倉林明子

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小規模発電排除ダメ 電気事業法改正案(経済産業委員会 参考人質疑)

2014/06/05

 電気事業法改定案の参考人質疑が6月5日、参院経済産業委員会で行われました。参考人として、電機事業連合会の八木誠会長、全国電力関連産業労働組合総連合の岸本薰会長、東京大学社会科学研究所の松村敏弘教授が意見を述べました。
 日本共産党の倉林明子議員は、「再生可能エネルギーを爆発的に普及するために、小規模な発電、小売電気事業者が排除されてはならない」と述べ、参考人の見解を求めました。
電力システム改革専門委員会委員として制度設計に携わってきた村松教授は、「全国的に効率的な送電網の構築なしには、再生可能エネルギー普及はかなり早い段階で頭打ちになる」と指摘。また、「小規模事業者にとって不必要な参入障壁を設けないという視点は最重要だ」と述べました。
 八木会長は、東京電力福島原発事故について「おわび」を口にする一方で、原発再稼働の必要性について繰り返し強調。また、原子力事業は巨額の投資が必要であり、「競争下で原子力事業を進めるための環境整備」として、原発事故が起こった際の事業者責任の軽減の検討を求めました。

議事録を読む(参考人意見)
第186回国会 経済産業委員会 第14号 2014年6月5日

電気事業法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
参考人の出席要求に関する件

〇委員長(大久保勉君) ただいまから経済産業委員会を再開いたします。

 休憩前に引き続き、電気事業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
本日御出席いただいております参考人の方々を御紹介申し上げます。
まず、電気事業連合会会長八木誠参考人でございます。
次に、東京大学社会科学研究所教授松村敏弘参考人でございます。
次に、全国電力関連産業労働組合総連合会長岸本薫参考人でございます。
この際、参考人の方々に委員会を代表して一言挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただき、誠にありがとうございます。
参考人の皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、お一人二十分程度で、八木参考人、松村参考人、岸本参考人の順に御意見を述べていただき、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手していただき、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、承知おきください。
なお、参考人、質疑者とも御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず八木参考人にお願いいたします。八木参考人。〇参考人(八木誠君) 電気事業連合会の八木でございます。
本日は、このような機会を賜りまして、誠にありがとうございます。先生方におかれましては、平素、私ども電力会社の事業運営に関しまして多大な御理解、また御協力を賜っておりますことに、この場をお借りいたしまして厚く御礼を申し上げます。
まず初めに、東京電力福島第一原子力発電所の事故に関しまして、今なお多くの皆様に多大なる御迷惑と御心配、御負担をお掛けしておりますことを、同じ電気事業に携わる者といたしまして、改めておわびを申し上げます。
私ども事業者は、こうした事故を二度と起こさないという強い決意の下、震災直後から、徹底した安全対策に努めるとともに、新規制基準の内容を踏まえながら、安全性向上のために必要な対策を講じてまいりました。今後とも、原子力発電所の更なる安全性、信頼性の確保に向け、たゆまぬ努力を続けることにより、社会の皆様からの信頼回復に努めてまいります。
折しも、先般、震災後初となるエネルギー基本計画が策定されたところでございます。その中で、原子力発電については、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源と位置付けられ、原子燃料サイクルについても引き続き推進することが明確化されました。私ども事業者としましては、こうした方針が示されたことは大変意義があるものと受け止めております。
しかし、その一方で、原子力発電への依存度については可能な限り低減させるとの方向性も示されており、将来の見通しが不透明な部分もございます。今後、各事業者が将来に対する予見性を持って電気事業に取り組んでいけるよう、長期的な視点でのエネルギーミックスの姿についても早急に明確化していただくことをお願いしたいと思います。
それでは、今回御審議されています電気事業法の改正法案につきまして、私どもの基本的な考え方を申し上げたいと思います。
昨年十一月に成立しました改正電気事業法の附則では、三段階のスケジュールで改革が進められることとなっております。現在、その第一段階である広域的運営推進機関の設立に向けまして、新電力や発電事業者も含めた関係者間で検討が進められているところであり、私どもといたしましても、これまで実務を担う中で培ってきました知見を生かし、最大限協力しているところでございます。
今回の法改正は、この改革プログラムの第二段階に当たるものであり、電力システム改革の目的の一つであります需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大を図るため、電気の小売業への参入を全面的に自由化すること、いわゆる小売全面自由化を主たる内容とするものであると理解いたしております。
この小売全面自由化は、御家庭のお客様を含む全てのお客様が自ら契約する電気事業者を選ぶことができるという点で、自由な選択を御希望されるお客様の期待に応える制度であると考えております。私どもといたしましても、電気料金メニューの多様化や選択肢の拡大を通じまして、お客様に選択していただけるよう積極的に取り組んでまいる所存であります。
ただし、今般の改正案につきましては、私ども一般電気事業者にのみ引き続き小売の料金規制及び供給義務が経過措置として課せられることとなっております。制度変更に伴う需要家保護策の一環としての暫定的な措置と理解しておりますが、電力市場を全面自由化し公正な競争を実施していくという環境の下では、これらの措置は言わば非対称とも言える規制であると思います。諸情勢を総合勘案した上で早期にこれらの措置を撤廃していただくようお願いしたいと思います。
また、電力の安定供給の実務を担う立場として、全面自由化の下での安定供給確保策について、引き続き慎重かつ丁寧な検討が必要であると考えております。
これまで、私ども一般電気事業者は、発送電一貫体制により供給責任を果たしてまいりました。今回の全面自由化によりまして、発電や小売の分野へ新たな事業者の参入が見込まれており、各事業に参画する事業者それぞれが連携して安定供給を実現していくこととなります。
