家庭負担増やめよ(経済産業委員会 電気事業法改正案 政府質疑・反対討論)
2013/11/12
電気事業法改定案が可決
電力会社との資本関係を維持したままの「発送電分離」を容認する電気事業法改定案が11月12日の参院経済産業委員会で自民、民主、公明、維新、改革の賛成で可決されました。日本共産党とみんなの党は反対しました。
質疑で倉林明子議員は、2012年までの5年間の平均で、東電の企業向け「自由化部門」の販売電力量が全体の61%を占めながら1316億円の赤字である一方、一般家庭向けの「規制部門」は595億円の黒字であることを示しました。
倉林議員は、自由化部門の顧客上位10社の料金が1キロワット時当たり11・8円なのに、一般家庭向け「規制部門」の料金は2倍以上の25.74円だと指摘。福島原発の「安定化」が賠償などの費用が電力原価に算入された結果、家庭向け月額電気料金は約6300円から約8000円へと大幅値上げとなったとして、「自由化で家庭負担が増えるようなことがあってはならない」と主張しました。
茂木敏充経産相は「家計(家庭)部門にとって不利な状況になるとは考えていない」と述べるにとどまりました。
反対討論で倉林議員は、再生可能エネルギーの爆発的拡大のために発送電分離は必要だが、電力会社との資本関係を残したままの分離では「規制なき独占となる危険性がある」と批判しました。
電気事業法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
電気事業法改正案について質問いたします。
まず、料金問題で質問をしたいと思います。
電気は国民生活、経済にも欠かせず、公益性は極めて高いものだと承知をしております。今回の法改正で、電気料金の最大限の抑制ということで目的に挙げられております。さて、それではこれまでどうだったのかということで振り返りたいと思うんですが、二〇〇〇年以降、小売部門の自由化が段階的に進められてまいりました。
そこで、数字で確認をさせていただきたいんですが、東電の二〇一〇年までの五年間、ここで自由化部門の販売量に占める割合、利益に占める割合はどうなっていたでしょうか。〇政府参考人(高橋泰三君) お答え申し上げます。
東京電力が先般、料金の値上げを申請したときに電気料金専門委員会にお示しした資料に基づいてお答え申し上げますけれども、東京電力につきまして、平成十八年から平成二十二年の五年間の平均で申しますと、販売電力量につきましては、自由化部門で六一%、千八百一億キロワットアワー、規制部門が三八%、千九十五億キロワットアワーでございます。また、部門別の収支につきましては、電気事業収益から電気事業費用を差し引いた利益額ということで申し上げますと、同五年間の期間におきまして、自由化部門が九%、百四十三億円、規制部門が九一%、千三百九十四億円ということになってございます。〇倉林明子君 今いただいた数字は、原発事故前、値上げ申請のときということですから、二〇一〇年までの五年間の数字ですね。
そこで、お聞きしたいのは、さらに直近のデータも出ておるということで、二〇一二年までの五年間の平均について、これは赤字に当然なっておりますので、利益のところは利益の数字でお願いいたします。〇政府参考人(高橋泰三君) お答え申し上げます。
二〇一二年までの五年間の平均ということで申し上げさせていただきますけれども、直近の五年間ということでございますけれども、直近の五年間で取りますと、平成二十年から二十四年の五年間の平均でございますけれども、販売電力量につきましては、自由化部門が六一%、千七百十一億キロワットアワー、規制部門が三九%、千八十八億キロワットアワーでございまして、部門別収支で見ますと、自由化部門が赤字でございまして、マイナスの千三百六十一億円、規制部門につきましては黒字でございまして、五百九十五億円となってございます。
ただ、直近の、これ原発が動いているときと動いていないときが混ざっておりますので、直近の動いているときの二十四年度で申し上げますと、規制部門が九百十三億円の赤字、自由化部門が二千六百九十八億円の赤字でございます。〇倉林明子君 結局、自由化部門は販売量でいうと六割、ほぼ。ところが、利益のところで見ると、原発も稼働していたときで九%と。さらに、原発が止まった部分も含めた部分でいうと、大幅な千三百六十一億の赤字ということになっていますね。規制部門、いわゆる家庭部門が利益の底をしっかり支えているという構造になるんじゃないかと思うんですね。
そこで、改めてもう一つ数字を確認したいんですけれども、自由化部門の中でも大口利用者十社、ここと規制部門、いわゆる家庭部門のところで、キロワットアワー当たりの単価ですね、料金は幾らになっているでしょうか。
〇政府参考人(高橋泰三君) お答え申し上げます。
先ほどの答弁で、二〇一〇年までの五年間の平均の自由化部門は六二%ということでございます。それから、自由化部門の直近の五年間の赤字はマイナスの千三百十六億円ということでございます。
