消費税の再増税はやめよ 中小企業承継円滑化法改定(経済産業委員会)
2015/08/06
(ページ下部に資料があります)
倉林明子議員は8月6日の参院経済産業委員会で、中小企業経営承継円滑化法等改定案について質問し、中小・小規模事業者を直接支援する施策の強化を求めました。
倉林議員は、この3年間で事業所の減少率が全国ワースト1位(被災地除く)となった京都府で、140年続いた歴史ある魚屋が廃業せざるを得なくなった等、相次いで店舗が廃業している深刻な実態を紹介。「事業承継の最大の障壁は厳しい経営環境。赤字でも負担増となる外形標準課税の拡大と消費税10%への再増税を進めれば、廃業を加速させることになるのは明らかだ。きっぱりやめるべきだ」と主張しました。
宮沢洋一経産相は「外形標準課税の中小企業への拡大は慎重に検討する」と述べる一方、消費税再増税については「きちんと価格転嫁できるよう転嫁対策に全力を尽くしていく」と、再増税する姿勢を崩しませんでした。
倉林議員は、アメリカで行われた中小企業に対する大規模な直接支援によって、最低賃金を15ドルへ大幅に引き上げることを決めた州が出てきていることを紹介。金融危機後に制定された中小企業雇用法によって税金免除措置が拡大され、税控除額が120億ドル(約1兆4760億円)にものぼったことを示し、「諸外国の政策に学び、中小・小規模事業者への直接支援を」と主張。さらに、家族の働き分を経費として認めない所得税法56条の廃止を求めました。
中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
〇委員長(吉川沙織君) 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。
質疑のある方は順次御発言願います。
〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子でございます。
今回の法改正について言いますと、法の対象を一定拡充するということになりますので、賛成したいと思います。
そこで、この間、現行法がどんな効果を上げてきたのか、平成二十年の経営承継円滑化法制定以来、その実績について確認をまずさせていただきたいと思います。事業活動が継続できた件数は何件であり、そして維持できた雇用人数は何人であったのか。どうでしょうか。
〇政府参考人(豊永厚志君) お答え申し上げます。
経営承継円滑化法には、事業承継に伴う、まず税負担を軽減するための事業承継税制、二つ目に民法上の遺留分に関する民法特例、三つ目に日本政策金融公庫の低利融資といった金融支援がございます。
事業承継税制は、この間、利用件数が千二十二件、民法特例が八十九件、融資保証が百件、これは大臣認定に基づくものに限ってでございますけれども、百件ございます。この平成二十年来の千二百件の雇用者数を確認しますと、約六万六千人という数字が把握できてございます。これらの千二百件の事業者の継承、六万六千人の雇用の維持に貢献できたものと認識してございます。
〇倉林明子君 今日、初回の委員会ということで丁寧に答えていただくのは有り難いんですけど、十五分しか質問時間ありませんので御協力のほどお願いしておきたいと思います。
御紹介あったように、一定の実績があったということは否定するものではありません。しかし、この六年間で見ますと、年間ベースにすると二百件に満たないという事業継続の件数になっていると思うんです。
中小企業全体で見ますと、やっぱり減少傾向が顕著だというのは先ほどの議論の中でもあったとおりかと思うんです。一九八一年以来二〇一二年までの三十一年間の数字の議論がありましたけれども、その間で見ますと百四十一万者減少している、そのうち小規模事業者はどうかというと、百四十万者が小規模事業者になっているということですよね。年間でいうと、ならせば四・五万者という規模で廃業、減少しているということになるわけで、事業継続という観点から見ても、焼け石に水と言っても言い過ぎじゃないと思うんですね。これだけじゃないということだとは思うんですけれども。
一方で、今回対象を拡大するということで、今回の改正によって、事業活動の継続、そして雇用確保の見通し、この点についてはどうお考えでしょうか。
〇政府参考人(豊永厚志君) 今般の改正法案によりまして、まず特例制度が拡充されるわけでございますから、先代経営者の取り得る選択肢は広がると思います。最適な後継者を選ぶことができるということになるわけでございます。