各事業者は事業の採算性を最優先に経営判断を行うこととなりますため、例えば発電事業者にとっては稼働率の低い電源設備の保有や将来の需要を見据えた電源投資は難しくなることなどが考えられます。このため、こうした環境下でも将来の需要に応じた供給力が確実に確保される仕組み等を構築していく必要があると考えております。実際に、海外における自由化の先行事例を見てみますと、英国や米国テキサス州等においても、供給予備率の低下による将来の電力需給に対する懸念が生じていることから、対策の必要性が指摘されているところでもございます。
改革の第二段階となる小売全面自由化は、契約件数にいたしますと、全国で八千万件を超えるお客様が対象となっておりまして、国民生活にとって極めて影響の大きい制度改革であります。改革に当たりましては、新たな事業環境に適合した安定供給の仕組みがしっかりと構築されるよう私ども事業者も引き続き協力してまいりますので、詳細制度設計を着実に進めていただきますようお願いいたします。
さて、こうした小売全面自由化を進めるに当たりまして、この改革をお客様の利益につながるものとするためには、新たな制度と整合性のある環境が整っていることが不可欠であると考えております。したがいまして、この観点から、小売の全面自由化を実施するまでに解決すべき二つの課題について申し上げたいと思います。
まず一点目は、電力需給状況の改善についてであります。
震災以降現在まで、震災前の電力供給の約三割を占めていた原子力プラントの再稼働が進まず、電力の需給は大変厳しい状況が続いております。これまで、各社における最大限の供給力の積み増し努力と皆様の節電の御協力によりまして何とか安定供給を維持してまいりましたが、この冬も北海道電力管内を始めとして極めて厳しい状況が続きました。今夏につきましても、このまま原子力プラントが再稼働できない場合、本来、高稼働を予定していなかった老朽火力プラントをフル活用する緊急避難的な対応が続くこととなります。安定供給に最低限必要となる供給力は辛うじて確保できる見通しであるものの、設備の疲労が蓄積し、トラブルリスクが高まっている現状を勘案いたしますと、極めて予断を許さない需給運用になると考えております。
現在、原子力プラントについて新規制基準に対する適合性審査が進められていますが、いまだに再稼働の見通しが立っておらず、今後も供給力不足が継続することが懸念されます。全面自由化を実効的なものとするためには、供給力が十分に確保され、需給状況が安定していることが大前提であり、現在のように需給が逼迫する中では、たとえ全面自由化を進めたとしても、発電余力がないため競争が活性化せず、お客様の利益につながりにくいものと考えられます。
私どもといたしましては、できる限り早く原子力プラントを再稼働できるよう最大限の努力を続けてまいりますが、今回の改正法の施行に当たりましては、全面自由化を実施できる需給状況かどうか見極めた上で、改めて実施の時期を御判断いただきたいと考えております。
二点目は、競争下において原子力事業を進めるための環境整備についてでございます。
原子力発電は、他の電源に比べまして三つのEの観点からベースロード電源としての強みを有する一方、建設から運転期間中はもとより、運転終了後も、廃炉や使用済燃料の処理、処分に至るまで安全性を確保しつつ、長期にわたる事業を確実に遂行しなければならず、そのための巨額の投資が必要であるという特徴を有しております。
私ども事業者は、これまで、こうした他の電源にはない特徴を有する原子力発電について、国策民営の原子力推進政策の下で長期的な見通しを立てることができました。加えて、総括原価方式等の諸制度により、費用回収についても一定の予見性を持って原子力発電の維持、活用に必要な投資を着実に行うことができ、またそのための資金を市場から調達することも可能であったと考えております。
しかしながら、現在、新たなエネルギー基本計画において原子力依存度を可能な限り低減するという方向性が示されたことで、長期的な見通しが不透明となってきております。さらに、今回の法改正によって、事業者は、発電から廃炉、使用済燃料の処理、処分に至るまで長期にわたり、かつ見積額の変動リスクを抱える費用の回収を全面自由化による競争環境の中で行っていく必要があり、長期の事業継続に関する予見性が従来よりも低下することとなります。これは、原子力発電の維持、運営に必要な資金の調達にも影響を及ぼしかねないと考えております。
私どもといたしましては、エネルギー基本計画に記載されているとおり、安全を大前提に原子力発電を重要なベースロード電源として活用していくためには、民間事業者が予見性を持って長期の事業を計画し、実行できる環境の整備が何よりも重要だと考えております。
こうした観点から、是非とも、全面自由化の実施に先駆けて、民間事業者が長期にわたる原子力事業を担える新たな国策民営の在り方を検討していただきたいと思います。例えば、これまで原子力事業者が一体となって支えてきたバックエンド事業等の原子燃料サイクルの推進に当たっては、競争が進展していく中でも長期にわたる処理、処分のプロセスに支障を来さないよう、海外の事例を踏まえまして、国の役割を明確にした上で、事業者が果たすべき役割、責任を整理していただきたいと思っております。
また、原子力損害賠償制度につきましても、海外の事例を踏まえつつ、事業者負担の在り方について適切な見直しを行っていただきたいと考えております。
政府におかれましては、こうした原子力事業環境の整備に向け早急に検討の場を立ち上げていただき、検討に着手していただきますようお願いをしたいと思います。
以上、二つの点につきまして、小売全面自由化が実施されるまでの間に必要な対応をしっかりと行っていただきたいと考えております。
最後になりますが、低廉で安定した電力供給は、我が国の国民生活、産業活動の基盤となるものであり、電力システム改革は決して失敗が許されるものではありません。
この点で、真に国民の皆様の利益につながる改革とするためには、改革の各段階において安定供給確保に向けた検討、検証をしっかりと行うとともに、内容、スケジュールの両面で、原子力政策を始めとするエネルギー政策と整合を図っていくことが極めて重要であると考えております。
また、現在、国の審議会において、電力のシステム改革の進展に合わせてガス事業のシステム改革、全面自由化についても検討が進められておりますが、需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大という観点からは、この点でも平仄を合わせていただくことが大変重要と考えております。
私ども事業者といたしましては、電力、ガスといったエネルギー種別の垣根を越えた総合エネルギー事業へと進化し、我が国エネルギー事業全体の競争力強化と発展をリードするという強い気概を持って事業に取り組んでまいりますので、その鍵を握りますエネルギー市場全体の改革につきましては、是非整合性の取れた形で進めていただくようお願いしたいと思います。
こうした私どもの考えを含めまして、十分な御審議を賜りますようよろしくお願いを申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。
ありがとうございました。

