東電・国は責任果たせ 原発賠償打ち切り方針を批判(経済産業委員会)
2015/09/03
倉林明子議員は9月3日の参院経済産業委員会で、東京電力福島原発事故による損害賠償を避難指示解除と一体に打ち切ろうとしている問題を取り上げ、東電を批判するとともに国は責任を果たせと主張しました。
9月5日に避難指示が解除されるのは福島県楢葉(ならは)町。全住民避難の自治体(町)の中では初めての措置となります。
倉林議員は、町の放射線量は比較的低いものの、除染廃棄物の仮置き場が田畑を中心に23カ所点在するなど、「住民が安心して戻れる環境にはなっていない」と指摘。よほどのことがない限り追加の賠償はしないという東電の方針を批判し、「事故を起こした東電と事故を防げなかった国には被害の実態に応じ賠償する責任がある」と強調しました。
倉林議員はまた、「福島第二原発の廃炉は福島の再生に欠かせない」と要求しました。しかし、宮沢洋一経産相は「国が経営者に(廃炉を)いうことはできない」と、東電の株主利益を優先するこれまでの答弁を繰り返しました。
倉林議員は「株主にも事故の責任が問われるのは当然だ。被害者保護より株主優先の法治国家でよいはずはない」と批判しました。
経済、産業、貿易及び公正取引等に関する調査
(日本経済の現状と今後の対応に関する件)
(電気設備の安全確保に関する件)
(再生可能エネルギー導入拡大に係る課題に関する件)
(電気事業における地球温暖化対策に関する件)
(東京電力福島第一原子力発電所事故に係る被災者支援及び廃炉・汚染水対策に関する件)
(五輪エンブレムをめぐる知的財産権に対する対応の在り方に関する件)
(原子力政策の在り方に関する件)
(消費者契約法及び特定商取引法の見直しに係る規律の在り方に関する件)
(中小企業の海外展開支援に関する件)
〇委員長(吉川沙織君) 経済、産業、貿易及び公正取引等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
福島原発事故から四年半になろうとしております。あさって九月五日、全住民が避難という事態に及びました自治体の中で、楢葉町が初めて全町避難指示解除と決定されております。そもそもこの避難指示解除の要件というのは何だったのか、確認をさせてください。
〇政府参考人(田中繁広君) お答え申し上げます。
楢葉町は避難指示解除準備区域に当たります。こういった場合の避難指示解除の条件でございますが、平成二十三年十二月二十六日の原災本部で決定されました、新たな避難指示区域に関する基本的考え方と今後の課題に対する対応方針におきまして、三条件が掲げられております。
具体的には、第一に、空間線量率で推定された年間積算線量が二十ミリシーベルト以下となることが確実であること。第二に、電気、ガス、上下水道、主要交通網、通信など日常生活に必須なインフラや医療、介護、郵便など生活関連サービスがおおむね復旧すること、子供の生活環境を中心とする除染作業が十分に進捗していること。第三に、県、市町村、住民との十分な協議。この三つでございます。
〇倉林明子君 楢葉町ではこの要件を満たしたということで、町の方からも要望もあって解除ということになったというふうには理解をしております。
しかし、この楢葉町がどういう町だったかということですよね。震災前、人口八千人という規模でありまして、兼業農家が多いと。米が中心で、特産のユズがあって、サケが捕れる南限にも位置していると。木戸川というところで捕れたそうであります。数世代が同居している家族というのが非常に多かったという特徴がありました。これがあの原発事故で豊かな町の資源が奪われて、家族はばらばらという状況になっております。
地域のきずなが崩壊するという事態で、まさにふるさとそのものが壊されたという実態だったわけです。その後の避難生活も長期化の中で、災害関連死が今年三月末までで百十二人という数に町でなっております。避難による家族の分断、孤立ということで、精神的にも追い詰められるし、健康状態も悪化するという町民が少なくないという現状は御承知だと思うんですね。
楢葉町は、確かに二十ミリシーベルト以下ということで、空間線量は比較的低いというのは私もよく存じ上げております。しかし、除染廃棄物の仮置場、これが、米を中心に暮らしてきた町の田畑にたくさん仮置場があるという状況になっております。今全体で町内二十三か所にあるということで承知をしておりますけれども、この管理状況はどうなっているかということです。
