障害者暮らす場の整備をー家族介護の限界訴え(2025/6/3 厚生労働委員会)
日本共産党の倉林明子議員は3日の参院厚生労働委員会で、家族介護
の限界が深刻化するなかで、障害者の暮らしの場の保障が必要だと主張
しました。
介護する家族の高齢化やヘルパー不足などで自宅での暮らしが限界に
達するなか、特に重度の知的障害者の暮らしの場が決定的に不足してい
ます。
倉林氏は、田中智子佛教大教授とNHKが行った調査で、重度の知的
障害者の女性が、5カ所の施設をショートステイで転々とする生活を7
年間も続け、施設の移動が年間275回にも及んでいる事例があると告
発。同調査では、入所施設とグループホームの待機者が2万2000人にのぼるとして、国に待機
者の実態調査を求めました。
福岡資麿厚労相は「国として待機者数の調査を行うことは考えていない」などと背を向けまし
た。
倉林氏は「現状は地域に社会資源がなく、当事者の意思尊重も選択の余地もない」と指摘。家
族の過重な負担を前提とした施設削減ありきの総量規制方針は撤回し、社会資源を重層的に整備
し、家族介護が限界にきている当事者の暮らしの場の整備を急ぐよう求めました。また、障害福祉
の分野でも賃金格差が広がっているとして、臨時報酬の速やかな改定を求めました。
障害福祉に関わって質問したいと思います。
次の計画になります障害保健福祉計画、これ二七年から二九年の計画になろうかと思いますが、これに向けた基本指針によれば、成果目標として、二二年度末の施設入所者数の六%以上を地域移行すると、そして、施設入所者数は二二年度末の五%以上の削減と、こういう成果目標が示されているわけです。
そこでお聞きしたいんですけれども、この入所施設というのは十分足りているという御認識でしょうか。
○国務大臣(福岡資麿君) 障害者支援施設を含みます障害福祉サービスにつきましては、地域のニーズに応じた整備が必要であると考えておりまして、各市町村において、国の基本方針に基づき、必要なサービス量を見込んだ障害福祉計画を策定し、計画的な整備を推進をしていただいています。
今御指摘ありました令和六年から八年度の第七期障害福祉計画の基本指針では、障害者の方々の希望に応じて地域の暮らしが選択できるように、施設入所者数について、グループホームへの移行など地域移行者数の目標設定を令和四年度末時点の施設入所者数の六%以上とすることと併せて、令和八年度の施設入所者数を令和四年度末時点から五%削減することを基本としてございます。
現在、厚生労働省では、障害者支援施設の在り方に関する検討会を開催しまして、施設に求められる役割、機能であったり、いわゆる親亡き後を含む居住支援ニーズを踏まえた今後の目標の基本的方向性等について議論しているところでございまして、その結果を踏まえ、社会保障審議会障害者部会において次期障害福祉計画の基本指針の見直しに向けた検討を進めてまいりたいと思います。
○倉林明子君 よく認識分からなかったんですけど、私は端的に足りていないと思うんですね。
その障害者の加齢に伴う重度化とともに、介護している家族が高齢化進んでおりまして、自宅での介護というのが限界に達しているというのが現状だと思うんです。特に、重度の知的障害に対応できる暮らしの場、これ決定的に不足していて、現状は大変深刻な実態があります。
京都府内でも、グループホームでは重度の受入れができないということで、市外の施設をロングショートを使って転々とするという生活をしているというお話をお聞きしております。
これは東京の例だったと思いますけれども、NHKの番組で紹介された事例です。二十代の女性が市内の五か所の施設をショートステイを転々とする生活、七年も続けているというんですよ。年間の施設移動が何と二百七十五回に上ったということです。昨年の千葉県長生村では、知的障害の次男を父親が殺害すると、こういう痛ましい事案も発生しております。長期の入所先を探して、この次男殺害という事案ですけれども、神奈川からその長生村に引っ越した間なしの事件だった、間もなくの事件だったんですね。
昨年十一月、NHKの番組のことを申し上げましたけれども、田中智子佛教大学教員とNHKによる障害者の暮らしの場に関する自治体調査報告書が出されております。特集番組でも報道されまして、とりわけ重度の知的、強度の行動障害のある方の暮らしの場がないという実態が浮き彫りになりました。調査の結果、施設入所、グループホームの利用を希望しながら入れない待機者、少なくとも二万二千人に上るということが判明しているんです。回答していないところもありますので、少なくともということが分かりました。