〇委員長(大久保勉君) ありがとうございました。
次に、松村参考人にお願いいたします。松村参考人。

〇参考人(松村敏弘君) お配りしておりますパワーポイントの資料に関して、二十二ページのところまでのことをお話しさせていただきます。その後、資料が少し付いておりますが、これは、ひょっとしてその後質問が来たときに役に立つかなと思って付けているだけですので、基本的には二十二ページまでで。それから、最初の二ページ目と三ページ目のところにまとめとして要旨が書いてありますので、ここだけ読んでいただければ言いたいこと全て分かるように書いておるつもりです。
それでは、お開きいただいて、四ページのところを御覧ください。
御案内のとおり、電力システム改革に関しては三段階で改革をしていくということになっておりまして、最初に広域機関をつくり、その後、今回の改正で家庭用も含めた小売の全面自由化というのを行い、最後の段階で発送電の法的な分離によってネットワークの中立性というのを確保するというスケジュールになっております。
今日は、第二段階の法改正の話ですので、ここを中心にお話しさせていただきます。
それぞれの三つの段階で、安定供給をいかに確保するのか、それから競争基盤をいかに整備するのか、それから中立性をいかに確保していくのかということが議論されていくことになりまして、結果として、今回にもそういう議論というのは多く入っております。
イコールフッティングというのは非常に重要だと、非対称規制というのに関して懸念というのをいろんな場面で聞くわけですが、イコールフッティングを口実として、総括原価と地域独占と公益事業特権で守られてきたときに築き上げた競争優位というのを安直に引き継いで実質的な公平性が保たれないという事態にならないように、詳細のところをきちんと見ていく必要があると思います。具体的には、直近ではインバランス料金というので、形式的には公平だが、実質的には今の一般電気事業者だけに極めて有利だという制度というのにしないようにということをこれから奮闘していかなければいけないと思っております。
さて、おめくりください。
自由化の意義というのはいろいろあると思いますが、基本的には消費者に選択肢を与え、事業者にも選択肢を与え、その結果としていろんなアイデアの人が市場に入ってくることによって市場を活性化し、電力価格を下げるというだけでなく、安定性にも資するということがあり、最終的には電力システム改革とガスシステム改革を合わせて総合エネルギー企業あるいは総合公益企業同士の競争というのによって効率的な市場をつくっていくという道を開いていくことになるんだと思います。
そもそも、私自身は、望ましい政策というのに関しては、まず、国の基本的な価値、環境価値だとか安全保障の価値だとかという、こういう類いの価値を固定価格買取り制度や税、補助金、そのほかの様々な政策手段を使って補正するということを前提とした上で、これらの制度設計を前提とした上で、あとは消費者が選択されたものが生き残るという形によってエネルギーのベストミックスが形作られるというのが理想だと思っております。
おめくりください。
電力システム改革においては、国の基本的な政策というのが非常に重要だというのは間違いないことですが、これらに関しては、地球環境の問題、安全保障の問題、資源外交の問題、技術革新、こういうようなことが明らかになり、これに対して柔軟に国策というのが変わっていったとしても、どのように国策が変わっていったとしても柔軟に効率的に対応できるようなそういうシステムをつくるというのが電力システム改革だと思っていますので、国の様々な基本的な政策が決まらないうちは自由化すべきでないというような議論は建設的な議論ではないと思っております。
基本的には消費者が支持するベストミックスというのが実現すればいいと思っており、消費者は多様な考え方を持っているということですから、どの考え方というのが一番主流なのかというのは、自由化をすることによってかなり明らかになるのではないかと思っております。
おめくりください。
仮に、アンケート調査で、あるいは世論調査で再生可能エネルギー、支持しますかと言われれば、国民の大半が仮に支持すると言ったとしても、そのために掛かるコストというのがあったときに、そのコストを負担してでもちゃんと普及させたいと思っているのか、あるいはコストは誰かが負担してくれるんだったらまあ進んでほしいと思っているのかというのは、それだけではよく分からない。よく分からないけれども、自由化した上で、再生可能エネルギーというのを主力とした事業者から電気を購入するというのは、自らその電気代を払って支えるという言わば責任ある意思表明というのになるはずだと思います。
あるいは事業者にとっても、再生可能エネルギーはもう化石燃料よりもコストが低いんだ、言うだけはただだから幾らでも言えるかもしれませんが、自由化をするということによってちゃんと参入する、あるいはそれを支持する人が出資するという形でサポートするということは、まさにこの再生可能エネルギーというのが十分競争力があるということの責任ある意思表示ということになると思います。このような機会というのを自由化によって是非与えていただきたいと考えております。
おめくりください。
十一ページですが、しかし、現状ではそもそも家庭用の市場は自由化されていないし、それから自由化された大口の市場でも競争メカニズムはほとんど働いていないという、こういう状況で、しかもネットワークを中心として、公正で透明な競争環境というのが必ずしも整備されていないという状況下では、自分がこの電源が国民のために一番役に立つんだと信じていたとしても、それを表明する手段というのが与えられていないという状況になっています。このような手段というのを是非自由化によって与えていただきたいと考えております。
ただし、これは自由化するだけでは駄目だというふうにも考えていまして、現実の大口市場でもこの貧弱な競争基盤の下で競争がほとんど起こっていないということを前提とすると、もし家庭用まで自由化して実質的な競争が行われなければ、一般電気事業者に値上げをする自由だけを与えて、消費者に実質的な選択の自由を与えないという最悪の結果にもなりかねないということになります。
もちろん、このような最悪の結果というのを起こさないために最大限の努力をして制度設計をしていくわけで、そのためには、まずシステムの抜本的な改革と競争基盤の整備ということをして、ちゃんと競争が起きるようにするということが最も重要な点ですが、それだけではなくて、競争メカニズムが働くことが確認されるまで、一定の期間、消費者保護のために一定の規制が必要だと考えています。これは非対称規制というよりは、規制なき独占になる可能性は極めて高いは言い過ぎかもしれませんが、一定の可能性があるという事業者に対してやる規制ということですから、ある意味で非対称にならざるを得ないというわけで、非対称規制だから駄目だということを言えばこの手の消費者保護は駄目だということになってしまうということで、私はそれは建設的な議論だとは到底思えません。
おめくりください。
規制なき独占を回避するためにはネットワークの中立化や競争基盤の整備ということが最も重要な点で、この点については最大限努力してまいりますが、一方で、暫定的に規制料金を残すということが議論されています。この規制料金というのは、一般電気事業者にこの約款で売らなければいけないという形で規制するのではなく、少なくともこの約款で供給してくださいと言われたら消費者にはこれで供給するという、選択肢の一つとして規制料金を残すということを言っているのにすぎません。したがって、一般電気事業者がこの規制された約款以外の形で供給するということは自由だということになります。
消費者の方としては、最低限それが選べるという状況にありますから、ほかの選択肢が与えられてほかのものを選ぶということは、その最低限のものよりはいいから選ぶということになるので、最低限の消費者保護というのはこれで保たれる。自由化したことによって、結果的に規制なき独占になって踏んだり蹴ったりになるなどという事態はこれで防ぐ。
しかし、本当に理想的な状況というのは、このような規制が無意味になって、競争が十分働いて、このような規制料金でないものをみんなが選ぶという状況になり無用の長物になるということが最も理想的な状況。それは競争が働いているということなので、こういう状況を目指してはいくけれど、しかし、必ずそうなるとは言えないので、備えとして規制を残すということが計画されているということになります。
おめくりください。
それから、競争環境に関しては震災後大きく変わった点がありまして、電力間の競争というのがほとんど起こっていなかった。元々の部分自由化のときには、この電力間の競争というのが期待されていたわけですが、ほとんど起こっていなかったこの電力間競争がようやく起こる兆しが出てきました。
東京電力が全国に電気を売るという、こういう展開の表明をしたということと、それから中部電力、関西電力あるいはほかの電力会社も東京電力の管内で小売に参入するという動きが出てきています。これらは非常に歓迎すべきことなのですが、一方で、東京電力は明らかに震災後、ガバナンスの構造が変わりました。