帰還を決めたことを広報する町の広報紙にこの管理状況についても記載されております。放射能を含む浸出水が観測された仮置場は何か所あるか、その放射能濃度はどうだったか、廃棄物の放射能濃度はキロ当たり最大何ベクレルになっているか、お答えください。
〇政府参考人(早水輝好君) 御指摘の点でございますが、手元にあります楢葉町の広報八月号にデータが掲載されておりますが、環境省がこれは六月に行った定期的な巡回点検の際に測定したものでありまして、浸出水でございますが、二十四か所の仮置場のうち三か所で検出されておりまして、これは水道水の基準値を下回るレベルですが、一リットル当たり一・二から一・五ベクレルの値が検出されております。なお、これ、浸出水が仮置場の外や地下へ漏出することを防止する構造としております。
それから、除染廃棄物でありますが、同じ今申し上げた三か所の仮置場において保管されている除去土壌の放射性濃度でございますが、一センチメートル空間線量率からの換算値として、一キログラム当たり平均値で四千七百から一万二千ベクレル、最大値で十一万から三十二万ベクレルとなっております。
なお、仮置場はこれらの放射能レベルを遮蔽するような措置を講じておりまして、これらの仮置場の空間線量率は、入口付近で六月に計測した値で、毎時〇・一二から〇・一九マイクロシーベルトでございました。
以上でございます。
〇倉林明子君 安全なレベルで管理しているということを、今の説明だと思うんだけれども、安心とは別物だと思うんですね。まして、祖先から譲り受けた田畑のところに汚染物質が置いてあるのを見るとがっくりくるというわけですよ。それは本当にそのとおりだと思うんですね。
現状では、医療機関の開設も間に合っておりませんし、介護や商店、雇用、インフラ整備が完成しているとは言えない状況でございます。田んぼにも廃棄物が置かれているというようなこうした楢葉の今の現状を目の当たりにして、住民が安心して戻れる環境になっていないというのも実態だと、私、行ってきて実際に見てまいりましたけれども、そう思います。
あさってにも避難指示を解除するということになるわけですけれども、失われた地域の財産、住民の暮らし、これ元に戻るというふうに大臣はお考えでしょうか。どうですか。
〇国務大臣(宮沢洋一君) 楢葉町につきましては、町や町議会とも協議して、延べ二十回にわたる住民懇談会や戸別訪問などを通じて、避難指示解除の意義などを丁寧に説明してまいりました。また、この間、住民懇談会などの場でいただいた御意見も踏まえて、精神的損害賠償の追加、自立支援施策の拡充、住宅の解体、リフォームの支援など、帰還に向けた環境の整備や楢葉町の復興に向けた施策を強化してまいりました。
当然のことながら、避難指示解除というものは復興に向けた新たなスタートでございます。避難指示解除後も様々な事情によって避難生活を継続せざるを得ない住民の方がいらっしゃることも承知しております。
国としましては、一人でも多くの方が一日でも早くふるさとへ戻れるよう、引き続き復興に向けて全力で取り組んでまいりたいと考えております。
〇倉林明子君 元には戻らないんですよね。
問題は、こうした状況の下で避難指示の解除と一体に賠償の打切りが提案されているということ、私これ大問題だと思っているわけです。
営業損害賠償については、私も何度か取り上げて質問もさせていただいてきた経過があります。改めて今回提示された中身ということについてなんですけれども、避難指示等対象区域内の損害賠償については、今年三月以降の将来にわたり一括で賠償すると。区域外については、今年八月一日、この時点で直近一年間の逸失利益の二倍相当額で一括賠償と。さらに、精神的損害については、居住制限区域、避難指示解除準備区域について、これも一律二〇一八年の三月で終わり。これ、基本的な方針だというふうに受け止めておりますが、間違いないでしょうか。
〇政府参考人(田中繁広君) お答え申し上げます。
東京電力の営業損害、風評被害の賠償につきましては、六月十二日に閣議決定をいたしました改訂福島復興指針を踏まえまして、東京電力は、商工業等の将来にわたる営業損害、風評被害の賠償については、避難指示区域内は減収率一〇〇%の年間逸失利益の二倍相当額を、避難指示区域外は直近の年間逸失利益の二倍相当額を払い、その後は相当因果関係のある損害に対して個別の事情を踏まえた賠償を行うこととしております。
