川内原発を動かすな エネ政策見直し迫る(本会議)
2014/05/30
電気事業法改定案が5月30日の参院本会議で審議入りしました。倉林明子議員は、同法案が戦後の電力独占に対する電力システム改革の第2段階をなし、「前提として求められるのは原発事故被害の実態をふまえたエネルギー政策の抜本的見直しであり、原発ゼロこそ決断すべきだ」と主張しました。
倉林議員は、政府の新エネルギー基本計画に対し、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、「原発を使い続ける宣言だ」と批判。大飯原発差止判決を受け止め、川内原発を含む再稼働を「きっぱり断念すべきだ」と求めました。茂木敏充経産相は「現実的かつバランスのとれたエネルギー需給構造をつくることが必要」と答えました。
法案の柱である小売参入全面自由化とエネルギー産業再編について倉林議員は、電力10社は発電、送配電、小売り3事業を兼業、実質的に現行と同様の体制を維持し、「規制なき独占」が続くことが懸念されると指摘し、「小規模な新規参入事業者の保護と育成はどう担保するのか」と質問。茂木経産相は懸念には答えず、「競争をうながす環境整備にとりくむ」と述べました。
電気事業法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
〇議長(山崎正昭君) これより会議を開きます。
日程第一 電気事業法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)
本案について提出者の趣旨説明を求めます。経済産業大臣茂木敏充君。
〔国務大臣茂木敏充君登壇、拍手〕
〇国務大臣(茂木敏充君) ただいま議題となりました電気事業法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
東日本大震災以降、我が国が直面している新たなエネルギー制約を克服し、現在及び将来の国民生活に責任あるエネルギー政策を構築するためには、電気の安定供給の確保、電気料金の最大限の抑制、需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大を目的とし、広域系統運用の拡大、小売及び発電の全面自由化、法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保を改革の三本柱とする電力システム改革を着実に実施していくことが極めて重要であります。
このため、まず、三本柱の一つである広域系統運用の拡大などを実現することによって電気の安定供給の確保に万全を期すとともに、具体的な実施時期を含む電力システム改革の全体像を法律上明らかにする改革プログラムを附則で定めた電気事業法改正案を昨年の国会に提出し、昨年十一月に成立したところであります。
今回提出させていただいた本法律案は、改革プログラムに基づき、電気の小売業への参入の全面自由化を平成二十八年を目途に実施するために必要な措置を講ずるものであります。
次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。
まず、電気事業法の改正に関するものであります。
第一に、現行の電気事業法においては、一般電気事業者のみが家庭等に対する電気の供給を行うことが可能とされておりますが、今後は、経済産業大臣の登録を受けた小売電気事業者であれば、家庭等を含めた全ての需要家に対する電気の供給を行うことができることとし、これに伴い、一般電気事業を始めとする現行の電気事業法における事業類型を見直します。
第二に、小売全面自由化を実施した後も電気の安定供給の確保に万全を期すため、現在の一般電気事業者の送配電部門に当たる一般送配電事業者に対しては、電圧及び周波数を維持する義務、どの小売電気事業者からも電気の供給を受けることができない需要家に対する電気の供給を最終的に保障する義務、離島における需要家が離島以外の地域と同程度の料金水準で電気の供給を受けることを保障する義務などを課することといたします。
一方、これらの義務を着実に履行できるよう、一般送配電事業者に対しては、料金制度により、必要な費用を送配電ネットワークの利用料金から回収することを制度的に担保することとしております。
また、小売電気事業者に対しては、契約により供給する相手方の需要に応ずるために必要な供給力を確保することを義務付けるとともに、我が国全体で供給力が不足すると見込まれる場合に備えて、広域的運営推進機関が、発電設備の建設に係る入札など、発電設備の建設を促進するための業務を行えることといたします。