ここは、もうかなり本気で入るつもりなんだろうと思うんですが、中部電力、関西電力等が東京電力管内に入るというのは、もはやガバナンスの構造が変わって、自分たちの仲間でなくなったような人たちのところは荒らしても構わないから入っていくけれど、残りのところはまだ仲間同士だから市場分割しましょうと。もちろん市場分割なんて決してしていないと思いますが、そういうことが疑われるような形で競争はほとんど起きないというようなことだったとすると、仮に東京に入ってくるという動きが少しあったからといって、これでもう競争基盤が十分整備されたと、競争は十分だと考えるのは少し楽観的過ぎると思います。
本来、連系線の制約からすれば、中西地域、中部電力以西のところで激しい競争というのが起こっても全く不思議ではないという状況なのにもかかわらず、ここがもし起こっていないとすれば、やはり不十分だと考えざるを得ないと思います。
私たちは、この点をこれから十分に注視して、それこそ、トヨタ自動車の需要をめぐって関西電力と中部電力が激しく競争しているというような状況まで来れば競争は十分進んでいたというふうに一定程度考えられるのかもしれませんが、そこについてはまだ注視していく必要があると思います。
それから、一般電気事業者だけが競争するというのでは、やはり競争としては不十分だと思っています。
一般電気事業者の方、申し訳ないですが、基本的には旧来の知恵で生きてきた人たちということで、震災前であれば、太陽光の電気が余っちゃうということになったら、じゃ、カレンダー機能を付けて止めましょうかなんという、こんなことしか思い付かないような人たちというのだけが当システム、電力市場というのを牛耳っているという状況ではなく、いろんなアイデアの人がどんどん入ってこれるという、こういう状況というのが必要になってくると思います。そのためにも、電力間の競争だけではなく、新規参入者が公正な環境で入ってこれる状況というのをつくっていかなければいけないと考えております。
さて、安定供給というのが最も大きな関心の一つだと思いますが、十六ページ御覧ください。
現在の安定供給体制、垂直一貫の下で極めて安定的な電力供給がなされてきたという先入観は捨てるべきだと思っています。
日本の電力系統は、今までは極めて安定的だった。世界に冠たる安定的な電力供給という側面はもちろんあります。だから、世界に誇れる点はありますが、世界に比べても極めて脆弱だったという面も否定できません。
例えば、欧米諸国に比べて恥ずかしいほど僅かの風力しか入っていないのにもかかわらず、もうこれ以上入れられないと抽せん制を入れざるを得ないとかという、それぐらい脆弱な系統だったということも言えるし、大規模電源を集中的に立地させて災害に弱いという、こういう系統をつくり上げてきたという面もありますし、それから、連系線の容量が極めて小さかった、特にFC、東日本と西日本をつなぐ周波数変換所ですが、震災前には、僅か三十万キロ増強するというささやかな計画に対しても見苦しいほど抵抗して潰してしまうというようなことが起こるぐらい、安定供給に対する意識というのはもう必ずしも十分でなかったというようなことも言えるのではないかと思います。
こういうような点に関しては、ここばっかり言うというのはアンフェアで、安定供給のために現場の方々がどんなに苦労して支えてきてくださったかということに関してはもうどんなに感謝してもし切れないぐらいのところであり、それから技術に関しても非常に優れたところというのはいっぱいあるわけですから、世界に冠たるという側面と弱いという側面の両方があります。電力システム改革は、この世界に冠たるところを残しながら、弱かったところを何とか改革によって更に高めるということを目指す改革だというふうに理解しております。
次、おめくりください。
電力システム改革によって安定性が更に高まるという側面に関しては、価格メカニズムを使って需給逼迫というのに対応するということが更に発展することになると思います。
それから、今までだったら競争が激しくなることを恐れて連系線の投資を怠ったというようなことが仮にあったとしても、これからは広域機関を中心にして全体最適を考えながら送電網を計画するというシステムに変わっていけば、安定供給は更に高まると思います。それから、さらに、新電力を含めた発電の情報を全て送電部門に集めて、一般電気事業者の電源だけではなく、日本中全ての電源を使って安定供給を確保するという、こういう体制にしていくことによって安定性が更に高まるということになると思います。それから、価格メカニズムが全面的に入ってくることになるので、価格メカニズムをシグナルとして安定性が高まるということはあり得ると思います。
投資が行われなくて需給が逼迫するという懸念を表明する人は多くいますが、もしそうなるとすると、卸市場で電気の価格は上がります。卸市場で電気の価格が上がれば、当然発電のインセンティブが増えます。発電のインセンティブが増えるということになり、電力不足というのを回避するという、こういうメカニズムが働きます。経済学者としては、本来であればこの価格メカニズムが十分働くので余計な安定供給策なんというのは不要ですというふうに言うべきなのかもしれませんが、しかし今回のシステム改革ではそう言っていません。
どうしてかというと、今の価格メカニズムが働くことは十分期待しているし、一定程度働くとは思っていますが、必ず働くとは限らないということで、価格メカニズムがもし万が一うまく働かなくて投資が足りなくて大停電などというような事態になったらどうするんだというのに対しては、広域機関に電源入札という制度、世界的にも珍しいような強力な安定化策というのを取り、発電所が足りないなどというようなときには、こういう公的な機関というのが電源を入札して十年後の不足に備える、五年後の不足に備えるというような強力な施策というのを取っているということで、安定供給に関しても十分に考慮された制度設計になっております。
おめくりください。
安定供給に関しては、いろんな人がいろんな形で担うわけですが、抽象的にみんなが担うというだけじゃなくて、役割をきちんと明確にしています。その中で最も重要な点が広域機関が果たす役割だと思いますが、広域機関が、それぞれの地域の部分最適ではなく全体最適をにらみながらきちんと計画し、きちんと送電投資を行い、電源の投資の不足があれば入札で補うという強力なことまでやるということで安定供給というのを支えようとしております。
これに関しては、むしろ一般電気事業者の御出身の専門委員の方が、システム改革の席で、三のようなことをやると市場メカニズムを乱すのではないかと、こういう懸念をし、経済学者が、市場メカニズムを多少乱すことがあったとしても安定供給には代えられないからこういう制度が重要だと、こういうふうに発言しているという極めてねじれた状況というのが起こっている。決して安定供給を軽視した制度ではないと、制度改革ではないということは是非是非御理解ください。
さて、電力システム改革ですが、基本的にはいろんな人が参入できるという状況が最も望ましい状況だと。これに関しては、震災前、例えば太陽光発電に関しては今よりもはるかになだらかなペースで太陽光発電が入ってくるという予測だったのにもかかわらず、もう二〇二〇年を待たずに電気が余ってしまうから太陽光発電、止めざるを得ないです、太陽光発電の電気、捨てざるを得ない、捨てるためにどうするかという議論を大真面目で議論していたわけなんですけど、そんなことをやるぐらいだったら、ゴールデンウイーク中は電気が余ると分かっているなら、ゴールデンウイーク中だけ電気の価格を少し下げたらどうですかと、それによって需要を促したらどうですかと、こういう当たり前のことを思い付かないような人たちだけが制度を設計していた。
こういう状況にしないために、あらゆる人があらゆる知恵を持って入ってこれるシステムにしたいということで、もしこれを怠ってしまえば、今までのように太陽光の電気を捨てないためには十五兆円も四十兆円も投資しないと駄目ですなんというような、こんな知恵しかない人たちだけに任せることになってしまう。こういうことにしないためにも、何とか電力システム改革を完遂させたいと思っています。
二十一、二十二が最後のまとめのところです。
ここの法案のところが一番重要なところで、ここはもう基本方針を決めるわけですから、この基本方針というのがちゃんとしていなければ、もちろん立派なシステムはつくれません。しかし、基本方針だけでなく、その後の詳細な制度設計も非常に重要です。詳細な制度設計についても、私たちはずっと見ていって、本当にゆがんだ方向に行っていないかどうかということをずっと見続けていかなければいけないと思っています。
それから、世界中でいろんな改革がなされていて、世界中で大きな失敗というのをしている。私たちはそれを真摯に学んでちゃんとやっていかなければいけない。一番安直な回答というのは、あれは制度がひどい制度だったから、私たちはそんな制度にしないから大丈夫ですということを安易に言っちゃうんですけど、でも、欧米でもつくったときにはそれがベストだと思ってつくっているわけですから、そのことをちゃんと私たちは認識して、自分たちがベストだと思っているものでも、ひょっとしたらうまくいかないかもしれないということを考えながら、先ほども言ったとおり、広域機関の入札のような強力な制度を設けてでも、うまくいかないことの防御というのを二重、三重に考えながら慎重な制度設計というのをしていかなければいけないし、現在までそのように議論がされていると認識しております。
それから最後に、この電力改革を成長戦略だとか技術革新というのにつなげる視点というのを是非持ちながら、これからの詳細制度設計も含めて当たっていかなければいけないと考えております。
以上です。ありがとうございました。