国として、入所施設及びグループホームの待機者数の実態、これもちろん市町村がつかむということが基本だと思うんですけれども、全体像つかんでいるんでしょうか。
○政府参考人(野村知司君) お答え申し上げます。
障害福祉サービスにつきましては、国の基本指針に基づきまして、市町村において、地域のニーズを把握をすると、その上で、障害福祉計画を策定して、計画的なサービス提供体制の整備を推進をしているところでございます。
また、個別の方々のサービス利用につきましても、その支給決定というのは、市町村において、障害者の置かれている状況でございますとか、あるいはサービス利用の意向などを勘案しながら、支給決定を個別に行っていただいているというところでございます。
その上で、障害者支援施設でございますけれども、昨年度、調査研究を行ってみたところ、各自治体における待機者の把握状況などについては、調査を行ってみた結果、その定義や把握方法が自治体間でかなりばらつきがあるということが明らかになったところでございます。
こうした点なども踏まえまして、これまで国として統一的に障害者支援施設でございますとかグループホームの待機者数の数、これを把握することは行っておりません。
○倉林明子君 最後、聞き取りにくかったけれども、行っていないということは確認できたかと思います。
先ほども答弁の中で紹介されましたけれども、厚労省も調査するということで、調査研究報告ということで示されております。今ありましたように、定義が困難やったら定義をきちんとした上で調査掛けたらいいだけだと思うんですよ。待機者数も把握できておりません。
さきのNHKの調査によれば、重度訪問介護の利用状況、要は在宅でどれだけ支援を受けられているかということで言いますと、僅か〇・三%なんですよ。ショートステイの整備状況、これも五・二%にすぎないんですよ。つまり、在宅を支える支援体制が全く不十分なまま、成果目標は施設削減ありきということになっているわけで、これ、到底受け入れられないと言わざるを得ない。
強度行動障害にとどめずに、施設入所、グループホームの待機者数、これ、実態を、国として定義も明らかにして、調査、照会、きちんと掛けるべきではないでしょうか。
○国務大臣(福岡資麿君) 障害福祉サービスにつきましては、国の基本指針に基づき、市町村において、地域のニーズを把握し、障害福祉計画を策定して計画的な整備を推進していただいています。
現時点で国として障害者支援施設やグループホームの待機者数の調査を行うことは考えてございませんが、その上で申し上げますと、現在、障害者支援施設の在り方に係る検討会を開催し、求められる役割や機能、また、先ほど申し上げましたように、待機者の把握方法や定義について自治体間でばらつきがある中で、これらをどう整理するかなどについて議論を進めておりまして、その結果を踏まえながら、次期障害福祉計画の基本指針の見直しに向けて検討してまいりたいと思います。
○倉林明子君 いや、きちんとした実態をつかまずに、施設を減らすと、で、施設の入所者数を地域に移行すると、これが基本指針になっているから言っているんですよ。
特集で、NHKの特集に登場された方だけれども、都内で入所できる施設がないと、東京都内。今は、東北地域のグループホームで暮らして八年になると。この息子さんに会うために、五時間掛けて会いに行くお母さん、どうおっしゃっているかといったら、息子は私の生きていく支えみたいなもの、元気でいようという力を湧かせてくれる宝物のような存在ですとおっしゃっているんですね。そう思えるのは入れる施設があったからなんですよね。
重度知的障害者の介護を家族に委ね、その状態を放置してきたことで、私は問題が顕在化していると思うんです。地域に社会資源がない、当事者の意思尊重あるいは選択の余地は余りにもないんですよ、現状は。
家族の過重な負担を前提とした施設削減ありきの、私は、総量規制、この方針を撤回すべきだと思います。家族依存の政策をやめて、人生の早い段階から安心して親元を離れることができる社会資源を重層的に整備するとともに、家族介護が限界に来ているという当事者の暮らしの場、これ整備を急ぐべきだと思います。いかがでしょう。
○国務大臣(福岡資麿君) 国としては、障害者の方々の希望に応じて地域での暮らしが選択できるよう地域移行を進めているところでございまして、施設の入所者数を減らしていくという方向性そのものについては変わりません。
グループホームや障害者支援施設等の障害福祉サービスにつきましては、国が示す指針、基本指針に基づきまして、各市町村が、地域のニーズを把握し、障害福祉計画を策定して、計画的な整備を推進してまいりたいと思います。
