国際水準のジェンダー平等を セクハラ被害深刻(2025/6/18 本会議)
(議事録は後日更新いたします)
日本共産党の倉林明子議員は18日の参院本会議で、政府の政策評価報告に対し、国際的な水準でジェンダー平等を大きく前進させるよう強く求めました。
女性の賃金は非正規雇用を含め男性の56%にすぎず、働く女性の半数以上は非正規雇用です。倉林氏は、有期雇用契約の場合、労働者は雇い止めの不安を抱えハラスメント被害の相談にもちゅうちょするなど権利を奪われていると指摘し、「恒常的な業務を有期雇用にして待遇を低く抑え、雇用の調整弁とする働かせ方は早急に是正すべきだ」と主張。間接差別の対象範囲を拡大し、賃金を含むあらゆる間接差別の禁止にふみだすよう要求しました。
福岡資麿厚生労働相は、間接差別の対象拡大を「必要に応じて検討する」としましたが、他の要求には後ろ向きな答弁に終始しました。
倉林氏は、セクハラ被害の深刻さに言及し、現在の防止措置義務中心の法整備では不十分だと強調。仕事上のハラスメントを禁止する国際基準「国際労働機関(ILO)第190号条約」の速やかな批准と、包括的なハラスメント禁止法の創設を求めました。
さらに、国連女性差別撤廃条約の実効性を高めるために個人通報制度などを規定した「選択議定書」を早期に批准すべきだと主張。女性差別撤廃委員会は日本政府に選択的夫婦別姓制度導入に向けた法改正を4回も勧告しているとして、速やかな導入を求めました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
会派を代表して、ただいまの報告に対して質問します。
参議院の行政監視機能の強化に向けて、昨年、ジェンダー主流化の必要性を提案しました。しかし、公表された二〇二五年ジェンダーギャップ指数は、昨年と同様、百十八位と先進国で最下位であり、世界から大きく遅れたままとなっています。
男女雇用機会均等法は、一九七九年に採択された女性差別撤廃条約批准に向けて制定されました。女性たちは職場における女性の地位向上と差別禁止を求めましたが、労働基準法の改悪により、男性並みの働き方との平等とされ、女性の残業や夜間・休日労働を規制緩和する保護抜き平等となったのです。均等法制定から四十年、雇用におけるジェンダー平等は進んだと言えるのでしょうか。
女性の賃金は、正規雇用でも男性の七八%、非正規雇用を含めると五六%と、いまだ大きな男女賃金格差が存在します。現在も働く女性の半数以上が非正規雇用です。とりわけ有期雇用契約は、契約の更新時期が近づくたびに雇い止めの不安に駆られ、体調を崩し、上司にも意見も言えず、ハラスメント被害の相談さえもちゅうちょするなど、労働者としての権利が奪われています。
恒常的な業務を有期雇用とすることで、待遇を低く抑え、雇用の調整弁とする働かせ方を早急に是正すべきではありませんか。
働く女性の半数以上が低賃金で不安定な非正規雇用で働いている実態そのものが間接差別にほかなりません。間接差別の対象範囲を拡大し、賃金を含め、あらゆる間接差別の禁止に踏み出すべきです。
国連女性差別撤廃委員会の勧告を踏まえ、雇用の分野におけるジェンダー不平等の根底にある、女性の無償労働を前提とした男性の長時間労働といった男女の固定的役割分担に基づく企業主導の働かせ方を是正する必要があると考えますが、いかがですか。
ハラスメントの被害もいまだ深刻です。
均等法にセクハラの防止措置義務が導入されて十八年が経過します。しかし、いまだに多くの女性がセクハラ被害に苦しんでいます。救済制度も金銭解決のみ、額も低額です。被害者が求めているのは、被害の認定、謝罪、再発防止、職場で名誉を回復し、安心して働き続ける保障です。現在の防止措置義務を中心とした法整備では、被害者の声に応えられないことは明らかです。
ハラスメントに関する国際基準であるILO第百九十号条約の速やかな批准、ハラスメントを包括的に禁止する法整備の創設を求めます。
以上、厚労大臣の答弁を求めます。
日本が女性差別撤廃条約を批准して四十年。日本の女性差別、ジェンダー平等の遅れは依然として深刻です。選択議定書の批准を求める地方議会の意見書は、今年五月現在、三百七十二議会に上っています。条約を全面実施し、実効あるものにするために、調査制度と個人通報制度を定めた選択議定書を早期に批准すべきです。