〇委員長(大久保勉君) ありがとうございました。
次に、岸本参考人にお願いいたします。岸本参考人。

〇参考人(岸本薫君) 改めまして、皆さん、こんにちは。ただいま大久保委員長より発言の許可をいただきました電力総連の岸本でございます。
本日は、電気事業法改正のこの度の審議に際しまして、働く者の立場から意見を述べさせていただく機会を賜りました。心より感謝を申し上げます。

〇委員長(大久保勉君) どうぞ着席されて結構です。

〇参考人(岸本薫君) はい。着座で失礼いたします。
私ども電力関連産業で働く仲間は、これまで長年、経済産業に不可欠な電力の安定供給を通じて国民の皆様に貢献できる、こうしたことに誇りと働く喜びを感じながら、全職場、全部門が一丸となり取り組んでまいったところでございます。
そして現在、現場第一線におきましては、一つには、東日本の大震災あるいは近年相次いでおります竜巻、雪害、昨日来からも豪雨でございますが、こうした水害など、大規模自然災害による被災地の復旧と復興。二つには、今なお多くの皆様に御迷惑をお掛けをいたしてございます福島第一原子力発電所をめぐる課題への対応。三つには、新規制基準への対応など、事故を教訓とした原子力安全の向上に向けました不断の取組。四つには、原子力発電所の長期停止が続く中での安定供給の確保、そして節電や電気料金改定のお願い、徹底した経営効率化への対応など、数多くの喫緊する課題に、高い緊張感の下、昼夜を分かたぬ努力が重ねられてまいったところでございます。
本日、お手元にお配りをいたしました冊子の四ページから十七ページにはそうした労働現場の取組や働く者の思いの一部を御紹介をいたしてございますので、御覧いただければ幸いでございます。
私自身、全国各地の現場を回っておりますと、そこで働く組合員からは、長年、現場第一線では安定供給に懸命に取り組んできたが、大震災以降、現在の電力システムの問題が露呈したというふうに言われている、我々が長年やってきたことは間違っていたのか、また、各種の委員会等々で専門家の方などが議論をなされている現状を見るにつけ、電気は会議室でつくっているのではない、電気は現場でつくっているということを現場の仲間はいろいろと申しているところであります。
また、原子力の再稼働が見通せない中で、火力発電所では、何としても供給責任を全うするために、年末年始やゴールデンウイークも全て返上し、家族との団らんもなげうって細心のメンテナンスを行っているが、設備が悲鳴を上げている発電所をいつまで酷使させ続けられるのか、いつになったら正常な定期点検を行って安全確認ができるのか。ちなみに、火力プラントの蒸気圧力は、原子力が約七十気圧に対しまして火力は約二百五十気圧から三百気圧、蒸気温度では、原子力が約三百度に対しまして火力は約六百度という、まさに高温と高圧の設備と隣り合わせでその健全性を維持をしている実情にございます。
また、系統運用現場におきましてはまさに綱渡りの状況が続いてございますが、一たび停電を起こせば社会が大混乱を起こすことはもちろんのこと、需給の逼迫に伴う節電をお願いをし、昼夜を分かたぬ努力で何とか乗り切ったときには、本当に電気が足らなかったのかというお叱りを受けてしまう、原子力代替のための燃料費をコストダウンだけで吸収するにも限界がある、何よりも、大震災以降、節電に多大なる御協力をいただいてきたお客様に対して電気料金の値上げのお願いをせざるを得ないことがつらい、こういった声をぶつけられる機会も多々あるわけでございます。
また、職場の将来見通しに対する不安、あるいは閉塞感も高まる中で、若年層を中心に依願退職が増加をするなど、誰が将来のこの国の電力の安定供給や原子力の安全を支えていくのか、今後の人材の確保、育成を心配をする声も日増しに大きくなっているところでございます。
本日は、こうした現場実態も踏まえた上で、今般の第二弾法案、さらには来年提出が目指されてございます第三弾の法案など、今後の電力システム改革に関する御検討に当たりまして、働く者の立場から大きく四点について御意見を申し上げます。
まず一点目は、小売全面自由化の実施までの間に直面する課題にしっかりと対応いただきたいということであります。
何よりも、常態化している電力需給の逼迫と電気料金上昇の二つのリスクを早急かつ根本的に解消いただくことが今般の小売全面自由化実施の前提条件でなければならないというふうに考えます。先般閣議決定をされましたエネルギー基本計画におきましても、こうした状況は、エネルギーコストの上昇と温室効果ガス排出量の増大の原因となり、我が国の経済、産業活動や温暖化対策に深刻な影響を与えているとした上で、この現実を一刻も早く打破する必要があると明記されているところであります。まさに異常事態とも言える現状には持続可能性があるとは思えませんし、大震災からの復興並びに日本経済のこれからの再生の加速化の足かせともなりかねません。また、電力市場に十分な電力が供給をされ、事業間の競争促進やお客様選択肢が拡大されることによって初めて今次改革の成果を国民の皆様に御享受いただくことができるものであるというふうに考えるところでございます。
私ども原子力職場では、新規制基準が施行される前のまさに大震災の直後から今日まで、福島第一原子力発電所事故を教訓に、まさに寝食を忘れ、血眼になりながら様々な安全対策を講じてきているところでございます。そうした原子力職場における取組の一端、そこで働く労働者の思いにつきましては、お配りいたしてございますパンフレットの十四ページから十七ページに御紹介をしてございますので、後ほどまたお読み取りをいただければというふうに思います。
原子力規制委員会には、原子力職場の現場第一線のこれから取組内容につきまして、是非とも科学的な見地、技術的な実効性から公正に審査をいただくよう、この場を借りまして強く求めたいというふうに思いますし、審査の結果、安全性の確保がなされた原子力発電所につきましては、国民並びに関係自治体の皆様の御理解と信頼をいただきながら、円滑に再稼働が果たされますよう、国におかれましては、エネルギー政策上の必要性も含めて、前面に立った責任のある御対応をお願いをしたいというふうに思います。
また、今後の原子力発電につきましては、先般閣議決定をされました新たなエネルギー基本計画では、可能な限り依存度を低減をしていくという大きな方向感の中で、今後増えていくであろう廃炉の円滑な実施、バックフィット制度など新たな安全規制への対応の双方にしっかりと取り組みながら、ベースロード電源として安定供給、あるいは温暖化対策に貢献していくことが求められているところであります。そして、私どもにとりましては、そうした課題への対応を支える人材を確保、育成をし、技術、技能を維持、継承していくのかが問われてまいります。
その意味におきまして、これまで国策民営で取り組んでまいりました原子力事業につきまして、電力システム改革の自由競争の中で、その事業運営を誰が何に基づく責任において担っていけるのか、今次改革と同時並行でしっかり御議論をいただくことが不可欠であるというふうに考えます。
次に、公正で中立的な競争環境についてであります。
たとえ電力市場が全面的に自由化され発送配電分離がなされたといたしましても、お客様にとりましては、あるいはこの国にとりましては電気事業に求められる公益性は変わるものではないというふうに思います。
