「残業代ゼロ」賛成なし 埼玉・川越 「働き方」法案 地方公聴会 会社社長「社員は望まない」(2018/6/13 地方公聴会)
政府・与党が「働き方改革」一括法案の早期採決をねらう中、参院厚生労働委員会は13日、埼玉県川越市で地方公聴会を行いました。残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)について経営者の公述人が「望む社員はいない」と発言するなど4人の公述人から賛成意見はなく、残業代ゼロ制度削除や徹底審議を求める意見が相次ぎました。日本共産党から倉林明子議員が質問しました。
三州製菓の斉之平(さいのひら)伸一社長は、女性社員のアイデアで商品を開発しており「女性は残業をゼロにしないと力を発揮できない」と時短の取り組みを紹介。残業代ゼロ制度は、「該当する社員もいないし、社員が望むこともまったくない」と導入の考えがないとしたうえで「過労死につながらないよう歯止めはお願いしたい」と懸念を述べました。
連合埼玉の佐藤道明事務局長は、「長時間労働を助長する高プロは削除を強く求める」と強調しました。
高木太郎弁護士は、「加藤勝信厚労相は、高プロで労働時間を労働者が決められるなどと答弁しているが、法文に規定がないのに省令で可能なのか。案文を示して審議すべきだ」と指摘しました。
倉林氏は残業代ゼロ制度の欠陥を質問。高木弁護士は「休日年104日の社内規定をつくりさえすれば、実際に休ませなくても裁判で合法と判断される危険性がある」と警鐘を鳴らしました。
産業医経験のある労働衛生コンサルタントの竹田透氏は、「長時間労働の面接で、事後措置を放置する事業主もいる」と指摘。法案で規定が強化されるものの、確実に残業が止まるものではなく、残業代ゼロ制度の残業100時間での医師面接では過労死の危険性を取り除けないことが分かりました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
今日は、四人の公述人の皆さん、貴重な御意見を本当にありがとうございました。
高木公述人にまずお伺いしたいんですけれど、高プロの危険性ということで、濫用のやり得という御指摘は、本当にそのとおりの危険がある法案になっているというふうに思っているわけです。高プロはもちろんだけれども、法案全体としても前提が崩れている以上撤回は必要だというふうに思っているんですが、改めて、やっぱり与野党を問わず共有すべきだという問題提起は本当にそのとおりだというふうに受け止めたんです。
そこで、具体的にこうしたらどうかという点での提案はできないけれどもということで、具体的にその懸念ということで五ページのところ、資料、御提供の五ページのところで、裁判を起こした場合、このままであれば判決こうなるんじゃないですかと。ここは時間が足りなかったというところもあると思うので、ちょっと補足的に共有できるように御紹介いただければなと思います。
○公述人(高木太郎君) ありがとうございます。
レジュメをもう一回皆さんちょっと見ていただいて、改めてお話をさせていただきたいと思いますが、裁判を起こした場合に今の条文のままだとどうなってしまうのかということを繰り返し述べさせていただきますと、結局、このままだと、規定さえすれば条文の要件に欠けることはありませんよと。ですから、高プロ制度有効ですよというふうな判断を裁判所がしてしまう可能性があるというふうに、私本当に思っています。
これは、実は日本労働弁護団の幹事会というのがつい最近ありまして、そこでほかの弁護士の意見も聞きましたが、それはそういう可能性あるよねと。特に、後ろの二項で実態を報告させるということがあります。措置の実施状況を報告させるということがあります。
この実施状況の報告、審議の過程見ますと、実施状況の報告もう一回しかやらないというふうなことで問題になっているかと思うんですが、実施状況をちゃんと報告させて、それをちゃんと行政的に監督しようというふうな意図だと思いますけれども、でも、この条文があることによって、実施状況報告ということは一〇〇%じゃないということ前提じゃないのというふうに言われてしまうと、もうそれが駄目押しになってしまって、先ほど申し上げたように、百四日与えていなくても、現実には、与えていなくても高プロ制度有効だというふうになってしまう危険性があると思うんですね。そうすると、やはりこの条項を、百四日実際に与えていなかったら駄目ですよと。もう最初に遡って高プロ制度の適用は認めませんよという条項を入れてもらうというのが、これが本当に不可欠だろうというふうに思っています。
この条項を入れられないのであれば、せめて省令にそれを間違いなく書き込むということをやっていただかないと、裁判を運用していく中で高プロ違反、高プロじゃないじゃないかというふうに我々闘っても全部負けていくと。高プロが丸ごとざる法になってしまうということだというふうに思います。
お答えになっていましたでしょうか。
○倉林明子君 なっていると思います。ありがとうございます。
非常に大事な観点で、実労働時間の把握を抜け落ちた働かせ方ということで、そこが本当に問題だなというふうに思っているんですね。裁量労働制のところでも、そこが本当にざるになってただ働きが横行するということを是正してから、できるということになってから考えるべきことではないかと、百歩引いても思っているということです。
そこで、斉之平公述人がいらっしゃいませんので、先に竹田公述人に伺いたいと思うんです。
その実労働時間が把握されているということは、非常に健康確保の措置をとっていく上でも重要なことではないかというふうに思っているんです。さらに、健康確保措置、違反があっても罰則がないというようなことで、要は健康確保措置の実効性をどうやって確保していくのかというところに課題があるんじゃないかというふうに思っているんですけれども、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○公述人(竹田透君) 従業員の健康管理に関しては、法があるから実施するというスタンスではなくて、大事な人的な資源を経営者の方が守っていただくというスタンスで実践していただくのを私は大事だと思っていますし、そこに我々も関わっていけるのではないかなと思っていますので、規制ありきではなく、その規制の数字に沿ってというよりは、積極的に産業保健活動を展開していくという意識が大事じゃないかなというふうに思っています。