政府は一九九九年の議定書採択直後に研究会を設置したものの、あれから四半世紀、いまだに結論が出されていません。女性差別撤廃委員会から、検討に時間を掛け過ぎているとして、速やかな批准をするよう繰り返し勧告されています。
外務大臣、一体いつまで検討を続けるのですか。批准できない理由を明確にお答えください。
選択的夫婦別姓の国会請願が初めて提出されてから五十年、法制審の建議から約三十年、事実上たなざらしにされ続けてきました。
初めての国会審議の中で明らかになったのは、同姓を強いる現行制度がもたらす理不尽さです。姓名は個人が生きてきた人生の象徴であり、改姓の強制は、人格権の大事な一部、アイデンティティー喪失の問題であり、積み上げたキャリアの喪失にもつながるものです。個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とは言えない現状は早急に解消すべきです。
女性差別撤廃委員会は、二十年以上前から四度の勧告を続けています。昨年の総括所見では、これまでの勧告に対しいかなる措置もとられていないと厳しく批判し、来年十月までに民法改正の進捗報告を求めています。これ以上の選択的夫婦別姓制度の先送りは許されません。速やかな導入を求めるものです。法務大臣の答弁を求めます。
締約国には、条約を遵守し、勧告を実施する国際的責任があります。条約実施に向けて、総括所見を生かし、国際的な水準でジェンダー平等を大きく前進させることを強く求めます。官房長官の答弁を求めます。
決定された骨太方針二〇二五の副題は、「「今日より明日はよくなる」と実感できる社会へ」としています。あしたの見通しどころか崩壊の危機が迫っているのが、地域医療、介護の現場です。
自民、公明、維新の会は、病床十一万床を二七年度までに削減すると合意しました。既に、病床数適正化支援事業の活用を希望する病床数は五万床を超えています。病床が減れば、地域で働く医師、看護師の体制後退も避けられません。
コロナ禍で医療崩壊は現実のものとなりました。二年間で十一万床もの病床を削減して、どうやってパンデミックから国民の命を守れるのか。明確な答弁を求めます。
多くの患者が必要な医療を受けられず、施設や在宅に放置され亡くなったことなどなかったかのような病床削減は、到底容認できません。コロナ禍でどれだけの人がなぜ入院できず死亡したのか、まず国として検証すべきではありませんか。
ある日突然病院がなくなる、この警告が現実味を帯びています。急激な病院の経営悪化、閉院、倒産が相次いでいます。看護師の離職が止まらず、病棟閉鎖や、救急医療の受入れ停止や廃止などが広がっています。
骨太方針は、ケア労働者の処遇改善について二五年度末までに検討するとしていますが、余りにも遅過ぎます。医療崩壊を止め、医療従事者の賃上げを図るため、緊急に国費を投入し、診療報酬の基本の部分を引き上げるべきではありませんか。
介護現場も人手不足が深刻化し、介護事業所の撤退、倒産が続出、介護事業所ゼロの自治体も生まれています。介護職は一般労働者との賃金格差が拡大し、人材流出、介護基盤の崩壊が加速しています。介護関係者の私たちを見捨てないでほしいという叫びに正面から答えるべきです。
引き下げた訪問介護の基本報酬を直ちに元に戻し、期中改定を行い、介護報酬を底上げする、介護事業所の経営支援を直ちに行うべきです。あわせて、介護の事業が消滅、消失の危機にある自治体に対し、国費で財政支援を行う仕組みが必要です。いかがですか。
介護崩壊を止めるため、介護職の賃金を直ちに全産業並みに引き上げるべきです。
以上、厚労大臣の答弁を求めます。
国際労働機関であるILOは、二〇〇九年の総会で、人間らしい労働、ディーセントワークの核心はジェンダー平等であると位置付け、労働者の賃金や権利、社会保護などのあらゆる労働問題はジェンダー平等を促進する方向で解決すべきだとしています。ジェンダー平等が遅れた日本で、政府の責任で今踏み出すべきは、女性労働者が多くを占めるケア労働者の大幅な賃上げであること、その実現のために日本共産党は全力を挙げる決意を述べて、質問といたします。(拍手)