その意味では、改革後の競争環境におきましては、安定供給の確保や災害発生時の早期復旧などの電気事業に携わる者に求められる公益的な責任につきましては、これまでのように一般電気事業者だけが負うというのではなくて、発電、送配電、小売の全ての事業者がそれぞれの果たすべき責任や義務を負うというのが基本でなければならないというふうに考えるところであります。
また、エネルギーをめぐる今後の内外諸情勢を踏まえますと、電力システム改革とともにガスシステム改革などもしっかりと求めていただく中で、こうしたエネルギー市場改革を通じまして、各エネルギー事業者がお互い切磋琢磨しながらお客様サービスを競い合い、ひいては強靱な経営体質を備えた総合エネルギー事業者へと発展をし、今後の我が国の成長に貢献していくことも期待をされているところであります。
つきましては、今後の自由競争環境下におきまして、全ての事業者がエネルギー事業者としての自覚と責任の下、各事業者がお客様利益の増進に向けて民間事業者としての自主性や創意工夫を最大限発揮できますよう、公正で中立的な競争環境を是非整備をいただきたいというふうに思います。
その一環として、小売参入全面自由化実施時に、現行の一般電気事業者のみに課せられる小売料金規制並びに供給義務に関わる経過措置につきましては、第一弾法案改正の附則、これまでの附帯決議の趣旨も踏まえていただきまして、いわゆる第三段階で終了いただくことが重要であるというふうに考えます。
三点目は、将来にわたる電力の安定供給の確保など、今後の制度設計に当たっては、諸外国の教訓も踏まえ、しっかりと課題を検証、克服をした上で進めていただきたいということであります。
例えば、発電部門が完全自由競争となる中で、誰がこの十年、二十年先の供給力の確保を保障をするのか。今後拡大をする再生可能エネルギーのバックアップも含めて、時々の電力需給の変動に対応するための待機電源など供給信頼性の根幹である調整力は誰が何の責任において手だてをするのか。また、大規模災害など有事対応を含めまして、これまでの事業体制の下で実施をしてきた各部門の協調連携について、発送配電分離以降いかに図っていけるのか。改革の実施によって電気料金やCO2の排出量などにどのような影響が生じるのかなど、改革の成否を左右をする根幹事項について、まだまだ検討中あるいは今後検討を行うという位置付けになっているのではないかと感じているところであります。
ちまたでは、自由化をし発送配電を分離をすれば電気料金が下がる、供給力は増大をする、再生可能エネルギーが普及をするといった話もよく耳にいたします。他方、お配りをした冊子の二十ページから二十一ページにも若干御紹介をいたしてございますように、既に様々な制度改革の実施を行いました諸外国におきましては、電気料金水準の高騰、発電所などの建設停滞により予備率の低下など様々な課題も生じていると承知をいたしてございます。
是非ともこのような海外事例も他山の石としていただきまして、生じるおそれがある負の側面があるとするならば、それを確実に検証、克服をした上で進めていただくことが極めて国民にとっても国全体にとっても重要ではないかというふうに考えるところでございます。
なお、今般の改革を国の御決断として実施をし、今後は各エネルギー事業者が競争環境に入っていく以上、そうした負の側面に対する手当てにつきましては最終的には国が責任を負うべきであるというふうに考えてございますし、そうした課題の解決を特定の事業者だけに背負わせるということがあってはならないということもこの場であえて申し添えておきたいというふうに思います。
最後は電力の安定供給を担う現場力についてであります。
この度の改革は、我が国電気事業の歴史上かつてない大きな事業変革を伴うものでございますが、私ども労働組合といたしましては、国の政策変更によって、今日まで電力の安定供給を支え続けてまいりました関連労働者の雇用の安定、人材、技術の維持、継承、発展など、現場力に支障が生じるようなことは到底受け入れ難いものがございます。他方、私ども働く者といたしましては、国民の皆様の御期待をしっかりと受け止めまして、改革後の競争環境下におけますお客様への貢献あるいは総合エネルギー事業への発展など新たな課題にも積極果敢にチャレンジをしていかなければなりません。
そのためにも、当該労使間におきまして、事業体制の変更や企業の再編など諸課題につきまして、徹底的な交渉、協議などを通じまして、全ての職場とそこで働く一人一人の働く者の合意形成を図っていくことができますよう、今後数年間の改革プロセスにおきまして、憲法、労働基準法に基づく団体交渉権と労使自治を確実に保障いただくよう改めてお願いをいたします。
その上で、今般の法案附則第五十条に規定をされてございます電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律、いわゆるスト規制法について申し上げます。
現在、本法の規制対象となってございますのは実質的に私ども電力労働者のみでございますが、私ども電力労働者は紛れもない民間労働者であって、公務員の皆様のような人事院勧告制度のような代償措置もないわけでございます。また、電力供給業は、ガス供給、電気通信、運輸、郵便や水道、医療、公衆衛生などの他の公益事業とともに、既に労働関係調整法における公益事業規制に服しておりますが、例えばガス供給事業者や電気通信事業者にはスト規制法のような規制は存在しません。日常生活に不可欠な公共財を扱うという意味では、同じ公益事業に従事をする民間労働者のうち、なぜ私ども電力労働者だけに、それも新電力の皆様には適用されず、私どもだけに限定をし、労働関係調整法による規制に屋上屋を重ねる形で憲法上の制約がなされなければならないのか、強く問題意識を持っているところであります。
折しも、このスト規制法につきましては、御承知のように、昨年の第一弾法案の成立時におきまして、この参議院経済産業委員会におきましても、自由な競争の促進を第一義とする電力システム改革の趣旨と整合性を図る観点から再検討を行うとされました。しかしながら、それ以降、例えば所管省であります厚生労働省における公労使の話合いの場や労働組合からの意見聴取はなされておりません。現状を維持しますという、言ってみれば結果の説明のみ、法案の閣議決定直前に非公式に報告をいただいただけであります。憲法上の権利の扱いという極めて重い案件についての政策決定プロセスとして、極めて残念であります。
私どもといたしますと、今後競争時代に入っていこうという中におきましては、他の公益事業とともに労働関係調整法による規制に服するのみで十分であるというふうに考えてございますので、現行のスト規制法につきましては、憲法第二十八条で保障される労働基本権を回復いただくため廃止をいただくようお願いをしたいというふうに思います。
最後になりますが、申し上げるまでもなく、いついかなるときも電力の安全、安定供給は、二十四時間三百六十五日、現場第一線で働く人の営みによって成り立っています。本日は、この貴重なお時間を頂戴をいたしまして、今般の法案の御審議、さらには今後の制度設計に関わる御検討に当たりまして、是非とも御対応いただきたい課題につきまして御意見を申し上げました。
私ども現場第一線で働く仲間といたしましては、これら課題に対するしっかりとした対応がなされないままに今後の改革が進められるようなことは決してあってはならないというふうに考えています。それは中長期的な国民利益にかなうものではないというふうに考えるからであります。
どうか引き続いての御指導のほどお願いを申し上げまして、私からの意見とさせていただきます。
ありがとうございました。