第三に、需要家保護を徹底するため、小売電気事業者に対しては、需要家に対する料金その他の供給条件の説明義務などを課すとともに、現在の一般電気事業者の小売部門に対しては、当分の間、経過措置として料金規制を継続することとしております。
第四に、小売全面自由化を実施した後は、電気の卸取引の重要性が高まることが想定されることから、卸電力取引所を電気事業法において位置付けるとともに、商品先物取引法を改正し、電力の先物取引に係る制度の整備を行います。
加えて、電気事業に係る事業類型の見直しに伴い、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法などの関係法律について、所要の改正を行います。
以上が、本法律案の要旨でございます。(拍手)
〇議長(山崎正昭君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。
〇議長(山崎正昭君) 倉林明子君。
〔倉林明子君登壇、拍手〕
〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
私は、日本共産党を代表して、電気事業法等の一部を改正する法律案について、経済産業大臣に質問いたします。
本法案は、戦後六十年にわたる発送配電一貫体制、電力独占に対する電力システム改革の第二段階とされています。この改革は、東日本大震災と福島第一原発事故を契機としたものです。改革の前提として求められるのは、原発事故被害の実態を踏まえたエネルギー政策の抜本的な見直しではないでしょうか。原発ゼロこそ決断すべきです。
ところが、先月閣議決定した新たなエネルギー基本計画では、原発を重要なベースロード電源と位置付け、再稼働を進めるために、国が前面に立ち、また輸出に突き進むともしています。これでは、原発を使い続ける宣言ではありませんか。
事故から三年以上経過した今なお、家族、なりわい、ふるさとを奪われ、十三万人を超える人々が不自由な避難生活を強いられています。放射能汚染水対策も危機的状況が続いており、事故収束のめどは立っていません。
政府は、原発被害者への思いや事故の反省というのであれば、福島県民の総意である福島第二原発を含む県内原発十基全ての廃炉こそ直ちに決断すべきです。また、審査を進めている九州電力川内原発は、火山の専門家が原発の立地は認められないと警告しています。
今月二十一日、大飯原発の差止め訴訟では、国民の命よりもコストを優先する考え方をきっぱりと退けた判決が下されました。これは大飯原発だけでなく、全国の原発にも当てはまるものです。判決を正面から受け止め、原発の再稼働はきっぱり断念すべきです。答弁を求めます。
安倍首相は、原発は事故対応費用も含め他の電源と比較して高くないと答弁しています。これは、広大な地域を放射能で汚染させ、人、子供の命、健康への影響が計り知れないものになることを無視した発言であり、断じて許せません。さらに、損害費用が約六兆円と見込まれていた当時の額をいまだに根拠に使い続けるなど、極めて無責任です。
原発被害者に十分な賠償もされておらず、除染、汚染水対策、廃炉と、掛かる費用はこの先どれだけ増えるのか分かっていません。イギリスでは、原発はコスト高で民間では採算が合わないとの電力事業者の要望に応え、政府が原発エネルギーを固定価格で買い取ることを決めました。原発がコストの高い電源であることは明らかではありませんか。
首相は、優れた安定供給性とは稼働した場合の特性を示したものと説明しています。現在、日本にある全ての原発が稼働しておらず、稼働していたときでさえ、地震や故障で度々停止してきた極めて不安定なのが原発ではありませんか。事故の可能性が否定できず、一旦事故を起こせば取り返しの付かない被害をもたらす危険な原発は、優れた電源とは到底言えません。
また、温室効果ガスを出さないと言いますが、原発を最優先の電源に位置付けて再生可能エネルギー導入に真剣に取り組まず、トラブルのたびに化石燃料でその穴埋めをしてきました。結果として、温室効果ガス排出を増加させてきたではありませんか。原発依存から脱却し、再生可能エネルギー導入の高い目標を定め、実効ある施策に取り組むことこそ最大の温暖化対策ではありませんか。
次に、東京電力の新・総合特別事業計画について質問します。
