社会保障削減へ圧力 子育て政策財源批判(2024/5/28 内閣委員会・厚生労働委員会連合審査会)
(議事録は後日更新いたします)
日本共産党の倉林明子議員は28日の参院内閣・厚生労働連合審査会で、子ども・子育て支援法改定案について、子育て支援財源確保を口実にした新たな負担増や社会保障削減の加速は許されないと追及しました。
倉林氏は、医療保険料に上乗せして徴収する子育て支援金が「子育てを終えた家庭や子育てのない世帯にとって給付なき負担増となる」と追及。加藤鮎子こども政策担当相が「国民に新しく拠出をいただくことは事実だ」と答えたのに対し、倉林氏は「負担はないとの政府の説明は破綻している」と批判しました。
政府は子育て政策の財源確保として2028年度までに徹底的な「歳出改革」を行うとしています。倉林氏は、期限を区切る「歳出改革」は社会保障削減へ圧力をかけることになると指摘。「介護保険制度改革」でもくろまれるケアプランの利用者負担や2割負担の対象拡大、要介護1、2の生活援助サービスの総合事業への移行などは「介護保険崩壊につながるもので、これまで何度も先送りされてきた。強行するなど国民の理解は得られない」と批判しました。
倉林氏は、医療でも3割負担の対象拡大や高額療養費制度の見直し、病床削減の推進など負担増・給付減が目白押しだと指摘し、政府が称する「能力に応じて全世代が支えあう全世代型社会保障」は「社会の分断を生んでいる」と追及。武見敬三厚労相が「真逆だ」と答えたのに対し、倉林氏は「能力に応じた負担というのなら金融資産家の優遇税制の見直し、大企業の内部留保の活用こそ検討すべきだ」と指摘しました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
総理は、子ども・子育て支援金について、歳出改革により保険料負担の軽減効果を生じさせ、事業主拠出分も含めて実質的な負担は生じさせない、これ繰り返し答弁されているんですね。しかし、これ、実質的な負担を生じさせないという話はマクロの話なんですよ。
一人一人の国民の実態から見ればどうかと。負担増となるケースが出てくるだけじゃないんですね。子育てを終えた家庭、子育てのない世帯、こういう世帯にとっては給付なき負担増となる、明らかだと思います。いかがですか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
支援金制度は、今般の加速化プランによる給付拡充を支える財源の一つとして全世代、全経済主体が子ども・子育て世帯を支える仕組みであり、高齢者や子供のいない方も含め拠出をお願いすることとしてございます。
こうした支援金制度の構築による給付拡充の対象ではない方にとっても、少子化傾向を反転させることは、我が国の経済社会システムや地域社会を維持することですとか、国民皆保険制度の持続可能性を高めるものという点で重要な意味を持つものであり、御理解をいただきたいと考えております。
その上で、国民の皆様に新しく拠出をいただくこと、これは事実でございますが、支援金の拠出に当たりましては、支援金を所得に応じたものとしつつ、低所得者の方に対しては負担軽減措置を講じ、そのための公費も投入することによって負担能力に応じた拠出となるような仕組みとするとともに、歳出改革を基本に、支援金の導入に見合った社会保険料の負担軽減を行うことで全体として実質的な負担とはならない枠組みとしてございます。
○倉林明子君 負担は生じないというんだけど、今おっしゃったように、拠出をお願いすることになるわけですよ。給付がない負担ということが新たに生じることが間違いないんですね。だから、要は実質的な負担はないということだけのフレーズで国民を欺くような説明というのはもう既に破綻していると、ここ認めるべきですよ。
大体、物価高で苦しんでいるんですね、今国民は。そこに対して、子育てを口実にして新たな負担増、断固認められないと申し上げておきたい。
そこで、社会保障の歳出改革で財源確保だとされているわけで、その合計で見ると二・一兆円になるんですね。これ、歳出改革が工程どおりに進まないという場合は十分に想定されるわけですが、支援金の不足が生じることになります。その場合、どういう選択肢があるか。一つに、子育て支援策を縮小するか、二つ、支援金を増やすか、三つ、特例債の発行を継続するか、これいずれかだと思うんですけれども、明確な答弁を求めたい。
