「労働者」基準見直せ フリーランス実態追及(2023/4/13 厚生労働委員会)
(資料があります)
日本共産党の倉林明子議員は13日の参院厚生労働委員会で、フリーランスの置かれた不利な就労実態をとりあげ、労働基準法上本来保護されるべき「労働者」が「個人事業主」とされてはならないと迫りました。
倉林氏は、労働基準監督署の窓口では、契約形式が請負契約であれば労基法の「労働者」にあたらないと申告が門前払いされ、受理されても是正指導はほとんどない実態があると指摘。「労働者性にかかわる申告受理や調査の在り方を改善すべきだ」と強調しました。
厚労省の鈴木英二郎労働基準局長は「できていない部分があれば訂正して、労働者性があれば労基法を適用し、違反があれば是正することを徹底する」と答弁。倉林氏は「改善して実際の現場が変わるところまでつなげてもらいたい」と強く求めました。
また、労基法の「労働者」の判断基準は38年間変わっておらず、テレワークの拡大など「労働実態に合わせた見直しが必要だ」と追及。加藤勝信厚労相は「現行の判断基準の枠組みが適切かどうか不断に確認していきたい」と答弁しました。
倉林氏は、アメリカでは労働者性の判断についての立証責任を使用者側に求める仕組みが広がっており、判断基準を早急に見直した上で、立証責任を使用者側に転換するよう求めました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
いわゆるフリーランス保護法が内閣に付託ということになって、衆議院の方では可決という動きになっております。私、この厚生労働委員会でこそフリーランスの問題というのはしっかり質疑されるべきだというふうに思っておりまして、改めてフリーランスについて質問したいと思います。
令和二年の十一月から始まったフリーランス・トラブル一一〇番ということで実施されております実績を資料で入れておきましたけれども、相談件数というところで見ますと、令和四年八月は六百四十二件、これ前年同月で比べると倍増しております。
業種で一番、こういう相談増えているんだけれども、その中身について確認したいと思います。業種、これ一番多いのは何か。相談内容、どんなもの、主なものは何か。フリーランスガイドラインというものを策定されていまして、この関係性での相談内容、主なもの、いずれも上位二つで結構ですので紹介いただきたいのと、全体にどういう、占める割合はどうなっているか。
○政府参考人(村山誠君) お答え申し上げます。
御指摘のフリーランス・トラブル一一〇番は、フリーランスの方が発注者等との取引上のトラブルについて弁護士へワンストップで相談できる窓口として設置されたものでございます。
これまでの相談実績についてお尋ねですが、相談が多い業種につきましては、最も多いのが配送関係一五・六%、二番目がシステム開発ウェブ作成関係となってございます。
次に、主な相談内容についてでございますが、報酬の不払ですとか支払遅延といった報酬の支払に関するものが三二・九%と最も多く、次いで、契約条件が不明確、契約書が作成されていないといった契約内容に関するものが一六・八%となっております。
さらに、お尋ねの、令和三年三月に作成されたフリーランスガイドラインにおいて、独禁法、下請代金法上問題となる代表的な行為類型十二との関係でございますが、寄せられた相談内容をこれら十二の類型に沿って整理いたしますと、報酬の支払遅延に関するものが三六・二%、報酬の減額に関するものが二四%となっており、これらに対応するために先ほど委員御指摘の法案を提出し、現在国会で御審議を賜っているところでございます。
以上でございます。
○倉林明子君 すごいやっぱり相談増えている。フリーランスのトラブルが可視化されて、今後更に増大するという懸念もあると思っているんですね。
これ、二〇二四年四月一日からは、自動車運転業務における時間外労働、これ年間九百六十時間とする上限規制の適用が始まる、いわゆる二〇二四年問題ということになっておりますけれども、物流業界では、大手が労働者を保護するというために荷物の総量規制に踏み切るというところが出ておりまして、今コロナで物すごい増えているわけですね、配送量が。そうすると、どこにそのあふれた分は行くかというと、個人事業主のドライバー、ここが担う荷物量が圧倒的に増えているんですね。過重な労働実態、深刻になっているという事態です。
本来、労働基準法における労働者であるにもかかわらず個人事業主とされるようなことはあってはならないと思いますけれども、大臣、どうですか。
○国務大臣(加藤勝信君) 労働基準法の適用については、業務委託や請負等の契約の名称にかかわらず、実態を勘案して総合的に判断をしているところでございます。それについては委員の出していただいた資料の方にも付いておりますけれども、労働基準監督署において労働基準関係法令違反がある旨の申告があった場合に、相談者の方から丁寧に話を聞くなどにより事実確認を行い労働者性の判断を行っているということでございますので、労働者性のある、あるいは労働者であれば、これは労働基準法の適用を受けるということになるわけでございます。
