して、それぞれの種類に応じて、資金の種類に応じてでありますけれども、そのときの住民税非課税、これは借受人と世帯主の住民税非課税を確認した上でという、世帯全体じゃなくて、そういうふうに今回特例にしたわけでありますので、それが確認できた上で一括で償還免除という形になるということでありますと、最大言われるとおり二百万円になりますので、単年度の免除額最大八十万円ということになります。その八十万ですと、これ、控除、特別控除が五十万円でありますので、それ、今基礎控除等々を引いて、もし収入があって課税が掛かれば、一番低い税率で五%掛かってくるという形になります。
そういう意味では、八十万までこれをある意味、年間の返済免除額といいますか、償還免除額、これを、まあ減らしたという言い方がいいのかどうか分かりませんが、それにしたことによって大幅に税金が掛かることはないわけでありまして、そういう意味では、一時所得として扱われるものでありますから、償還免除益は、はい、済みません、そういうことでございますので、税、税という意味ではそれほど掛からなくはなっておりますが、が、いずれにいたしましても、そういう御意見もありますので、これ来年度の、来年度、再来年度か、再来年度です、再来年度の税制改正に向かってしっかり我々としては要望をしてまいりたいというふうに対応を検討しております。
○倉林明子君 税制改正の必要性にも触れられましたので、是非検討していただきたいということは求めておきます。
これ、償還が開始された年に、要は返せるということで認定されたケースの場合ですけれども、収入減少がその年に起こったということになりますと、返済困難となる場合が考えられるんですね。これ、そういう要は一時的な収入減少が発生した場合の話です。こういう場合は償還の一括免除も必要になってくるんじゃないかと。これ、政府参考人、どうですか。
○政府参考人(橋本泰宏君) 今大臣から答弁いたしましたように、この緊急小口資金等の特例貸付けにつきましては、この資金の種類ごとに借受人と世帯主の住民税非課税を確認した上で一括免除という取扱いにするわけでございますが、この住民税非課税の判定につきましては、償還年度の前年の所得というものに基づいて行われます。償還年度において所得が減少し、住民税非課税相当となった場合には、その翌年、翌年度に残っている残債、これが一括免除になるようにということを、そういった取扱いにさせていただくということでございます。
具体的には、判定年度の次年度以降に住民税非課税となった場合には、償還が遅延している償還未済額を除きまして残債を一括で免除することとし、借受人の生活再建に配慮することといたしておりまして、そういったことによりましてその方の困窮している状況に応じた対応を行ってまいりたいと考えております。
○倉林明子君 そうなんですね。これ、多額な債務を抱えると。で、償還してもこれ所得に反映するという仕組みなので、とりわけ償還免除ということを通じて生活困窮に陥るというようなことを絶対に避けないといけないと思いますので、指摘をしておきます。
そこで、貸付けは世帯全体ではなくて借受人一人の収入減少がこれ要件、すぐ使えるようにということも含めてですね、ありました。ところが、返済は本人と世帯主も非課税ということでないと免除となりません。
これ、住民票を移せていないDV被害者等の場合、借受けはできたけれども一括返済の対象とならないというケースも想定されます。対応必要です。どうですか。
○政府参考人(橋本泰宏君) 住民税非課税の確認対象を借受人と世帯主とした。本来であれば、非課税世帯ということにつきましては世帯の構成員全員について確認すべきところですけれども、そこをあえて弾力的に取り扱っているわけでございます。
今御指摘いただきました世帯の取扱いでございますけれども、基本的には住民票上の世帯によることとしておりますけれども、貸付けにおきましては、例えばDVのために避難していることなどにより住所地と居住地が異なる場合には必ずしも住民票の住所地によらずに貸付けするなど、柔軟な対応をさせていただいております。
また、償還免除の方の取扱いでございますけれども、お尋ねのようなDV被害者等のケースに関しましては、必要な配慮を行う方向で今後整理してまいりたいと考えております。
○倉林明子君 これ、必要な配慮を、実質的にきちんと償還免除を受けられるような配慮を求めておきたいと思います。本来だったら本人のみの所得で貸したんだから、本人のみの所得で判断されるべきだということは指摘をします。
実際、この業務に当たった社協ですよね、ここが本当に多忙な中でも相談者に寄り添いながらこの支援に当たってきました。こういう現場の皆さんの声、アンケートを取られているんですね。関西社協コミュニティワーカー協会というところです。それのアンケートの結果を踏まえておっしゃっているのは、特例貸付けは迅速な資金提供によって命と生活をつなぐ役割を果たしてきたと、しかし、コロナ禍が長期化する中で貸付けには限界あると。本当、私もそう思います。新たな困窮者支援の創設が必要だし、生活保護制度の一層弾力的な運用を求めておいでです。