○政府参考人(熊木正人君) 歳出改革で二・一兆円というのを、歳出改革の下での公費節減の下で増やしていく一・一兆円と支援金の一兆円の合計というふうに承りました。
現在、御審議いただいている法案におきましては、それを含めまして総額三・六兆円程度の加速化プラン、その財源につきましては法の附則に以下のように明記をしてございます。歳出改革等による公費節減、既定予算の最大限の活用等、そして支援金、これで賄うということ、それから、歳出改革の範囲内で支援金を構築し、その金額は令和十年度において一兆円程度であること、これら、法案の附則第四十七条第二項でございます。
歳出改革の具体的な内容につきましては、こうした法案の、法律の規定にのっとりまして、昨年末に閣議決定された改革工程に基づきまして、毎年度の予算編成過程において検討されていくものでございますが、歳出改革につきましては、今申し上げましたように、法律、法案、そして閣議決定した、そういう意味でお約束しているものでございますので、私どもといたしまして、この歳出改革が進まないという事態を想定しているものではございません。
法案が成立すれば、法律の規定にのっとり、歳出改革を着実にかつ丁寧に実行してまいりたいというふうに思います。
○倉林明子君 何ぼ閣議決定したからいうて、できていないこと山ほどありますよ。その上で、増税しないというふうに明言しているので、選択肢としてはいずれかしかないということになると思うんですね。
私は、この歳出改革ありきということで、二〇二八年という期限を区切って社会保障費削減の圧力ということに、圧力掛けることになりかねないというふうに思っているんです。
そこで、介護保険制度改革で二〇二七年までに結果を出すものとしてたくさん項目挙がっているんだけれども、一つ、ケアマネジメントの利用者負担、二つ、二割負担の範囲の対象拡大、そして三つ目に、要介護一、二の生活援助サービスの総合事業への移行と、これ盛り込まれております。
二〇二八年までに介護保険制度改革全体でどれだけの財源を確保しようとしているのか、参考人、お願いします。
○政府参考人(間隆一郎君) お答えいたします。
介護保険制度に関しまして、ただいま委員御指摘になられたような二〇二八年に向けて行う歳出改革の具体的内容については、昨年末に閣議決定した改革工程において今後の取組としてお示しをしております。その詳細については二八年度までの各年度の予算編成過程において検討、決定していくこととしており、実施する施策の影響額を現時点でお答えすることは難しいということでございます。
ただ、いずれにしましても、これらの取組を検討、実施するに当たっては、必要な保障が欠けることのないよう、見直しによって生じる影響を考慮しながら丁寧に検討していかねばならないというふうに考えているところでございます。
○倉林明子君 積み上げた上でその二・一兆円が出てくる話なんですよ。だから、きちっと、そういう意味で、どこをどう削減して、積み上げての二・一兆円かという説明には本当なっていないんですよ。
今紹介した部分は、二〇二七年までに結果を出すということはやるということなんですね。このメニューというのは、介護崩壊につながるようなメニューなんですね。そして、何度も期限を区切って実施、検討が求められてきたものの、ずっと先送りしてきたメニューでもあるんですよ。これ、強行するなどということは到底国民の理解得られないと申し上げておきたい。
それでは、医療はどうかということですけれども、メニュー見ますと、三割負担の範囲の拡大、高額療養費制度の見直し、病床削減の推進にとどまらず、国保の、国民健康保険の都道府県保険料水準の統一、こういうメニュー並んでいまして、更なる負担増そして給付削減、めじろ押しになっているわけです。
二〇二八年までに歳出削減進めるということとですよ、約九百万人、労働者の一四%、医療・福祉従事者の賃上げ、これもやるとおっしゃっているんだけれども、どう両立させようとお考えか、武見大臣、お願いします。
○国務大臣(武見敬三君) この令和五年度、それから六年度予算の編成については、令和六年度診療報酬、薬価改定において、現場で働く幅広い方々の賃上げなどのために必要な水準の改定率を確保しつつ、市場実勢価格などを踏まえた薬価改定を行うなどの取組を行うことによりまして、子供関連予算について公費で〇・三七兆円確保するとともに、こうした歳出改革と賃上げにより社会保険負担軽減効果を〇・三三兆円確保したところであります。これを、委員御指摘、二〇二八年度まで継続をいたしますと、公費で約一・一兆円の確保、保険料負担で約一・〇兆円の軽減となります。