○倉林明子君 答弁、国会での答弁はそれで固定して安定しているんですけれども、現場実態どうなっているかということなんですね。
形式的に請負契約でも実質的に発注者の指揮命令を受けて仕事をしていると、こういう実態があれば労基法上の労働者判断されるということになるんだけれど、労基署の窓口では、契約形式が請負ということであればもう門前払い、その傾向は一層強くなっているというんですね。申告が受理されたとしても、是正指導、まれに申告受け取ってくれたとしても、是正指導まで行くという事例はほとんどないというわけですよ。
そこで、労働者性に関わる申告受理の在り方、実態調査の在り方、答弁どおりに改善すべきじゃないかと思います。どうですか。
○政府参考人(鈴木英二郎君) 大臣がお答えしましたとおり、監督署におきましては、フリーランスを含めまして労働者性に疑義がある方から労働基準関係法令違反がある旨の申告がなされた場合には、丁寧に話を聞くなど事実関係を行いまして労働者性の有無を判断しているところでございまして、また、最近はフリーランスの話も出てきておりますんで、都道府県労働局を通じましてこうした対応を徹底するよう指示してきておりまして、引き続き、申告受理の対応や監督指導の際の調査を含めまして、監督署におけます労働者性の判断が的確に行われるよう取り組んでまいりたいと考えてございます。
○倉林明子君 全然徹底されていませんよ、徹底しているということをおっしゃるけれど。現場では、申告しても契約形式ではじかれるというのが当たり前みたいになっているんですよ。現場確認ね、ちゃんとしてほしいなと思うんですね。徹底されていないということをつかめていないということが深刻だと私は思いますね。
現場では、実態は労働者だという、この判断基準に沿って見ればね、なんだけれども、二〇一八年以降どんなことが起こっているかというと、報酬形態を時給制から年俸制に変えるとか、業務委託契約書に代替も可能とか、そういう文言が入るということでこの労働者性の判断を逃れるような、判断基準逃れるような契約変更が広がっているというんですよ。つかんでいますか。
○政府参考人(鈴木英二郎君) 個別の案件等についてはお答え差し控えさせていただきますけれども、そういった点も踏まえ、含めまして、実態が労働者であるかどうかを的確に判断して、申告受理、それから監督指導を行っていると承知してございます。
○倉林明子君 いや、実態がそうなっていないということを繰り返し言っているわけでね。実態というのは、労基署での対応が申告もはじくし指導にもつながっていないと、こういう状況については、全然認識違うんだから、つかむと、そういう実態つかむということをまずやるべきだと思うんだけれども、いかがですか。
○政府参考人(鈴木英二郎君) 御指摘の点も踏まえまして、徹底していない点については再度徹底したいと思います。
○倉林明子君 きっちり徹底できていないし、どうやって、今の現状で徹底されていないのでね、その徹底の担保はどういう形でやりますか。
○政府参考人(鈴木英二郎君) 監督署の実態については地方の監察等でもいろいろと把握しているところでございまして、こういった実態の把握、それから指示の再徹底という形でやってまいりたいと考えてございます。
○倉林明子君 いや、改めて現場の労働相談等から上がっている現場の実態なんですよ。
今おっしゃるように、周知徹底していると、更に徹底するというんやったら、現場が変わるというところにつながらないと改善につながらないから言っているんですよ。労働者性の判断は基準に沿ってされるんだ、それについては申告があれば受理して是正指導までするんだ、できてないから言っているんですよ。どないしはりますか。
○政府参考人(鈴木英二郎君) 繰り返しになりますけれども、私どもとしては、もし仮にできていない部分がありましたらそこは訂正いたしまして、労働者性があれば労働基準法は適用になるし、それについての違反があれば是正をするということを徹底してまいりたいと思っております。
○倉林明子君 しっかり労働者性があるにもかかわらず申告が契約形式だけではじかれるという実態もしっかり持ってきますので、そういうことを踏まえて、実際の申告受理、改善まで、指導まで、改善指導までつなげると、現場で変えるというところまでつなげていただきたいということは強く申し上げたい。
労基法上の労働者かどうかという判断基準、先ほど大臣から紹介もしていただきましたけれども、資料の二番目、二枚目に付けています。これ、労働組合法上の労働者の判断とは明らかに違うんですね。保護の対象になるというのが労働基準法の労働者性の定義ということになっているわけです。これ、労働組合法上の定義の見直しというのはされているんだけれども、実は、労働基準法上の定義というのは、一九八五年、昭和六十年に示されて以来、三十八年間見直しはされていないんです。この間、テレワークとかプラットフォームビジネス、世界的にもこれ拡大しておりますけれども、時間、場所の拘束性が低いという働き方が増えているんですね。