また、避難指示解除準備区域及び居住制限区域の精神的損害賠償につきましては、改訂福島復興指針を踏まえまして、早期に避難指示を解除した場合におきましても、避難指示解除の時期にかかわらず、事故から六年後に相当期間の一年を加えました平成三十年三月、すなわち二〇一八年三月分までを支払うこととしております。
〇倉林明子君 つまり、原則その時期で終わりということでよろしいですか。
〇政府参考人(田中繁広君) 繰り返しになりますけれども、その後は相当因果関係のある損害に対して個別の事情を踏まえた賠償を行うと、そういうことになっております。
〇倉林明子君 つまり、今おっしゃったように、よっぽどのことがない限りは追加の補償はないということで、現地では、これは打切りだということで受け止め広がっているんです。打切りなんだとはっきり何で言わないのかと私は思うんですね。
そこを曖昧にしながら、いや、賠償していく場合。条件厳しいんですよ。やむを得ない特段の事情により損害の継続を余儀なくされ、これ一つ。二つ目は、本件事故と相当な因果関係が認められる損害でないと駄目だと。三つ目は、今回の賠償額を超過した場合だと。更に条件付いて、自立支援施策の利用状況も踏まえと。こんなんだったら誰が使えるのかということになってくると思うので、私は、この方針は明確な打切り提案になっていると、そのことを改めて指摘をしておきたいと思うんです。
そこで、私、文科省に聞きたいと思うんです。
原賠審では、賠償の終期の考え方について、この間具体的な変更がされたのかどうか、これを確認させてください。その上で、現状で賠償の終期についての考え方はどうなっているでしょうか。
〇政府参考人(板倉周一郎君) お答え申し上げます。
営業損害に係る賠償の終期に関しましては、中間指針第二次追補、第四次追補に規定されておりまして、第二次追補においては、個別具体的な事情に応じて合理的に判断するものとされております。
さらに、その具体的な判断に当たっては、基本的には被害者が従来と同じ又は同等の営業活動を営むことが可能となった日を終期とすることが合理的であるとしております。一方、被害者の側においても、事故による損害を可能な限り回避又は減少させることが期待されており、一般的には事業拠点の移転や転業等の可能性があることなどを考慮するとされております。また、例えば公共用地の取得に伴う損失補償基準等を判断の参考にすることも考えられますが、その場合には、本件事故には土地収用等と異なる特殊性があることにも留意する必要があるとされております。
その後の審査会における議論において、このような指針の考え方について変更は行っておりません。
〇倉林明子君 つまり、損害の事実があるということを踏まえれば、終期を勝手に加害者が手前勝手に決めたりしたらあかんということだと思うんですよ。避難指示解除と賠償の打切り、これは明確に切り離すべきだと思うんです。事故を起こした東電、そして事故を防げなかった政府、ほかに例のないこうした原発事故の被害、損害、この実態に応じて私は賠償する責任があると、これは強く申し上げたいと思うんです。
そこで、大臣にお聞きいたします。
原発事故による被害、これは東電が今回示した損害賠償の期限をもって解消できるとお考えなんでしょうか。
〇国務大臣(宮沢洋一君) 今まで事務方から御答弁いたしましたけれども、まさに今回、閣議決定を踏まえて、商工業等の営業損害賠償については年間逸失利益の二倍相当額を支払うこととしており、その後は、あり得ないとおっしゃっていますけれども、相当因果関係のある損害に対して個別の事情を踏まえて対応するということでありますから、打切りであるとは考えておりません。
経産省といたしましても、六月十六日に高木副大臣から東電廣瀬社長に対して、事故と相当因果関係がある損害がある場合には、個別の事情を踏まえて適切に賠償を行うなど丁寧に賠償の手続を行うよう求めたところでございます。
〇倉林明子君 その因果関係を誰が立証することになるのかと。被害者が立証していくことになるんですよ。
