労働基本権保障こそ 倉林議員 公務員制約ただす(2022/3/4 議院運営委員会)
参院議院運営委員会は4日、政府提示の国会同意人事案のうち、伊藤かつら人事官候補から所信を聴取し、日本共産党の倉林明子議員が質問しました。
倉林氏は、女性が働き続けられる対策について質問。伊藤氏は「なんといってもテレワークだ」などと答弁。倉林氏は、内閣府調査では、テレワークで女性が働きやすくなる可能性がある一方、「家事が増える」などの回答が女性には多く、コロナ前後で家事・育児時間に大きな変化がなかったと指摘しました。
さらに倉林氏は、公務員の労働基本権などの制約は、日本も批准する国際労働機関(ILO)第87号条約(結社の自由及び団結権保護)と98号条約(団結権及び団体交渉権)に違反し、ILOから再三勧告されていると指摘。「早急な回復が必要だと考えるがどうか」と質問しました。伊藤氏は、ILOから累次の勧告が行われているのは認識しているとしつつ、「現状はILO原則に反しないというのが政府の立場だ」と答えました。
○倉林明子君 日本共産党の倉林でございます。今日はありがとうございます。
まずは、女性の人事官候補ということで歓迎したいなと思っております。川本総裁に続いて、三人のうち二人が女性を占めると。これだけ女性比率が高い職場はないんじゃないかというふうに思っております。
一つ、日本のジェンダーギャップ指数というものを大きく引き下げているというのは政治経済の分野だと言われておりまして、帝国データバンクの調査結果も出ていたんですけれども、女性管理職の割合というのは八・九%だと。そもそも管理職、女性の管理職がゼロという企業が四五%あるということなんですよね、企業も低いと。国家公務員の指定職で見ると、先ほどもありましたけれども、指定職、目標も八パー、現状でも五パー程度と、これ非常に低いと言わざるを得ないと思うんですね。
こういった低い現状というのは、何でこんなに低いままなのか。これ引き上げていくということは目標にも掲げているんだけれども、目標も実態も高めていくためにはどうしていったらいいのかというところで、是非御所見を伺っておきたいと思います。
○参考人(伊藤かつら君) ジェンダーギャップを埋めるために、これは日本全体、もちろん官だけではなく民も非常に大きな課題であり、オポチュニティーだというふうに理解しております。
そのときに、よく女性だけを集めて、皆さん頑張りましょうとか、上を目指しましょうといった研修会が行われることがよくあります。私も三十代から常にそういう場に身を置いてきました。ただ、それだけでは済まず、先ほども申し上げましたが、上司の理解、幹部の理解、今までとは違う価値観で人を評価するということ、女性が働きやすい環境をつくるということ、出産、育児などでキャリアが一時中断されたとしてもまた現場に復帰して活躍いただけるような下地をつくること、こういったことが大変重要でございます。
ですので、このジェンダーギャップを埋めていくためには、実は管理職である男性自身のトレーニング、意識改革といったことが非常に重要でございますし、逆に、そこをできる方というのがより評価されるという仕組みが重要ではないかと思っています。ですから、女性の職場での活躍にコミットしている男性の方がより上に行っていただくというような、それも一つの評価指標、民間では既に取り入れられておりますので、そういう評価指標があってもいいんではないかなと思っています。
私自身も、先ほど三十代からいろいろな場にとも言いましたが、やはり様々なキャリアステージを進んでいく中で、特に四十代になってから、産業を超えて、会社を超えて、様々な女性管理職の皆様と御一緒する機会をいただきました。そのつながりは十五年以上たった今でも続いておりまして、様々なポジションに進むか進まないか、チャレンジがあったときなど、お互いに助け合っております。
国家公務員も、民間とのそういった交流がある、あるいは府省を超えた取組というのもあってもいいのではないかなと考えております。
○倉林明子君 男性上司の意識改革ということが非常に重要な課題だと私も思っております。
その上で、女性が働き続ける環境をどうつくっていくのかと。キャリア評価の問題もありますけれども、環境整備ということでいいまして、効果的な対策、どういうふうにお考えでしょうか。
○参考人(伊藤かつら君) まず、何といっても、これは男性、女性を問わないのですが、テレワークだと考えます。
テレワークの推進は、首都圏で平均二時間と言われる通勤による時間的、肉体的負担の軽減、時間の効率的な利用、仕事と家庭生活の両立の支援などの観点から、男女問わず、労働環境として大変に効果的というふうに感じております。
私自身の経験でも、育児中の方が、これ男性、女性問いませんが、テレワークあるいはフレックス勤務などを活躍して仕事との両立を図っておられるということを実際に拝見しております。また、ある企業では働き方改革を通じて女性の離職率が四〇%減ったというようなデータも拝見しておりますので、働きやすい労働環境は女性の活躍に直結すると考えております。
○倉林明子君 女性の働きやすさをどう改善していくかと、テレワークの紹介がありました。確かにそういう側面あるんです。通勤時間の短縮って大きいと思うんです。
一方で、内閣府がコロナの影響調査というのを掛けていまして、これ、テレワークによって女性が働きやすくなる可能性の一方で、家事が増えるとか自分の時間が減ることがストレスという回答が女性で有意に高いと、こういう結果も出ているんですね。同調査では、コロナ前後で実は女性の家事、育児時間に大きな変化がないと、こういう如実な結果も出ておりまして、家庭での意識変革ということも併せてやっていかないとなかなか進まない課題だと、うなずいていただいていますので、共有していただけたのではないかと思います。
最後の質問になるかと思うんですが、政府が批准しておりますILO八十七号条約、そして九十八号条約について、ILOからは度重なる条約違反であるという趣旨の勧告がされております。
労働基本権、団結権、団体交渉権、争議権、本来これは公務員にも保障されるべきだと、これは早期かつ完全な回復がやっぱり必要だし目指すべきだというふうに考えているのですが、どうかという点と、これ、人事院が果たすべき労働基本権制約の代償機能はどうあるべきかと、候補者の所見を伺っておきたいと思います。
○参考人(伊藤かつら君) 国家公務員の労働基本権問題に関し、ILOの結社の自由委員会から累次の勧告が行われていることは認識しております。
ILOは、国の行政に従事する公務員には労働基本権の制約を認めつつ、これらの公務員に対する適切な代償手続の保障を求めているものと理解いたします。日本政府は、非現業国家公務員はILOのいう国の行政に従事する公務員に該当するため、現況はILOの原則に反しないという立場と伺っております。ILOに日本の現況について丁寧に説明していくということも重要かと存じます。
また、労働基本権の方ですが、労働基本権が制約された国家公務員の勤務条件について、人事院が、労使当事者以外の第三者の立場に立ち、民間準拠を基本に、労使双方の意見を十分に聞きながら国会及び内閣に対する勧告等を行っている。このために、人事院の立場は非常に重要だというふうに理解しております。
○倉林明子君 人事院は、中央人事についての準司法的権限ということも併せ持って、公務員の中立公正、公平を確保する役割を担っているというものだと思います。国会でも様々な議論がありましたけれども、政府から独立し、中立の立場で職務の遂行、これを強く求めておきたいと思います。
働き方改革についても言及がありました。長時間労働の是正ということを正面に据えた改革への取組にも是非期待したいと思います。
以上で終わります。