それで、今の御質問でございますけれども、大口顧客十社の料金でございますけれども、これは平成二十四年五月二十三日の料金審査専門委員会に東京電力が提出した資料でございますと、大口顧客上位十社の平均総合単価は一キロワットアワー当たり十一・八円ということでございます。
○倉林明子君 規制部門は。
○政府参考人(高橋泰三君) 規制部門につきましては、一キロワットアワー当たり二十五・七四円となってございます。
〇倉林明子君 これ、家庭料金の方が大口の利用のところと比べると倍を超えて高い料金になっているということなんですね。
昨年、東電の値上げ認可申請に対しまして、消費者庁が意見を出しておられます。消費者庁に確認したいんですけれども、この意見、どういうスタンスでおまとめになったんでしょうか。
〇政府参考人(河津司君) お答え申し上げます。
平成二十四年の七月十七日に消費者庁が今御指摘の意見を公表してございます。これは、経済産業省から当時協議をされておりました査定方針案に対しまして、その前月の六月二十八日に公表しておりましたチェックポイントを用いて評価をしたものでございます。
この評価におきましては、消費者は電力会社を選べない、また東京電力には公的資金が投入されているという特別な事情も踏まえまして、消費者の立場からこの意見を取りまとめたものでございます。
〇倉林明子君 その取りまとめで原価算入すべきではないという具体的な指摘が行われておりますが、具体的なその項目は何でしょうか。
〇政府参考人(河津司君) お答え申し上げます。
この意見におきましては全部で十三項目について意見を述べておりますが、その中におきまして、今御質問のありました原価算入に関しましては、福島の第一原子力発電所の五号機、六号機、それから福島第二原発一から四号機の減価償却費、それから福島第一原発一号機から四号機に係ります安定化維持費用及び賠償対応費用、さらに原子力発電所からの購入電力料につきまして、この時点で協議を受けておりました査定方針案においては、原価に算入する説明が十分ではないということで、原価に算入すべきではないという意見を申し上げております。
〇倉林明子君 消費者の立場、目線からいえば、私、当然の指摘であろうと思うんです。廃炉にすべき原発、動いていない原発、こうした部分の費用も原価に算入ということに結果としてはなりました。その結果、家庭料金は平均月額がおよそ六千三百円から八千円と大幅な値上げになっております。現在の規制料金の下でも、自由化された料金とのこうした大きな格差や納得できない費用の上乗せ等もあると、これ事実だと思うんですね。
その上で、この法案の最終段階で目指すとされております電気料金、小売料金の全面自由化、規制されていても家庭には高い料金だったということが改めて分かりましたが、自由化によって更に家庭の負担が増えるようなことがあってはならないということだと思うんですけれど、いかがでしょうか。
〇国務大臣(茂木敏充君) まず、電力会社の電気料金の値上げについてでありますが、昨年、我々は政権にありませんでしたが、当時、消費者庁と経産省の間では相当なやり取りがあったと報道等でも聞いております。ただ、今年、四電力からの料金値上げの申請がございまして、これに対します経済産業省の案、消費者庁としても原価算入のやり方であったり、そして最大限の経営の効率化、これを反映したものであるとおおむね認めていただいております。
そして、先ほど政府参考人から答弁をさせていただいたデータを見ても、小売料金の規制の撤廃というものが基本的には家庭部門にとっても料金の最大限の抑制につながっていくと、そう考えております。
その上で、今後のスケジュールということでいいますと、十分に競争環境が整った上で料金規制については撤廃をしていくと。小売の参入の自由化が先に来ます。その段階で恐らく規制料金より高い料金で入ってくる人というのはいないと思うんです。それは売れませんから、それじゃ。そうなると、それよりも安い料金で入ってくるということに基本的には私はなってくるんだと思っております。
そんな意味におきましても、現在我々が考えておりますこの電力システム改革の全体のスケジュール、そして料金のスキーム等々は、家計部門にとって不利な状況になると、こういうことは全く考えておりません。
〇倉林明子君 先ほども御紹介ありましたけれども、経産省の委託調査の結果で、先に全面自由化、全面ではないけれども自由化を先行している諸外国の調査結果の報告があって、自由化を進めたからといって決して電気料金の値下げにならないと、かえってそのことを周知した方がいいんじゃないかという御意見もあったということですね。
つまり、この競争環境を適正に整えれば本当に抑制になるんだということでおっしゃるけれども、果たして本当にそうなんだろうかということが問われていると思うんですね。先ほど御紹介したように、今回の電気料金の値上げに際して、消費者庁の意見を反映されないで東電の言い分を認めての、私、値上げになったということだと思うんです。その結果、東電は今年九月の中間決算では原発事故以来初めて経営黒字になっているということです。