〔国務大臣福岡資麿君登壇、拍手〕
○国務大臣(福岡資麿君) 倉林明子議員の御質問にお答えいたします。
有期雇用についてお尋ねがありました。
正社員、正職員の方とそれ以外の方との間の雇用形態間の賃金格差については、近年、縮小傾向にあるものの、依然として課題はあると認識をしております。
その上で、合理的な理由がない有期労働契約の締結を禁止することについては、公労使の三者による議論の結果、導入すべきとの結論には至らず、現行の無期転換ルールが定められていることから、引き続き同ルールが適切に運用されるように取り組んでまいります。また、パートタイム・有期雇用労働法に基づく同一労働同一賃金の遵守の徹底を通じて、非正規雇用労働者の待遇改善を進めてまいります。
間接差別の対象範囲の拡大についてお尋ねがありました。
男女雇用機会均等法では、性別以外の事由を要件とする措置のうち、厚生労働省令で定めるものであって、一方の性の労働者に相当程度の不利益を与えるものを合理的な理由がないときに講ずることを間接差別として禁止しています。間接差別は、性別要件のような直接差別とは異なり、どのような要件でも間接差別に該当し得る広がりのある概念であるため、行政指導等を行う上では対象となる間接差別の範囲を明確化する必要があることから、このように省令に列挙しています。
更なる対象の追加については、間接差別として違法となる範囲についての社会的合意の形成状況等も踏まえつつ、必要に応じて検討してまいります。
男女の固定的な差別役割分担意識に基づく働き方についてお尋ねがありました。
我が国には、依然として、男性が仕事をしつつ、家事、育児に取り組むことが当然とは受け止められにくい職場風土があり、その是正に向けては、固定的な性別役割分担意識を解消しつつ、男女とも希望に応じて仕事と家事や育児等を両立できるようにしていくことが重要です。
このため、男女雇用機会均等法の遵守徹底や女性活躍推進法による取組を推進するとともに、育児・介護休業法等において、男女共に希望に応じて仕事と育児、介護を両立できる職場環境の整備に取り組んできました。また、今国会においては、更なる女性活躍の推進に向け、女性活躍推進法が改正されました。
引き続き、男女共に希望に応じて仕事と家庭生活を両立し、その個性や能力を生かして活躍できる社会の実現に向けて取組を進めてまいります。
ILO第百九十号条約の批准等についてお尋ねがありました。
職場におけるハラスメントに関しては、これまで、労働者を保護する観点から、その未然防止のための措置を講ずることを事業主の義務として男女雇用機会均等法等の複数の法律に規定してきました。こうした中で、ハラスメント自体を包括的な規定で禁止することについては、現行の法体系との整合性などについて課題があると考えています。
今国会で成立した改正労働施策総合推進法等では、職場におけるハラスメント対策の更なる強化を図ることとしており、御指摘のILO第百九十号条約の締結に向けた環境整備にも資するものと考えています。同条約の締結に関しては、引き続き、国内法制との整合性を確保する観点から、関係省庁と連携して検討を進めてまいります。
病床削減と新型コロナの検証についてお尋ねがありました。
医療提供体制については、質の高い効率的な体制を確保するため、地域医療構想による医療機関の役割分担、連携や、患者数の減少等を踏まえた病床数の適正化等を進めています。
今後の病床の適正化に当たっては、自由民主党、公明党、日本維新の会による合意を踏まえ、感染症に対応する病床等の医療体制への影響や医療機関の意向等にも留意しながら、地域の実情を踏まえた調査等を進めてまいります。
また、新興感染症の発生に備えた体制については、在宅で亡くなる事例を含め有識者会議で新型コロナの検証が行われたところであり、これも踏まえ、令和四年に感染症法を改正した上で体制整備を進めており、引き続き、平時から都道府県と医療機関で協定を締結するなど、必要な取組を進めてまいります。
医療従事者の賃上げについてお尋ねがありました。