新総特では、柏崎刈羽原発を再稼働させるとともに、二〇一六年度に東電を発電、送配電、小売事業と分社化し、持ち株会社グループ一体でのエネルギー企業との提携、再編を大前提としています。政府は、これが電力システム改革の先取りと位置付けていますが、とんでもありません。実質破綻している東電を今後も延命、存続するということではありませんか。
東電会長は、賠償や廃炉の資金を稼ぐため、全国での販売に打って出るとして、他の電力会社の地域でも競い合うと表明しました。政府がやるべきことは、東電の原発を再稼働させて全国に手を広げさせることではありません。国と東電の責任で完全賠償を行うためにも、東電を破綻処理し、大株主、メガバンクの貸し手責任こそ問うべきです。
法案では、電力会社の全財産の優先弁済権を認める一般担保付電力債の発行を新たに持ち株会社や子会社にも拡大して認めています。これは新総特の内容を法で後付けしたものであり、言わば東電の救済条項にほかなりません。
一般担保付電力債は、原発など大規模集中電源の開発のための巨額の設備資金調達を保障するものであり、公益特権とも呼べるその役割を終えています。第三弾の法改正を待つことなく、今の段階できっぱりと廃止すべきです。明確な答弁を求めます。
法案の柱となる小売参入全面自由化とエネルギー産業再編について質問します。
今回の小売と発電の自由化により、既存電力大手と新規参入の鉄鋼、ガス、石油、総合商社や外資企業など、巨大独占企業間の再編が何ら規制なく進めば、市民、中小企業、地域の団体などの発電、小売事業への参入や事業の存続さえ危ぶまれます。十電力会社は、法改正後も、発電、送配電、小売と三事業を兼業し実質的に現行と同様の体制を維持し、電事連による規制なき独占が続くことが懸念されます。
圧倒的に力に差がある小規模な新規参入事業者の保護、育成をどう担保するのでしょうか。中立性、独立性を担保した強力な権限を持つ電力システム全体を監視する民主的規制機関を創設し、電力市場の新たな独占状態とならない仕組みをつくるべきです。
また、一般電気事業者を発電、送配電、小売の三つの事業に分けることに伴い、発電部門は届出制に規制緩和し、送配電部門は託送料金に係る公聴会を廃止するとしています。使用済核燃料再処理費や電源開発促進税などの原発付加金は、発電コストと混同しないよう、上乗せ分として請求書に分けて明記するとしていましたが、家庭などの小口料金の請求書には記載されていません。本改正案によって、発電コストに加え、託送料金などの原価情報が更にブラックボックス化するのではありませんか。徹底した原価情報の公開こそ必要だと考えますが、いかがですか。
三・一一以後、危険な原発は嫌、環境に優しい電源を使いたいと望む消費者が増えています。この願いに応えるためには、いつでも再生可能エネルギーが選択できる電力システムの構築が求められています。現行の優先給電は、原発を優先しているため、再生可能エネルギー接続、受入れ量の限界を設け、利用可能な再生可能エネルギーさえ無駄にしています。再エネを最優先に位置付けて受け入れるドイツ始め欧州連合と同レベルの優先給電、送配電事業者に系統拡張を義務付けるべきではありませんか。
今求められているのは、原発再稼働、推進を前提にした大規模集中型電力システムではなく、原発に頼らない再生可能エネルギーを中心とした小規模分散・地域経済循環型の電力システムへの転換、発送電分離、送電網の公的管理など電力の民主的改革です。全国で広がる声に応え、今こそ即時原発ゼロの決断をすべきであると重ねて申し上げ、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣茂木敏充君登壇、拍手〕
〇国務大臣(茂木敏充君) 倉林議員にお答えをいたします。
最初に、エネルギー政策の見直しと原発の取扱いについてでありますが、全体のエネルギー構成については、各エネルギーの特性を考えると、あらゆる面で優れたエネルギー源はなく、現実的かつバランスの取れたエネルギー需給構造をつくっていくことが必要であります。
こうした中、原発依存度については、再生可能エネルギーの最大限の導入、高効率火力発電などエネルギー源の多様化、そして、徹底した省エネ、ディマンドコントロールなどを進め、可能な限り原発依存度を低減するというのが我々の基本方針であります。
また、川内原発、大飯原発を含め、原発については安全性を最優先し、原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し、原発の再稼働を進めてまいります。