今、その被害者と東電との関係でどういうことが起こっているかというと、東電側から打切りをどんどん提案されてきているんですね。信頼関係ということでいえば、事故を起こしたところで当然失墜しているし、何で被害を生じた人から賠償打切りというようなことを言われなあかんのかと、関西弁ではありませんけれども、そういう怒りと不信があるということをやっぱり前提に置く必要がある。ハードルを幾つも設けて、立証はあんたがやれと。これは事実上のやっぱり打切りと、実際に現場がそう受け止めているということを私は見ないと話にならぬというふうに思うんです。農家からは、汚染水漏れがあるたんびに福島産が売れなくなる、袋に福島産と書けないという率直な声も私聞きました。
収束作業が続いている第一原発、この汚染水タンク、様々なレベルの放射性廃棄物を保管する施設、もう増え続けて、敷地いっぱいになってきております。さらに第二原発があるわけです。
今の生活環境、今現在の生活環境での放射能レベルは低下している、そういう事態であっても、住民があの原発の状況を見て、安心できない、帰れない、これは、こういう思いも一方で私当然だと思うわけですけれども、大臣、いかがですか。
〇国務大臣(宮沢洋一君) まず、第一原発につきましては、一部遅れや課題はあることは事実でありますけれども、タンク内の汚染水の浄化が本年五月までに一旦完了し、三号機の使用済燃料プール内の最大の瓦れきの取り出しについても本年八月に完了するなど、全体として着実に進捗していると考えております。
第二原発につきましては、今後のエネルギー政策の状況や新規制基準への対応、地元の様々な御意見なども総合的に勘案しながら、事業者である東電自身が判断を行うものだと考えております。
〇倉林明子君 要は、大臣に聞いたのは、ああいう原発の状況、続く事故、事件、汚染水漏れ等が続いている事態ということは安心できないというふうに思いませんかと聞いたんですよ。そこについては答弁なかったなと思うんです。
そこで、重ねて聞きますけれども、第二原発の問題なんですね。これについては、質問に答えて、大臣、こういう趣旨で答弁されているかと思うんです。第二原発の廃炉については東電の株主について損害を与えられないと、こういう趣旨だと思うんです。オール福島が求めている要望に対して、私は極めて不誠実な答弁だと思って伺いました。
大臣は、被害に遭った福島県民の要望よりも東電の株主利益を優先すると、そういうお立場ですか。
〇国務大臣(宮沢洋一君) 第二原発につきまして廃炉にすべきという御意見、内堀知事からもいただいております。そのときに、第一原発とは法的な置かれている立場が、位置が違うということを申し上げておりますが、第二原発につきましてはまさに事業者自身が判断しなければいけないことだと私は思っております。
それは、まさに日本は法治国家でありまして、東京電力の、国は、政府は過半数の株を持っていることは事実でありますけれども、国営会社ではなくて、まさに民間の方が知恵を出して今経営をしていただいていると、こういう状況でございます。
一方で、過半の株を保有しているといっても、特別事業計画におきまして、本計画の実行その他の業務運営上の経営判断や意思決定は新経営陣の下において行う旨明記をしておりまして、社外取締役を中心とした取締役会において経営判断が行われているわけであります。そして、そういう中で、じゃ国が過半の株式を持っているから株主の力としてそれを経営者に求めるというわけにはいかないという状況がありますし、恐らく経営者といたしましても、それこそいろんなことにつきまして、株主代表訴訟等々といったことも念頭に置きながら経営の判断をしていくのだろうと思っております。
〇倉林明子君 事故を起こした東電が加害者としてその責任を果たすというのは原則だと思います。一体、じゃどれだけこれまでに株主がその責任を果たしてきたのかと。私募債の話もあったし、銀行なんかは本当にどうだったんだと。本当にプラントメーカーの問題も含めて、事故を起こした責任というのが加害者としてどう取られたのかということは、私は本当に踏まえた議論をする必要があると思います。被害者保護よりもやっぱり聞いていたら株主優先と、そんな法治国家でいいはずがないというふうに私強く申し上げたい。
第二原発の廃炉というのは本当に福島で再生をしていくための第一歩なんですよ。原発のない福島を願っているんだというところをしっかり出発点に踏まえないと再生支援ということでも成功しないと、そのことは強く申し上げて、質問を終わります。
- 日時
- 2024/11/21(木)
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