〇委員長(大久保勉君) ありがとうございました。
以上で参考人の皆様の意見陳述は終了いたしました。

議事録を読む(参考人質疑)
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。

〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子でございます。最後の質問者となりますので、どうぞよろしくお願いします。
また、三人の参考人の方には、今日御出席いただきまして、ありがとうございました。
最初に、松村参考人に伺いたいと思うんですが、私は、原発はやっぱり再稼働はやめてゼロにしていく、直ちにゼロを目指していくべきだという立場を改めて表明したいと思います。それに代わるエネルギーとして自然再生エネルギーの爆発的な普及を本気になって進めていく必要があるというふうに思っているわけで、その点からいいまして、今般のシステム改革、全国的なネットワークを生かしていくという考え方は、自然再生エネルギーを有効に取り込んでいく、爆発的な普及に生かし得る機会になるんじゃないかというふうに思っているわけです。
その上で、小規模発電、今地域でどんどんそういう取組広がっているわけですが、小規模発電や小規模な小売事業者も導入に当たって参入障壁をつくってはならないというふうに思っているわけですが、その点について、付録のコメントもあったようですので、是非お願いしたいと思います。

〇参考人(松村敏弘君) 再生可能エネルギーの普及のためには、全国的に効率的な送電網の構築というのが極めて重要だと思います。これがなければ、将来的にかなり早い段階で頭打ちになってしまうということがあると思います。今はフィードインタリフで支えられているということだと思いますが、再生可能エネルギーを普及させ、日本全体の全体最適のために送電網がどうあるべきかということを広域機関がきちんと議論できるようになれば、これは大きな前進だと思います。
それから、小規模事業者あるいは小規模発電の参入障壁というようなことに関して、いろいろ問題点あります。いろいろ問題点はありますが、これは本当に細かい点というので問題になりますが、一つ一つの規模が小さいので、ごく僅かな障壁でも本当に入れなくなってしまうということがあります。この点については、大きな法律で書くとかということは極めて難しいと思いますが、詳細の制度設計、それぞれの段階で極めて重要になってくると思いますので、そのような不必要な障壁を設けないようにという視点は最重要のものとして考えていくべきだし、私自身も努力していきたいと思っております。

〇倉林明子君 議論もさせていただいていたんですけれども、やっぱり再エネの接続の優先、給電の優先と、こういうところも是非担保される仕組みがあるんじゃないかと、これは意見として表明しておきたいと思うんですが。
あと、続いて、松村参考人、八木参考人に同じ質問でお願いしたいと思うんですけれども、そういうシステム改革がいよいよ目前と、スケジュールが見えてきたという中で、東電が今でも総販売電力に占める割合というのは三分の一という状況かと思います。巨大市場を握る東電との提携ということで、中部電力、大阪ガス、東京ガスと名のりを上げているという報道がされております。東電は、子会社TCSを新電力として立ち上げると。こうすると、今一番高い電気料金になっている東電が安い電気料金でも、戦略として持って販売ができるというようなことも報道されております。
圧倒的なシェアを握っている電力会社が更にパワーアップしていくんじゃないかということが見て取れるわけですが、こういう巨大な総合エネルギー事業へと向かっていこうとしているわけですが、こういう事態になれば、一層小規模な新規参入者や再エネ事業者などが吹き飛ばされるんじゃないかと心配しているんですけれど、いかがでしょう。

〇参考人(松村敏弘君) まず、日本全体の三分の一を占める巨大企業という認識は、実は私は共有しておりません。どうしてかというと、私が一番問題だと思うのは、それぞれの地域で圧倒的なシェアを取っているということが重要なのであって、全体として三分の一というのはそれほど巨大なのかということは私は思っております。
それから、二番目ですが、全国展開するというときに、東京電力の電気をそのまま持っていってというのでは、送電網の投資の関係から極めて難しいので、恐らくそれぞれの地域でかなりの程度調達するということになると思います。そうすると、東京電力はそれぞれの地域では小規模事業者になります。そうすると、小規模事業者としてこんなに苦労したのかということが東京電力も十分経験していただいて、今まで自分たちがいかにまずいことを無神経にやっていたかということを分かっていただくということは、むしろ小規模事業者の参入にとってはプラスなのではないかと思っておりまして、私はむしろこの点については大いにやってほしいなと思っているぐらいです。
以上です。