なお、福島第二原発については、今後のエネルギー政策の状況や地元の様々な御意見等を総合的に勘案しながら、事業者が判断を行うものと考えております。
続いて、原発に関して、そのコスト、安定供給性、地球温暖化対策としての有効性について御指摘がございました。
まず、コストに関してでありますが、各電源のコストは、化石燃料の調達価格など各国の事情によって異なるため単純に比較することはできませんが、我が国においては、東日本大震災後に行った試算で、原発の事故対応費用や使用済核燃料の処理コストも含めた上で、原発は他の電源と比較して必ずしも高くないとされております。
なお、御指摘の英国での固定価格買取り制度は、原子力を含めた低炭素電源への投資収益を保証、平準化するインセンティブであり、一概にコストのみの観点から導入されたものではないと承知をいたしております。
また、原発の安定供給性についてでありますが、原子力規制委員会の技術的、科学的な適合審査に加え、世界最高水準の安全性を不断に追求する事業者による取組を徹底することで原発の安定供給性という特性が発揮されるよう努めてまいります。
さらに、地球温暖化対策としての有効性についてでありますが、新たなエネルギー基本計画においては、再生可能エネルギーと原子力発電は共に温室効果ガスを排出しない低炭素のエネルギー源と位置付けております。
再生可能エネルギーを含む将来のエネルギーミックスに関しては、現実性とバランスが重要であり、原発再稼働の状況や地球温暖化に関する国際的な議論の状況なども見極めた上で、ベストミックスの目標を設定してまいります。
次に、東電の新・総合特別事業計画についてでありますが、まず、東電を破綻処理し、株主や金融機関の責任を問うべきとの御指摘についてですが、仮に東電の法的分離を行うとした場合、電気事業法に基づき、内外の機関投資家などが保有する電力債が優先弁済される一方で、被害者の方々の賠償債権や現場で事故収束の作業に必死に当たっている関係企業の取引債権が十分支払われないおそれがあります。
一方、金融機関に対しては、主要行を中心に、一般担保が付されている私募債方式についてできるだけ早期に見直しを行っていくこと、株主に対しては無配当の継続などの形で責任を求めることといたしております。
また、一般担保付電力債についてでありますが、今回の法案で、持ち株会社や子会社にも一般担保付社債の発行を認めることとしたのは、電力システム改革を先取りした会社分割等の取組を妨げないようにしたものでありますが、今後、法的分離を規定する第三段階改正に際しては、電力の安定供給に必要となる資金の調達に支障を来さないようにしつつ、事業者間の適正な競争を確保するという観点から、ゼロベースで検討していくことといたしております。
最後に、小売参入全面自由化とエネルギー産業再編について大きく三点の御質問をいただきました。
まず、新規参入に関しては、これまでの部分自由化では競争や参入が必ずしも活発に行われてこなかったことを踏まえ、発電余力の売買による卸電力市場の活性化とその実施状況のモニタリング、さらに、スマートメーターの早期導入等によります需要家の選択への環境整備など、新規参入と競争を促す環境整備に取り組んでまいります。
また、電気事業の規制に関する行政組織については、平成二十七年度をめどに、独立性と高度な専門性を有する新たな行政組織に移行させることにより、電気事業の監視機能を強化してまいります。
二点目の原価情報の公開についてでありますが、今回の法案では、これまで届出制であった託送料金について、公平性及び透明性を高めるため、値上げについては認可制としており、料金認可の審査過程を通じて原価に関する情報が広く国民に公開されることになります。
なお、現在の一般電気事業者の小売料金については、当分の間、経過措置として料金規制が講じられることから、その発電の原価情報についても、同様に審査経過を通じて情報公開が行われることになります。
最後に、再生可能エネルギーに関する優先給電についてでありますが、揚水を除いた水力、地熱、原子力については、電源の特性上、出力調整に技術的制約があるため、御指摘の再生可能エネルギーと比較した優先給電ルールの対象にはなじまないものと考えております。
再生可能エネルギーの生産地と消費地を結ぶ送電網の強化については、地域内の送電網整備実証への支援策を講じるなど、引き続きしっかりと取り組んでまいります。(拍手)
〇議長(山崎正昭君) これにて質疑は終了いたしました。
- 日時
- 2024/11/10(日)
- 場所
- 内容