本当に、一番大事なところは、目的にもあるように電気料金の最大限の抑制、とりわけ国民、中小企業、地域経済、ここへの抑制については政府がしっかり責任を持つところじゃないかと思うんです。いかがでしょう。
〇国務大臣(茂木敏充君) 申し上げますが、東京電力の値上げ申請について許可したのは私じゃありません。私は、四つの許可を行っておりますが、大幅な抑制というのを図ったつもりであります。
それから、諸外国の例、こういったものも十分参考にしながら今回の制度設計行っておりまして、電力の安定供給、そして料金が最大限抑制されるようにということで、例えば英国では自由化と同時に料金規制を撤廃したことによりまして価格の上昇というのが生じたわけでありまして、したがって、競争が働くまで、先ほど御説明したように、料金規制を残す必要というのはあると我々は考えているわけであります。また、安定供給の面でいいましても、米国の東部では事業者間の連携不足で大停電を招いた、こういう事態がございます。したがって、送配電事業者と発電事業者の連携ルールが必要であるということはこの事例からも明らかなんだと思っております。
こういった海外の自由化の教訓も踏まえて、今回の我々の電力システム改革では、適切な市場監視の実施、そして発電事業者と送配電事業者が連携を確実に行うためのルールの設定、そしてシステムの設計、開発、さらには競争の状況を見極めた上での料金規制の撤廃など、海外で明らかになった課題を克服するために慎重な制度設計を行っております。
〇倉林明子君 原発問題どうするのかと、東電どうするのかと、この議論、本当に一からしないといけない問題だと思うんですね。
昨日、自民党の復興加速化案ということで御提案があったようであります。汚染水対策で国費の投入がされました。それに引き続いて税金投入をなし崩しに進めていくようなことになったら、東電への税金投入、あわせて、東電は更に電気代へ上乗せすると、こういう仕組みもそのまま、東電をそのまま温存して電力システムの改革というようなことは国民は到底納得できるものではないというふうに思います。
そのことを指摘して、質問を終わります。
〇委員長(大久保勉君) 他に発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。
これより討論に入ります。
御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。〇倉林明子君 日本共産党を代表して、電気事業法の一部を改正する法律案に対して反対の討論を行います。
電力事業は、国民生活や地域経済にとって欠かせない極めて公益性の高い事業です。改革すべきは、群を抜く九電力の電力独占体制です。本来、電力独占を民主的に規制し、国民監視の下で安全かつ低廉で安定的な電力供給が確保されてこそ、国民にとっての電力システム改革と言えるのではないでしょうか。
以下、反対の理由を述べます。
第一の理由は、改革の出発点にすべき福島第一原発事故の教訓が全く酌み取られていないからです。
福島第一原発事故は、レベル七の事故に加えてレベル三の汚染水漏れを発生させるなど、過去に例のない放射能汚染を広げ、現在も深刻な事態が続いています。事故の収束も事故原因の解明もされないまま原発の再稼働を前提にするなど、もってのほかです。東電の破綻処理を速やかに行い、公的管理の下で賠償、救済に国が全力を挙げることこそ求められています。
第二に、規制なき市場原理任せの小売料金の全面自由化は問題です。
電力の安定供給を確保することは当然です。海外でも完全な自由化をした国は少数派です。さらに、自由化を進めた諸外国でも電気料金の値上げが起こっています。全面自由化で自由になるのは、電気料金を自ら決めることができるようになる九電力会社ではないでしょうか。消費者代表の参加など、公益事業を監視する機関の設置こそ行うべきです。
第三に、発送電一貫体制が実質的に維持される可能性があるからです。
再生可能エネルギーの爆発的な拡大の障害ともなっているのが発送電一貫体制です。発送電分離は必要ですが、送配電部門を別会社とする法的分離で行おうとしています。これでは所有権分離まで至らず、資本関係は残ったままとなり、規制なき独占となる可能性、危険性があります。公益性が高く、地域独占となる送電事業は、電力会社と切り離し、公的管理の下に置くことが必要です。再生可能エネルギーの大量普及、小規模分散、地域経済循環型の電力システムへの転換こそ目指すべきです。
電力システム改革は一体誰のための、何のための改革なのか。福島県民の総意は、県内全原発の廃炉であり、原発ゼロです。首相が先頭に立って原発推進と輸出を進めるなど、原発推進政策と一体の電力システム改革は到底国民の理解は得られないことを指摘して、討論を終わります。〇委員長(大久保勉君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
これより採決に入ります。