これのどれくらい件数が増えるかということについては、残念ながら非常に困難だと考えてございます。私どもが行いましたアンケート、一万者に対してアンケートを行ったところでございますけれども、残念ながら回収率が必ずしも高くなくて、制度の存在を知っているというところが二百五十七者あったわけですが、その中で、親族外であるために制度を利用できないという方が十五者、すなわち六%はいらしたというようなことでございますし、制度を知らない方もいらっしゃるようなので、周知等を徹底的に行うことによりまして先生の御期待に応えたいと思っております。
〇倉林明子君 本法案の対象となるのは、小規模企業の共済加入という点で見ればおよそ百二十五万人ということで、全小規模企業の六割が対象外ということになるわけですよね。株式会社でない多くの小規模事業者、これも対象外ということになってくると思うんです。
そもそも、私、小規模事業者にとって事業の継続、発展が必要だという位置付けから見ても、そもそもの何でこれだけ小規模事業者が減少し続けているのかという原因をしっかり考える必要があるというふうに思うし、減少に歯止めを掛けるということは、私、喫緊の課題になっているというふうに思うんですけれども、大臣の認識、いかがでしょう。
〇国務大臣(宮沢洋一君) おっしゃいますように、三年間で中小企業全体で三十五万者減少、うち、小規模事業者は約三十二万者減少しております。
原因については様々な原因があると思いますけれども、一つは、小規模事業者が小売業、宿泊、飲食サービス業など経済社会構造の変化の影響を受けやすい業種であること。それから、先ほど来議論になっておりますけれども、やはり経営者が高齢化をしてきているといったようなところ。更に申し上げますと、先ほど安井委員が配られた資料を見ておりまして、開業率と廃業率につきまして言えば、開業率の方が若干傾向的には上回っているにもかかわらず事業者数が減ってきているといった点は、どうも調べさせましたところ、開業率、廃業率はやはり一人以上の雇用がある者が対象である、一方で、事業者数は一人でやっている方も入ってくる。したがって、一人でやっている方がかなりやめられているケースが多いんだろうというふうに思って、この辺はこれから分析をしていきたいと思っております。
何よりも、やはりこれから企業数を維持していく、雇用を維持していくということは大変大事なことでありまして、そのために生産性をどうやって向上させていくかということがやはり喫緊の課題だと思っておりまして、今いろいろ検討を始めたところでございます。
〇倉林明子君 先ほどおっしゃったように、外的な要因を受けやすい業種も多いというお話あったかと思うんですけど、その外的な要因というのをつくったのは誰かということも問われる必要があると思っているんです。
そこで、この間の傾向を丁寧に小規模企業振興法を作る際に調査された白書の中で、委託調査の結果、今日取り出して資料として提出しております。結局何で廃業になっていくかというと、経営環境が厳しい、継ぐに継げない、息子にはやらせられないという声を私もよく聞いてまいりました。
その傾向がどうなってきたかというと、これ、創業年次で分けて二つのグラフになっておりますけれども、一九八〇年代以前に創業したところにより顕著に出てきておりますけれども、事業が最も不調だった時期というのが二〇〇〇年代、二〇一〇年以降、もう顕著に増えているんですね。事業が最も好調だった時期というのを逆転して大いに上回っているという特徴がはっきり出ております。一九九〇年代以降に創業した事業者も、一九九〇年代は好調の方が多いんだけれども、その後で見ると、二〇一〇年代には逆転して不調と。景気悪いということですよね。早い話がそうだと思うんですよ。
この調査によりますと、現経営者が事業継承を行うこと、これをちゅうちょする個人的な要因で挙げている理由は何か、そして、その理由で何%占めているのか、上二つで結構です。お願いします。
〇政府参考人(土井良治君) 中小企業庁の方では本年一月に小規模企業等の事業活動に関する調査を行いまして、五千八百七十四者の小規模事業者に対してアンケート調査を行いました。この中で、現経営者が事業承継をちゅうちょする個人的な要因について複数回答で回答を得ております。本調査によれば、その要因について、回答の多い順に申し上げますと、一番多いのが、厳しい経営環境下で事業を引き継ぐことへのちゅうちょ(後継者候補の人生への配慮)、六五・七%、二つ目が、事業を引き継いだ後の収入、生活面での不安、五七・五%、三つ目が、後継者の経営能力に対する不安、三八・四%でございます。
〇倉林明子君 この三年間の京都府内の事業所の廃業率といいますと、被災地を除くと全国ワーストワンという状況にこの三年間見ればなっているんですね。歴史ある商店街、自営業者が大変多いというのも京都の特徴でありまして、それを反映していると思うんですね。最近も、歴史ある商店街で百四十年間続いてきた魚屋さん、七十代の御夫婦で頑張ってきたんだけれども、廃業という決断をされました。商店街のこうした店舗が、歯止めが掛からないという状況が京都でも続いております。