〇参考人(八木誠君) 今般の自由化を控えまして、各電力がいろいろと地域を越えた競争を今始めておりますけれども、御指摘のように、部分自由化以降、いわゆる新電力さんとの競争というのはございますが、電力間の競争は一件しかないということが大変御批判を受けてまいりました。
それは、我々自身は潜在的な競争はあるということで、それぞれが他電力を意識しながら電気料金を下げてきたという経緯はありますが、今般、全面自由化を控えまして、やはり電力会社としてもそういう電力間競争といいますか、こういうことを強く意識しているところでございます。
私どもとしては、やはりお客様にいかに低廉なエネルギーをお届けするか、安定的に、そしてまたいろんな選択肢を御提供できる、あるいはお客様のニーズにお応えするかと、こういう観点が大事だと思っていますし、また、そういう中で、必ずしも電気だけではなくガスも含めて、要はお客様のエネルギー全般についてどういうお役立ちができるかと、こういうことにつきましては、これが総合エネルギー事業ということで我々は承知しているんですが、これは管内のお客様に限らず、やはり管外のお客様も含めて実施をしていきたいと思っています。
当然のことながら、私どもは関東に出てまいりますが、当然、東電が関西に出てくる、もうこれはお互いが切磋琢磨して競争するということでございますが、今、松村先生御指摘のように、私どももKenesという子会社が東電管内でユーティリティーサービス、PPSの事業を始めましたけれども、まだまだこれ小規模事業者でございます。
なかなか、やはり一番つらいところは、電源をその地域に持たないと本当の競争力強化にはならないということを思っています。そういう意味では、我々としても、小規模事業者ながら、やはり電力間競争といいますか、あるいは逆に言うとお客様の本当のお役に立てるサービスをどうやって提供していくかというのはこれから勉強してまいりたいと思っております。
以上でございます。

〇倉林明子君 八木参考人に質問したいと思うんですが、今も激烈な競争に突入しつつあるんだというようなお話だったと思うんですけれども、先ほど松田委員の方からも指摘があった点で、原賠・廃炉支援機構、今国会で成立ということになりました。そもそも原賠支援機構成立の、原則、相互扶助というものがあって、一般負担金で相互扶助し合うんだという理念だったと思うんですね。
ところが、今回のシステム改革というのは、支え合う一般電気事業者同士が競争をしていくということになるということで、この相互扶助と競争ということの両立についてどうお考えか。

〇参考人(八木誠君) 八木でございます。
原賠支援機構法の、この元々成立したのは、お互いやはりこの原子力の事業を推進していくに当たり、将来の事業リスクに対してお互いが、いわゆるリスクに対して応分の負担をするということでこの支援機構法が成立し、我々も一般負担金としてお支払いしております。
このこと自体は相互のメリットがあることでございますので、そのことについて我々として異論はございませんが、私が申し上げていますのは、そこの金額について非常にまだ、何といいますか、定額といいますか、一定の上限みたいのがはっきりしておりませんので、事業者にとってはそういう負担が重荷になる可能性もありますので、この適切な負担の在り方をきちっと見直していただきたいと思っていますが、これはやはりお互いそういうリスクに対して相互に協力するという観点、一方で、この電気事業そのものがお互い競争していくという、これはやはり切磋琢磨しながらお互いが知恵を絞ってお客様のお役に立つということであります。
したがいまして、競争という意味ではお客様のいかにお役に立つかという観点、それから、原子力は、もう少し申し上げれば、これは民間で原子力をやっておりますが、やはり基本的には国の政策の下に民間がやっていると、つまり国のエネルギー政策に大きく貢献するという立場がありますので、この点についてはいわゆる協調していくということは成立する、その考え方は両方相成立するものと理解しております。

〇倉林明子君 最後になろうかと思いますが、岸本参考人にまとめて質問をしたいと思います。
電気の現場含めてお話ありました。とりわけ事故収束に向けて福島第一原発の現場で働いている労働者の皆さん、心から感謝をしたいと思っております。
その上で、福一の現場の東電の職員や組合員さん以外も含めて全ての労働者の労働条件改善と、これは大きな課題だろうと思っているんです。労働組合としての課題は何かと今お考えかというのを表明いただきたいのと、もう一点、福島原発の作業員に十時間を超える事故収束作業をさせていたということで、下請企業が労働基準監督署から是正勧告を受けるというようなことが二度ほど起こっております。
こうした下請のところへの現場でのしわ寄せが起こっているんじゃないかと思うんですけれども、こうした事態、是正勧告を受けるような長時間労働が下請に強制されるというようなことは起こってはならないことだというふうに思っているんですけれども、下請の労働環境の問題と併せて御見解をお聞かせいただきたいと思います。

〇参考人(岸本薫君) 先生今御指摘といいますか御質問をいただきました福島は、私も数回現地に入ってまいりました。まだまだ地域の皆さん、社会含めまして御心配をお掛けいたしてございますが、先ほどございましたように、東京電力の仲間はもちろんでございますが、メーカーの方あるいは下請といいますか関連企業、あるいはそういういろんなお立場でお仕事をしていらっしゃっている方々を含めて今懸命に頑張っていただいているということで、私も現地を見てきたところでございますが。
いわゆる先生のおっしゃる下請さんとの関係で、労働安全、労働環境につきましては、これ三年たちましたが、いわゆる東京電力の労働組合、個別労使の問題の中での取組もあったであろうと思いますけれども、私どももグループを抱えてございますので、グループの仲間のそういう労働環境の整備、さらには、なかなか非常に混乱する中での現場作業がまだまだ続いてございますが、いわゆるそういう下請さんの方々の現場の環境の整備も含めてまだまだ満足に対応し切れていない部分もあろうかと思いますが、今日までもそういう全体の働く仲間の環境整備について、それぞれの個別の労使、労使関係があるところとないところがあると思いますが、ないところはいわゆる親元といいますか、そういうところを通じながら、極力、廃炉であったりそういう作業が円滑に進むように今日まで対応してきているというふうに認識をいたしてございます。
二つ目の時間外の問題、私は少し具体的な部分の内容については今承知してございませんけれども、労働組合といたしましては、私どもの電力関連職場に働くある意味広い仲間といたしまして、そういう長時間の激務で生命とか労働環境に影響が及ぼすようなそういう環境は望ましくないし、そういうことは、耳に入ってくれば、それぞれ関係先と十分協議を重ねながら環境整備に努めてまいりたいということを申し上げたいと思います。

〇倉林明子君 終わります。ありがとうございました。

日時
2024/12/06(金)
場所
内容

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