先物取引法の不招請勧誘解禁だめ 「省令は被害を拡大」(経済産業委員会)
2015/04/07
倉林明子議員は、4月7日の参院経済産業委員会で、商品先物取引法の不招請勧誘(顧客の同意や要請を受けていない状態で行われる勧誘)について質問し、政府の姿勢をただしました。
不招請勧誘の禁止規制は、長年にわたって深刻な被害が発生し、たび重なる規制強化の下でもトラブルが解消しなかったことをうけ、2009年の商品先物取引法の改正で導入されました。
しかし、経産省は今年1月、商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令を公布。これまで禁止されていた不招請勧誘が今年6月から事実上解禁されることになりました。日弁連や消費者団体から撤回を求める意見が数多く上がっています。
消費者委員会の黒木事務局長は「消費者被害防止のために導入された不招請勧誘禁止規制が省令によって改正されることは、商品先物取引法の立法趣旨に反している。実質的に消費者被害を防止できない」と述べ、今回の改正省令に対して強い懸念を示しました。
一方、宮沢洋一経産相は「先物市場の活性化は国益にかなうものであり、市場の整備が必要」「今回の省令改正は法の趣旨に反するものではない」とひらき直りました。
宮沢経産相の答弁に対し、倉林議員は「取引市場の活性化というが、健全な市場活性化に逆行する被害が拡大する前に改正省令は廃止すべきだ」と求めました。
平成二十七年度一般会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成二十七年度特別会計予算(内閣提出、衆議院送付)、平成二十七年度政府関係機関予算(内閣提出、衆議院送付)について(内閣府所管(公正取引委員会)及び経済産業省所管)
〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子でございます。
今日は、商品先物取引法、これにおける不招請勧誘、いわゆる頼んでもいないのに先物取引の勧誘を行う、これが省令により事実上解禁されるという問題はもう非常に重要な問題だと考えておりまして、質問したいと思います。
そもそも、二〇〇九年にこの商品先物取引法が改正されまして、不招請勧誘を含む不当な勧誘等の禁止が盛り込まれたという経緯がありました。
これ、改正の背景は一体どういうことがあったのかということを消費者委員会にお聞きしたいと思います。
〇政府参考人(黒木理恵君) お答え申し上げます。
商品先物取引におきましては、長年にわたって多くの深刻な消費者被害が発生していたため、まず、平成十六年の商品取引所法の改正の際に勧誘の仕方に関する各種の規制が導入されたものの、なおトラブルが抜本的に解消されるには至らない状況が続いていたものでございます。このため、平成十八年の金融商品取引法成立に際して、商品先物取引について今後のトラブルが解消していかない場合には不招請勧誘禁止の導入について検討するという旨の附帯決議がなされ、その後、平成二十一年に、御指摘の不意打ち性を帯びた勧誘や執拗な勧誘により顧客が本来の意図に反して取引を行い被害が発生するというトラブルが多く報告されているという実態を考慮し、適合性の原則の遵守、あるいは、そういうものがおよそ期待できず、利用者の被害の発生拡大を未然に防ぐという観点から不招請勧誘禁止が導入されたものと承知してございます。
〇倉林明子君 本当に、ハイリスク・ハイリターンということで先物取引は従来から指摘されていたことで、アマチュアである個人のトラブルを本当にどうやって防いでいくのかということで、規制が〇四年、〇九年と強化されてきた経緯があるということだと思うんです。
そこで、改めて消費者委員会に質問をしたいと思います。
二〇一四年の四月に改正省令が、素案が示されたということになっております。この素案の段階で、四月八日に消費者委員会の意見が示されております。この中心点を御説明ください。
〇政府参考人(黒木理恵君) お答え申し上げます。
消費者委員会が平成二十六年四月八日に公表いたしました意見におきましては、同月に公表されました商品先物取引法施行規則等の改正案について、主に次の二点を指摘してございます。
一つ目は、商品先物取引に対する不招請勧誘禁止規制の必要性と適用対象の範囲については国会における慎重な御審議を踏まえて定められたものであり、この経緯を重く捉えるべきところ、改正案では、商品先物取引法及び同法に基づく政令により禁止されている不招請勧誘行為について省令で事実上解禁しようとするものであって、極めて不適切であるという指摘でございます。