そこで、生活保護について伺います。再々議論もありました扶養照会の問題ですね。
厚労省のホームページで、生活保護の申請は国民の権利ですと、ためらわずに相談ください、画期的な発信がされたと受け止めております。住まいを失って手持ちが数百円となっても申請ためらうと、最大の要因が扶養照会だという調査結果も出ております。よう聞く話です。
扶養義務の履行が期待できないと判断する場合の基準については、音信不通二十年から十年などということで見直しがされましたけれども、これで問題が解消するということにつながりますか。
○政府参考人(橋本泰宏君) 今御指摘の扶養義務者の扶養ということでございますが、これが保護に優先して行われるということは生活保護法に明記された基本原理でございますので、これは維持する必要があると思います。したがいまして、扶養義務者が扶養できるかどうかということについての照会は必要と考えております。
今般行いました通知改正でございますが、今の時代あるいは実態ということに沿った形で運用できますように、扶養義務者本人に対する直接の照会は省略できる場合といたしまして、著しい関係不良の場合ということを位置付けるなどにより、運用の弾力化を図るということでございます。今御指摘の二十年から十年というふうな取扱いの変更もこの一環でございます。また、そのほか、DVや虐待等の場合には直接の照会を行わないよう、取扱いを明記することといたしました。
あわせて、扶養に関する調査の流れなどにつきましても整理して改めてお示しをして、自治体による適切な取扱いを図るようにさせていただいておりまして、引き続き、個別の事情を本人さんから丁寧に聞き取って、寄り添った対応を行うように周知徹底を図ってまいりたいと思います。
○倉林明子君 生活保護法四条二項、保護の要件とは異なるという位置付けだと思いますね。実際に扶養義務者からの金銭的扶養が行われたときに被保護者の収入として認定すると、二項は。
確認したいと思うんですね。扶養の可否は保護の要否判定に影響を及ぼすものではない、いいですね。
○政府参考人(橋本泰宏君) 保護の要件というのは生活保護法四条の第一項の方に規定されております。その一方で、扶養義務者の扶養につきましては保護に優先して行われるということで同条の第二項の方に規定されておりまして、保護の要件とは異なる位置付けとされております。
このため、扶養義務者による扶養の可否等は保護の要否の判定に影響を及ぼさないものとして取り扱うこととしておりまして、このことは、今般、自治体宛てに発出した扶養に関する事務連絡におきましても確認的に明記をさせていただいているところでございます。
○倉林明子君 つまり、扶養照会は義務じゃないというのは、ここで、保護の要否判定に扶養照会は必要ないと。大臣、どうですか。
○国務大臣(田村憲久君) 扶養が保護に優先するので扶養照会はそれはさせていただきますが、しかし、要件ではございませんので、申請はこれは受け付けるという話になります。
その上で、審査をした上で生活保護を決定するかどうかという中において扶養照会等々を行うという話でございますので、この申請は受け付けなければならないと、こういうことであります。
○倉林明子君 だから、扶養の問題というのは保護を適用するかしないかを定める要件の問題じゃないというところをきちんと確認する必要はあると思うんです。要は、要保護者の収入、要は収入、保護の要否は要否でした後に、扶養で果たしてもらえると、金銭的な援助もらえるといったら、収入で処理する問題だということを言いたいんですね。
現場では、要否決定前の扶養照会、これ実質的に要件と同様に扱われていますよ。申請できない状況、これを生んでいるという認識がありますか、大臣。
○国務大臣(田村憲久君) 申請権を侵害してはいけないわけでありまして、そういう意味では疑われる行為も駄目であります。
ですから、例えば親等扶養者に対して相談をしないと申請を受け付けないというような運用は駄目でありますので、それに関してはしっかりと事務監査等々においてこれに対しては徹底をしていかなければならないというふうに考えております。
○倉林明子君 そもそも扶養請求権というのは処分や譲渡ができない権利であって、債権者が代位行使することもできないと、そういうものです。要扶養者が特定の関係ある扶養者に扶養の請求をしたときにこの扶養請求権は初めて発生すると、判例でも明らかだと思うんですね。つまり、扶養を求めるかどうか、これは要扶養者本人の自由だということを指摘したい。必要のない扶養照会がケースワーカーとの信頼関係も壊して、自立の支援の妨げにもなっているという事例も聞いております。
申請を促してもこれは保護につながらないと。申請時の扶養照会というのをやっぱり原則やめるべきだと、最低でも申請者の同意を条件とすると、これすっきりした方が現場の混乱もないと思います。どうです。
