国の統治機構に関する調査会 中間報告への意見
2014/05/21
参院・「国の統治機構に関する調査会」は5月21日、臨時国会から行ってきた調査をふまえて中間報告書をとりまとめるにあたり、各党が意見表明を行いました。同調査会は「議院内閣制における内閣の在り方」をテーマに、野中廣務元内閣官房長官など参考人に5回にわたり質疑を行ってきました。
日本共産党の倉林明子議員は「調査にあたって、憲法の国民主権の原理を根本にすえることが最も重要だ」と意見を表明しました。
選挙で国民の多数を得さえすれば、すべて白紙委任されたかのようにふるまおうとする現政権に対し、参考人から危惧の念が出されてことは重く受け止めるべきだと主張。安倍首相が狙う解釈改憲による集団的自衛権の行使容認について、「国会や憲法、国民世論を無視しているものであり、とうてい許されるものでない」と批判しました。
権力を抑制し、統制する国会の役割の重要性を述べ、「国会が行政を縛る立法機能を十分に果たせているのか、国会審議の形骸化はないかの検証をすべき」と点検・検証の必要性を指摘しました。
(「時代の変化に対応した国の統治機構の在り方」のうち、議院内閣制における内閣の在り方)
〇会長(武見敬三君) 国の統治機構等に関する調査を議題といたします。
本日は、これまでの調査を踏まえ、中間報告書を取りまとめるに当たり、「時代の変化に対応した国の統治機構の在り方」のうち、「議院内閣制における内閣の在り方」について委員間の意見交換を行います。
議事の進め方でございますが、まず各会派からそれぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員間で意見交換を行っていただきたいと存じます。
意見のある方は、挙手の上、会長の指名を受けてから御発言をいただくようお願いをいたします。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、意見を表明される方は順次御発言願います。
〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
日本共産党を代表して、意見を表明します。
国の統治機構に関する調査に当たって、憲法の国民主権の原理を根本に据えることが最も重要であると考えます。この原理原則に照らして、現実の統治機構はどう機能しているかを検証する必要があると考えます。選挙で国民の多数を得さえすれば全て白紙委任されたかのように振る舞おうとする政権に対し、参考人から危惧の念が示されたということは重く受け止めるべきです。
野中参考人は、ここ数年間、政治の実態を眺めておりますと、憲法が規定し、期待するものと相当に異なったことが平然として行われているように申し上げざるを得ないと述べ、議会政治は時間を限定した独裁政治と同じという菅元総理の発言や、現在の内閣について、首相のブレーンによって重要政策をまとめ、メディアを利用して正当性を国民にアピールし、与党や国会での議論を形骸化する傾向が現れていることに危機感を表明しています。
特に、外交・安保、経済政策などについて、偏った立場のブレーンを集め、公的あるいは私的諮問機関で首相の主導する政策の事実上の確定を行っているとの指摘がありましたが、まさに安保法制懇を指摘したものと受け止めました。集団的自衛権の行使容認に向けた動きに対して、集めたメンバーを見れば結論は明確でした。
成田参考人、高橋参考人からは、立憲主義についての貴重な御意見がありました。憲法は権力を統制するものであり、これが立憲主義であるという指摘です。
安倍総理は、改憲のハードルを下げるために憲法九十六条の改正を提示していました。これに対して、憲法改正に関しては三分の二でなければならないと縛っているということは憲法の本質的部分である、九十六条だけを改正して過半数にするというのは憲法全体の整合性を崩すものではないかとの指摘は重要です。改憲ができなかったのは、ハードルが高いことにあるのではなく、改憲の内容についてのコンセンサスが得られなかったことが問題との指摘はそのとおりであると考えます。
安倍総理は、私が最高責任者だと答弁し、半世紀近くにわたって国是とされてきた武器輸出三原則を放棄し、憲法九条をなきものとする集団的自衛権行使の解釈改憲も閣議決定で実施しようとしています。