電気事業法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。〔賛成者挙手〕〇委員長(大久保勉君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
この際、加藤君から発言を求められておりますので、これを許します。加藤敏幸君。
〇加藤敏幸君 私は、ただいま可決されました電気事業法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党及び日本維新の会の共同提案による附帯決議案を提出いたします。
案文を朗読いたします。
電気事業法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一 電力システム改革の目的である「電気の安定供給の確保」、「電気の小売に係る料金の最大限の抑制」及び「電気の使用者の選択の機会の拡大及び電気事業における事業機会の拡大」の実現のため、原子力発電の稼働が進んでいない中で火力発電所等の電源脱落リスクや、海外からの化石燃料の輸入が増加し国民負担の増大が懸念されていることにも鑑み、第三段階までの法的措置の期限を待つことなく、スマートメーターの普及、卸売市場の拡大、発電所の環境アセスメントの緩和等の施策を含め検討し、可能なものについては早急に実施すること。
二 原子力政策の抜本的見直しが求められる中、原子力発電所の廃炉に係る電力会社等の負担の軽減策など競争環境下における原子力発電の在り方、原子力賠償の在り方の見直し及び我が国における核燃料サイクル政策の位置付けについて早急に検討の上、電力システム改革と同時並行的に適切な施策を実施すること。
三 今後、第三段階の法的措置の実施を通じて達成するものとされている「送配電部門の中立性の確保」及び「電気料金の全面自由化」は、競争促進の効果と電力の使用者の利益を併せて実現する観点から同時に実施することを原則とすること。また、これらの事項を含む今後の電力システム改革の詳細な制度設計及び実施については、当該改革に当たっての課題検証とその結果に基づく課題克服のために必要な措置を講じることを前提として進めるとともに、今年中に策定される予定である新たなエネルギー基本計画の内容と整合性を図りつつ、関係方面に十分な説明を行うものとすること。
四 電力システム改革の遂行に際しては、今日まで電力の安定供給を支えてきた電力関連産業の労働者の雇用の安定や人材の確保・育成、関連技術・技能の継承に努めるとともに、改革の過程において憲法並びに労働基準法に基づく労使自治を尊重するものとすること。また、当該労働者について一定の形態の争議行為の禁止を定める「電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律」については、自由な競争の促進を第一義とする電力システム改革の趣旨と整合性を図る観点から再検討を行うものとすること。
五 電気事業の規制に関する事務をつかさどる新たな行政組織は、実効性のある送配電部門の中立性の確保、電気の小売業への参入の全面自由化等の電力システム改革を推進する上で、必要な電気事業の規制に関するモニタリングを実施する等、必要最小限な組織とし、肥大化は極力避けること。
六 広域的運営推進機関については、全国大での需給調整機能の強化や再生可能エネルギーの導入拡大とその円滑な運用を行うため連系線及び基幹系統の潮流の管理等を効率的に行うこととし、その業務の適正なマネジメントを確保するための仕組みを整備するとともに、専門的知見と中立性を備えた人材の育成及び確保に取り組むものとすること。
右決議する。
以上でございます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
〇委員長(大久保勉君) ただいま加藤君から提出されました附帯決議案を議題として採決を行います。
本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
〔賛成者挙手〕
〇委員長(大久保勉君) 多数と認めます。よって、加藤君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
ただいまの決議に対し、茂木経済産業大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。茂木経済産業大臣。
〇国務大臣(茂木敏充君) ただいま御決議のありました本法案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと考えております。
ありがとうございます。
〇委員長(大久保勉君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
〇委員長(大久保勉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
本日はこれにて散会いたします。
- 日時
- 2024/11/21(木)
- 場所
- 内容