労働実態に合わせた判断基準の見直しが必要だと考えますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤勝信君) まず、労働基準法は、使用者に対し立場が弱い労働者から、劣悪な環境で働くことがないよう、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者を保護すべきとし、保護すべき労働者と定義し、使用者が遵守しなければならない労働条件の最低基準を定め、罰則をもって担保すると、こういう構造になっています。
労働者への該当性を明確にする観点から、これまでの裁判例等を基にした具体的な判断基準を定め、労働者として保護されるべきか否かについて、実態、先ほど委員がおっしゃっておりましたけれども、実態を勘案して総合的に判断をしているところでございます。
こうした中身について、今委員からお話がありました労働基準法研究会の報告書で示された判断基準の枠組み、これを使って、先般も、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン、これを令和三年三月付けで各労働局にも周知をし、その内容を図ったところでございます。
委員お話がありましたテレワークということであれば、これは働く場所でありますから、それが直ちに労働者性の云々につながっていくのかということもあるんではないかと思いますが、引き続き、今申し上げたガイドラインにより周知を図るとともに、ガイドラインの運用状況、あるいは裁判例等の動向、さらには労働者の働き方の変化、こうした状況を注視しながら、現行の判断基準の枠組みが適切なものになっているか否か、不断に確認はしていきたいと考えております。
○倉林明子君 いや、見直し要ると思うんですね。
二〇〇六年のILOの雇用関係勧告では、労働者保護を保証するために関係法規の定期的な検討、これを求めています。曖昧な雇用関係で働く人に対しても労働者の保護はできるだけ広く掛けると、こういう国際基準、考え方に私は逆行していると思うんですね。
アメリカ等でも、使用者側に、労働者でないというのであれば、その立証責任を具体的にテストで証明するように求めていくと。スマホのアプリで利用者と個人請負労働者をつなぐプラットフォームビジネス、これ拡大しておりまして、そういうところでは立証責任は使用者側にと、労働者でないという場合ね、そういう流れになっているということです。
労働者性の判断を私は早急に見直した上で法定化すると、そして、その立証責任は、アメリカ等で進んでいるように使用者側に転換する、これ求められると思います。いかがでしょう。
○国務大臣(加藤勝信君) まず、労働基準法においては、労働者性に疑義がある方からの労働基準関係法令違反がある旨の申告に基づいて、労働基準監督署から事業主等にも事実確認を行い、労働者性の有無を実態に即して判断をしているわけでありますので、労働者側において事実関係の説明や証明を尽くさなければならないということにはなっていないわけであります。
一方で、多分委員のお話は、民事上の挙証責任ということであれば、これは原則として原告が負うものとされていると承知をしております。こうした民事上の立証責任に関し、御指摘のABCテストのように、労働者でないことの立証責任を発注事業者側に転換する措置を講ずるには、例えば立証責任が果たされない場合には、いわゆるフリーランスとして働く者を労働者とみなすといった措置を講ずることになりますが、このように労働契約によらず働いているかどうか不明な者について、労働者であると機械的に推定することの是非、その要件、これ、各国においても今でも議論があると承知をしているところでございます。
御指摘のような立証責任の転換の措置を講じ、これが果たされない場合に機械的に労働者と判断すること、これは発注事業者に対する負担となり、また、今フリーランスとして働いている方々の就業機会、これに、減少につながるおそれもあると、こういった課題もある、こういった課題もあるというふうに承知をしているところでございます。
○倉林明子君 それは、事業者にとってはそうだろうと思いますよ。働く方にとってどういうことが起こっているかと。誤った分類でフリーランス増える、こういうことになると、結局、低賃金で保護がないんですよ、労働者としてのね。政府にとっては、逆に、本来得られる税収についてだって減収になるんですよ。社会保険料の収入の減収にもなるんですよ。
私ね、労働者の権利擁護、これは経済の好循環の土台にもなるということは最後指摘して、引き続きやらせていただきたい。
終わります。