今後とも、この賃上げに必要性等を踏まえた必要な施策を講じつつ、昨年末に閣議決定した改革工程にのっとって二〇二八年度までに公費節減効果と実質的な社会保険負担軽減効果を積み上げてまいりたいと思います。
○倉林明子君 今般の報酬改定で賃上げを織り込んだと、見込んだというものの、全体での改定率というのは本当に微々たるもので、物価高騰に対抗できないという悲鳴が上がっております。
今年度でも実質的な賃上げというのは確保できておりません。総理の今年度の賃上げの約束さえも果たされていないわけですよ。現場の労働者に更なる処遇の低下、これをもたらすことにつながりかねないと、これも指摘をしておきます。
その上で、子ども・子育て支援金は保険料ということになります。医療保険料に上乗せする仕組みを取るわけで、将来的に滞納制裁が持ち込まれることはないだろうかと懸念があります。保険料滞納によって保育、育児支援が打ち切られるなどのペナルティーが導入される、これは絶対あってはならないことだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
児童手当などの支援金を充てる給付は、児童手当法などそれぞれの法律に定められた支給要件に従って支給されるものでございまして、支援金の滞納を理由にこれらの給付を不支給にするということはしておりませんし、今後もその予定はございません。
○倉林明子君 予定はないとおっしゃるけれども、これ自身が保険の仕組みを使うということになるわけですよね。
今、医療保険、介護保険、様々にペナルティー措置が設けられて、保険料は払っているけれども実際の給付受けられないということが大きく問題にもなっているわけですよね。今、そうはならないとおっしゃるんだけれども、それを担保するものは一体何ですか。
○政府参考人(熊木正人君) 担保措置というのは法律ということになろうかと思います。
給付につきましては、介護保険は介護保険法、医療保険は医療保険の各法に基づいており、今回の子ども・子育て支援金については、支援金は医療保険の各法に基づいての賦課徴収を行いますが、給付については児童手当などの法律に基づくというものでございます。
この児童手当法におきまして、等におきましてこの給付を不支給にするという法律構成は今回取っておりませんし、そうしたものは、子供保険というものをつくったわけではございませんで、児童手当法はそのままでございますので、そうしたものからしますと、今後そうしたことが導入されるということは想定していないということでございます。
○倉林明子君 現時点では想定していないということは確認できました。
保険原則でやっていくということになりますと、そういうことも含めてきちんとした禁止措置ということが必要だということを申し上げたいし、そもそも、育児給付を含まない、医療保険料に上乗せ徴収をすると、これ自体が禁じ手だということを申し上げたい。
そこで、全世代型社会保障と称して、給付は高齢者中心だと、負担は現役世代中心となっている社会保障の構造を見直すと。こういう考え方が社会の分断を生んでいると、既に生んでいると私は思うんだけれども、そういう認識は、武見大臣、おありでしょうか。
○国務大臣(武見敬三君) むしろ私どもの考え方は全く真逆で、そういう世代の分断を起こさせないということを考えて、こうした応能負担の在り方とか全世代社会保障という考え方を打ち出させていただいているわけであります。
こうした考え方を踏まえて昨年末にこの改革工程表を作って閣議決定をして、そして実際に取組を検討、実施するに当たっては、全世代社会保障の理念に基づいて、世代間の対立に陥ることなく、むしろそれぞれの人生のステージにおいて必要な保障がバランスよく提供されるよう、見直しによって生じる影響をしっかり考慮しながら、丁寧にこれ検討していこうというふうに思っております。
○倉林明子君 丁寧に国民の実態、声をお聞きになった方がよろしいと申し上げたい。
能力に応じた負担ということで全世代型という考え方が持ち込まれてまいりました。しかし、能力に応じた負担というのであれば、金融資産家の優遇税制、これ放ってあるわけですよ。見直し掛かっていない。それに、コロナがあっても物価高があっても大企業の内部留保というのは増え続けているわけですよね。こういうところにこそ活用、財源の負担ということを正面から求めるべきだ。
終わります。