○倉林明子君 ありがとうございます。
あとは同一労働同一賃金の問題で、先ほど来お話もありましたけれども、それを中小企業でどうやって実現していくのかということは非常に重要になるんじゃないかと思うんですね。斉之平公述人に聞いてからと思ったんですけれども、三州製菓さんのように、私、すごく頑張っておられるなと思ってお話をお聞きしていたんですけれども、パートの方を正社員に引き上げるということを実践的にやられているという、なかなかないと思うんですね。
そこで、高木公述人と佐藤公述人に伺いたいのは、圧倒的な職場、中小企業の現場でいいますと、パートあるいは有期雇用、ここには配置転換も昇任もないというのが一般的になっているんじゃないかと思うんです。その場合、非正規を固定化するということにつながるのではないかという、今回の法案でもですね、そういう懸念の指摘があるんですけれども、その点についてどうお考えかということをお聞かせいただきたいと思います。
○公述人(佐藤道明君) 実は埼玉県、先ほど公述のときに、意見陳述のときに申し上げました埼玉県の取組の中で、昨年、パート、非正規の皆さんに対する実態調査をやっているんです。併せて企業にもお聞きをしています。その中で、企業に正規社員への転換制度があるかどうかというのも聞いています。
ちょっと、今資料があるんですが、ちょっと載っているかどうかが見れないのであれですけれども、現実、そういう制度を持っている企業もあります。ただ、そういった社長さんに実はお話を聞くと、パートの皆さんに正社員になりませんかとお聞きはするんだけれども、結構断られると言っていました。要は、正社員になって責任を持つのが嫌だとかというようなこともあるようです。ですので、やはり今回の働き方改革というものを、いかに企業がこういったことも含めてうまく活用していくのかということだと私は思っています。
ですので、決して、パート、有期が限定化されるということでは全くないと思いますし、一方で、限定正社員制度ということも持っているところもありますから、ただ、そうはいっても、まだ数は少ないということだとは思っています。それと、受ける側がいろんな理由の中でそれを受けない方もいらっしゃるのも事実ということだと思います。
以上です。
○公述人(高木太郎君) 今回の同一労働同一賃金に関する法案というのが不十分であるというふうな御指摘なんだと思うんですね。それは、私もそうは思います。この間、労働契約法二十条を使った裁判というのがありまして、その中で、やっぱり、あの法律の中での最高裁なりそういうところが判断するのは手当の問題であって、賃金の完全な同一というところまでは認めてくれない、その程度のところしかいかないというところでまだとどまっているというふうなことなんだろうなというふうに思います。
私は、ただ、それをやることで固定化してしまうとまでは実は考えていなくて、一歩前進だろうなというふうには思っているんです。やっぱり日本社会ではもう格差が本当にあって、その格差を何とかしなくちゃいけないというのはだんだん共通認識になってきていると思うんですが、格差を何とかするという共通認識の下に一歩踏み出して、これで足りなければもう一歩踏み出していこうという形でやっていくという点では、まあ一歩前進だからいいかなという程度です。
済みません、ちょっと……
○倉林明子君 いえ、とんでもない。ありがとうございます。
斉之平公述人にお伺いしたいと思うんです。
アルバイトとかパートとか女性の社員の皆さんが、七五%ですか、いらっしゃるということで、様々な雇用形態で働いていただいて、それを組み合わせて働いていらっしゃる様子はよく分かったんですけれども、だからこそ、この同一労働同一賃金ということで、先ほど少し御紹介もいただいたんですけれども、御社で取り組まれている具体的な中身というのを、もう少し御紹介いただければと思うんですけれども。
○公述人(斉之平伸一君) 同一労働同一賃金は大事な問題ですから、実際には、この法律が施行された、それからガイドラインが作成された後は、更に徹底して取り組みたいと思っています。
私は、社員、従業員、パートさん全てが満足して納得して仕事いただくということが大事だと思っています。ですから、例えばパートさんによっても個々の事情が違いますし、それに合わせて、例えば一番関心が高いのは勤務する時間ですよね。ですから、午前中だけとか午後だけとか三時間だけとか、子育て中、介護の人に応じて勤務時間を柔軟にしていくということが大事だと思っています。
手当についても同じように、正社員とできるだけ均衡していかないといけないというふうに思っていて、パートだから手当がないというような状態はなくしていきたいと思っています。オランダなど聞いてみると、短時間でも正社員と同じような給料を得ているということを聞いていますから、日本もだんだんそうなっていくべきじゃないかなと思います。
そのために、私、一番大事なのは、日本で、V字型カーブという、M字型カーブといいますか、せっかく女性が大学出て会社に入っても、子育て、出産と同時に辞めてしまうと、キャリアが断絶して、また就職するときにパート社員と、パートでないと就職できないと。今まで大学で勉強して社員として活躍していたのに、単純的な、定型的な仕事しか就けないというのは、非常に日本にとってもったいないし、その女性の潜在的な能力を生かすということができないということは、社会にとっても問題がありますし、女性にとってもせっかくその能力があって力があるのにそれを発揮できないというのは残念だと思います。
ですから、そういう問題が解決できれば、短い時間でも正社員と同じだけの給与を企業も支払うことができるし、女性も、短いけれど正社員、短時間正社員ですね、として勤務できると、そういう社会を目指して是非、いろいろなこれは制度化とか、あと支援策も必要になってくると思います。子育て中の女性に対する支援策、キャリアが子育てで断絶していながらでも、その職業的な能力を維持したり勉強したりするようなサポートも必要だと思いますから、それは是非、国の方で支援していただけたら有り難いと思います。
○倉林明子君 全体的に働き方が支援できるようなほかの策もという御意見だったと思います。ありがとうございました。
終わります。