事業承継の最大の障壁というのは、私、厳しい経営環境そのものだというふうに思っているんですね。そこで、じゃ、本当にどうすれば地域で、地域のコミュニティーや消防団の役割等も先ほど指摘ありました、それを担っている方々、この小規模事業者、中小企業者、どうやって持続的な経営を守っていけるのかということで、私、決定的になってくるなと思っていますのが、先送りになりました、赤字でも負担増になる外形標準課税の中小企業への拡大、それから消費税、これ先送りということになりましたけれども、一〇%への再増税、これは廃業を加速させることになることはっきりしていると思うんですね。
私は、きっぱりやめるように担当大臣として声を上げるべきだと考えます。いかがでしょうか。
〇国務大臣(宮沢洋一君) まず最初に申し上げておかなければいけないのは、これまでもやり取りをさせていただいておりますけれども、私どもとしては、廃業そのものを悪いことだというふうに思っているわけではありません。開業率、廃業率を欧米並みにということでありまして、やはり産業の新陳代謝ということは大変重要なことだというふうに考えております。
その上で申し上げますけれども、まず、外形標準課税につきましては、大企業のみ、資本金一億円以上ということで導入をしております。そして、一億円以下の中小企業につきましては、今後慎重に検討を行うということになっておりますけれども、極めて慎重に検討されるべき課題であると認識をしております。
一方で、消費税でありますけれども、消費税につきましては二つの方向から申し上げなければいけないと思っております。
消費税が引き上げられた場合に、例えば三から五に引き上げられたときには相当な実は滞納が生じました。やはり、一年分の消費税を小さい企業は一遍にまとめて払わなければいけない、後から払わなければいけないというようなことで大変な滞納が生じて、実は今回もそういうことが起こるということで相当金融的な措置も考えなきゃいけないのかなと思っておりましたけれども、幸か不幸か、今回の、昨年四月の引上げにおいては滞納はほとんど増えていないというような状況でございまして、やはりそれなりに経済状況が好転しているということが恐らくプラスアルファの方向で作用したんだろうというふうに思っております。
また一方で、問題は転嫁できるかどうかということでございまして、転嫁がともかくしなければいけないということで、全国に転嫁対策調査官、いわゆる転嫁Gメンを配置しておりまして、監視、取締りに取り組んでおりますし、また、膨大な数の企業に対してアンケート調査を行って、そしてその結果に基づいて先ほど言った取締り等々を行ってきているところでありまして、転嫁対策については全力を挙げていきたいと考えております。
〇倉林明子君 いや、私求めたのは、一〇%への再増税というのはやっぱり中止すべきだということを求めておりましたが、それについては答弁なかったということは確認をさせていただくだけで結構です。
最後、二点提案をしたいと思うんですね。
一つは、大変ニュースになりましたアメリカの最低賃金引上げのニュースで、十五ドルということが確定した州が出てきたということでニュースになりました。時給でいえば、百二十三円で計算すれば時給千八百四十五円ということで、本当に日本と大きな違いが広がってまいりました。
これを可能にしたということで私注目していますのは、中小企業に対して直接支援をやっているということなんですね。金融危機後、中小企業雇用法を実施したアメリカで、税金減免措置の拡大で税控除した金額というのは百二十億ドルに上るんですね。一兆五千億円弱ということになるかと思います。こうした直接支援に取り組んでこそ最低賃金引上げということにも踏み出していけるんじゃないかと思います。是非検討していただきたい。
もう一つは、六年前、与謝野大臣のときに研究していくということを表明された所得税法五十六条の廃止の問題なんです。
これ自家労賃、自営業者の配偶者、家族の自家労賃を上限決めてそれ以上認めないという差別的な対応なんですけれども、結局小規模事業者の負担になっているというだけじゃなくて、均等でない、青色と比べても均等でないということで、廃止を求める声が、全国四百を超える地方自治体から要望も上がっているというものです。税負担、直接低減するという方向にも向かうものであり、是非廃止に向けて具体的に動くときだと思います。この点は要望としておきたいと思います。
消費税。いいですか。──いいです。また続きやります。
終わります。
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- 2024/11/21(木)
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