医療分野における賃上げの実現は重要な課題と認識しており、これまで、令和六年度報酬改定で一定の措置を講じた上で、令和六年度補正予算においても緊急的な支援を実施したところです。
御指摘のような全額国費による診療報酬の引上げは財源の確保などの課題があると認識しており、まずは補正予算による支援を全国へ速やかに行き届かせるよう対応するとともに、その効果や足下の情勢変化、現場の御意見も丁寧に把握した上で、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、次期報酬改定も含め必要な対応を検討してまいります。
訪問介護事業所等や自治体への支援及び介護職の賃上げについてお尋ねがありました。
訪問介護については、人手不足や燃料代等の高騰など厳しい状況にあり、報酬改定以降も処遇改善加算の取得要件の弾力化や、先般の補正予算等による物価高騰・賃上げに対応する支援、訪問介護事業所向けの各種支援などを講じており、政府としては、自治体への支援を含めて、こうした対応、対策を進めることで対応してまいります。
その上で、介護分野につきましては、骨太の方針二〇二五に基づき、施策の効果を把握しつつ、他産業の賃上げの動向や昨今の物価上昇による影響等を踏まえながら、経営の安定や現場で働く幅広い職種の方々の賃上げに確実につながるよう、報酬改定や予算措置を組み合わせて必要な対応を行ってまいります。
〔国務大臣岩屋毅君登壇、拍手〕
○国務大臣(岩屋毅君) 倉林明子議員にお答えいたします。
女子差別撤廃条約選択議定書の批准についてお尋ねがありました。
女子差別撤廃条約選択議定書で規定されている個人通報制度は、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度であると考えております。一方で、一方で、同制度の受入れに当たりましては、様々な検討課題があると認識しております。
引き続き、政府として早期締結について真剣に検討してまいります。同時に、政府として、女性差別の完全撤廃と男女共同参画社会の確立を目指した様々な取組を進めていく所存です。
続きまして、女子差別撤廃条約選択議定書の検討状況についてのお尋ねがありました。
同選択議定書に基づく個人通報制度の受入れに当たりましては、例えば委員会から国内の確定判決とは異なる内容の見解や通報者に対する損害賠償や補償を要請する見解、あるいは法改正を求める見解などが出された場合に、我が国の司法制度や立法政策との関係でどのように対応すべきか、その実施体制も含めて検討すべき論点が様々あると認識しております。
そのため、その締結の見通しについてお答えすることは困難ですが、引き続き、政府として、早期締結について真剣に検討してまいります。
〔国務大臣鈴木馨祐君登壇、拍手〕
○国務大臣(鈴木馨祐君) 倉林明子議員にお答えを申し上げます。
選択的夫婦別氏制度についてお尋ねがございました。
夫婦の氏の在り方については、現在でも国民の間に様々な御意見があり、また、今国会においても三つの法案が提出をされるなど、各党、各議員の間でも様々な考え方があるものと承知をしております。
政府といたしましては、家族の形態や国民意識の変化、家族の一体感や子供への影響など様々な点を考慮の上、今般の衆議院法務委員会における御審議も含め、国会において建設的な議論が行われ、より幅広い国民の理解が形成されることが重要であると考えております。
法務省といたしましては、国民の間はもちろん、国民の代表者である国会議員の間でもしっかりと御議論いただくため、引き続き、積極的に情報提供を行ってまいりたいと考えております。
〔国務大臣林芳正君登壇、拍手〕
○国務大臣(林芳正君) 倉林明子議員にお答えをいたします。
ジェンダー平等の前進についてお尋ねがありました。
我が国の女子差別撤廃条約の実施状況に関して女子差別撤廃委員会から示された最終見解につきましては、その内容を関係省庁において十分検討した上で、必要に応じ適切に対応してまいります。
また、女性活躍、男女共同参画の推進は重要な課題であると認識しておりまして、男女共同参画基本計画や、先日決定いたしました女性版骨太の方針二〇二五に基づき、政府を挙げて取組をしっかりと進めてまいります。