二つ目は、事実上七十歳未満の消費者に対する商品先物取引業者による電話、訪問勧誘を解禁しようとするものであり、社会問題化してきた古いビジネスモデルを再び活性化させ、高齢者の命金や一般消費者の生活基盤である預貯金を極めてリスクの高い投資に向かわせ、同時に詐欺的投資勧誘を行おうとする悪質な事業者に格好のツールを提供する結果になるのではないかと指摘をしてございます。
〇倉林明子君 消費者委員会から厳しい懸念が示されていたものであったと、素案の段階から。消費者保護の観点から到底認めることができないものであるという指摘もありました。
素案に対してパブリックコメントも実施されたわけですが、寄せられた意見の件数、そのうち反対、撤回を求める意見はどれだけありましたか。
〇政府参考人(寺澤達也君) お答えします。
商品先物規制の見直しについては、昨年四月五日から五月七日までパブリックコメントを募集いたしました。合計で千四百四十八件の御意見を頂戴しました。その内訳でございますけれども、賛成が八百八十一件、反対が五百四十九件、その他のものが十八件でございます。
したがいまして、規制緩和について賛成の御意見が反対の御意見に対して約六割上回ったと、こういう結果になっております。
〇倉林明子君 規制緩和を求める業界団体等からの御意見というのは強く以前からあったということで、そういう数値にもなったのかと思います。一方で、五百四十九件ということで、反対、撤回を求める意見も多数に上っていたということは重大だと思います。
そこで、今年一月二十三日、商品先物取引法施行規則等の改正が公布されるということになりました。六月からの実施ということで、実施が目前に迫っているわけです。こういう規則改正が公布されたということに対しまして、消費者委員会が二月十七日、改めて委員長発言を公表されています。消費者保護の観点からは懸念が拭えないということで、三点の指摘が改正省令に対して指摘されているというふうに伺っておりますが、三点の指摘について消費者委員会から簡潔に説明をお願いします。
〇政府参考人(黒木理恵君) 二月十七日の委員長発言におきましては、次の三点について懸念が拭えない旨の発言をしてございます。
第一に、法律において規定された不招請勧誘の禁止を省令で大幅に緩めることが論理的に可能であるのかという点、第二に、かつて適合性原則や説明義務の徹底では被害防止には不十分であるとの御判断から不招請勧誘禁止が導入されたという立法経緯に反するのではないかという点、それから最後に、実質的に消費者被害を防止できないのではないかという懸念です。
その上で、本省令が施行される場合には、関係省庁において被害発生防止のための最大限の取組を行うべきであり、さらに勧誘に関する苦情相談が増加に転じる兆しが少しでも見えたときには直ちに省令を見直していただきたいという旨を委員長が発言をしているところでございます。
〇倉林明子君 消費者委員会から、素案が示される前からも一貫して問題点が指摘されていると。修正が加えられて素案が改正省令になったわけですけれども、それに対してもなお重大な懸念が表明されている。これ、本当に重く受け止めるべきではないかと思うんです。
この改正省令が公布された後、消費者委員会の意見もあったということですけれども、経済産業省に寄せられた抗議、撤回等を求める意見、どれだけになっておりますか、御紹介ください。
〇政府参考人(寺澤達也君) お答えします。
一月二十三日の改正省令の公布後、経産省に寄せられた反対等の意見書の数ですけれども、合計四十一件となっております。そのうち、日弁連とか各地域の弁護士会からのものがそのうち三十三件となっております。
〇倉林明子君 消費者委員会からも日弁連その他消費者団体からも声が上がっているということです。四月の案の段階では全国五十二全ての弁護士会から反対ということで、明確な意見が寄せられていたと承知をしております。こうした声を真摯に受け止めるのであるならば、私、改正省令は改めて見直すべきだというふうに思います。そもそも、二〇〇九年の法改正の際に経産省は何を目指していたかといえば、そこは明確で、トラブルのない商品先物市場を実現するということで不招請勧誘の禁止を導入したということだったと思います。
そこで、改めて確認をしたいんですけれども、利用者トラブルの根絶を掲げていたはずですが、利用者トラブルは根絶できたんでしょうか、どうですか。
〇政府参考人(寺澤達也君) お答えします。
商品先物取引に関するトラブル件数、相談件数とか苦情件数ですけれども、ピークは二〇〇四年だったわけです。国内商品市場取引について見ますと、足下ではピークに比べて九七%とトラブルが大幅に劇的に減少しているわけでございます。