○国務大臣(田村憲久君) 先ほど来申し上げておりますけれども、扶養は保護に優先するというのはこれ基本原理であります。それは、例えば扶養ができる能力があるのにそれを照会しないということになりますと、本人の例えば自立を阻害する可能性もありますし、また、場合によっては、これは扶養者の方がなぜ知らせてくれないんだという話にもなるわけでありまして、それは、そういう意味からいたしますと、やはりそこは照会をする。
ただし、扶養をする能力がないでありますとか、先ほどから話があるように、そもそも家族関係が壊れている、これは十年音信不通だけじゃなくて、それは一つの例で、何もなくても十年も音信がなければこれはもう家族関係が壊れているだろうという一つの判断であって、それ以外にも家族関係壊れていればこれはもう本人に照会はしないわけでありますので。
ただ、扶養照会、本人の同意がなければという話はそれは違っておりまして、扶養照会というのは扶養できる能力のある方に対してはしっかりしていくというのがこれは基本原理であります。
○倉林明子君 実際、扶養照会を掛けるということが家族関係壊すというようなことにさえつながっている事例もあるということは知るべきだと思います。
コロナ禍の今だからこそ、申請の権利を行使できるような条件整備が要るということを言いたいんですよ。行使できていないですから、扶養照会があるということで。
厚生労働省の二〇一七年調査でも、年間で四十六万件の、年間換算すれば四十六万件の扶養照会をしていると。そのうち、金銭的扶養、これにつながったのはこれ一・四%ですよ。見直しということを掛けていけば、これ実際にはケースワーカーの過重な負担の軽減にもこれつながっていくわけです。扶養照会があるから申請につながらないと、そういうことでも、してはいけないといいながら、現場では扶養照会があるから申請をためらうということになっているんです。通知を改めれば、これは法改正必要ないことですから、是非考えていただきたいと思います。扶養照会を見直すように、重ねて求めておきます。
最後にお聞きしたいのは、生理用品、今、生理の貧困ということが話題になりまして、予備費の活用の中で一定の位置付けがされたと。これ、女性支援という中身なので内閣の予算ということになりました。
しかし、これ、どれだけこの生理用品を買えない女性たちがいるのかというのが可視化されて、本当にその多さに驚きました。こうした女性支援に取り組む団体というのは、NPO法人、女性支援のNPO法人だけに限らないですよね。職業支援とか大人食堂とかやる中で、女性、生理用品のニーズが高いということも見えてきました。そういう限ったところへの支援ということだけじゃなくて、様々な支援の取組が広がっているところに対して、多様な団体があるわけですけれども、これ、是非こういう生理用品の支援したいというところに対しては広く使えるように対象も広げてしていただきたいというふうに思うのと、そういう要望上がっていますから、是非考えていただきたいということと、もう一つ、国が、厚労省としても大きな問題だと思うんですよ、国が買い上げて、ハローワークとか福祉事務所がとか、学校とか公共施設とか、広くちゃんと置いて自由に使えるようにと、直接支援の手も今打つべきじゃないかと思うんです。これ、どうでしょうか。
○国務大臣(田村憲久君) 今委員おっしゃられましたとおり、この生理の貧困という問題、今本当に社会的に問題になっておりますので、これに関しては、内閣府の下で、NPO等が行うその女性等々にいろいろと寄り添うそういうような活動をされているところに対して、これは生理用品等々をしっかり支給できるように支援をするということでありますが、今委員がおっしゃられたのは、それだけじゃなくてもっと幅広にという話でございました。
どういうふうな、事実上どういうニーズがあるのか、つまりどういうような形でその生理の貧困という、生理で困っておられるという、貧困の下でなかなか生理用品を買えない女性の方々とどのような形でアクセスできていくのかということも含めて、これはちょっと、厚生労働省はこの中においていろんな形で連携等々のお手伝いをしてくることになろうと思いますので、ちょっと情報収集してみたいというふうに思います。
同時に、学校に関しては、今もこれ保健室等々でお子さん方に対して生理用品を置いて、生理等々で生理用品がない場合には支給をしておるというようなこともやっておるというふうに我々としては認識いたしておりますので、そういうところもしっかり情報収集しながら、内閣府と共に連携をしながら、この生理の貧困問題、しっかり取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○倉林明子君 是非前向きに広げてほしいと。
学校、確かに保健室に置いていて、無料でくれるんだけれど、二枚返しねというような、二枚、一枚借りたら二枚返してねというような実態もあるんですよ。だから、学校の中の予算でやっているので、そういうこと本当に起こっているんです。是非そういう実態も踏まえて、ちゅうちょなく無料で使えるというところをつくってほしいと思いますので、よろしくお願いします。
終わります。