グループホームにつきましては、障害者の方々の希望に応じて地域で安心して生活を送れるよう支援体制を整備してきたところでございまして、加えて、令和六年度より、障害者の重度化、高齢化やいわゆる親亡き後も見据えまして、緊急時の相談や受入れ等の対応を行う地域生活支援拠点等について市町村に対して整備の努力義務を設けるとともに、報酬改定においてその機能を充実するための評価の拡充を行いまして、その整備を推進しているところでございます。
引き続き、ニーズに応じたサービス等の確保に努め、安心して生活が送れるように取り組んでまいりたいと思います。
○倉林明子君 いや、受皿ないんですよ。その実態を調べて明らかにした調査結果踏まえて、きちんとつかみ直すべきだということを申し上げているんですよ。障害当事者、そして家族が、親亡き後のことも当事者自身の人生も本当に追い詰められているという実態を本当に見ないと、私、介護殺人というような悲劇を繰り返してはならないということを強調したいと思います。
その上で、二四年の報酬改定、これ障害福祉の現場でも深刻な影響が広がっております。
二五年二月に、きょうされん、団体が行いました影響調査によりますと、グループホームの九割が基本報酬で減収と回答しており、基本報酬が全く足りないという回答が七割に上っております。生活介護では、時間刻み報酬ということで、一番利用されているところの評価ががくんと下がったんですね。基本報酬の減収がそれによって七割になりました。私は、団体から今出ている声は、事業者から出ている声はどういうことかというと、この二四年報酬改定の撤回を求めているんです、元に戻してほしいと、速やかな報酬改定を決断してほしいという声です。
さらに、障害福祉分野の賃金格差というのが更に広がってきております。厚労省が行った調査でも、介護が全産業平均との格差が広がっているということは広く知られるようになってきておりますけれども、介護も上がったけれども、全産業分野との格差が広がったというのがこの二四年報酬改定の結果でしたよ。ところが、この介護よりも一万円、月、低いというのが障害福祉の分野ですよね。
障害福祉分野のこの賃金格差が広がっているという状況は、何が現場で起こるかというと、人材流出が止まらないんです。そして、働いて、どれだけ応募を出しても働きに来てくれる人が集まらない。先ほど人材紹介のお話もありましたけれども、人材紹介からの電話が掛かってきても、応募、お金がないので雇えないと、こういう実態まで広がっているわけですよ。
私は、障害者の生活と権利、これを守るためにも職員の処遇改善が待ったなしになっています。事業運営の危機にも至っているわけです。基本報酬の大幅な引上げ、これも加えて求めたい、緊急にやるべきだと。いかがでしょう。
○国務大臣(福岡資麿君) 令和六年度報酬改定におきまして、生活介護の基本報酬については、従来は営業時間を考慮して報酬が設定されておりまして、利用者ごとのサービスの提供時間が考慮されていなかったために、利用者ごとのサービス提供時間に応じてきめ細かく基本報酬を設定するとともに、強度行動障害を有する方などの支援体制を整えている場合の加算の拡充などの見直しを併せて講じたところでございます。
また、グループホームの基本報酬についても、その経営実態を踏まえまして、サービスの質等に応じためり張りのある報酬改定を行うため、人員配置に応じた区分を改め、サービス提供時間の実態に応じて加算する体系へと見直すとともに、重度障害者の受入れなど、支援内容等も踏まえた単価の見直しを行わせていただきました。
これ以外にも、人材確保に向けました処遇改善加算の引上げ等の様々な取組も併せて行っておりまして、令和六年度報酬改定後において、生活介護、グループホーム共に基本報酬と各種加算を合わせた利用者一人当たりや一事業所当たりの報酬額は増加しているところです。
ただ一方で、委員御指摘のその処遇改善が喫緊の課題である、もう再三にわたって御指摘いただいているところです。更なる取組の在り方については、次期報酬改定など、必要な対応を検討してまいりたいと思います。
○倉林明子君 いや、次期報酬改定まで待てないって言っているんですよ。今の改定じゃ、加算を取ったとしてもマイナスになっているんですよ。だから、全国知事会からも、介護、障害報酬の速やかな臨時改定、これ求められていますよ。事業継続に向けた緊急の財政支援、直ちに、効果見極めている場合じゃないんですよ。直ちに行うべきだ、重ねて申し上げて、終わります。