また、経産省に様々な消費者相談が寄せられるわけですけれども、二〇一三年度の数字を見ますと、相談件数全体のうちで商品先物が占める割合は〇・六%にとどまっているということで、以上、過去と比べましても、ほかの分野と比べましても商品先物に関するトラブルは大きく減少していると考えているところでございます。
〇倉林明子君 つまり、それだけトラブルがあったものが減っているということは、再勧誘も含めて不招請勧誘も原則禁止にしたと、それが有効に機能しているからこそ減ってきたんだと思うんですよね。大幅な改善をしたとはいえ、〇・六%ということですけれども、いまだ根絶とは言えない状況にあるというふうに思うんです。
私、六十五歳未満への訪問、電話勧誘をこれ原則解禁させることになる、これは消費者委員会も繰り返し指摘しているところです。こういうやり方は、事業者に不招請勧誘のツール、手段を与えることになるものであって、法の規制を骨抜きにするということになると思うわけです。
こういう省令改正は廃止すべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
〇国務大臣(宮沢洋一君) まず、商品先物についてでありますけれども、商品先物につきましては、私どもの立場でいいますと、今後、電力の卸売市場の整備とか、またLNGというものが大変国際的には高止まりしていると言っていい状況の中で、LNGのやはり卸売市場といったものを整備することは大変国益にかなうものだと思っておりまして、商品先物市場の整備というものはやはりしっかりやっていかなければいけないと思っております。
そして、今の御指摘の点でありますけれども、幾つか申し上げなきゃいけないと思いますが、消費者委員会の方が法的に若干問題ではないかという指摘を繰り返されているようでありますけれども、法律には、委託者等の保護に欠け、又は取引の公正を害するおそれのない行為として主務省令で定める行為について禁止の対象外、法律で、省令で定めた場合には対象外としておりまして、そういう法律の枠組みの中で今回省令改正を行いました。当然のことながら、内閣法制局という法律の解釈の元締にも当然御相談をして決めております。
さらに、その省令の中身につきましては、これは変遷はよく委員御承知だと思いますけれども、農水省に加えて消費者庁とも協議を加えまして、いろんな限定、強めた限定を入れた上で、消費者庁も納得していただいた上で今回省令改正をいたしました。消費者庁と消費者委員会との関係については私どもとしてはどういう関係にあられるかよく分かりませんけれども、そういう経緯を経ております。
〇倉林明子君 御説明はいただいたわけですけれども、私、廃止をやっぱり強く求めたいと思うんです。
先ほどおっしゃったけれども、これから先、商品先物市場の活性化、市場として更に活性化していく必要があるんだということで、ほかの分野、電気やLNGも御説明ありました。私、活性化していくということが、一般個人の方を、これまでもトラブル多かった人たちを巻き込むことが果たして健全な市場の活性化につながるものだろうかと。私は、健全でトラブルのない、透明性の高い先物取引市場としての健全な活性化の方向とも逆行することになりかねないと、市場としての魅力を高めていくというのは別のやり方があるんじゃないかと思いますよ。大臣、いかがですか。
〇国務大臣(宮沢洋一君) 商品先物市場にそのまま当てはまるかどうか分かりませんけれども、例えば株式等々の先物取引等々ということについてもいろんな議論が行われてきておりますけれども、その中で、やはり法人だけだと判断がかなり一方に偏る、個人というものが入って市場というものは安定するという議論が常に行われてきたということも事実であります。
〇倉林明子君 私は、この間ずっと、商品先物取引を始めハイリスク・ハイリターンの市場について、プロかアマかというところで、アマチュアに対しては保護を強化していこうと、これが本当に方向としては間違っていないというふうに思うんですね。今回の原則解禁ということで、事業者に対してツールを与えるということが古いビジネスモデルを復活させるんじゃないかと、消費者委員会の指摘は大変重いし、被害拡大の際はしっかり見直すべきだという指摘もあったけれども、被害が生まれる前にやっぱりこんな改正省令については廃止をと重ねて求めて、質問を終わります。
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- 2024/11/10(日)
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