安倍総理が集団的自衛権行使容認に向け政府に検討を指示したことを受けて行われた毎日新聞の調査では、憲法解釈の変更に反対が五六%、集団的自衛権行使について反対が五四%に上りました。また、共同通信の調査では、憲法解釈変更による行使容認に反対が五一・三%、集団的自衛権行使容認に反対が四八・一%となっており、どちらの調査でも集団的自衛権に反対の世論が賛成を上回っています。国民世論はもちろん、国会や憲法も極端に軽視しており、到底許されるものではありません。
議院内閣制の下での国会と内閣との関係についても参考人から御意見がありました。一つは、民意を反映した国会、二つ目に、国会での徹底審議によるガバナンスの質の向上というものです。
議院内閣制とは、内閣は議会の信任を根拠に置いて存在すること、政治、行政を考える際に国会の果たす役割が重要であることが強調されました。国会が国権の最高機関として憲法の要請に応えた役割を発揮する上で重要なことは、民意を鏡のように反映した議席で国会が構成されることです。
一九九〇年代以降、国民の政治不信を背景に進められてきたのが行政改革でもありました。強い内閣をつくるために、官僚主導から政治主導を口実に中央省庁の改革や独立行政法人の導入が進められ、それと一体に小選挙区制の導入、二大政党づくりが行われてきました。この間、政権交代が現実のものとなったものの、国民が望む政治は実現したと言えるでしょうか。沖縄への新たな基地建設の押し付け、消費税増税とセットで社会保障の大幅な削減を強行、原発は再稼働へ、TPP交渉への参加など、民意との乖離が広がってきました。
憲法は、言うまでもなく日本国の最高法規であり、国民主権の下で議院内閣制を採用しています。民意を鏡のように正確、公正に反映した国会の形成と、その国会から内閣総理大臣を指名し、民意を忠実に執行する内閣を組織することを憲法は要請しています。民意を反映しない国会の下で形成された内閣であることが民意との乖離を広げた最大の要因であり、憲法の要請に従って多様な民意を反映する国会を形成することこそ求められます。そのためには、民意をゆがめる小選挙区制を廃止し、比例代表制を軸とした選挙制度への転換が必要です。
憲法は、国民主権の下で代表民主制を採用し、議会制民主主義を実現する国会を国の最高機関と位置付けています。議院内閣制における内閣の在り方を考える場合、権力を抑制し、統制する国会の役割は極めて重大です。
只野参考人から、統治機構を考える場合、内閣や行政機関だけでなく国会の役割を含めて議論する必要性が提起されました。内閣機能強化とセットで国会のチェック機能の充実、統制機能の強化が図られるべきだったとの御意見を国会は重く受け止めるべきだと考えます。国会は法律を議決する権限を持っており、議決に至るまでの審議のプロセスが重要だという指摘です。二院制の立法過程は、衆参の両院の間で、法案の往復の過程で、その修正が図られたり立法の質が高められる、答弁の中で法律の運用や解釈について重要な答弁があったり、法文の意味を限定するような答弁が行われたりすること、立法機能の中で行政の在り方を縛るような重要な視点を盛り込むことができるとの御意見は、国会の機能強化の方向性を示していると感じました。
さらに、フランス憲法で新たに規定された国会のミッションの定義に公共政策の評価があることが紹介されました。
議院内閣制の場合、多数派対少数派で、多数派優位という構図が前面に出るとなかなか統制がうまく機能しないけれど、評価という点では、従来の統制とは違う国会が果たすべき役割が生まれること、ガバナンスを高める役割が国会に求められているという指摘もありました。
かつて参議院は、消費税廃止法や被爆者援護法を可決しています。また、九三年の自衛隊海外派遣のPKO法や、九五年のいわゆる政治改革での小選挙区制導入を進める小選挙区法では、重要法案だという認識は一般にあったものの、衆議院段階ではさしたる混乱もなく通過しました。しかし、時間を追うごとに世論が熟成し、参議院の審議段階で国民的議論が高まる中、小選挙区法案は参議院で否決されることとなりました。
このように、世論の熟成も相まって、参議院が統制機能を果たしてきた歴史があります。今、国会が行政を縛る立法機能を十分に果たせているのか、国の統治機構において国会の機能強化の必要性が提起されたことを受け止め、審議の形骸化はないか、点検、検証が必要であります。
以上で意見表明を終わります。
- 日時
- 2024/11/21(木)
- 場所
- 内容